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 例のロシアンルーレットたこ焼きである。自分で入れておいて自分で引き当ててしまったらしい。五割の確率なのだから、致し方ない。
「ほんとに入れてたんだ」
 アヤが呆れ顔で水を手渡すと、リョウはひったくるようにグラスを受け取り、一気に飲み干した。
「ひいいいいいえらい目に遭うたわああああ」
「自分でやったんだからね、それ」
 涙目でむせ込んでいるリョウはどう見ても間抜けなのだが、伴侶フィルターといおうか、アヤの目にはまた別の映り方をしているようで。
「……罰ゲームって言ってたよね」
「え、言うてはないけど……」
「ロシアンルーレットたこ焼きって言ったら罰ゲームだよね」
「えっと、」
 アヤには元来、好きな子にはつい意地悪したくなる的な性癖を持ち合わせている。庇護欲や加虐欲みたいなものがないまぜになって、『可愛いものを壊したい』というような衝動に駆られることがままあるのだ。
「今夜寝かさないけど、構わない?」
「構わない? って……どうせ強制やろ」
 観念したようにリョウが肩を落とすと、アヤは満足そうににぃっと口端を上げた。
「ていうか罰ゲームも何も、それ普段通りやん……」
 今宵も長い夜になりそうである。

【おわり】
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