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舞踏会に招待されました⑴
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王様に、舞踏会に招待されました。
それを聞いて真っ先に脳裏に浮かんだのは、騎士服ではない貴族の衣装を身に纏ったローランド様のお姿……。
見たい!
思わず行きたいと言ってしまった。
だがしかし。
「ローランド様、私、ダンスが踊れないのですが、参加して大丈夫なんでしょうか?」
「カスミは稀人だから、踊れなくても当たり前だろう。稀人を貴族たちにお披露目するのが目的だから、王や王妃と共に座っていたらいいと思うぞ」
(良かった、過酷な特訓が待っているわけじゃないんだ)
「それなら良かったです。でも、どうせなら、ローランド様と踊ってみたいな。一番簡単なダンスひとつだけでも、今から習って覚えられないでしょうか?」
「ゆっくりしたダンスなら出来なくないと思うが。衣装の事もあるし、王様に相談してみよう」
ローランド様が王様たちに相談してくれて、王妃様が私の衣装を用意して下さり、ダンスの教師を付けてくれる事になった。
そのため私はしばらく文官の仕事をお休みして、王宮に滞在するように言われた。
ローランド様から離れるのが嫌だったが、自分から言い出したので仕方なく了解したのだった。
◇◇◇
そして翌日。王家の紋章が入った豪華な馬車が迎えに来た。
王宮へは、リサさんが侍女件護衛として付き合ってくれることになった。
もちろん、リサさん以外にも、王家の護衛がたくさん馬車を取り囲み、厳重な警備体制で王宮へ連れられて行った。
「カスミちゃん!よく来てくれたわね?」
連れられた先は、王妃様のお部屋だった。
私は王妃様に挨拶の礼をしようとしたのだが、「ああ、肩苦しいのナシ!いいわね?」と止められた。
同室には、茶色の髪をした、少しぽっちゃりとした可愛らしい女性がいる。
「カスミちゃん、この娘は王女のエイミーよ。貴女よりふたつ年下なの。仲良くしてやってね」
エイミー王女さまはきれいなカーテシーをして挨拶してくれた。
「エイミーです。お会いしたかったです、カスミ様」
王女様に様付けされて呼ばれるのは気が引ける。
「お初にお目にかかります。エイミー様。どうぞ、私の事は、花純と呼び捨てて下さい」
私がそういうと、
「わかったわ、カスミ。これから仲良くしてね!」
エイミー様はニコッと笑顔を見せた。
王妃様もニコニコとふたりのやり取りを見ていたが、
「さあ、舞踏会まで時間が一週間しかないわ。まずは衣装を作りましょう」
と言って、王家御用達のデザイナーを部屋に招き入れた。
「まあ、なんと美しい。これは腕がなりますわ」
妖艶な感じの美女はミルシェと名乗り、ニヤリと微笑む。
「早速ですが、カスミ様はどんなドレスをお望みで?」
ドレスなんて全然わからないや。餅は餅屋にってことで、ミルシェさんに丸投げしよっと。
「私はドレスのことは何も分からないので、プロのミルシェさんに全てお任せします」
そんなことよりも!
私は王妃様に向かってとても重要な質問をした。
「それよりも王妃様、ローランド様は舞踏会には騎士の正装でいらっしゃるのですか?」
王妃様は一瞬キョトンとしていたが、
「え?ええ、彼は騎士団長と言う肩書きでくるだろうから、そうでしょうね。それがどうしたの?」
私は少し残念に思いながら答える。
「そうですか。いえ、騎士服ももの凄くカッコ良かったから良いのですが、今度は貴族の衣装を身に纏ったローランド様が見られるのかと期待してしまって」
王妃様とエイミー様はポカンとしたまま少し固まって、先に戻った王妃様が、
「んまあっ、可愛いわね、カスミちゃんっ!アレクには、団長としてでなく、公爵として舞踏会に出席するよう、厳命しておくわ!」と言った。
エイミー様が私に聞こえない小声で「聞いていた通りの方だわ」と独り言を呟いていた。
ミルシェさんがそんな話を聞いて、
「カスミ様は、ご自分の衣装よりもローランド様の衣装の方が大事なんですのね」と言う。
「もちろんです!私はローランド様がダンスなさってる姿を見に行くのが目的ですから! 」
私は胸を張って答えた。
エイミー様がまたこっそりと「これは本物ね、イケるわ」などと呟いていた。
その後、丸投げしたばかりに、ミルシェさんと王妃様に着せ替え人形のように試着させられ、衣装デザインについてあーでもない、こーでもないと論戦を聞く羽目になった。
ドレスに合わせたアクセサリーやバッグ、靴なども全て、ミルシェさんにお任せした。
ミルシェさんは「これほどやる気が出たのも久しぶりですわ。それでは私はこれで。」と早速と帰って言った。
やっとデザインが決まり、一息つくため紅茶を頂く。王妃様は満足気にしている。
「カスミちゃん。残念だけど、私はこの後政務があるの。だから、エイミーにダンスの先生を紹介するよう頼んであるわ。若い者同士、その方が気楽でしょうから仲良くやってちょうだいね」
そう言って部屋から出て行った。
「カスミ、ダンスは全く見たこともないわよね?」
「はい。前の世界では、テレビというもので見た事がありますが、こちらのダンスと同じかわかりませんし」
「じゃあ、ワルツのスローなのを教えてもらうといいわね」
「一週間しかないのに、覚えられるでしょうか?私、あまり運動得意じゃないんですが」
「大丈夫ですわ、うちの教師は優秀ですもの」
「もし無理そうだったら、ローランド様と踊るのは諦めて、見るだけにします」
「……あの熱血教師がそんなの許すはずないよ」
またエイミー様が小声で何か言っていた。
それを聞いて真っ先に脳裏に浮かんだのは、騎士服ではない貴族の衣装を身に纏ったローランド様のお姿……。
見たい!
思わず行きたいと言ってしまった。
だがしかし。
「ローランド様、私、ダンスが踊れないのですが、参加して大丈夫なんでしょうか?」
「カスミは稀人だから、踊れなくても当たり前だろう。稀人を貴族たちにお披露目するのが目的だから、王や王妃と共に座っていたらいいと思うぞ」
(良かった、過酷な特訓が待っているわけじゃないんだ)
「それなら良かったです。でも、どうせなら、ローランド様と踊ってみたいな。一番簡単なダンスひとつだけでも、今から習って覚えられないでしょうか?」
「ゆっくりしたダンスなら出来なくないと思うが。衣装の事もあるし、王様に相談してみよう」
ローランド様が王様たちに相談してくれて、王妃様が私の衣装を用意して下さり、ダンスの教師を付けてくれる事になった。
そのため私はしばらく文官の仕事をお休みして、王宮に滞在するように言われた。
ローランド様から離れるのが嫌だったが、自分から言い出したので仕方なく了解したのだった。
◇◇◇
そして翌日。王家の紋章が入った豪華な馬車が迎えに来た。
王宮へは、リサさんが侍女件護衛として付き合ってくれることになった。
もちろん、リサさん以外にも、王家の護衛がたくさん馬車を取り囲み、厳重な警備体制で王宮へ連れられて行った。
「カスミちゃん!よく来てくれたわね?」
連れられた先は、王妃様のお部屋だった。
私は王妃様に挨拶の礼をしようとしたのだが、「ああ、肩苦しいのナシ!いいわね?」と止められた。
同室には、茶色の髪をした、少しぽっちゃりとした可愛らしい女性がいる。
「カスミちゃん、この娘は王女のエイミーよ。貴女よりふたつ年下なの。仲良くしてやってね」
エイミー王女さまはきれいなカーテシーをして挨拶してくれた。
「エイミーです。お会いしたかったです、カスミ様」
王女様に様付けされて呼ばれるのは気が引ける。
「お初にお目にかかります。エイミー様。どうぞ、私の事は、花純と呼び捨てて下さい」
私がそういうと、
「わかったわ、カスミ。これから仲良くしてね!」
エイミー様はニコッと笑顔を見せた。
王妃様もニコニコとふたりのやり取りを見ていたが、
「さあ、舞踏会まで時間が一週間しかないわ。まずは衣装を作りましょう」
と言って、王家御用達のデザイナーを部屋に招き入れた。
「まあ、なんと美しい。これは腕がなりますわ」
妖艶な感じの美女はミルシェと名乗り、ニヤリと微笑む。
「早速ですが、カスミ様はどんなドレスをお望みで?」
ドレスなんて全然わからないや。餅は餅屋にってことで、ミルシェさんに丸投げしよっと。
「私はドレスのことは何も分からないので、プロのミルシェさんに全てお任せします」
そんなことよりも!
私は王妃様に向かってとても重要な質問をした。
「それよりも王妃様、ローランド様は舞踏会には騎士の正装でいらっしゃるのですか?」
王妃様は一瞬キョトンとしていたが、
「え?ええ、彼は騎士団長と言う肩書きでくるだろうから、そうでしょうね。それがどうしたの?」
私は少し残念に思いながら答える。
「そうですか。いえ、騎士服ももの凄くカッコ良かったから良いのですが、今度は貴族の衣装を身に纏ったローランド様が見られるのかと期待してしまって」
王妃様とエイミー様はポカンとしたまま少し固まって、先に戻った王妃様が、
「んまあっ、可愛いわね、カスミちゃんっ!アレクには、団長としてでなく、公爵として舞踏会に出席するよう、厳命しておくわ!」と言った。
エイミー様が私に聞こえない小声で「聞いていた通りの方だわ」と独り言を呟いていた。
ミルシェさんがそんな話を聞いて、
「カスミ様は、ご自分の衣装よりもローランド様の衣装の方が大事なんですのね」と言う。
「もちろんです!私はローランド様がダンスなさってる姿を見に行くのが目的ですから! 」
私は胸を張って答えた。
エイミー様がまたこっそりと「これは本物ね、イケるわ」などと呟いていた。
その後、丸投げしたばかりに、ミルシェさんと王妃様に着せ替え人形のように試着させられ、衣装デザインについてあーでもない、こーでもないと論戦を聞く羽目になった。
ドレスに合わせたアクセサリーやバッグ、靴なども全て、ミルシェさんにお任せした。
ミルシェさんは「これほどやる気が出たのも久しぶりですわ。それでは私はこれで。」と早速と帰って言った。
やっとデザインが決まり、一息つくため紅茶を頂く。王妃様は満足気にしている。
「カスミちゃん。残念だけど、私はこの後政務があるの。だから、エイミーにダンスの先生を紹介するよう頼んであるわ。若い者同士、その方が気楽でしょうから仲良くやってちょうだいね」
そう言って部屋から出て行った。
「カスミ、ダンスは全く見たこともないわよね?」
「はい。前の世界では、テレビというもので見た事がありますが、こちらのダンスと同じかわかりませんし」
「じゃあ、ワルツのスローなのを教えてもらうといいわね」
「一週間しかないのに、覚えられるでしょうか?私、あまり運動得意じゃないんですが」
「大丈夫ですわ、うちの教師は優秀ですもの」
「もし無理そうだったら、ローランド様と踊るのは諦めて、見るだけにします」
「……あの熱血教師がそんなの許すはずないよ」
またエイミー様が小声で何か言っていた。
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