【一部完結】大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

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2章

シリアス=ファラディスの心

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二人で幸せな気分に浸っていた僕らは、傍らで起こっている厄災のような大嵐の音を聞き、やっと外へ意識を向けた。

その嵐の中心には、砂竜王カリム。溢れ出る怒気が周囲の砂埃を巻き上げていた。

彼が睨みつける先にはシリアス様を後ろ手で拘束したカインがいる。

「その手を離せ、下衆が…!!」
「カリム…!ダメです、皆を巻き込んでしまいますっ…!」
「ははっ!お優しいことだ、自身が捕まっておきながら外野の心配をするとは。なぁ砂竜王よ」
「黙れ!!」

手のうちが大体分かっていたライネ先輩と違って、カインは手数も技量も全てが未知だ。
そんな相手に伴侶を人質に取られてしまったカリム様は、その場から動けず激情を必死で抑えているようだった。

「さて…お互い膠着状態だな?そこで提案なのだが、一つ賭けをしようじゃないか」
「お前の言葉に貸す耳などない!!早くその手を離せ!!」
「まぁ待て、この男を殺されたくなければな」
「っ…!」

カインが言った通り、お互いが動くに動けない、そんな状態だ。なのにカインは不気味なほどに余裕が崩れない。

「被術者が少しでも俺の所へ来たいと思っていること、それが条件で発動する転移魔法がある。それを今ここで使ってみようじゃないか」
「何を馬鹿なことを…」

転移魔法は基本的に、事前に時間をかけて魔法陣を敷かなければ発動しない。しかしカインの故郷ヴェルディアは、高度な魔法技術を誇った大国であった。
今はもう無い魔法があってもおかしくない。

「じゃあやってみようか。番であるお前と、知り合ったばかりの俺、どちらがこいつに選ばれるか…」

カインがそう言って何かを呟いたとき、彼はフッと姿を消した。




シリアス様と共に。





「シリアス…?なんで…」

虚空を見つめるカリム様の呟きは、誰にも拾われることなく空へ消えていった。



◇◇◇



こうして、僕とシリアス様が攫われたという一大事件は幕を閉じた。一人はもとの居場所へ戻り、一人は消えるという形で。

あまりにも衝撃的なあの時間は、僕らを混乱の海に沈めるのに十分な威力を持っていた。
それでもこのまま終わる訳にはいかない僕たちは、あの場で全てを見た僕の話を始めに、シリアス様を奪還するべく動き出した。

「僕らが連れ去られて、あのカインという男は上機嫌に色々話していました。あいつは、カリム様が滅ぼしたヴェルディア王家の末裔です」
「っ…!」
「…そういうことか。だからあのような珍しい魔術を…」
「おそらくそうでしょう。彼が望んだのは、僕の魔力とリュードリアの魔術、そしてシリアス様の、っ…シリアス様の、ヴェルディア王家に連なる血筋でした」

あまりに酷い内容に、思い出すだけで気分が悪くなった。そんな僕の背中を撫でるレオス様の手に助けられ、僕はなんとか、あのおぞましい計画の全貌を二人に打ち明けた。

青い顔をしたカリム様は、重い口を開いて絞り出すように話した。

「シリアス…それでは、あの子はあいつの…っ、すまない、私は少し席を外す」
「カリム様…!」

早足で扉へ向かったカリム様へ呼びかけたが、それは閉まった扉の音に掻き消されてしまった。

「カナ、今は一人にして差し上げよう。…俺でもきっと、カナが自分を犯そうとしてる奴と一緒に、しかも半ば自主的に行ってしまったのなら、耐えられない」
「そんな…!シリアス様がアイツを受けいれたなんてこと、絶対ありません!!きっと何か事情が!」
「分かっている。しかし、冷静に見れる俺たちだからこそそう考えられるんだ。当事者であるカリム様は、シリアス様がアイツの手を取った訳じゃないと分かっていても、不安にならずにはいられないはずだ」

そう説かれて、僕は何も言えなかった。

あのときの、さらわれた先でカインと相対したときのシリアス様はとても怯えていて、それでいて悲しそうだった。哀れんでいたのだ、自身の兄の犯した罪により落ちぶれてしまったその末裔を。

(だから、ついて行こうと思った…?兄の罪に責任を感じて…)

(それだったら、なんて優しくて馬鹿な人なんだ。
きっとカリム様が自身を許したことにも引け目を感じているのだろう。
愛される資格がないなどと、考えているのだろう)

そこで僕は、以前の自分を思い出した。

レオス様に愛される自信がなくて、逃げて逃げた先には何も無かった。やっと向き合えたと思ったときにはレオス様は死にかけていて。すごく後悔した。

僕は運良くレオス様を助けることができて想いを通わせることが出来たけど、それもこれも全て、ずっと恐れていたことと向き合ってレオス様のもとへ行こうとしたからできたことだ。

自分の守りたいものや得たいものに向き合おうとしなければ、実はずっと手のひらにあったものに気付かずに、それを取りこぼしてしまうかもしれない。

その怖さは僕が一番知っている。

「…僕、シリアス様を助けたい」
「カナならそう言うと思った。けどな…今回はカナを連れていくことはできない」
「な…なんでですか!」
「さっき話してくれたカインの計画には、カナの力が必要なのだろう?そんな相手の前に、カナを連れて行けない」
「でも…!」

抗議しようと身を乗り出した僕を、レオス様がぎゅっと抱きしめた。

「カナ、分かってくれ…君をもうあんな危険には晒したくないんだ」
「レオス様…」
「カナの代わりに俺が必ずシリアス様を連れて帰る。信じて待っていてくれないか?」
「…すみません、レオス様。僕はシリアス様にどうしても言いたいことがあるんです。後からじゃダメなんです…。それに、僕だってレオス様を守りたい。危険な場所に行くなら、二人で助け合っていきたいんです…!」

信じて待つだけが愛なら、そんなのは僕には要らない。二人で助け合って守り合って、二人で帰ってきたいと思う。
懇願する僕の目を見て、レオス様は考え込んでいた。そしてその重い口を開いた。

「…本当に、カナには敵わないな。分かったよ。一緒にシリアス様を助けに行こう」
「はい!ありがとうございます!」

そうして僕らはシリアス様を救うべく動き出した。

「行きましょう!シリアス様のもとへ!」
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