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2章
最高のプレゼント
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大きな衝撃音と共に現れたのは、僕の愛しの人。
大きく肩を上下させながら、僕の名を呼んだ。
「カナリエ…!」
(レオス様だ…来てくれた…!)
まっすぐ僕を見据えて、駆け寄ってくる体に飛びつこうと手を伸ばす。
「レオスさま!」
「あぁカナ…!すまない、怖い思いをさせたね」
僕の片腕を掴んでいたライネ先輩の手を叩き落として、その両腕でしっかりと僕を包み込んでくれた。
鼻腔いっぱいにレオス様の香りを吸い込んで、知らずのうちに強ばっていた体から力が抜ける。
ずっと緊張していた筋肉は、フッと力が抜けるに伴って震えた。
片腕で僕を抱きかかえたレオス様は、鋭い視線で先輩を射抜いていた。
王家の獣人による覇気なのか、先輩はまるでとんでもない重圧に耐えられなかったかのように座り込んだ。
「ぐっ…か、カナリエ…?何をしているんだい?殿下に抱きついたりして…悪かった、怒らないからこちらにおいで?」
「ひっ」
この期に及んで、まだそんな妄言を吐くのか。まるで僕と先輩が愛し合っているかのような言い草に、さっきまでは混乱しかなかった。しかし今は、あの頬に残る痛みを思い出してしまう。
顔を背けて震える僕の耳を、レオス様がそっと塞いだ。遠くにいる先輩の声はほとんど聞こえなくなって、レオス様の低い声のみが鼓膜を震わせた。
「もう、黙れ。お前の犯した罪は極刑ものの大罪だ、罪人なんぞにカナと話す権利は無い」
「~~!~~…っ!」
「黙れと言っただろう!お前まさか、そんな汚言をカナに聞かせたのか?」
「~~!!」
「そうかそうか…決めたぞ、お前には私から、最期に最高のプレゼントをやろうじゃないか」
怒りを孕んだレオス様の言葉を静聴していた僕は、突然その視線を向けられた。先輩に向けられたものとは打って変わって優しく甘くなった視線。きっとその最高のプレゼントとやらに僕が関係するのだと思い当たって、首を傾げる。
いたずらっ子のような顔をして、レオス様が僕に耳打ちした。
「カナ、今ここで______ 」
「…え?!」
僕は自分の耳を疑った。けれど静かに目を閉じたレオス様を見て、聞き間違いじゃなかったと悟る。
(え、えぇ…?なんでそれがプレゼントに?)
よく分からないけど、別に嫌なわけでもない。
僕は覚悟を決めて、目の前の陶器のような頬を両手で包んだ。
「い、いきますよ?」
「ふっ…あぁ、いつでも」
ゆっくりと目を閉じて、顔を近づける。
すると横から悲鳴のような声が聞こえてきた。しかしレオス様に顔を固定されて、声の方に目を向けることは許されず、そのままグイッと唇がくっついた。
「あぁぁぁ…!僕の、僕のカナリエがっ…!」
「馬鹿め、カナはお前のものではない。なぁカナ?」
「え?あ、はい…僕はレオス様のもの、です」
(レオス様のもの、だって…)
なんだかむず痒い気持ちで、レオス様の胸を盾に顔を隠した。
顔の熱さが引いてから外を向くと、魂が抜けたかのような顔をした先輩がファラディスの兵士たちに拘束され、連れて行かれているところだった。
ホッとしたような拍子抜けしたような気持ちで、レオス様を見上げる。レオス様はなんだか嬉しそうな顔をして口を開いた。
「カナ…カナはカナ自身のものだ。けど君自身が、君は俺のものだと、そう言ってくれて…嬉しかった」
(それそういう意味だったの?!)
僕は僕のもの、確かにそうだ。勘違いに恥ずかしさが募って身を縮めた。
「誓うよ。この生涯をかけて、カナだけを愛してる。二年前からずっと…俺はカナだけのものだ」
「え、二年前…?どういうことですか?」
あまりの驚きに、恥ずかしさなど忘れて顔を上げた。
そこから話してくれたのは、二年前の入学式での話だった。あの頃からずっと、レオス様は僕のことを見てくれていたのだ。
感情が溢れて涙に変わり、僕の頬を濡らした。
「ずっと…?」
「あぁ、君と一緒になれるのを待ってた」
ぼろぼろと落ちる雫を拭うこともせずに、レオス様の頬に手を伸ばした。
「僕、僕もずっと大好きだったんですっ…!」
「…は」
驚いたレオス様は、僕もずっとずっとレオス様のことが好きだったと伝えると嬉しそうな顔をして僕を抱きしめた。
「で、でも…なんで?僕、レオス様の近く行ったことない…」
「番だ、と断定出来ていた訳ではない。一目惚れだったんだ、だから君が番だと確信を持った」
「じゃ、じゃあ、僕が番じゃなくても…好きでいてくれた?」
「当たり前だろう。カナがカナだから好きなんだ。番だからじゃない」
レオス様にも僕自身を好きになってもらえていたのだと知って、さっきまでの恐怖が帳消しになるほどの幸福が胸を占めた。
大きく肩を上下させながら、僕の名を呼んだ。
「カナリエ…!」
(レオス様だ…来てくれた…!)
まっすぐ僕を見据えて、駆け寄ってくる体に飛びつこうと手を伸ばす。
「レオスさま!」
「あぁカナ…!すまない、怖い思いをさせたね」
僕の片腕を掴んでいたライネ先輩の手を叩き落として、その両腕でしっかりと僕を包み込んでくれた。
鼻腔いっぱいにレオス様の香りを吸い込んで、知らずのうちに強ばっていた体から力が抜ける。
ずっと緊張していた筋肉は、フッと力が抜けるに伴って震えた。
片腕で僕を抱きかかえたレオス様は、鋭い視線で先輩を射抜いていた。
王家の獣人による覇気なのか、先輩はまるでとんでもない重圧に耐えられなかったかのように座り込んだ。
「ぐっ…か、カナリエ…?何をしているんだい?殿下に抱きついたりして…悪かった、怒らないからこちらにおいで?」
「ひっ」
この期に及んで、まだそんな妄言を吐くのか。まるで僕と先輩が愛し合っているかのような言い草に、さっきまでは混乱しかなかった。しかし今は、あの頬に残る痛みを思い出してしまう。
顔を背けて震える僕の耳を、レオス様がそっと塞いだ。遠くにいる先輩の声はほとんど聞こえなくなって、レオス様の低い声のみが鼓膜を震わせた。
「もう、黙れ。お前の犯した罪は極刑ものの大罪だ、罪人なんぞにカナと話す権利は無い」
「~~!~~…っ!」
「黙れと言っただろう!お前まさか、そんな汚言をカナに聞かせたのか?」
「~~!!」
「そうかそうか…決めたぞ、お前には私から、最期に最高のプレゼントをやろうじゃないか」
怒りを孕んだレオス様の言葉を静聴していた僕は、突然その視線を向けられた。先輩に向けられたものとは打って変わって優しく甘くなった視線。きっとその最高のプレゼントとやらに僕が関係するのだと思い当たって、首を傾げる。
いたずらっ子のような顔をして、レオス様が僕に耳打ちした。
「カナ、今ここで______ 」
「…え?!」
僕は自分の耳を疑った。けれど静かに目を閉じたレオス様を見て、聞き間違いじゃなかったと悟る。
(え、えぇ…?なんでそれがプレゼントに?)
よく分からないけど、別に嫌なわけでもない。
僕は覚悟を決めて、目の前の陶器のような頬を両手で包んだ。
「い、いきますよ?」
「ふっ…あぁ、いつでも」
ゆっくりと目を閉じて、顔を近づける。
すると横から悲鳴のような声が聞こえてきた。しかしレオス様に顔を固定されて、声の方に目を向けることは許されず、そのままグイッと唇がくっついた。
「あぁぁぁ…!僕の、僕のカナリエがっ…!」
「馬鹿め、カナはお前のものではない。なぁカナ?」
「え?あ、はい…僕はレオス様のもの、です」
(レオス様のもの、だって…)
なんだかむず痒い気持ちで、レオス様の胸を盾に顔を隠した。
顔の熱さが引いてから外を向くと、魂が抜けたかのような顔をした先輩がファラディスの兵士たちに拘束され、連れて行かれているところだった。
ホッとしたような拍子抜けしたような気持ちで、レオス様を見上げる。レオス様はなんだか嬉しそうな顔をして口を開いた。
「カナ…カナはカナ自身のものだ。けど君自身が、君は俺のものだと、そう言ってくれて…嬉しかった」
(それそういう意味だったの?!)
僕は僕のもの、確かにそうだ。勘違いに恥ずかしさが募って身を縮めた。
「誓うよ。この生涯をかけて、カナだけを愛してる。二年前からずっと…俺はカナだけのものだ」
「え、二年前…?どういうことですか?」
あまりの驚きに、恥ずかしさなど忘れて顔を上げた。
そこから話してくれたのは、二年前の入学式での話だった。あの頃からずっと、レオス様は僕のことを見てくれていたのだ。
感情が溢れて涙に変わり、僕の頬を濡らした。
「ずっと…?」
「あぁ、君と一緒になれるのを待ってた」
ぼろぼろと落ちる雫を拭うこともせずに、レオス様の頬に手を伸ばした。
「僕、僕もずっと大好きだったんですっ…!」
「…は」
驚いたレオス様は、僕もずっとずっとレオス様のことが好きだったと伝えると嬉しそうな顔をして僕を抱きしめた。
「で、でも…なんで?僕、レオス様の近く行ったことない…」
「番だ、と断定出来ていた訳ではない。一目惚れだったんだ、だから君が番だと確信を持った」
「じゃ、じゃあ、僕が番じゃなくても…好きでいてくれた?」
「当たり前だろう。カナがカナだから好きなんだ。番だからじゃない」
レオス様にも僕自身を好きになってもらえていたのだと知って、さっきまでの恐怖が帳消しになるほどの幸福が胸を占めた。
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