【一章完結】大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

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2章

静かな終

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早く行かなければ、手遅れになるかもしれない。そんな嫌な予感がしてならない。

僕とカリム様は、シェルリオンの王城の一室でライネ先輩の尋問に向かったレオス様を待っていた。
なぜ僕らは残っているのかというと、カリム様は行ったら激情が抑えられないし、僕はライネ先輩に狙われているらしくシンプルに危険だからだ。

「シリアス…」

下を向いてそう呟くカリム様は、すごく疲弊しているように見える。

番に捨てられた獣人は、廃人のようになるらしいから、今のカリム様は似たような状況なのかもしれない。

「カリム様、シリアス様は貴方のもとを離れたいと思ったわけではないと思います。大丈夫です、必ず取り戻しましょう」
「…あぁ。ありがとう、カナリエ殿」

気休めにしかならないけど、僕の言葉で少しは元気を取り戻してくれたらしい。
そんなふうに話をしていると、酷く急いだ様子のメイドが部屋の扉を叩いた。

「カリム国王様、カナリエ様!ヴァレンタイン伯爵家から急ぎ伝令が来ました!シリアス王妃の居場所が分かったかもしれないと…!」
「なんと…!」

希望の光を見つけた、という顔をしたカリム様が、その伝令書をすぐさま受け取った。そこには僕の父の字でこう書いてあった。

『国王陛下の許可のもと、ヴァレンタイン伯爵家の家宅捜査が行われた。ライネ=ヴァレンタインの部屋から、彼らの根城かと思われる場所の地図を見つけたので共有しておく』

宛て名に僕の名前が書かれたのを締めに、伝令文は綴られていた。同封された地図を覗くと、ファラディスとかつてのヴェルディアの国境付近の森に印がついていた。

「僕、レオス様呼んできます!」
「あ、あぁ…!」

手がかりを見つけたことに安心したのか固まっているカリム様に声をかけると、カリム様も持ち前の俊敏さで部屋を飛び出していった。

僕も遅れて走り出した先で、地下牢から出てきたところのレオス様に状況を伝える。そして二人で先に準備をしていたカリム様と合流し現場へ走った。


◇◇◇


慣れた手つきで馬を走らせるレオス様に必死で掴まりながら、森の中を駆け抜けた。

やがて到着したのは、森の中でひっそりと建った古びた屋敷だった。本来の家の主は数十年まえには亡くなっているのだろう。まともに管理もされていなさそうな風貌であった。

だがそれなりにしっかりとした造りだったのか、どこも崩壊していない。だからだろうか、二階にある一室の窓が破裂したように割れているのが不自然に目立っているのだ。

「レオス様、あそこ…」
「ん?あれは…不自然な割れ方だな。行ってみよう」

そうして踏み込んだ屋敷内は、恐ろしい程に静かだった。本当にここにシリアス様たちは居るのか、という疑心が生まれたものの、警戒しつつ目的の部屋の前までたどり着いた。

中に入ろうとしたレオス様を遮るように、カリム様が手を差し出した。

「待て、レオス殿。最初は私に行かせてくれ。今日ここまで不甲斐ない姿しか見せていないが、本来この中で一番力を持つのは私だ。二人は私が呼ぶまで部屋の前で待機していてほしい」

その御言葉には竜王としての威厳とシリアス様への思いの深さが滲んでいる。僕とレオス様は頷いて、一人部屋に入ったカリム様を見送った。

しかしその後すぐ、僕らは焦った声のカリム様に呼ばれた。

「シリアス…!二人とも、入ってきてくれ!!」

まさかこんなに早く呼ばれるとは思わず急いで扉を開けると、これから始まるはずだった戦闘の全てが終わったかのような風景が、僕らの目の前に広がっていた。

何かしらの力によって大爆発が起きたような、火薬で黒く染まった部屋。
その中央には、瀕死の大怪我で倒れたカインとなぜか綺麗なままの姿で横たわったシリアス様がいた。

真っ先にシリアス様に駆け寄ったカリム様は、彼の手のひらに残った赤い宝石の欠片と首元のネックレスを見て、全てを悟ったようだった。

「これは護身用に持たせていた爆撃の宝珠だ。相手の足元に投げつけるよう教えていたのに、なぜ手で…?」
「…自爆、するつもりだったんじゃ」

シリアス様は、カリムを始末するとともに自分まで殺そうとしたのだ。無傷で済んだのは、カリム様が贈り物のネックレスに密かに仕組んでいた保護魔法が発動したためらしい。
この規模の爆発を無傷で凌ぐほどの魔法を装飾物に施すなんて、竜王とはさすがの規格外さである。

なぜシリアス様がこのようなことをしたのかは、カリム様も思いつかないようだった。
おそらく、あの攫われた時の場にいた僕だけがその理由に気付いている。

(これはきっと罪滅ぼしだ)

静まり返った部屋の中で、か細い声が響いた。

「…おそろしい、やつだ…愛される、ために…死ぬと、言いやがった…」

全員がその言葉に振り返って臨戦態勢を取るも、声の主であるカインはもう息もままならないほどの重症で腕一本も動かない様子であった。それなのに、なぜか清々しいような笑っていた。

「やはり…ごほっ…俺たちが、間違って、いたのだな…」

もう喉も掠れてしまって、血を吐いている。それでもカインは穏やかに笑って、語っていた。

そこにいる男は、あのとき下卑た言葉を叫んでいた男とはまるで違っていた。

僕はほぼ無意識に彼に近付いて、治癒魔法を施していた。

「なっ、おい、カナ!そいつは黒幕だぞ!危ない!」
「こいつは『自分は間違っていた』と言ったんです。それに、このまま死に逃げするなんて許さない。ここで死なせればきっと後悔します」

そう言って再び静かになった室内に、僕の治癒魔法の光だけが煌めいていた。
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