【一部完結】大好きな獅子様の番になりたい

あまさき

文字の大きさ
24 / 29
2章

静かな終

しおりを挟む
早く行かなければ、手遅れになるかもしれない。そんな嫌な予感がしてならない。

僕とカリム様は、シェルリオンの王城の一室でライネ先輩の尋問に向かったレオス様を待っていた。
なぜ僕らは残っているのかというと、カリム様は行ったら激情が抑えられないし、僕はライネ先輩に狙われているらしくシンプルに危険だからだ。

「シリアス…」

下を向いてそう呟くカリム様は、すごく疲弊しているように見える。

番に捨てられた獣人は、廃人のようになるらしいから、今のカリム様は似たような状況なのかもしれない。

「カリム様、シリアス様は貴方のもとを離れたいと思ったわけではないと思います。大丈夫です、必ず取り戻しましょう」
「…あぁ。ありがとう、カナリエ殿」

気休めにしかならないけど、僕の言葉で少しは元気を取り戻してくれたらしい。
そんなふうに話をしていると、酷く急いだ様子のメイドが部屋の扉を叩いた。

「カリム国王様、カナリエ様!ヴァレンタイン伯爵家から急ぎ伝令が来ました!シリアス王妃の居場所が分かったかもしれないと…!」
「なんと…!」

希望の光を見つけた、という顔をしたカリム様が、その伝令書をすぐさま受け取った。そこには僕の父の字でこう書いてあった。

『国王陛下の許可のもと、ヴァレンタイン伯爵家の家宅捜査が行われた。ライネ=ヴァレンタインの部屋から、彼らの根城かと思われる場所の地図を見つけたので共有しておく』

宛て名に僕の名前が書かれたのを締めに、伝令文は綴られていた。同封された地図を覗くと、ファラディスとかつてのヴェルディアの国境付近の森に印がついていた。

「僕、レオス様呼んできます!」
「あ、あぁ…!」

手がかりを見つけたことに安心したのか固まっているカリム様に声をかけると、カリム様も持ち前の俊敏さで部屋を飛び出していった。

僕も遅れて走り出した先で、地下牢から出てきたところのレオス様に状況を伝える。そして二人で先に準備をしていたカリム様と合流し現場へ走った。


◇◇◇


慣れた手つきで馬を走らせるレオス様に必死で掴まりながら、森の中を駆け抜けた。

やがて到着したのは、森の中でひっそりと建った古びた屋敷だった。本来の家の主は数十年まえには亡くなっているのだろう。まともに管理もされていなさそうな風貌であった。

だがそれなりにしっかりとした造りだったのか、どこも崩壊していない。だからだろうか、二階にある一室の窓が破裂したように割れているのが不自然に目立っているのだ。

「レオス様、あそこ…」
「ん?あれは…不自然な割れ方だな。行ってみよう」

そうして踏み込んだ屋敷内は、恐ろしい程に静かだった。本当にここにシリアス様たちは居るのか、という疑心が生まれたものの、警戒しつつ目的の部屋の前までたどり着いた。

中に入ろうとしたレオス様を遮るように、カリム様が手を差し出した。

「待て、レオス殿。最初は私に行かせてくれ。今日ここまで不甲斐ない姿しか見せていないが、本来この中で一番力を持つのは私だ。二人は私が呼ぶまで部屋の前で待機していてほしい」

その御言葉には竜王としての威厳とシリアス様への思いの深さが滲んでいる。僕とレオス様は頷いて、一人部屋に入ったカリム様を見送った。

しかしその後すぐ、僕らは焦った声のカリム様に呼ばれた。

「シリアス…!二人とも、入ってきてくれ!!」

まさかこんなに早く呼ばれるとは思わず急いで扉を開けると、これから始まるはずだった戦闘の全てが終わったかのような風景が、僕らの目の前に広がっていた。

何かしらの力によって大爆発が起きたような、火薬で黒く染まった部屋。
その中央には、瀕死の大怪我で倒れたカインとなぜか綺麗なままの姿で横たわったシリアス様がいた。

真っ先にシリアス様に駆け寄ったカリム様は、彼の手のひらに残った赤い宝石の欠片と首元のネックレスを見て、全てを悟ったようだった。

「これは護身用に持たせていた爆撃の宝珠だ。相手の足元に投げつけるよう教えていたのに、なぜ手で…?」
「…自爆、するつもりだったんじゃ」

シリアス様は、カリムを始末するとともに自分まで殺そうとしたのだ。無傷で済んだのは、カリム様が贈り物のネックレスに密かに仕組んでいた保護魔法が発動したためらしい。
この規模の爆発を無傷で凌ぐほどの魔法を装飾物に施すなんて、竜王とはさすがの規格外さである。

なぜシリアス様がこのようなことをしたのかは、カリム様も思いつかないようだった。
おそらく、あの攫われた時の場にいた僕だけがその理由に気付いている。

(これはきっと罪滅ぼしだ)

静まり返った部屋の中で、か細い声が響いた。

「…おそろしい、やつだ…愛される、ために…死ぬと、言いやがった…」

全員がその言葉に振り返って臨戦態勢を取るも、声の主であるカインはもう息もままならないほどの重症で腕一本も動かない様子であった。それなのに、なぜか清々しいような笑っていた。

「やはり…ごほっ…俺たちが、間違って、いたのだな…」

もう喉も掠れてしまって、血を吐いている。それでもカインは穏やかに笑って、語っていた。

そこにいる男は、あのとき下卑た言葉を叫んでいた男とはまるで違っていた。

僕はほぼ無意識に彼に近付いて、治癒魔法を施していた。

「なっ、おい、カナ!そいつは黒幕だぞ!危ない!」
「こいつは『自分は間違っていた』と言ったんです。それに、このまま死に逃げするなんて許さない。ここで死なせればきっと後悔します」

そう言って再び静かになった室内に、僕の治癒魔法の光だけが煌めいていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】

ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。

みなしご白虎が獣人異世界でしあわせになるまで

キザキ ケイ
BL
親を亡くしたアルビノの小さなトラは、異世界へ渡った────…… 気がつくと知らない場所にいた真っ白な子トラのタビトは、子ライオンのレグルスと出会い、彼が「獣人」であることを知る。 獣人はケモノとヒト両方の姿を持っていて、でも獣人は恐ろしい人間とは違うらしい。 故郷に帰りたいけれど、方法が分からず途方に暮れるタビトは、レグルスとふれあい、傷ついた心を癒やされながら共に成長していく。 しかし、珍しい見た目のタビトを狙うものが現れて────?

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり

クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました

岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。 そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……? 「僕、犬を飼うのが夢だったんです」 『俺はおまえのペットではないからな?』 「だから今すごく嬉しいです」 『話聞いてるか? ペットではないからな?』 果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。 ※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。

最強の騎士団長はパン屋の青年に癒される

ゆら
BL
転生したカイは、亡くなった両親の跡を継ぎパン屋を営んでいる。最近常連になった男、ルグランジュは最強と名高い騎士団長。センチネルとして有能だが、冷酷と評されるルグランジュだったが、それを知らないカイの前では笑みを見せ──。 最強のセンチネル×パン屋の青年の、センチネルバース物語。 *大人シーン

美貌の騎士候補生は、愛する人を快楽漬けにして飼い慣らす〜僕から逃げないで愛させて〜

飛鷹
BL
騎士養成学校に在席しているパスティには秘密がある。 でも、それを誰かに言うつもりはなく、目的を達成したら静かに自国に戻るつもりだった。 しかし美貌の騎士候補生に捕まり、快楽漬けにされ、甘く喘がされてしまう。 秘密を抱えたまま、パスティは幸せになれるのか。 美貌の騎士候補生のカーディアスは何を考えてパスティに付きまとうのか……。 秘密を抱えた二人が幸せになるまでのお話。

転移先で辺境伯の跡継ぎとなる予定の第四王子様に愛される

Hazuki
BL
五歳で父親が無くなり、七歳の時新しい父親が出来た。 中1の雨の日熱を出した。 義父は大工なので雨の日はほぼ休み、パートに行く母の代わりに俺の看病をしてくれた。 それだけなら良かったのだが、義父は俺を犯した、何日も。 晴れた日にやっと解放された俺は散歩に出掛けた。 連日の性交で身体は疲れていたようで道を渡っているときにふらつき、車に轢かれて、、、。 目覚めたら豪華な部屋!? 異世界転移して森に倒れていた俺を助けてくれた次期辺境伯の第四王子に愛される、そんな話、にする予定。 ⚠️最初から義父に犯されます。 嫌な方はお戻りくださいませ。 久しぶりに書きました。 続きはぼちぼち書いていきます。 不定期更新で、すみません。

女神様の間違いで落とされた、乙女ゲームの世界で愛を手に入れる。

にのまえ
BL
 バイト帰り、事故現場の近くを通ったオレは見知らぬ場所と女神に出会った。その女神は間違いだと気付かずオレを異世界へと落とす。  オレが落ちた異世界は、改変された獣人の世界が主体の乙女ゲーム。  獣人?  ウサギ族?   性別がオメガ?  訳のわからない異世界。  いきなり森に落とされ、さまよった。  はじめは、こんな世界に落としやがって! と女神を恨んでいたが。  この異世界でオレは。  熊クマ食堂のシンギとマヤ。  調合屋のサロンナばあさん。  公爵令嬢で、この世界に転生したロッサお嬢。  運命の番、フォルテに出会えた。  お読みいただきありがとうございます。  タイトル変更いたしまして。  改稿した物語に変更いたしました。

処理中です...