30 / 30
2章
ありがとう
しおりを挟む
そうして、この長いようで短かった戦いの全てが終わりを告げた。
ライネ先輩はヴァレンタイン家からの廃籍、そして終身幽閉の刑に処された。ヴァレンタイン家は禁書関連の管理不行き届きが指摘され、警察隊に関しての全権を取り上げられ、降爵処分となった。
カインは元来我が国の者ではないため、賠償として求められた金額相当の強制労働が決まっている。その後のことは彼次第だ。
そして、僕とレオス様、ルドルフ様は、王城で釈放されたシアを待っていた。
「あれ、カナ…?」
「シア!!」
僕らが居ることに驚いた表情をしたシアに、僕は思いきり飛びついた。
「うっ…ぐすっ…シアぁ…よかった…!」
「え、えぇー…?泣きすぎだよぉ」
大泣きしながらへばりつく僕をしっかり受け止めたシアは、その優しい手で僕の頭を撫でてくれた。
すごく久々に感じる親友との会話に、今まで無意識に止めていた何かが溢れ出すように涙が止まらない。
「ありがとね、信じてくれて。カナのおかげだ」
「違うよ、シアが好かれてるからだ。みんなが君を信じているのは、君がそういう人だからだよ」
「カナ…」
ありがとう、そう小さく呟いてシアは僕をぎゅっと抱きしめた。しかしそれはものの数秒のことで、すぐにシアはスっと両手を上げた。
「っと…あんまりくっついてると、後ろの獅子様がこわーいお顔を向けてきそうだ」
「え?」
シアの体に腕を回したまま振り返ると、引きつった笑顔をしたレオス様が立っている。
「いやいや、感動の再会に水を差すわけないじゃないか、親友くん?」
「あはは!カナ、君の旦那様怖いねぇ?」
「だっ!旦那様じゃないよ!?まだ!!」
怖いを訂正しなよ、と笑われて慌てる僕をシアがからかう。僕の幸せがやっと全部帰ってきた、そう思うと胸がいっぱいになった。
するとシアが、少し緊張した面持ちで僕に耳打ちしてきた。
「ねぇねぇ、なんでルドルフ様がいるの…?」
「なんでって、そりゃ…」
そこまで言って、僕はあることを思いついた。いつもからかわれている仕返しだ。
「あー、ルドルフ様?シアが『ルドルフ様が来てくれて嬉しい、けどなんで来たんだろう?』と言ってます!なんでですかー?」
「え、ちょ、カナ!?」
真っ赤な顔をしたシアに肩を捕まれ揺さぶられるも、僕は全く反省も後悔もしていない。だって、ルドルフ様もお顔を真っ赤にして満更でもなさそうなんだ。
(少しくらい、強引に手助けしてあげてもいいよね?)
そんな僕の考えが正しいと肯定するかのように、ルドルフ様は口を開いた。
「シア殿のことを助けたいと思ったからです…無事でよかった」
「へ!?」
ふわりと笑ったルドルフ様を見て、シアは沸騰寸前だ。
そんな二人のこれからを思って、僕とレオス様は顔を見合せて笑った。
「そういえば、今回シア殿を巻き込んでしまったことを謝罪したいとのことで、カリム様たちが来ているんだ。また後日でも良いと言ってはいたが…どうする?」
「カリム様、って…砂竜王ですか!?い、今すぐ行きましょう!!」
酷く焦った様子のシアだが、これが普通の反応だ。四竜と相見えるなんてそうそう無い機会だし、それに半ば慣れてしまった僕は知らぬ間に大物になってしまったかもしれない。遠くを眺めながらそんなことを思った。
◇◇◇
王城の客間に、僕とレオス様とシア、カリム様とシリアス様が向かい合って座っていた。
緊張した面持ちのシアを真剣な表情で見据え、カリム様は話し出した。
「そなたがシア=アリエスタ殿だな。此度の件、我々の因縁に巻き込む形になってしまい申し訳ない。詫びと言ってはなんだが、何か困ったことがあれば我がファラディスの力をもって必ず私が力になると誓おう」
「そ、そんな、お詫びには値しません。ですが、その…お言葉ありがたく頂戴いたします」
恐縮しながらもしっかりと答えたシアに、カリム様は満足そうに頷いた。
「うむ。して、シア殿。それからレオス殿もカナリエ殿も。此度の件に関わっているある人物から、ひとつ申し出があってな」
「なんでございましょう?」
「お主が殺されかけたという魔獣の件だ。アレが悪さをしたと知ったフォルのやつがな、国へ招待したいと言い出しおったのだ」
その言葉を聞いて、こちら側に座っている面々は思わずギョッとした。
「フォルって…炎竜様ですか!?」
「そうだが?」
「そうだが、って!炎竜様といえば、巨大観光地フォリアの作り手にして、衆前には全く出てこないと噂の方ではありませんか…!あぁほら、カナもシア殿もショート寸前ですよ!」
レオス様が仰ったとおり、フォル様といえば四竜の中でも孤高中の孤高、そしてなんと言ってもそのカリスマ性が名高いお方だ。
(そんな方に招待された、って…)
「まぁそんなに気負わずとも良い。我らも共に行く故、安心しろ。シア殿も婚約者なり何なりを連れてきても良いとのことだったから、そこはよしなに、な」
なんだか上機嫌のカリム様は、シリアス様との仲直り以降ラブラブ度が増したそうで、そんな中飛び込んだ旅行話に浮かれているらしい。
(ま、まぁでも…レオス様と旅行は楽しみかも!)
婚約記念に旅行ということで両親には押し通すことにしよう。隣で呆けているシアの代わりにルドルフ様にも声をかけて…楽しい旅行になりそうだ。
「楽しみですね!レオス様!」
「…カナが楽しみなら、それでいいか」
微笑んで頭を撫でてくれたレオス様に、僕は顔を綻ばせる。
沢山の障害を乗り越えた先に待っていた明るい未来が、ひとつ明確な形をもって僕らの目の前に現れた。これから先のどんな幸福も、レオス様と共に噛み締めて生きていきたい。
「たくさん思い出を作ってきましょうね!レオス様!」
僕の大好きな暖かい手をぎゅっと握って、そう告げたのだった。
【魔術師の運命編 終】
ライネ先輩はヴァレンタイン家からの廃籍、そして終身幽閉の刑に処された。ヴァレンタイン家は禁書関連の管理不行き届きが指摘され、警察隊に関しての全権を取り上げられ、降爵処分となった。
カインは元来我が国の者ではないため、賠償として求められた金額相当の強制労働が決まっている。その後のことは彼次第だ。
そして、僕とレオス様、ルドルフ様は、王城で釈放されたシアを待っていた。
「あれ、カナ…?」
「シア!!」
僕らが居ることに驚いた表情をしたシアに、僕は思いきり飛びついた。
「うっ…ぐすっ…シアぁ…よかった…!」
「え、えぇー…?泣きすぎだよぉ」
大泣きしながらへばりつく僕をしっかり受け止めたシアは、その優しい手で僕の頭を撫でてくれた。
すごく久々に感じる親友との会話に、今まで無意識に止めていた何かが溢れ出すように涙が止まらない。
「ありがとね、信じてくれて。カナのおかげだ」
「違うよ、シアが好かれてるからだ。みんなが君を信じているのは、君がそういう人だからだよ」
「カナ…」
ありがとう、そう小さく呟いてシアは僕をぎゅっと抱きしめた。しかしそれはものの数秒のことで、すぐにシアはスっと両手を上げた。
「っと…あんまりくっついてると、後ろの獅子様がこわーいお顔を向けてきそうだ」
「え?」
シアの体に腕を回したまま振り返ると、引きつった笑顔をしたレオス様が立っている。
「いやいや、感動の再会に水を差すわけないじゃないか、親友くん?」
「あはは!カナ、君の旦那様怖いねぇ?」
「だっ!旦那様じゃないよ!?まだ!!」
怖いを訂正しなよ、と笑われて慌てる僕をシアがからかう。僕の幸せがやっと全部帰ってきた、そう思うと胸がいっぱいになった。
するとシアが、少し緊張した面持ちで僕に耳打ちしてきた。
「ねぇねぇ、なんでルドルフ様がいるの…?」
「なんでって、そりゃ…」
そこまで言って、僕はあることを思いついた。いつもからかわれている仕返しだ。
「あー、ルドルフ様?シアが『ルドルフ様が来てくれて嬉しい、けどなんで来たんだろう?』と言ってます!なんでですかー?」
「え、ちょ、カナ!?」
真っ赤な顔をしたシアに肩を捕まれ揺さぶられるも、僕は全く反省も後悔もしていない。だって、ルドルフ様もお顔を真っ赤にして満更でもなさそうなんだ。
(少しくらい、強引に手助けしてあげてもいいよね?)
そんな僕の考えが正しいと肯定するかのように、ルドルフ様は口を開いた。
「シア殿のことを助けたいと思ったからです…無事でよかった」
「へ!?」
ふわりと笑ったルドルフ様を見て、シアは沸騰寸前だ。
そんな二人のこれからを思って、僕とレオス様は顔を見合せて笑った。
「そういえば、今回シア殿を巻き込んでしまったことを謝罪したいとのことで、カリム様たちが来ているんだ。また後日でも良いと言ってはいたが…どうする?」
「カリム様、って…砂竜王ですか!?い、今すぐ行きましょう!!」
酷く焦った様子のシアだが、これが普通の反応だ。四竜と相見えるなんてそうそう無い機会だし、それに半ば慣れてしまった僕は知らぬ間に大物になってしまったかもしれない。遠くを眺めながらそんなことを思った。
◇◇◇
王城の客間に、僕とレオス様とシア、カリム様とシリアス様が向かい合って座っていた。
緊張した面持ちのシアを真剣な表情で見据え、カリム様は話し出した。
「そなたがシア=アリエスタ殿だな。此度の件、我々の因縁に巻き込む形になってしまい申し訳ない。詫びと言ってはなんだが、何か困ったことがあれば我がファラディスの力をもって必ず私が力になると誓おう」
「そ、そんな、お詫びには値しません。ですが、その…お言葉ありがたく頂戴いたします」
恐縮しながらもしっかりと答えたシアに、カリム様は満足そうに頷いた。
「うむ。して、シア殿。それからレオス殿もカナリエ殿も。此度の件に関わっているある人物から、ひとつ申し出があってな」
「なんでございましょう?」
「お主が殺されかけたという魔獣の件だ。アレが悪さをしたと知ったフォルのやつがな、国へ招待したいと言い出しおったのだ」
その言葉を聞いて、こちら側に座っている面々は思わずギョッとした。
「フォルって…炎竜様ですか!?」
「そうだが?」
「そうだが、って!炎竜様といえば、巨大観光地フォリアの作り手にして、衆前には全く出てこないと噂の方ではありませんか…!あぁほら、カナもシア殿もショート寸前ですよ!」
レオス様が仰ったとおり、フォル様といえば四竜の中でも孤高中の孤高、そしてなんと言ってもそのカリスマ性が名高いお方だ。
(そんな方に招待された、って…)
「まぁそんなに気負わずとも良い。我らも共に行く故、安心しろ。シア殿も婚約者なり何なりを連れてきても良いとのことだったから、そこはよしなに、な」
なんだか上機嫌のカリム様は、シリアス様との仲直り以降ラブラブ度が増したそうで、そんな中飛び込んだ旅行話に浮かれているらしい。
(ま、まぁでも…レオス様と旅行は楽しみかも!)
婚約記念に旅行ということで両親には押し通すことにしよう。隣で呆けているシアの代わりにルドルフ様にも声をかけて…楽しい旅行になりそうだ。
「楽しみですね!レオス様!」
「…カナが楽しみなら、それでいいか」
微笑んで頭を撫でてくれたレオス様に、僕は顔を綻ばせる。
沢山の障害を乗り越えた先に待っていた明るい未来が、ひとつ明確な形をもって僕らの目の前に現れた。これから先のどんな幸福も、レオス様と共に噛み締めて生きていきたい。
「たくさん思い出を作ってきましょうね!レオス様!」
僕の大好きな暖かい手をぎゅっと握って、そう告げたのだった。
【魔術師の運命編 終】
37
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
竜の生贄になった僕だけど、甘やかされて幸せすぎっ!【完結】
ぬこまる
BL
竜の獣人はスパダリの超絶イケメン!主人公は女の子と間違うほどの美少年。この物語は勘違いから始まるBLです。2人の視点が交互に読めてハラハラドキドキ!面白いと思います。ぜひご覧くださいませ。感想お待ちしております。
僕だけの番
五珠 izumi
BL
人族、魔人族、獣人族が住む世界。
その中の獣人族にだけ存在する番。
でも、番には滅多に出会うことはないと言われていた。
僕は鳥の獣人で、いつの日か番に出会うことを夢見ていた。だから、これまで誰も好きにならず恋もしてこなかった。
それほどまでに求めていた番に、バイト中めぐり逢えたんだけれど。
出会った番は同性で『番』を認知できない人族だった。
そのうえ、彼には恋人もいて……。
後半、少し百合要素も含みます。苦手な方はお気をつけ下さい。
黒豹拾いました
おーか
BL
森で暮らし始めたオレは、ボロボロになった子猫を拾った。逞しく育ったその子は、どうやら黒豹の獣人だったようだ。
大人になって独り立ちしていくんだなぁ、と父親のような気持ちで送り出そうとしたのだが…
「大好きだよ。だから、俺の側にずっと居てくれるよね?」
そう迫ってくる。おかしいな…?
育て方間違ったか…。でも、美形に育ったし、可愛い息子だ。拒否も出来ないままに流される。
病み墜ちした騎士を救う方法
無月陸兎
BL
目が覚めたら、友人が作ったゲームの“ハズレ神子”になっていた。
死亡フラグを回避しようと動くも、思うようにいかず、最終的には原作ルートから離脱。
死んだことにして田舎でのんびりスローライフを送っていた俺のもとに、ある噂が届く。
どうやら、かつてのバディだった騎士の様子が、どうもおかしいとか……?
※欠損表現有。本編が始まるのは実質中盤頃です
クズ令息、魔法で犬になったら恋人ができました
岩永みやび
BL
公爵家の次男ウィルは、王太子殿下の婚約者に手を出したとして犬になる魔法をかけられてしまう。好きな人とキスすれば人間に戻れるというが、犬姿に満足していたウィルはのんびり気ままな生活を送っていた。
そんなある日、ひとりのマイペースな騎士と出会って……?
「僕、犬を飼うのが夢だったんです」
『俺はおまえのペットではないからな?』
「だから今すごく嬉しいです」
『話聞いてるか? ペットではないからな?』
果たしてウィルは無事に好きな人を見つけて人間姿に戻れるのか。
※不定期更新。主人公がクズです。女性と関係を持っていることを匂わせるような描写があります。
少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??
和泉臨音
BL
昔から物事に違和感を感じることの多かった衛は周りから浮いた存在だった。国軍養成所で一人の少女に出会い、ここが架空の大正時代を舞台にしたバトルありの少女漫画の世界だと気付く。ならば自分は役に立つモブに徹しようと心に誓うも、なぜかヒロインに惚れるはずの当て馬イケメンキャラ、一条寺少尉に惚れられて絡め取られてしまうのだった。
※ 腹黒イケメン少尉(漫画では当て馬)×前世記憶で戦闘力が無自覚チートな平凡孤児(漫画では完全モブ)
※ 戦闘シーンや受が不当な扱いを受けるシーンがあります。苦手な方はご注意ください。
※ 五章で完結。以降は番外編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
こんにちわ〜😁
一気に読んできました😆投稿楽しみに待っています。
私もいいねをいっぱい押しました👍
日向夏様
コメントありがとうございます✨️
一気読み、いいねとっても嬉しいです💕
待ってるというお声がとっても力になります✨️
これからも頑張りますのでよろしくお願いします💪
Adam_TOKYO様
コメントありがとうございます❣️
全話10個も…!とても嬉しいです🥹💕
2章もレオスとカナリエのイチャイチャをたくさん書いていくつもりですので、楽しんでいただけると嬉しいです!
その応援にお応えできるようこれからも精進して参ります!よろしくお願いします️✨️