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2章
愛
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人生最大かと思えるようなことが発覚した後だけれど、僕らにはまだやることが残っていた。
「レオス様、そろそろシリアス様が目覚めるかもしれません。行きましょう?」
「あぁそうだな」
そう言ってレオス様は歩き出した。しかし僕は歩き出せていない。なぜかというと…
「あの、ですから…降ろしてください!」
先ほど抱き上げられた状態のまま、前腕に座らされる形で抱えられているからだ。片腕で軽々と持ち上げられている状態に納得いかない気持ちと恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。
「ふっ、そんな可愛い顔でむくれるな。冗談が過ぎたか?すまない」
「ほんとです!早く行きますよ!」
まったく、浮かれすぎだ。
僕が言えたもんではないことを考えながら、小走りで先を急いだ。
◇◇◇
こういうときこそこんなにも静寂を感じるのはなぜなのだろうか。僕の目の前にある扉の向こうには、竜王とその番がいる。
控えめな音で扉を叩くと、短い了承の声が帰ってきた。
「ふぅ…では、開けますね」
ゆっくりと開けた視界には、よく陽が当たる寝台に寝かされたシリアス様と、その手をしっかりと握るカリム様がいた。
カリム様は僕らが入ってきたことに気づいているはずだが、こちらに目もくれず微動だにしない番の顔を眺めていた。
「…ありがとう、二人とも。奴はどうだった?」
「カインは…ヴェルディアは、もう完全に消滅したと言っていいと思います。シリアス様に危害が及ぶことは無いはずです」
「そうか、良かった」
シリアス様を見つめて微笑む瞳は、まさに底なしの愛の証だ。カリム様はきっと何があろうとシリアス様を愛しているのだろう。
(本当に…助かって良かった)
「ん…」
「シリアス…!」
少し眩しそうにしながら、シリアス様がゆっくりと目を開いた。最初はまだ意識がはっきりしない様子で目を瞬かせていたが、ゆっくり起き上がって周りを見渡したとき、呆然とした表情のまま泣き出した。
「死ねなかった…」
最初は嬉しそうにしていたカリム様も、その言葉を聞いて表情を固まらせた。
「やはり、私ではだめだったか…?お前の家族を殺した私では…」
「ちが、ちがいます!私が死ねば、カリムは…!」
「私が喜ぶとでも言いたいのか?そんなわけないだろう!お前は私から番を奪おうとしたのだ…!」
「っ…!」
激情冷めやらぬカリム様は、さきほどまでと違ってシリアス様の方を見れないようだった。一方のシリアス様は顔を青くして涙を零し続けている。
僕はもう黙って見ていられなかった。
「シリアス様、貴方が生きているのは何故だと思いますか?」
「え…?」
「カリム様が貴方を御守りになったからです。自分がいなくでも貴方を守れるように、魔法をかけていたから。そしてカリム様、シリアス様がらなぜこんな選択をしたのか…さっきカインから聞いてきました」
「なに…?」
「カインとともに死ぬ事で罪を償い、カリム様に愛される資格を得ようと思ったのでしょう?死んでもずっと愛している、と。お二人の愛のかたちはすごく不器用で分かりにくいですね」
後半の言葉を聞いた二人は、揃って顔を赤く染めていた。
「それとシリアス様。あまり聞きたくはないかもしれませんが…カインはこうも言っていました。貴方の言葉を聞いて、“これが愛でなく何なんだ”と思った、と。二人の誤解を解いてほしいと僕たちに頼んできたんです。貴方の幸せを祈ったんです」
僕の言葉にハッとしたシリアス様は、どんなことを感じているだろうか。もう負い目を感じなくていいと、そう思えただろうか。
「…シリアス。お前が何を抱えていようと愛している、そう伝えただろう?お前が居なくなったら、それこそ私の最大の絶望だ。愛される資格がなんだ、そんなもの要らない。私が私の意思で、お前を愛しているのだ。どうかそれを受け入れてくれ」
「カリム…すみません、私…!カリムのことを全く考えてあげられてなかった」
カリム様は泣きながら謝るシリアス様を抱きしめた。
こうして、ようやく二人は心を通わせ合ったのだった。
「レオス様、そろそろシリアス様が目覚めるかもしれません。行きましょう?」
「あぁそうだな」
そう言ってレオス様は歩き出した。しかし僕は歩き出せていない。なぜかというと…
「あの、ですから…降ろしてください!」
先ほど抱き上げられた状態のまま、前腕に座らされる形で抱えられているからだ。片腕で軽々と持ち上げられている状態に納得いかない気持ちと恥ずかしい気持ちでいっぱいになる。
「ふっ、そんな可愛い顔でむくれるな。冗談が過ぎたか?すまない」
「ほんとです!早く行きますよ!」
まったく、浮かれすぎだ。
僕が言えたもんではないことを考えながら、小走りで先を急いだ。
◇◇◇
こういうときこそこんなにも静寂を感じるのはなぜなのだろうか。僕の目の前にある扉の向こうには、竜王とその番がいる。
控えめな音で扉を叩くと、短い了承の声が帰ってきた。
「ふぅ…では、開けますね」
ゆっくりと開けた視界には、よく陽が当たる寝台に寝かされたシリアス様と、その手をしっかりと握るカリム様がいた。
カリム様は僕らが入ってきたことに気づいているはずだが、こちらに目もくれず微動だにしない番の顔を眺めていた。
「…ありがとう、二人とも。奴はどうだった?」
「カインは…ヴェルディアは、もう完全に消滅したと言っていいと思います。シリアス様に危害が及ぶことは無いはずです」
「そうか、良かった」
シリアス様を見つめて微笑む瞳は、まさに底なしの愛の証だ。カリム様はきっと何があろうとシリアス様を愛しているのだろう。
(本当に…助かって良かった)
「ん…」
「シリアス…!」
少し眩しそうにしながら、シリアス様がゆっくりと目を開いた。最初はまだ意識がはっきりしない様子で目を瞬かせていたが、ゆっくり起き上がって周りを見渡したとき、呆然とした表情のまま泣き出した。
「死ねなかった…」
最初は嬉しそうにしていたカリム様も、その言葉を聞いて表情を固まらせた。
「やはり、私ではだめだったか…?お前の家族を殺した私では…」
「ちが、ちがいます!私が死ねば、カリムは…!」
「私が喜ぶとでも言いたいのか?そんなわけないだろう!お前は私から番を奪おうとしたのだ…!」
「っ…!」
激情冷めやらぬカリム様は、さきほどまでと違ってシリアス様の方を見れないようだった。一方のシリアス様は顔を青くして涙を零し続けている。
僕はもう黙って見ていられなかった。
「シリアス様、貴方が生きているのは何故だと思いますか?」
「え…?」
「カリム様が貴方を御守りになったからです。自分がいなくでも貴方を守れるように、魔法をかけていたから。そしてカリム様、シリアス様がらなぜこんな選択をしたのか…さっきカインから聞いてきました」
「なに…?」
「カインとともに死ぬ事で罪を償い、カリム様に愛される資格を得ようと思ったのでしょう?死んでもずっと愛している、と。お二人の愛のかたちはすごく不器用で分かりにくいですね」
後半の言葉を聞いた二人は、揃って顔を赤く染めていた。
「それとシリアス様。あまり聞きたくはないかもしれませんが…カインはこうも言っていました。貴方の言葉を聞いて、“これが愛でなく何なんだ”と思った、と。二人の誤解を解いてほしいと僕たちに頼んできたんです。貴方の幸せを祈ったんです」
僕の言葉にハッとしたシリアス様は、どんなことを感じているだろうか。もう負い目を感じなくていいと、そう思えただろうか。
「…シリアス。お前が何を抱えていようと愛している、そう伝えただろう?お前が居なくなったら、それこそ私の最大の絶望だ。愛される資格がなんだ、そんなもの要らない。私が私の意思で、お前を愛しているのだ。どうかそれを受け入れてくれ」
「カリム…すみません、私…!カリムのことを全く考えてあげられてなかった」
カリム様は泣きながら謝るシリアス様を抱きしめた。
こうして、ようやく二人は心を通わせ合ったのだった。
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