ユウタの手紙

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ユウタの手紙

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ユウタの手紙

ユウタは朝、目をこすりながら布団の中で伸びをした。
ふと目を下に向けると、枕元に小さな手紙が置かれているのを見つけた。

「え、手紙?」

手紙には『きのうのぼくから』と書かれていた。
ユウタは少し不思議な気持ちで手に取り、そっと封を開けた。

朝の光がカーテン越しに差し込み、布団やぬいぐるみをあたたかく照らしている。
「どうしてぼくに…?」と心の中でつぶやきながら、手紙を読もうとした。

【一通目の手紙】

手紙にはこう書かれていた。

「きょうは、朝ごはんをちゃんと食べた自分をほめてあげたね」

ユウタは昨日の朝を思い出した。
お皿に残さず食べたこと。
苦手な野菜も少しだけ口に入れたこと。

「ちょっとがんばれたかも」

自然に笑顔になる。
お茶をすすりながら、朝の静けさと自分の小さな達成感が胸にじんわり広がった。

ユウタの心はぽかぽかと温かく、今日もいい一日になりそうな気がした。

【二通目の手紙】

翌朝、枕元にまた手紙があった。

「きょうは、笑ったことをちゃんと覚えていた自分をほめてあげたね」

ユウタは学校での出来事を思い返した。
教室で友だちがふざけて転んだとき、思わず笑ったこと。
昼休みにジャンケンで勝ったときの、ちょっとしたうれしさ。
友だちと「おもしろいね!」と笑い合った瞬間。

「昨日より、今日も楽しかったな」

ユウタの心はあたたかく満たされた。
小さな笑顔の積み重ねが、自分を幸せにしていることに気づいた。

【三通目の手紙】

さらに翌朝、三通目の手紙があった。

「きょうは、ちょっと苦手なことに挑戦した自分をほめてあげたね」

ユウタは少しドキドキしながら読んだ。
昨日、授業で発表するのが怖かったけれど、勇気を出して手を挙げた。
言葉を間違えそうになったけれど、最後まで言えた。

「小さなことでも、挑戦した自分はすごいんだ」

そう思うと、自然に笑顔がこぼれた。
胸の奥がじんわり温かくなり、ユウタはさらに自信が湧いた気がした。

【未来の自分へ】

その夜、ユウタはふと思った。

「ぼくも未来の自分に手紙を書いてみよう!」

ペンを持ち、今日の自分の小さながんばりや、楽しかったことを書き留めた。

「朝ごはんをちゃんと食べたこと。笑ったこと。挑戦したこと。
ぜんぶ、がんばったね。」

書き終えると、少し誇らしく、でも安心した気持ちが心に広がった。
未来の自分にそっと枕元へ手紙を置き、布団に入る。

「また明日も、小さなことを積み重ねていこう」

そう思いながら、ユウタは眠りについた。

【新しい朝】

翌朝、未来の自分が手紙を読んで笑っている姿を想像して、ユウタは嬉しくなった。
些細なことでも、自分をほめることの大切さに気づいたのだ。

今日もまた、小さなことを積み重ねていこう。
自分をほめるたびに、心が少しずつ明るくなる。

ユウタは新しい一日を迎える朝の光の中で、そっと笑った。

――おわり――
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