まおう様、めんどくさい

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第3話 またか、仕方ない

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第3話 またか、仕方ない

勇者はふわっと光に包まれ、宿屋のベッドの上で目を覚ました。

「うーん……あれ、ここは……?」

布団をかぶりながら首をかしげる勇者。
その顔にはまだ、昨日トロールに踏まれた足跡がくっきり残っていた。

──そのころ、暗黒の城。

秘書が水晶玉をのぞき込みながら報告する。
「まおう様、勇者が宿屋でまた生き返りました!
 もう町を出て討伐に向かったようです!」

ソファに寝転んでいた魔王は、頭の角をポリポリかきながらあくびをした。
「えぇー、また? 人間って、死んでも寝れば治るの?」

「そんなわけありません!」

秘書はピシッと指を突きつける。
「まおう様! 今回は町ごと宿屋を破壊して、
 復活できないように妨害しましょう!」

「……めんどくさいなぁ」

そうぼやきながらも、魔王はしぶしぶ立ち上がる。
テラスに出ると、町に向かって爆裂魔法を唱えた。

ドォォンッ!

遠くの町で大きな爆発音が響く。
激しい炎と立ち上る煙に、町中の人たちはパニックに。

魔王は満足げにうなずいた。
「……よし、今日はこれで終わりだな」

「まおう様、まだ勇者が残っていますよ!」

「…はぁ~」

魔王はしかたなく水晶玉をのぞき込む。

そこには、岩山にある山道をのんきに歩く勇者の姿。
木々の間をぴょんぴょん跳ねながら、口笛を吹いていた。

勇者を見つけた魔王は、雷鳥(ライチョウ)に討伐の指示を出した。

山の空がにわかに暗くなり、ゴロゴロと雷の音が鳴りはじめた。
勇者は空を見上げて首をかしげる。

その瞬間、パチン!と空がはじけ、まぶしい光の中から巨大な鳥が現れた。
体は青白く光り、羽の先にはバチバチと電気が走っている。

「え、鳥!?」

勇者が後ずさる。

雷鳥は翼を大きく広げ、グゥグゥグェーと低い鳴き声を上げた。
バチバチと音を立てながら、羽をまるでダーツの矢のように勇者に放った。

ヒュッ──!

一本の羽が風を切り、勇者の頭めがけてまっすぐ飛んでいった。

「うわっ!」

勇者はとっさにしゃがもうとしたが、タイミングが合わず、
羽はグサッと頭のてっぺんに刺さった。

「いったぁっい!?」

勇者がジタバタしているうちに、雷鳥がくちばしを天に向ける。

バリバリッ──!

薄暗い空に稲妻(イナズマ)が走った。

次の瞬間、勇者の頭に刺さった羽にめがけて雷が落ち、
頭から全身へ、電気がドーンと走る。

「あわわわわわっ!!」

地面がビリビリと震え、振動が木々の葉をバサバサと落とした。

しばらくして、森のあちこちから焦げた匂いがただよう。

勇者は黒こげになって地面にドサリ。
頭にはまだ、ちょこんと羽が突き刺さってピクリとも動かない。

──暗黒の城。

魔王は水晶玉をのぞきながら、満足げに拍手した。
「ふふ、今度も楽勝だったな」

しかし、隣の秘書は腕を組んで目を細める。
「まおう様……また嫌な胸騒ぎがします。
 どうも、このまま終わる気がしません」

魔王は肩をすくめてソファに戻る。
「勇者、丸焦げだよ。これで明日からゆっくり出来るって」

その不穏な予感が、また次の“めんどくさい日”を呼び込むのだった。
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