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第5話 まったく、止まらん
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第5話 まったく、止まらん
洞窟の奥、静まり返った闇の中で、ひとつの光がチカチカと瞬いた。
ドワーフの町でもらったアミュレットが、ぴかぴかと光を放つ。
その光が勇者の形になった瞬間──。
「あれ? ぼく、生きてる?」
勇者は目を見開き、スライムに溶かされたはずの自分の体が元に戻っていることに気づいた。
しかし胸元のアミュレットは砕けていた。
勇者はドワーフたちの言っていたことを思い出す。
「勇者よ、このアミュレットはおぬしを守るじゃろう!」
「よし!」
勇者は拳を握りしめ洞窟を後にした。
──暗黒の城。
「まおう様! またです!」
秘書が慌てて水晶玉を突きつけた。
「今度はドワーフの作った“アミュレット”で、勇者が生き返りました!」
ベッドの上でごろりと寝返りを打ちながら、魔王はため息をつく。
「そんな都合のいいアイテムって作れるの?……もう余計なもん作って……」
秘書は手帳をパタンと閉じ、ビシッと指を立てた。
「ならば、洞窟を埋め、ドワーフの町を封鎖しましょう!
アミュレットを二度と手にできないように!」
「まぁそうなるよね」
「異論はありませんね?」
魔王はしぶしぶ手を振る。
すると、闇の霧が山の洞窟を包み、ドォォォン!という地響きと共に岩が崩れ落ちた。
かつてドワーフが静かに暮らした町は、あっという間に土の中へと飲みこまれていった。
「これで、アイテムの入手が出来なくなりましたね」
「……あ~あ、疲れちゃったなぁ」
魔王はうつ伏せのままぼやいた。
秘書はぴくりと眉を動かし、さらなる提案をする。
「ですが、勇者は砂漠地帯に向かっております。
このままでは、着実に勇者が強くなってしまいますよ。」
「うそ~あれで強くなっているの?」
「じゃあ、砂漠にいるやつ……サンド……何だっけ?」
魔王は相変わらずピリッとしない。
秘書は呆れた顔で言った。
「サンドファントムです! 砂と幻の精霊です!」
「あっそいつそいつ!おれの代わりに指示出しておいて~」
──乾ききった砂の大地。
勇者はひとり砂嵐の中を意気揚々と歩いていた。
だが、足取りは次第に重くなっていく。
太陽が照りつけ、風が砂を巻き上げて勇者にぶつかってきた。
息をするのも苦しい。
そのとき──。
風の中から、低い唸り声が響いた。
「……ウゥ……ウゥゥ……」
勇者が顔を上げると、竜巻の中から黒い影が立ち上がった。
ぼろ布をまとった影がゆらゆらと形を変え輪郭がはっきりした。
「サ、サンド……ファントム……?」
影は手を広げ、空をかき混ぜるように動かしブツブツと何かをつぶやいている。
瞬間、砂漠の空に真っ黒な雨雲が発生し、ザバァーッと豪雨が降り注いだ。
「うわぁっ!? 雨!?」
だがその雨は普通ではなかった。
砂を含んだ泥のように重くなった濁流(だくりゅう)が勇者を飲み込んだ。
勇者は必死にもがくが、濁流は容赦なく勇者の体を引きずり込んでいった。
「おっ、おぼれ……る……!」
砂と泥が混ざった水が、勇者の顔を覆い口に流れ込み、勇者は動かなくなった。
──暗黒の城。
「ふぅー……後片付けに勇者を砂漠に埋めちゃう……って感じかな?」
魔王があくびをしながらつぶやくと、秘書が腕を組む。
「まおう様、“そんなこと言ったあと”に復活してますよね?」
「え~~……今度は大丈夫だって。砂漠に埋めちゃうんだもん」
「そう言うたびに、毎回あるんですよね」
「……」
そしてまた、まおう様の“めんどくさい日”は──まだまだ終わりそうにない。
洞窟の奥、静まり返った闇の中で、ひとつの光がチカチカと瞬いた。
ドワーフの町でもらったアミュレットが、ぴかぴかと光を放つ。
その光が勇者の形になった瞬間──。
「あれ? ぼく、生きてる?」
勇者は目を見開き、スライムに溶かされたはずの自分の体が元に戻っていることに気づいた。
しかし胸元のアミュレットは砕けていた。
勇者はドワーフたちの言っていたことを思い出す。
「勇者よ、このアミュレットはおぬしを守るじゃろう!」
「よし!」
勇者は拳を握りしめ洞窟を後にした。
──暗黒の城。
「まおう様! またです!」
秘書が慌てて水晶玉を突きつけた。
「今度はドワーフの作った“アミュレット”で、勇者が生き返りました!」
ベッドの上でごろりと寝返りを打ちながら、魔王はため息をつく。
「そんな都合のいいアイテムって作れるの?……もう余計なもん作って……」
秘書は手帳をパタンと閉じ、ビシッと指を立てた。
「ならば、洞窟を埋め、ドワーフの町を封鎖しましょう!
アミュレットを二度と手にできないように!」
「まぁそうなるよね」
「異論はありませんね?」
魔王はしぶしぶ手を振る。
すると、闇の霧が山の洞窟を包み、ドォォォン!という地響きと共に岩が崩れ落ちた。
かつてドワーフが静かに暮らした町は、あっという間に土の中へと飲みこまれていった。
「これで、アイテムの入手が出来なくなりましたね」
「……あ~あ、疲れちゃったなぁ」
魔王はうつ伏せのままぼやいた。
秘書はぴくりと眉を動かし、さらなる提案をする。
「ですが、勇者は砂漠地帯に向かっております。
このままでは、着実に勇者が強くなってしまいますよ。」
「うそ~あれで強くなっているの?」
「じゃあ、砂漠にいるやつ……サンド……何だっけ?」
魔王は相変わらずピリッとしない。
秘書は呆れた顔で言った。
「サンドファントムです! 砂と幻の精霊です!」
「あっそいつそいつ!おれの代わりに指示出しておいて~」
──乾ききった砂の大地。
勇者はひとり砂嵐の中を意気揚々と歩いていた。
だが、足取りは次第に重くなっていく。
太陽が照りつけ、風が砂を巻き上げて勇者にぶつかってきた。
息をするのも苦しい。
そのとき──。
風の中から、低い唸り声が響いた。
「……ウゥ……ウゥゥ……」
勇者が顔を上げると、竜巻の中から黒い影が立ち上がった。
ぼろ布をまとった影がゆらゆらと形を変え輪郭がはっきりした。
「サ、サンド……ファントム……?」
影は手を広げ、空をかき混ぜるように動かしブツブツと何かをつぶやいている。
瞬間、砂漠の空に真っ黒な雨雲が発生し、ザバァーッと豪雨が降り注いだ。
「うわぁっ!? 雨!?」
だがその雨は普通ではなかった。
砂を含んだ泥のように重くなった濁流(だくりゅう)が勇者を飲み込んだ。
勇者は必死にもがくが、濁流は容赦なく勇者の体を引きずり込んでいった。
「おっ、おぼれ……る……!」
砂と泥が混ざった水が、勇者の顔を覆い口に流れ込み、勇者は動かなくなった。
──暗黒の城。
「ふぅー……後片付けに勇者を砂漠に埋めちゃう……って感じかな?」
魔王があくびをしながらつぶやくと、秘書が腕を組む。
「まおう様、“そんなこと言ったあと”に復活してますよね?」
「え~~……今度は大丈夫だって。砂漠に埋めちゃうんだもん」
「そう言うたびに、毎回あるんですよね」
「……」
そしてまた、まおう様の“めんどくさい日”は──まだまだ終わりそうにない。
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