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第6話 面倒すぎて困る
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第6話 面倒すぎて困る
砂漠の真ん中に、緑と光に包まれた美しいオアシスがあった。
そのほとりには白い教会が建ち、静かな聖歌が風に乗って流れていた。
教会の中央にある祭壇の上で、光がふわっと立ち上がる。
そこから現れたのは、またしてもあの勇者だった。
勇者の全身は光に覆われていたが、徐々に弱まりパッと弾けて消えた。
勇者は自分の姿を確かめる。
傷ひとつない体。汚れのない服。
祭壇の前で祈り続けていたシスターがやさしくほほえんだ。
「あなたは聖歌の祈りで蘇ったのです」
勇者はぴょこんと頭を下げ、勢いよく外へ飛び出した。
「よーし、行くぞ!」
──暗黒の城。
「まおう様、またしても勇者が生き返りました」
秘書が水晶玉を差し出すと、魔王はソファの上で頭をかかえた。
「えーっと? 今度は何?」
秘書は冷静にメモを取りながら答える。
「オアシスの教会でシスターの祈りが勇者を蘇らせたようです」
「はいはい、シスターがいるのが悪いんでしょ……。オアシスごと壊しますよ」
魔王はしぶしぶ立ち上がると、オアシスの方向に手をかざした。
ゴゴゴゴゴ……!
砂の波がオアシスを取り囲むように渦を巻き、やがて巨大な砂の柱が天を突いた。
オアシスの水はみるみる干上がり木が枯れ、教会ごと砂に沈んでいく。
「ああ~、シスターごめんなさい」
肩を落としてソファに戻る魔王に、秘書は目を細める。
「何シスターのこと気に入っているんですか」
「う……うるさいなぁ!」
そのころ、勇者は砂漠で見つけた古い塔を見上げていた。
「これが森でエルフたちが言っていた塔か」
胸を弾ませながら、勇者は塔の中へ入った。
中はひんやりしていて、古い石の階段が螺旋状に続いている。
足音がコツ、コツ、と響く。
「おっ、ここにもあった!」
階段の途中、ひときわ立派な宝箱が鎮座していた。
金色の縁取りに、キラキラと光る赤い宝石。
勇者は迷わずフタを開け中を覗き込んだ。
ギギ……バクン!!
……勇者は宝箱に食べられた?
上半身を宝箱に挟まれた勇者は手足をバタバタともがきだした。
やっとの思いで宝箱から抜け出したが、体中傷だらけになってしまった。
それもそのはず──宝箱は魔王が放った魔物、ミミックだった!?
勇者を食べ損ねたミミックは、舌の先からどろりとした液体を垂らしながら勇者を舐めまわす。
勇者はあわてて剣を振ろうとするが、舌の液体が勇者の傷口に染み込み、
ジワリと、紫の光が脈打つように広がった。
「……あれ? 体が……しびれて……」
勇者の手足がゆっくりと動かなくなり、膝がガクンと崩れた。
ミミックは満足げにパカッパカッと口を開閉している。
勇者は泡を吹いてその場に倒れ、しばらくの間、静かな砂嵐の音だけが塔に響いた。
──暗黒の城。
魔王は水晶玉をのぞき込み、にっこり笑った。
「ふっふっふ、今度こそ完璧だね。」
秘書は腕を組み、ぼそりとつぶやく。
「まおう様……たぶんまた、めんどくさいことになりますよ。」
「あーあー聞こえませんー、もう寝ますぅー」
魔王は枕を抱えてふて寝をした。
「……シスターだけ復活しないかなぁ…」
と、寝ぼけたまま魔王がつぶやく。
まおう様の“めんどくさい日”は、まだ終わらない。
砂漠の真ん中に、緑と光に包まれた美しいオアシスがあった。
そのほとりには白い教会が建ち、静かな聖歌が風に乗って流れていた。
教会の中央にある祭壇の上で、光がふわっと立ち上がる。
そこから現れたのは、またしてもあの勇者だった。
勇者の全身は光に覆われていたが、徐々に弱まりパッと弾けて消えた。
勇者は自分の姿を確かめる。
傷ひとつない体。汚れのない服。
祭壇の前で祈り続けていたシスターがやさしくほほえんだ。
「あなたは聖歌の祈りで蘇ったのです」
勇者はぴょこんと頭を下げ、勢いよく外へ飛び出した。
「よーし、行くぞ!」
──暗黒の城。
「まおう様、またしても勇者が生き返りました」
秘書が水晶玉を差し出すと、魔王はソファの上で頭をかかえた。
「えーっと? 今度は何?」
秘書は冷静にメモを取りながら答える。
「オアシスの教会でシスターの祈りが勇者を蘇らせたようです」
「はいはい、シスターがいるのが悪いんでしょ……。オアシスごと壊しますよ」
魔王はしぶしぶ立ち上がると、オアシスの方向に手をかざした。
ゴゴゴゴゴ……!
砂の波がオアシスを取り囲むように渦を巻き、やがて巨大な砂の柱が天を突いた。
オアシスの水はみるみる干上がり木が枯れ、教会ごと砂に沈んでいく。
「ああ~、シスターごめんなさい」
肩を落としてソファに戻る魔王に、秘書は目を細める。
「何シスターのこと気に入っているんですか」
「う……うるさいなぁ!」
そのころ、勇者は砂漠で見つけた古い塔を見上げていた。
「これが森でエルフたちが言っていた塔か」
胸を弾ませながら、勇者は塔の中へ入った。
中はひんやりしていて、古い石の階段が螺旋状に続いている。
足音がコツ、コツ、と響く。
「おっ、ここにもあった!」
階段の途中、ひときわ立派な宝箱が鎮座していた。
金色の縁取りに、キラキラと光る赤い宝石。
勇者は迷わずフタを開け中を覗き込んだ。
ギギ……バクン!!
……勇者は宝箱に食べられた?
上半身を宝箱に挟まれた勇者は手足をバタバタともがきだした。
やっとの思いで宝箱から抜け出したが、体中傷だらけになってしまった。
それもそのはず──宝箱は魔王が放った魔物、ミミックだった!?
勇者を食べ損ねたミミックは、舌の先からどろりとした液体を垂らしながら勇者を舐めまわす。
勇者はあわてて剣を振ろうとするが、舌の液体が勇者の傷口に染み込み、
ジワリと、紫の光が脈打つように広がった。
「……あれ? 体が……しびれて……」
勇者の手足がゆっくりと動かなくなり、膝がガクンと崩れた。
ミミックは満足げにパカッパカッと口を開閉している。
勇者は泡を吹いてその場に倒れ、しばらくの間、静かな砂嵐の音だけが塔に響いた。
──暗黒の城。
魔王は水晶玉をのぞき込み、にっこり笑った。
「ふっふっふ、今度こそ完璧だね。」
秘書は腕を組み、ぼそりとつぶやく。
「まおう様……たぶんまた、めんどくさいことになりますよ。」
「あーあー聞こえませんー、もう寝ますぅー」
魔王は枕を抱えてふて寝をした。
「……シスターだけ復活しないかなぁ…」
と、寝ぼけたまま魔王がつぶやく。
まおう様の“めんどくさい日”は、まだ終わらない。
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