まおう様、めんどくさい

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第7話 めんどくさいったらない

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第7話 めんどくさいったらない

暗く湿った塔の中で動かなくなった勇者が転がっていた。
それはミミックとの戦いで毒に冒され死亡した勇者の体だ。
ミミックがいなくなり、塔の中には静寂だけが残った。

キラキラと勇者の体が光りだした。
光はゆっくりと全体に広がり、紫がかった勇者の体がみるみる元に戻って行く。

「……あれ? ぼく、生きてる……?」

勇者は上半身を起こし、自分の体を確かめた。
すると、胸元から見覚えのある空の小瓶が落ちた。
それは、あの塔でミミックに会う前に宝箱から拾った「エルフの秘薬」だった。

「そういえば……のど乾いたから飲んじゃったんだっけ」
勇者は事前に秘薬を飲んでいたことを思い出した。
勇者はすこし照れ笑いを浮かべ、塔の裏口からそそくさと出て、
次の目的地、雪原へと歩みを進めた。

──暗黒の城。

「まおう様、まだ……生きていました。」
秘書が水晶玉を差し出すと、魔王は布団にくるまりながら顔を出した。

「え? 泡を吹いて動かなくなったじゃん!」

秘書は冷静に報告する。
「塔で拾った“エルフの秘薬”の効果だそうです。命を一度だけ蘇らせるとか。」

「エルフかぁ……無駄に長生きで知識が豊富だから余計なことするよね」
魔王はめんどくさそうに伸びをした。
「じゃあもう、森ごと消しとく?」

「そう致しましょう。」
秘書が手を打つと、魔王の背後に闇の霧が広がる。

ゴゴゴゴゴ……!
大地が震え、森の木々が黒い炎に包まれた。
緑は一瞬で灰となり、鳥たちの鳴き声が途絶えた。
エルフの村は、跡形もなく消え去った。

「はい、これでもう秘薬は作られませんね」
「……他のダンジョンにも隠してないか調べて、見つけたら壊しておいてね」
魔王はあくびをしながらソファに沈み込んだ。

──雪原。

勇者は吹きすさぶ雪の中、白い息を吐きながら歩いていた。
「へっくしょん! ズズッ」
勇者は鼻水を垂らしながら、凍りついた木々を抜けた。
雪原の向こうに塔のような氷の塊が見えてくる。

そのとき、足元がズズンと揺れた。

「え?」

雪を割って、巨大な影が現れた。
全身が氷に覆われ、角のような氷柱が肩から突き出ている。
息を吐くたび、冷気が白く広がった。

「マオウさま、ユウシャみつけた………わかった、ユウシャやる」

魔王の許可が下りたのか、オーガは咆哮を挙げると、両腕を広げ、氷の槍を次々と投げ放った。

「うわっ!」
氷の槍が飛ぶたび、空気中に氷の粒ができ、白い筋状の雲が現れた。
勇者は必死に避けるが、腕にかすっただけで一瞬にして霜が広がる。

「やばい……!」
勇者は剣を構え、勢いよく突き出し、剣がオーガの胸を突き刺した。
しかし、胸の傷口から大量の冷気が漏れ出した。

バシュウゥゥゥッ!!

白い吹雪が辺りを覆い、勇者の体は瞬く間に氷に包まれていく。
「う、うごけ……な……」
目を見開いたまま、凍りつき動かなくなった。

静寂。
雪の上には、氷像と化した勇者がひとり立っていた。

──暗黒の城。

「まおう様、“急速冷凍”が終わりました。」
秘書がメモを取りながら報告する。

魔王は布団の中から片手を出して、ココアをすすった。
「んー、まだちょっと…そうだ!」
「アイスオーガまだいる?…うん…そう…念のため凍った勇者を砕いておいて」

「……これで終わるといいですね。」
秘書がため息をつく。

「だってほら、凍った勇者はバラバラだよ、これ以上どうにもならないって」
「そう言ったあと、いつも復活してますよね」
「てへっ」
「……」

魔王はココアのカップを置き、天井を見上げてつぶやいた。
「そういえば……城にいたかわいい王女様どうなったんだろう……?」

そしてまた、“めんどくさい日”が静かに始まろうとしていた。
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