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8話 学園生活が始まりましたが…
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ついに乙女ゲームの本編、カルフェ王立魔法学園での生活が始まってしまいました。
ゲームのことを思い出してから、不安のあまり攻略対象で婚約者であるセル様に、私の知る限りの情報をお話してしまいましたが……それは果たして正しかったのでしょうか。
私、悪役令嬢ラテーナ・カルアの存在は、ゲームと同じように彼に害を与えることがないのか。
そのことが不安で不安で……そんな気持ちが拭えないまま、入学を迎えたのですが。
実際に入学してみたところ、なんというか……全然何も起こらないんですよね。
まず物語の起点となる入学式自体がトラブルで中止になり、危惧していた乙女ゲームの主人公と出会うこともなく、その他にも覚えているイベントらしいイベントも見掛けないと思ったら、そもそもセル様以外の攻略キャラの影も形もないという……。
そんな状態で、入学からはや数日が過ぎました。
さすがに不自然では……?
いえ、もちろん、それは私にとっては良いことのはずなのですが……一切何もないというのも、それはそれで困惑するというか、別の方向性で不安になるといいますか。
一体、ゲームのシナリオはどうなっているのでしょうか? 多少なりとも接点があるはずの、乙女ゲームの主人公や、他の攻略対象たちはどこにいるのでしょうか?
ただ単に私が見落としてるだけなのか、それとも……。
「ねぇ、ラテーナどこをみているの? ダメじゃないか」
「あ、せ、セル様……」
突然目の前に、金髪と青い眼でこちらを見つめる美しい顔が現れて、思わずドキッっとしてしまう。
どうやら私が悶々と考えを巡らせていたところ、それが気になったらしいセル様が私の顔を覗き込んで来たようだった。
セル様のお顔はずっと側に居ても、不意打ちで見せられるとどうしてもドキドキしてしまいますね……顔、赤くなってないかしら。
ああ、いけないそれよりも今は授業中。セル様のおっしゃるとおり授業に、もっとちゃんと集中するべきでしたね……。
「申し訳ございませんセル様、つい考え事をしておりました」
「そっか、じゃあ今度はちゃんと目を離さないでね。僕から」
「はい、もちろんです。私はセル様の婚約者として恥ずかしくないように……って、え?」
「ん、どうしたんだい、ラテーナ」
「あの、セル様、少し待ってくださいませ……」
「うん、ラテーナのためならいくらでも待つよ」
「ありがとうございます……」
セル様が待ってくださるというので、私は一旦彼が発した言葉を咀嚼しなおして、やっぱりおかしいと判断したうえで、再び口を開いた。
「あの、先程のお言葉についてなのですが」
「先程の言葉……ああ、先刻ラテーナの可愛らしいところを沢山話してあげた、アレかな? いいとも、君が望むなら何度だって僕は褒めてみせるさ」
「ち、ち、ち、違いますよ!? それにアレについては恥ずかしいから、もう止めてくださいとお願いしましたよね……?」
「うん、恥ずかしがるラテーナの姿も可愛かったから、よく覚えてるよ」
「なら、なぜその話を……」
「もしかしたら、気が変わったのかなって」
「変わりませんよ!? もう……私が言いたいのは、今の授業中におっしゃられた、目を離さないように、というアレですよ」
「ああ、そちらか……だってほら、ラテーナは僕の婚約者なんだから、当然僕だけも見てるべきだと思うんだ」
「いえ、授業中ですよ? 私がいうのもどうかと思いますが、授業中は授業にのみ集中するべきかと」
さすがにこの発言はどうかと思ったので、咎める意味を含めた強い視線で、私はセル様を見る。
対してセル様は、それに満面の笑みを浮かべてこう答えた。
「ラテーナってば真面目だね、そんなところも素敵だよ」
「セル様、ふざけないでくださいませ!!」
「怒るラテーナも可愛いね」
「っっ……もうっ」
はぁ……思えば、セル様は入学以来いつもこうでした。
何かにつけて私のことを……そう、こう、もう恥ずかしくなるような事ばかりおっしゃられて……。
確かに入学以前もそういうことはありましたが、入学した後はそれに輪をかけて酷くなったような気がするんですよね……。
言葉の件でもそうですが、セル様は基本的にクラスも選択科目も一緒で、自由時間も私に付きっ切りでいらっしゃるので、乙女ゲームに関することへ探りを入れたくても何もできない日々が続いているんですよね。
ま、まぁ一緒にいられること自体は嬉しいのですが……それでも困ることは困るわけして……。
ああ、本当にゲームの本編のシナリオはどうなってしまったのでしょうか。
私たちの今後……特にセル様は命が掛かっているのに、一体どうしたら……。
「難しい顔したラテーナもいいね、もちろん笑顔が一番好きだけども」
「セル様……!!」
ああ、せめてどうか……悪いことが起こりませんように……。
ゲームのことを思い出してから、不安のあまり攻略対象で婚約者であるセル様に、私の知る限りの情報をお話してしまいましたが……それは果たして正しかったのでしょうか。
私、悪役令嬢ラテーナ・カルアの存在は、ゲームと同じように彼に害を与えることがないのか。
そのことが不安で不安で……そんな気持ちが拭えないまま、入学を迎えたのですが。
実際に入学してみたところ、なんというか……全然何も起こらないんですよね。
まず物語の起点となる入学式自体がトラブルで中止になり、危惧していた乙女ゲームの主人公と出会うこともなく、その他にも覚えているイベントらしいイベントも見掛けないと思ったら、そもそもセル様以外の攻略キャラの影も形もないという……。
そんな状態で、入学からはや数日が過ぎました。
さすがに不自然では……?
いえ、もちろん、それは私にとっては良いことのはずなのですが……一切何もないというのも、それはそれで困惑するというか、別の方向性で不安になるといいますか。
一体、ゲームのシナリオはどうなっているのでしょうか? 多少なりとも接点があるはずの、乙女ゲームの主人公や、他の攻略対象たちはどこにいるのでしょうか?
ただ単に私が見落としてるだけなのか、それとも……。
「ねぇ、ラテーナどこをみているの? ダメじゃないか」
「あ、せ、セル様……」
突然目の前に、金髪と青い眼でこちらを見つめる美しい顔が現れて、思わずドキッっとしてしまう。
どうやら私が悶々と考えを巡らせていたところ、それが気になったらしいセル様が私の顔を覗き込んで来たようだった。
セル様のお顔はずっと側に居ても、不意打ちで見せられるとどうしてもドキドキしてしまいますね……顔、赤くなってないかしら。
ああ、いけないそれよりも今は授業中。セル様のおっしゃるとおり授業に、もっとちゃんと集中するべきでしたね……。
「申し訳ございませんセル様、つい考え事をしておりました」
「そっか、じゃあ今度はちゃんと目を離さないでね。僕から」
「はい、もちろんです。私はセル様の婚約者として恥ずかしくないように……って、え?」
「ん、どうしたんだい、ラテーナ」
「あの、セル様、少し待ってくださいませ……」
「うん、ラテーナのためならいくらでも待つよ」
「ありがとうございます……」
セル様が待ってくださるというので、私は一旦彼が発した言葉を咀嚼しなおして、やっぱりおかしいと判断したうえで、再び口を開いた。
「あの、先程のお言葉についてなのですが」
「先程の言葉……ああ、先刻ラテーナの可愛らしいところを沢山話してあげた、アレかな? いいとも、君が望むなら何度だって僕は褒めてみせるさ」
「ち、ち、ち、違いますよ!? それにアレについては恥ずかしいから、もう止めてくださいとお願いしましたよね……?」
「うん、恥ずかしがるラテーナの姿も可愛かったから、よく覚えてるよ」
「なら、なぜその話を……」
「もしかしたら、気が変わったのかなって」
「変わりませんよ!? もう……私が言いたいのは、今の授業中におっしゃられた、目を離さないように、というアレですよ」
「ああ、そちらか……だってほら、ラテーナは僕の婚約者なんだから、当然僕だけも見てるべきだと思うんだ」
「いえ、授業中ですよ? 私がいうのもどうかと思いますが、授業中は授業にのみ集中するべきかと」
さすがにこの発言はどうかと思ったので、咎める意味を含めた強い視線で、私はセル様を見る。
対してセル様は、それに満面の笑みを浮かべてこう答えた。
「ラテーナってば真面目だね、そんなところも素敵だよ」
「セル様、ふざけないでくださいませ!!」
「怒るラテーナも可愛いね」
「っっ……もうっ」
はぁ……思えば、セル様は入学以来いつもこうでした。
何かにつけて私のことを……そう、こう、もう恥ずかしくなるような事ばかりおっしゃられて……。
確かに入学以前もそういうことはありましたが、入学した後はそれに輪をかけて酷くなったような気がするんですよね……。
言葉の件でもそうですが、セル様は基本的にクラスも選択科目も一緒で、自由時間も私に付きっ切りでいらっしゃるので、乙女ゲームに関することへ探りを入れたくても何もできない日々が続いているんですよね。
ま、まぁ一緒にいられること自体は嬉しいのですが……それでも困ることは困るわけして……。
ああ、本当にゲームの本編のシナリオはどうなってしまったのでしょうか。
私たちの今後……特にセル様は命が掛かっているのに、一体どうしたら……。
「難しい顔したラテーナもいいね、もちろん笑顔が一番好きだけども」
「セル様……!!」
ああ、せめてどうか……悪いことが起こりませんように……。
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