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第38話 世のため人のためダークエルフのため
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翌日。
俺はウルフィのもとへと向かった。
うん、びっくりした。なぜなら、奴は貴族なんかよりもずっと立派な豪邸に住んでいたからだ。
城近くの超一等地。巨大な屋敷を購入し、そこを拠点として多くのダークエルフを住まわせていたのだ。
社長室にて、俺はウルフィと対峙する。
「こいつはちょいとやり過ぎじゃねえのか?」
観光課で借りてきた資料を、バンとデスクに叩きつける俺。
ウルフィは、絡ませた指に顎をのせ、余裕の笑みを浮かべていた。妖艶に足も組んでいる。スーツという衣服らしい。タイトなスカートが色っぽい。
「私たちは、真っ当な仕事をしているだけですわ」
「このままだと、おまえらが町を支配しかねない。俺たち人間と共存したければ、少しは加減してもらおうか」
「加減した結果、稼げなくなったら困りますわ。私たちも多くの仲間がいますもの。みんなで助け合って、暮らしているのですから」
「その結果、町の連中が不安になっている」
「不安がっているのは、あなただけではなくて?」
事実、そうかもしれない。だが、未来を見据えれば、民とてタダでは済まないだろう。
「それに、土地買収の際は、相場よりも高く買ってあげてますし、従業員の賃金もたくさん払っているんですよ? すーっごく、町の経済に貢献していると思うのですけど?」
「支配が終わったら、回収にかかるんだろ?」
プリメーラが言っていた。金のある企業のやり方は、とにかく金を使いまくる。賃金を上げ、価格を下げ、クーポンを配りまくって顧客を増やし、周囲の同業者を壊滅させる。
完全な独占が成功したあと、じっくりゆっくり価格を戻して、資金の回収にかかる。ウルフィのやろうとしていることは、まさにそれなのだ。
「あらあら、そんなことはしませんわぁ。――仮にそうだとしても、なにか問題があるのですか?」
美しき笑顔の裏側に、邪悪さが垣間見えるような気がした。
「町の人が困る」
「だったら、ベイルさんも同じことをして、私共に対抗したらいかがですか?」
現状、ウルフィのやっていることは、ラングリードの法律上、悪いことではない。だが、その法律を利用して、国民を支配しようとしているのだ。見逃すことはできない。
「このままだと、国の方でも対策を練ることになる。譲歩しておいた方が、ダークエルフのためにもなるかもしれないぜ」
「ご自由にどうぞ。こちらも精一杯企業努力をさせてもらいますので」
――引く気はないということか。
「話し合っても無駄……か」
「ふふ、悪いことをしているつもりはございませんわ。ラングリードのために、質の良いサウナを提供しているだけですもの」
俺はギリッと奥歯を噛みしめる。
「……ひとつだけ言っておく。この国の法律として、緊急時には、全サウナを解放するのはわかっているな」
俺には、国を守る義務がある。サウナのある店は、有事の際にのみ、勇者である俺の指示に従わなければならない。
これは民の使命だ。例えいかなる理由があっても、俺のサウナを邪魔することは許されない。
「心得ておりますわ」
「人間を……ラングリードのサウナーを舐めるなよ。この町は、俺が守る。勝手な真似はさせねえからな――」
俺はウルフィのもとへと向かった。
うん、びっくりした。なぜなら、奴は貴族なんかよりもずっと立派な豪邸に住んでいたからだ。
城近くの超一等地。巨大な屋敷を購入し、そこを拠点として多くのダークエルフを住まわせていたのだ。
社長室にて、俺はウルフィと対峙する。
「こいつはちょいとやり過ぎじゃねえのか?」
観光課で借りてきた資料を、バンとデスクに叩きつける俺。
ウルフィは、絡ませた指に顎をのせ、余裕の笑みを浮かべていた。妖艶に足も組んでいる。スーツという衣服らしい。タイトなスカートが色っぽい。
「私たちは、真っ当な仕事をしているだけですわ」
「このままだと、おまえらが町を支配しかねない。俺たち人間と共存したければ、少しは加減してもらおうか」
「加減した結果、稼げなくなったら困りますわ。私たちも多くの仲間がいますもの。みんなで助け合って、暮らしているのですから」
「その結果、町の連中が不安になっている」
「不安がっているのは、あなただけではなくて?」
事実、そうかもしれない。だが、未来を見据えれば、民とてタダでは済まないだろう。
「それに、土地買収の際は、相場よりも高く買ってあげてますし、従業員の賃金もたくさん払っているんですよ? すーっごく、町の経済に貢献していると思うのですけど?」
「支配が終わったら、回収にかかるんだろ?」
プリメーラが言っていた。金のある企業のやり方は、とにかく金を使いまくる。賃金を上げ、価格を下げ、クーポンを配りまくって顧客を増やし、周囲の同業者を壊滅させる。
完全な独占が成功したあと、じっくりゆっくり価格を戻して、資金の回収にかかる。ウルフィのやろうとしていることは、まさにそれなのだ。
「あらあら、そんなことはしませんわぁ。――仮にそうだとしても、なにか問題があるのですか?」
美しき笑顔の裏側に、邪悪さが垣間見えるような気がした。
「町の人が困る」
「だったら、ベイルさんも同じことをして、私共に対抗したらいかがですか?」
現状、ウルフィのやっていることは、ラングリードの法律上、悪いことではない。だが、その法律を利用して、国民を支配しようとしているのだ。見逃すことはできない。
「このままだと、国の方でも対策を練ることになる。譲歩しておいた方が、ダークエルフのためにもなるかもしれないぜ」
「ご自由にどうぞ。こちらも精一杯企業努力をさせてもらいますので」
――引く気はないということか。
「話し合っても無駄……か」
「ふふ、悪いことをしているつもりはございませんわ。ラングリードのために、質の良いサウナを提供しているだけですもの」
俺はギリッと奥歯を噛みしめる。
「……ひとつだけ言っておく。この国の法律として、緊急時には、全サウナを解放するのはわかっているな」
俺には、国を守る義務がある。サウナのある店は、有事の際にのみ、勇者である俺の指示に従わなければならない。
これは民の使命だ。例えいかなる理由があっても、俺のサウナを邪魔することは許されない。
「心得ておりますわ」
「人間を……ラングリードのサウナーを舐めるなよ。この町は、俺が守る。勝手な真似はさせねえからな――」
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