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3.まんまるおめめの天使
しおりを挟む「...レイリア、分かったな」
「...はい、父上。」
回想に思いを馳せていつまでも返事をせず呆けていた俺を訝しげに見ていたハミルトン公爵は苛立ったように語気を強める。
後ろには、涙がこぼれ落ちる寸前のジルバードがこちらを見つめていた。
父上はさっさと踵を返し豪奢な扉の向こうへと足音を遠のかせた。俺の様子を伺うように見つめてくるジルバードを一瞥して、俺はため息をひとつついた。
その後、俯いて涙をこらえる5歳児には特に話しかけたりせず自分も自室へと足を動かし、ゆっくりと今後について考える必要があった。
「もうよい、下がれ。部屋の前で待機していろ」
部屋の隅で並ぶ侍女たちに向ける。
深く礼をした後静かに部屋から出るのを見届けてからやっと深いため息をついた。
「どうしたものかな」
転生した、というよりも前世の記憶が戻った身としてはなんだか不思議な気分だ。
けれど、この胸の高鳴りはどうしたって抑えられなかった。
「本物の、ジルバード...天使みたいだったな」
ふわふわの黒髪は少しくせっ毛でできるなら頭を突っ込んで吸い込みたいくらいだった。まん丸の翡翠色の瞳は涙でキラキラ輝いていて上目遣いがたまらない。
あの瞳に光が入らなくなり、身体は長年の虐待により目を覆いたくなるほど無惨な傷跡が無数に残る。
手入れされない黒髪もバサバサになってしまうなど考えたくもない。
けどなと思う。
過干渉しすぎてもしなさすぎでも殺されてしまう可能性はある。何せジルバードは惨すぎる虐待をしてくる相手にすら依存してしまう男の子だ。
ここで優しく優しく甘やかしたりしたらズブズブの依存状態になり何かの拍子にサクッと殺されてしまうかもしれない。
「よし、距離を取りすぎず取らな過ぎず、虐待はしない」
アシェルが来てからジルバードがどうなるのかはまだ分からないがその時の状況によってアシェルとの関わり方を考えるべきだろう。
健気で、謙虚で、太陽のように朗らかなアシェル、
善の部分だけで構成されたようなキャラだが、全く嫌味なところがない、というのも俺はなんだか好きになりきれなかった。
この作品の登場人物もみなアシェルに陶酔していたが唯一ジルバードだけはアシェルに何の興味もないようだったのが少し誇らしい。
さすがは俺のジルバードだ、見る目がある。
ジルバードは兄に構われたくてアシェルを何度も犯すが、彼が興奮していたのはアシェルにではなく、自分をやっと視界に入れてくれたレイリアに対して興奮していたのだ。
重くて、寂しくてどうにかレイリアに構って欲しかったジルバードが最後に感じた幸せが、初めてレイリアと手を繋げたことだったなんて。
ナイーブになりそうな気持ちを奮い立たせて次の授業に備えるためにたちあがった。
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