前世を思い出したけど推しの義弟が最恐のヤンデレラスボスだったので俺が幸せにしてみせます

柊 らんか

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4.ハミルトンの権威

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「これは、これは、レイリア様。お待ちしておりましたわ!今日から歴史学の講師を務めます、ボルド・クラレンスと申します。以後お見知りおきを」

 自室から出て学習室に向かうさなか、前からやってきた中年の女が目の前に立ちはだかり口を開く。ゴテゴテしたドレスを持ち上げカーテシーを見せた。
 昨日までの講師は、礼儀がなっておらず解雇にした。
 礼儀がなっていないのは、目の前の女もであるが。

「……」
「レイリア様?」

「…お前、誰の許可を得て口を開いているんだ?」


 挨拶をする際に高位貴族がまず先に挨拶を述べ、促されてからやっと頭を上げ挨拶を許される。


「...っは、大変、申し訳ありません」

「それと、言ったな。お待ちしておりましただと?この私にもっと早く来いと催促しているのか?」

「っいえ、!滅相もないことであります。ご不快にさせてしまったこと、お詫び申し上げます」

「貴女のような無作法な者に何を教わるというのだ?」

「どうかお許しくださいませ、レイリア様...」

「貴女に、名前を呼ぶのを許可した記憶がないのだが、もしかしたら貴女は脳に異常があるのかもしれないな」


 女の顔面は蒼白で、異常な程に震える指先を握りしめ俯いた。


「おい、夫人がお帰りだ。ついでに街医者も紹介してさしあげろ」
「はい、仰せのままに」
「ちょ、ちょっと腕を掴まないでくださいまし、ちょっと、」

 後ろに控えていた侍女が数人で腕をとり、半ば強引に歩かせる。

「夫人、ここは貴女の屋敷では無いことは、その頭でも理解できるか?黙って歩けるようにこれから家のものが手を施すのもやぶさかではないが、必要だろうか」

「い、いいえ、ハミルトン公爵令息様。お手を煩わせるわけには、まいりませんわ...」


 自室に戻るために踵を返す。どうせ歴史学など全て頭に入っているが体裁のため講師がつけられる。
 もう少しゆっくり現状を整理したいと思っていたため、この時間は有意義に使おうと決意した。

「はぁ、」

 タイを少し弛めながらつい溢れてしまった溜息をハッとして押しこめる。


 前世ではもちろんこんなふうに暴君のごとき態度ではなかったし記憶が戻った今、他人にここまで偉そうにするのもどうかとは思う。


 けれどもハミルトン公爵家の長男たるもの、まず第一にどんな人間にも舐められないこと。絶対的な権力を全面に出すことが何より大事になってくる。



 まず、この国にはハミルトン公爵家以外に公爵家は存在しない。つまり、王族を除いてどんな貴族よりも貴い身分にあるということだ。



 ハミルトン公爵家は元を辿れば王族の一員だったが時代を経て臣下となった。多くの鉱山の保有、権限、財政管理、魔法連盟の全権限をもち、金銀の貿易にも関与している。



 王家は、ハミルトン公爵家には強く出られない。

 権力の均衡を保つため、他高位貴族は権限の一部を取り上げるべきだと何度も主張したが国王はハミルトン公爵、もといレオニード・ハミルトンを恐れ何も手出しすることは出来なかった。 

 レオニードを敵に回して王家が保たれるはずがないのだから仕方の無いことである。   




 異議を申し立てた他高位貴族はレオニードに取引の打ち切りを仄めかされると手のひらを返したように大人しくなり全てを手にしているレオニードを今更どうにかするすべも無くなってしまということだ。

 我が父親ながら、実に策士であり、そこまで登り詰めるほどの圧倒的な素質があった。 


 幼い頃から何をしてもトップに登り詰め、人を人とも思わないその無慈悲さが彼をここまで大きくさせた。
 そしてゆくゆくはその全てを受け継ぐ自分もまた完璧を強いられることとなった。

 父親であるレオニードは息子である自分も手中の駒以外の何者でもなかったが、自分の素質を完全に受け継ぎ何でもそつなくこなす俺を認めているのか、ある程度の権威と権限を持つ事を許された。

 この家は、レオニードとレイリアの言うことは絶対であり、この家でなくともこの国規模で見たとてまた然りであるり。

 誰もが公爵家の人間に平伏し、
 公爵と小公爵のひと言で黒は白となり、白は黒となる。

 低位貴族など、まず人生でお目にかかれない、高位貴族ですらレオニードと言葉を交わす機会などそうそうないのが現実だ。平民など言わずもがな王族と並ぶ神話レベルの存在なことだろう。


「ジルバードは、何してるんだろうか…」

 元々地方の弱小貴族生まれのジルバードはいくら5歳といえど、ハミルトン公爵家の存在くらいは耳に入れたことがあるだろう。
 残酷で無慈悲と名高いレオニード、その長男レイリアもまた残忍で冷酷な性格の持ち主だというのは貴族なら誰でも知る話である。


「怖かっただろうな あんなに震えていたくらいだ」


 こぼれ落ちそうなほど大きな瞳をうるうるさせてほっぺたをもごもご動かしていたジルバードを思い出す。


 可愛いの権化のような子どもだったが、ハミルトン公爵家の後継としてのプログラムに追われ、暫くは弟に構う時間は無さそうだ。

 特に積極的に関わる気もないので別によいが、暫くは様子を伺うことにしようと息を吐いた。


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