【完結】クビになった転生神子♂、仕様がないので元護衛の伴侶探しを手伝ってやる

夏ノ宮萄玄

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10.天啓

 ヴェルは今、確か二十四歳だったか。三十二歳の俺よりもかなり年下だけど、多分前世の享年も、三十五歳だった俺よりずっとずっと若そうな気がする。護衛をしてもらっていた時年齢よりも落ち着いて見えていたのは、かなり気を張っていたからなのかもしれないな。

 異世界が孤独で寂しいというのなら、奇跡的に出会った同郷の若人の未来の為に。延長して一時くらい心の安定を図る手伝いをしてあげてもいいか。仕事とはいえ、命懸けで護衛をしてもらっていた訳だし。面倒な権力者に狙われてると知っているにも関わらず、心配してこうして追いかけてきてくれたのだし。

 これからも俺を守ってくれるらしいが、以前とは違い一人での護衛は比ぶべくもなく大変な労働となるだろう。貯めておいた給金から護衛代を払えばいいのか? 捨ててなくてよかった。相場程度支払えるかは分からないが。

 などと、衝撃にさらされ回らない頭で考える。

 神子時代の作られた性格とは違い素の俺は性格がよくないし、一緒にいてもつまらないとすぐに分かる。諸々で、そう遠くない内に俺の御守をするのが嫌になるさ。

 それでもって、「神子様をお守りしたかった……。けれど、もう疲れたんです」と憔悴するヴェルに「私がなんとかしてあげる」と言葉を掛ける優しい女性か現れて……。な、ドラマ的(?)な展開に突入するはずだ……。
 あ、俺も守備範囲なら女性だけでなく男性でもいいのか。ならば候補も倍! うん、いける。外界に出て、魅力的な人々と触れ合う機会も増えるだろうし、同郷パワーもそう続くまい。
 適度なところでフェードアウトして、誰かいい感じの人にヴェルをバトンタッチしよう。

 まあその辺りはちょっと横に置いとくとして。

「……ヴェル。何かこれ……魔法がかかってないだろうか?」

 俺の左手の薬指からは、なぜか結構な魔力を感じられた。

「あ、はいっ! ラトゥエル様のお体を外敵からお守りする魔法をかけております!」
「そっ……か。凄いな、ありがとう……?」

 マジか。
 手を背後に回し、指輪を外してみる。――外れた。流石に、一度はめられたら外れない呪いの指輪的な機能はないらしい。これを外せるならば、晴れて俺を現世に繋ぎとめる物はなくなる。時が来たら、ポケットの毒薬でひっそりと死のう。何て思考を巡らせながら指輪を指にはめ直す。

 いや。でも、待て?
 ヴェルはこの国の重要人物の護衛に任命され強さも折り紙付きだし。顔も選考基準だったのか? というくらい端正な顔立ちをしている。それほどスペックが高ければ引く手数多だろうけれど。肝心なのは、相手がヴェルの異世界での孤独を癒せるのか? ということ。本当俺なんて選ばなくてもな。というかここにいるのが俺でごめんな?

 依然恥じらうヴェルを見ながらぼんやりと頭を働かせていると、ポンッと閃いた。……天啓だ。

 ――そうだ。これならいける。

「ヴェル。一緒に生きるって、具体的に何か予定はあるのか?」

 俺の質問に赤みの引いてきた顔できょとんとするヴェル。その顔を見ていたら、そういえば、とまた一つ新たな疑問が湧いてきた。

「というかヴェル、騎士の仕事はどうしたんだ?」
「辞めてきました!」

 清々しいな。もう、俺にはどうしようもできないからそれもまあ、置いておこう。

「ん~……、何をしましょう。お金はそこそこ持ってきているんですが……」
「――それなら。他の元日本人を探してみないか?」
「あ、いいですね。楽しそうです! でも、どうやって探しましょう?」

 日本語で何か叫んだら集まりますかね? あ、「お米のありかを知ってる人~」とかどうですか? なんて楽しそうに案を出すヴェル。飽くなき米への執着心を垣間見た。俺も食べられるなら食べたいが。

 内心にやりとする。先程の閃きとは、これのことだ。元日本人を探し出す。そしてヴェルの孤独は俺以外の元日本人に埋めてもらう。それなら条件もバッチリ。俺達という転生者が存在するんだ。他にも一人や二人や三人……いや百人くらいいてもおかしくはないな。これで後任(?)の問題は大丈夫だろう。

「うん、それもいいけど。できればこっそりの方がいいかな?」

 一応追われているかもしれない身だし。もう衆目にさらされたくはない。

「う~ん、前世が……、とか聞く訳にもいかないですしねぇ」

 俺は、日本でいう所謂“お見合いおばさん”になるぞ。もうひと頑張りだ。できれば早く見つかってくれよお相手の方。

 最悪、まだ俺が嫌われてなくて、他の元日本人も見つからなかったなら。もっと嫌われる言動をとって、ヴェルから離れてもらえばいいし。無理なら、目を盗んで自殺。もうこれでよし。ひょっとしたら、意外と現地の人間でいい人が見つかるかもしれないし。そこは臨機応変にいこう。

 教会騎士として働ける立ち居振る舞いと戦闘能力。一見冷たそうな綺麗な顔をいい意味で裏切る人懐っこさ。元日本人が女性でも男性でも、すぐに魅了してくれるはずだ。うんうん。

 バッシャーーーーン。打ち寄せた波が大きかったのか、心なしか強めに立った水音が激励のようにも思えた。

 ああ、そうだ。

「念のため、ラトゥエル呼びは止めてくれないか。それで……、シズマとでも呼んでくれ」
「――っはい! じゃあオレは、コウダイ、でお願いします!」
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