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エピローグ
しばしの話し合いの結果。今から、異国への定期船が出ている港を目指すことになった。夕方の便に可能であれば乗り、無理ならその近くの宿に泊まろうと。
言葉についてはヴェル――いや広大くんは、周辺の国々数カ国語を学校で勉強していたらしいし。俺も外国の医学書を読んだり、国賓を診る時に様々な言語で会話したりと仕事で使っていたのでそう不自由はしないだろう。
しかしまさか、生き延びる為の逃亡経路を考える羽目になるとはな……。
サアアアァァァーーーー。ザザアアアァァァーーーー。
一波瀾あったというのに。すぐそこにある海は素知らぬ顔をしてただただ静かな波の音を響かせていた。
それはそうとして。俺にはまだ彼に聞きたいことがあったんだった。
「そういえば、広大くんはどうして俺の居場所が分かったんだ?」
「もしもの時の為、静真さんの魔力で居場所が分かるように、GPS擬きを作っていたんです! 魔力が消失しても、指輪に込めたオレの魔力で追跡できますので安心してくださいね!」
事後承諾ですみません。だけど、この世界物騒だから心配で。何て言って、てへへと照れ笑いしている。
はあ、何か気が抜ける。今までは護衛だからギリ職務の範囲内だったかもしれないが……。
でも、なるほど。魔力が完全に消失してからなら、指輪を外せばもう広大くんに追われる心配はない訳だ。
そして移動するにあたって、さっき話し合ったとあることを実行に移してもらうことになった。
「……懐かしいな」
肩につく程度の、色が金から黒に変化した己の髪を指で引っ張る。二人とも変装することにしたのだった。
広大くんの銀髪も結構珍しいし、同じく黒髪に変化させていた。彼も今日強引に仕事を辞めてきたみたいだし、捜索されている可能性もあるので一応の処置だった。
「はい。黒もよくお似合いです」
「魔法ありがとう。広大くんも似合ってるよ黒髪」
「です、かね?」
首の後ろで一つに結ってある変化させた黒髪を、胸の前に持ってきて指でいじっている。
「それからこれですね」
続いて広大くんが差し出してきたのは眼鏡だった。自作の道具らしくこれを掛けると他人からは黒い目に見えるらしい。流石に目の色を変えるのは怖いので……と言われた。
掛けてみて不具合はないかとの問に大丈夫だと答える。けれど。
「どこか安全な場所に着いたら外しましょうね。黒い目もお似合いですが、静真さんの青い目、オレ好きなんです」
と少し寂しそうに言われた。
この国は金髪も多いが、黒髪も多い。目は黒、茶、灰色辺りが多いか。ともかくこれで二人とも人込みに紛れられることだろう。
「じゃあ、行きましょうか」
港には転移魔法で行くことになっている。
「失礼、します」
「よろしく」
緊張が隠せていない声でそう予告されたので、肩に鞄を掛けて待つ。目の前に立つ広大くんの両腕がぎこちなく俺の背に回されて、俺も彼の腰に腕を回した。そんなに緊張するかな?
この体勢なら転移後に敵からの攻撃があったりしても、体と魔法の防御壁で護衛対象を守ることができ。そのまま素早く別の場所に転移も可能だから、ということなのか護衛との転移体勢はいつもこんな風だった。
今までにも、広大くんが護衛の時に一緒に転移させてもらったことがあるんだけどな。
彼のがっしりした腕の中で思う。
本当に、今日こんな決着を迎えることになるとは思ってもいなかった。
早くこの命を終わらせたくて。この辺の海なら人が少なくていいのでは、何て思いで計画した漠然とした旅。
なのに、今のこの微妙に納得しがたい展開。それは主にこの青年のせいでもあるので。今世のファーストキスも奪われたし、仕返しに気持ちのすれ違いは訂正しなくてもいいだろう。
「……あの、静真さん」
「どうかした?」
降ってくる密やかな声に上を向く。
「これから、たくさん静真さんのお話を聞かせてくださいね。オレもいっぱい話しますから」
「……うん」
話すのは苦手だけど、聞き役の方はできるだろうから。早く飽きて次の相手を見つけて、まあ若人は幸せになってくれればいいんじゃないだろうか。
肩越しにわずかに覗く海はいつの間にか黄昏の色を帯び始め、水面には淡い光を映し出している。本当に嫌になるくらい美しい。俺は何とも言えない気分になり彼の胸元に顔を寄せ目を伏せた。
無力になった俺がこの世界でどのような余生を送るのか。それはまだ誰も知ることはない。
言葉についてはヴェル――いや広大くんは、周辺の国々数カ国語を学校で勉強していたらしいし。俺も外国の医学書を読んだり、国賓を診る時に様々な言語で会話したりと仕事で使っていたのでそう不自由はしないだろう。
しかしまさか、生き延びる為の逃亡経路を考える羽目になるとはな……。
サアアアァァァーーーー。ザザアアアァァァーーーー。
一波瀾あったというのに。すぐそこにある海は素知らぬ顔をしてただただ静かな波の音を響かせていた。
それはそうとして。俺にはまだ彼に聞きたいことがあったんだった。
「そういえば、広大くんはどうして俺の居場所が分かったんだ?」
「もしもの時の為、静真さんの魔力で居場所が分かるように、GPS擬きを作っていたんです! 魔力が消失しても、指輪に込めたオレの魔力で追跡できますので安心してくださいね!」
事後承諾ですみません。だけど、この世界物騒だから心配で。何て言って、てへへと照れ笑いしている。
はあ、何か気が抜ける。今までは護衛だからギリ職務の範囲内だったかもしれないが……。
でも、なるほど。魔力が完全に消失してからなら、指輪を外せばもう広大くんに追われる心配はない訳だ。
そして移動するにあたって、さっき話し合ったとあることを実行に移してもらうことになった。
「……懐かしいな」
肩につく程度の、色が金から黒に変化した己の髪を指で引っ張る。二人とも変装することにしたのだった。
広大くんの銀髪も結構珍しいし、同じく黒髪に変化させていた。彼も今日強引に仕事を辞めてきたみたいだし、捜索されている可能性もあるので一応の処置だった。
「はい。黒もよくお似合いです」
「魔法ありがとう。広大くんも似合ってるよ黒髪」
「です、かね?」
首の後ろで一つに結ってある変化させた黒髪を、胸の前に持ってきて指でいじっている。
「それからこれですね」
続いて広大くんが差し出してきたのは眼鏡だった。自作の道具らしくこれを掛けると他人からは黒い目に見えるらしい。流石に目の色を変えるのは怖いので……と言われた。
掛けてみて不具合はないかとの問に大丈夫だと答える。けれど。
「どこか安全な場所に着いたら外しましょうね。黒い目もお似合いですが、静真さんの青い目、オレ好きなんです」
と少し寂しそうに言われた。
この国は金髪も多いが、黒髪も多い。目は黒、茶、灰色辺りが多いか。ともかくこれで二人とも人込みに紛れられることだろう。
「じゃあ、行きましょうか」
港には転移魔法で行くことになっている。
「失礼、します」
「よろしく」
緊張が隠せていない声でそう予告されたので、肩に鞄を掛けて待つ。目の前に立つ広大くんの両腕がぎこちなく俺の背に回されて、俺も彼の腰に腕を回した。そんなに緊張するかな?
この体勢なら転移後に敵からの攻撃があったりしても、体と魔法の防御壁で護衛対象を守ることができ。そのまま素早く別の場所に転移も可能だから、ということなのか護衛との転移体勢はいつもこんな風だった。
今までにも、広大くんが護衛の時に一緒に転移させてもらったことがあるんだけどな。
彼のがっしりした腕の中で思う。
本当に、今日こんな決着を迎えることになるとは思ってもいなかった。
早くこの命を終わらせたくて。この辺の海なら人が少なくていいのでは、何て思いで計画した漠然とした旅。
なのに、今のこの微妙に納得しがたい展開。それは主にこの青年のせいでもあるので。今世のファーストキスも奪われたし、仕返しに気持ちのすれ違いは訂正しなくてもいいだろう。
「……あの、静真さん」
「どうかした?」
降ってくる密やかな声に上を向く。
「これから、たくさん静真さんのお話を聞かせてくださいね。オレもいっぱい話しますから」
「……うん」
話すのは苦手だけど、聞き役の方はできるだろうから。早く飽きて次の相手を見つけて、まあ若人は幸せになってくれればいいんじゃないだろうか。
肩越しにわずかに覗く海はいつの間にか黄昏の色を帯び始め、水面には淡い光を映し出している。本当に嫌になるくらい美しい。俺は何とも言えない気分になり彼の胸元に顔を寄せ目を伏せた。
無力になった俺がこの世界でどのような余生を送るのか。それはまだ誰も知ることはない。
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