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第5話
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「春っ!大丈夫!?怪我とかしてない? 」必死で心配をしてくれる彼に私は言った。「怪我って……そんなんしとらんよ」「そっか、ならもう帰ろう」僕はホッとしながらそう言うと「そうじゃね。帰ろ」春はニコッと白い歯を見せて笑いながら言う。幸せだ。春の笑顔にはいつも癒される。そんな余韻に浸っている僕の幸せタイムはそんなに長くは続かなかった。「おい、ヒーロー気取り大概にせぇや」佐川が僕達の目の前に立ちはだかる。大ピンチにもかかわらず僕は意外と冷静にいた。なぜならここはコンビニの駐車場ですぐそこには店員が二人もいる。これで安全でなかったら何が安全なのかと言いたくなるほど、万全の態勢が整っている、はずだった。「お疲れっす、先上がります」先ほどの研修中の店員がそう言いながら自動ドアを開けて出てきた。すぐに店の脇に止めてある原付バイクにまたがってどこかへと行ってしまった。誤算だ。だけど、まだ店長がいる。僕はおもむろに店内へと目を向けた、そこには僕達とそんなに変わらない年にみえる女性店員と仲良さそうに話している中年親父の姿があった。「終わった。どうしよう……」さっきまでのクールなキャラから一変していつもの僕に戻っていた。そんな僕の動揺を見抜いたのか、佐川達は僕を高い位置から見下ろしながら言ってくる。「おい、何黙り込んでんだよ情けねぇなお前本当に付いてんのかよ! 」付いているかと聞かれて僕は咄嗟に答えていた。「付いてないよ、何も」顔をさすりながらそう答えた僕を見て佐川達は言葉を失っていた。春はどこか気まずそうな顔をしながら僕を見ている。冷たい空気が辺りを包み、僕が何もリアクションが無いことに不安感を覚えだした頃、佐川達は何か言いたそうな顔をしながらも互いを見合いながら首を各々横に振って車へと歩いていった。少しボソッとした声だったけど僕には、はっきりと聞こえた。「呆れてなんも言えねぇ」「そっすね、どっか抜けてますよあいつ」「どっかネジ吹っ飛んでるっすね」佐川達は口々にそう言うと足早に車に乗り込みすぐにバカうるさい音楽を垂れ流しながら去っていった。何だかよく分からないうちにトラブルは過ぎ去っていった。僕は何か気の利いたことでも言おうと春の方へ顔を向けた。すると、無言で立ち尽くしていたと思ったら、春は急にしゃがみ込んでしまった。
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