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番外編〜クチナシの約束〜
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「かなはね、おおきくなったら"ぷりんせす"になりたいの。だから、うーちゃんは"おうじさま"になってね!」
「ぼくがおうじさまなら、かなちゃんは、ぼくのはなよめさんになるんだよ?」
「いいよ! かな、うーちゃんのはなよめさんになる!」
あの頃の華奈ちゃんは、『かなはぷりんせすになる!』って口癖のようにいつも言っていた。
ディ◯ニー映画を見て影響されたらしく、靴下もパンツもハンカチも、身の回りの物はだいたいがプリンセスで固めてある華奈ちゃん。
だから、あの言葉に深い意味など無かったのだと思う。
でも俺は、あの時からずっと華奈ちゃんは俺の花嫁になるものだと思って過ごしてきたんだよ。
帰りの園バスを待つ間、二人で手を繋いで、園庭の隅に植えられたクチナシの木を見ながら華奈ちゃんが言った言葉。
甘ったるい芳香を放つ、純白の花嫁みたいな色の花の横で君が言ったんだ。
とは言え、所詮は子供の時の口約束。
いつか華奈ちゃんが心変わりするのは当たり前だと思ってた。
それなのに――
『うーちゃん手つないで』
朝も帰りも園バスに乗る時は、必ず手を繋いでいた俺達。
一度だけ華奈ちゃんが登園を渋って泣いた日も、俺が迎えに行って手を繋げば、君は大人しくバスに乗ったんだよ。
あの時、この子のそばにずっといたい、この子をずっと守りたいって幼心に思ったんだ。
小学生の頃も、何か学校で不安になる事がある度に、華奈ちゃんは必ず手を繋いでってお願いしてきたの覚えてる?
あの顔でおねだりされると、つい何でも聞いてしまうんだよ。
『うーちゃんギュってして』
中学校に上がると、部活もクラスも離れ離れになって、なかなか学校で顔を合わせるのが難しくなった俺達。
放課後俺の家に来ては、『寂しいからギュってして』って華奈ちゃんによくおねだりされたね。
あの頃急に華奈ちゃんは、人前では俺の事を『桃井君』って呼ぶようになったんだよね。
と同時に、『華奈ちゃん』『うーちゃん』って呼ぶのは、二人だけの時にしよう? って上目遣いで言われたのをよく覚えてる。
あれはすごく新鮮だったけど、少しだけ寂しい気持ちにもなったんだ。
『うーちゃんキスして』
俺と同じ高校に行きたいからと、志望校のランクを一つアップした華奈ちゃん。
周りが驚くような努力で見事合格を勝ち取った日、頑張ったご褒美にってキスをねだられたんだ。
想像以上に柔らかい唇に、心臓が口から飛び出るほど胸が高鳴った。
でもカッコ悪いところを見せたくなくて、必死に君の前では平静を装っていたの、華奈ちゃん知らないでしょ?
『うーちゃんエッチして』
高三の夏、グループみんなでプールに行った帰り道、桃色に頬を染めた華奈ちゃんが、俺のTシャツの裾を引っ張って言った言葉。
俺の水着姿を見ていたら、もう我慢の限界で苦しいと言われたけど、それはこっちの台詞――
途中のコンビニで避妊具を買って、速攻で部屋に連れて行った。
華奈ちゃんの気持ちは、あの頃から何ひとつ変わってない。
だったら、俺もその言葉に全力で応えるだけ。
君の笑顔がいつだって見たいから。
年を追うごとに、どんどん綺麗になっていく君に置いていかれないよう、俺だって必死なんだよ。
『うーちゃんとエッチしないと、受験勉強に全然身が入らないの』
週に何回もあの可愛い顔でおねだりされるから、流石にこれには参ったけど。
「詩君は大学は県外かしら? 優秀だもんね」
高三の秋、お裾分けの葡萄を華奈ちゃんの家に届けた際、華奈ちゃん母からこんな事を言われた。
「いえ、僕は県内の国立を第一志望に考えています」
「あらそうなの? それなら華奈も喜ぶわ。大学は別だと思うけど、これからも仲良くしてね」
「華奈ちゃんとはずっと一緒にいるので、それはお任せしてください」
「なんだかプロポーズみたいで、おばさん照れちゃうわぁ」
「そう思っていただいて大丈夫です」
あの時、華奈ちゃんが不在で良かった。
鼻血を出しそうな勢いで興奮するおばさんを、口止めするのも宥めるのにもかなり苦労したから。
俺の中では、華奈ちゃんはもう家族と同等……違うな、とっくにそれ以上の存在なんだ。
だから、世間一般で言う『付き合ってる』とか『彼氏彼女』って言うカテゴリに当てはめるのは、俺達の関係性ではちょっと違うと思っていて。
だって、周りの『付き合った、別れた』『元カノ、今カノ』そんな話題にはいい加減辟易してたから。
それに、華奈ちゃんからも『彼女にして』って言われた事なかったし。
でもそれは、俺達の間に少しだけ認識のズレが生じていたんだね。
日曜日、家の駐車場で自転車のメンテナンスをしていた時。
見知らぬ赤い車が華奈ちゃんの家の前に停まった。
誰だろう?
疑問符が浮かぶと同時に、内藤家の玄関がガチャリと音を立てる。
中から出てきたのは、いつも通り……いや、いつも以上に着飾った華奈ちゃんの姿だった。
よく見ると、運転席に座っているのは同級生の佐々木だ。
何でアイツと?
一度目が合った華奈ちゃんは、気まずそうに視線を逸らし、次に俺を見る事はなかった。
これはお仕置きしないといけないのかな。
だって、とっくに君は俺のものだろう?
あの切長で魅力的な瞳に映るのは俺だけでいい。
俺の華奈ちゃん。
君は、俺だけの花嫁になるんだから――
「ぼくがおうじさまなら、かなちゃんは、ぼくのはなよめさんになるんだよ?」
「いいよ! かな、うーちゃんのはなよめさんになる!」
あの頃の華奈ちゃんは、『かなはぷりんせすになる!』って口癖のようにいつも言っていた。
ディ◯ニー映画を見て影響されたらしく、靴下もパンツもハンカチも、身の回りの物はだいたいがプリンセスで固めてある華奈ちゃん。
だから、あの言葉に深い意味など無かったのだと思う。
でも俺は、あの時からずっと華奈ちゃんは俺の花嫁になるものだと思って過ごしてきたんだよ。
帰りの園バスを待つ間、二人で手を繋いで、園庭の隅に植えられたクチナシの木を見ながら華奈ちゃんが言った言葉。
甘ったるい芳香を放つ、純白の花嫁みたいな色の花の横で君が言ったんだ。
とは言え、所詮は子供の時の口約束。
いつか華奈ちゃんが心変わりするのは当たり前だと思ってた。
それなのに――
『うーちゃん手つないで』
朝も帰りも園バスに乗る時は、必ず手を繋いでいた俺達。
一度だけ華奈ちゃんが登園を渋って泣いた日も、俺が迎えに行って手を繋げば、君は大人しくバスに乗ったんだよ。
あの時、この子のそばにずっといたい、この子をずっと守りたいって幼心に思ったんだ。
小学生の頃も、何か学校で不安になる事がある度に、華奈ちゃんは必ず手を繋いでってお願いしてきたの覚えてる?
あの顔でおねだりされると、つい何でも聞いてしまうんだよ。
『うーちゃんギュってして』
中学校に上がると、部活もクラスも離れ離れになって、なかなか学校で顔を合わせるのが難しくなった俺達。
放課後俺の家に来ては、『寂しいからギュってして』って華奈ちゃんによくおねだりされたね。
あの頃急に華奈ちゃんは、人前では俺の事を『桃井君』って呼ぶようになったんだよね。
と同時に、『華奈ちゃん』『うーちゃん』って呼ぶのは、二人だけの時にしよう? って上目遣いで言われたのをよく覚えてる。
あれはすごく新鮮だったけど、少しだけ寂しい気持ちにもなったんだ。
『うーちゃんキスして』
俺と同じ高校に行きたいからと、志望校のランクを一つアップした華奈ちゃん。
周りが驚くような努力で見事合格を勝ち取った日、頑張ったご褒美にってキスをねだられたんだ。
想像以上に柔らかい唇に、心臓が口から飛び出るほど胸が高鳴った。
でもカッコ悪いところを見せたくなくて、必死に君の前では平静を装っていたの、華奈ちゃん知らないでしょ?
『うーちゃんエッチして』
高三の夏、グループみんなでプールに行った帰り道、桃色に頬を染めた華奈ちゃんが、俺のTシャツの裾を引っ張って言った言葉。
俺の水着姿を見ていたら、もう我慢の限界で苦しいと言われたけど、それはこっちの台詞――
途中のコンビニで避妊具を買って、速攻で部屋に連れて行った。
華奈ちゃんの気持ちは、あの頃から何ひとつ変わってない。
だったら、俺もその言葉に全力で応えるだけ。
君の笑顔がいつだって見たいから。
年を追うごとに、どんどん綺麗になっていく君に置いていかれないよう、俺だって必死なんだよ。
『うーちゃんとエッチしないと、受験勉強に全然身が入らないの』
週に何回もあの可愛い顔でおねだりされるから、流石にこれには参ったけど。
「詩君は大学は県外かしら? 優秀だもんね」
高三の秋、お裾分けの葡萄を華奈ちゃんの家に届けた際、華奈ちゃん母からこんな事を言われた。
「いえ、僕は県内の国立を第一志望に考えています」
「あらそうなの? それなら華奈も喜ぶわ。大学は別だと思うけど、これからも仲良くしてね」
「華奈ちゃんとはずっと一緒にいるので、それはお任せしてください」
「なんだかプロポーズみたいで、おばさん照れちゃうわぁ」
「そう思っていただいて大丈夫です」
あの時、華奈ちゃんが不在で良かった。
鼻血を出しそうな勢いで興奮するおばさんを、口止めするのも宥めるのにもかなり苦労したから。
俺の中では、華奈ちゃんはもう家族と同等……違うな、とっくにそれ以上の存在なんだ。
だから、世間一般で言う『付き合ってる』とか『彼氏彼女』って言うカテゴリに当てはめるのは、俺達の関係性ではちょっと違うと思っていて。
だって、周りの『付き合った、別れた』『元カノ、今カノ』そんな話題にはいい加減辟易してたから。
それに、華奈ちゃんからも『彼女にして』って言われた事なかったし。
でもそれは、俺達の間に少しだけ認識のズレが生じていたんだね。
日曜日、家の駐車場で自転車のメンテナンスをしていた時。
見知らぬ赤い車が華奈ちゃんの家の前に停まった。
誰だろう?
疑問符が浮かぶと同時に、内藤家の玄関がガチャリと音を立てる。
中から出てきたのは、いつも通り……いや、いつも以上に着飾った華奈ちゃんの姿だった。
よく見ると、運転席に座っているのは同級生の佐々木だ。
何でアイツと?
一度目が合った華奈ちゃんは、気まずそうに視線を逸らし、次に俺を見る事はなかった。
これはお仕置きしないといけないのかな。
だって、とっくに君は俺のものだろう?
あの切長で魅力的な瞳に映るのは俺だけでいい。
俺の華奈ちゃん。
君は、俺だけの花嫁になるんだから――
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