2 / 3
勇者の生まれた日
しおりを挟む
この世界は脆い。幼い頃、私はそんなことを思っていた。
酷く不安定な世の構造に、アンバランスな貧富の格差。些細なことで終わる命の軽さ。全てが拙く、そこに重さは無く、ただ漠然とした自分だけがそんな世界で立っている。
私には生への活力というものが欠けていた。本来、人は生きるために必死になるはずだ。けれど私は、ただ身体が人よりも頑丈で死にづらいだけで、積極的に生きようとはしてこなかった。暇だから、生きていた。
「ねぇ。これ、食べる?」
「…………? なんで?」
「だって、食べないと死ぬよ? ほら、体力が2しか無いし」
そんな、生きているだけの私に、彼は声をかけてきた。
その人は体力がどうのと、訳の分からないことを言っていた。でも、差し出されたパンは貴重な食料なので受け取る。きっと、彼は頭がおかしいのだろうと思った。
その男の子は、シスというらしい。彼は私がパンを頬張るのを見て、にこりと笑った。どうしてそんな顔をするのかと尋ねると、彼は嬉しそうに声をあげた。
「いや、君は食べるのが好きなんだと思ってね。だって、パンを食べた瞬間、体調がすぐに良くなったからさ」
「よく、分からない。私、食べるのが好きなの?」
「まぁ餓死寸前だったし、何でも美味しく感じるってのもあるかも」
「……おい、しい」
今まで、食べ物に対して味を感じようなど考えもしなかった。ただ、栄養があるかどうか。食べられるかどうか、それだけだった。私は初めて、美味しいという意味を知った。
「……うん。とっても、美味しかった。ありがとう、シス」
「なら良かった。じゃあね、セロ。今度は餓死する前に何か食べなよ」
「……セロって、誰のこと?」
「え、君のことだけど? ステータスにそう書いてあるから」
「私、セロって名前なの?」
「た、ぶん……? 今までステータスの名前が違ったことは無いから、君はセロで間違いないと思うよ」
その時、私は初めてこの世界に立てたような気がした。名を知り、生きるための活動をして、その行為に様々な感情を感じる。私はようやく、生きるということを覚えたのだった。
それからの私は、シスからこの世界について教えて貰う毎日だった。私は彼の後ろを付いて回り、彼と暮らすことを選んでいた。
食べられる植物や、格安で食べられる料理。子供でも稼ぐ方法と、身を休める寝床の作り方。シスは何も知らない私に、何でも教えてくれた。彼と過ごす日々は、今までの生活より何倍も輝いて見えた。生きることが、楽しいと思えた。
「セロは人よりも能力値が高いね。レベルのステータス上昇率も高い。僕とは比べものにならないよ」
「そうなんだ……それって、凄いこと?」
「凄いよ! 僕はこうやって数値を見るしか出来ないから……セロが羨ましいよ」
「ふーん……そういうものなんだ」
シスは私のことをしきりに褒める。それはとても嬉しいことだ。でも、私としては生きるための知識を持っている点や、無知な私に才能があると教えてくれる彼の方が何倍も凄いと思う。けれど、彼は自分の価値を認めようとしない。
「僕は見るだけで、何にも出来ないからさ……腕っ節だってないし、特別な才能だって特に無い。ただ、人より少し見えるものが多いだけだ」
「…………」
胸の奥が痛んだ。どうして、彼は自分を蔑むのだろう? 私なんて、生きる気力も無かった屍だったのに。そんな私を、シスは人間にしてくれた。本能ではなく、心から生きたいと、そう思わしてくれた。
彼が自分を卑下しないようにするには、どうすればいいのだろう。彼には、ずっと笑っていてほしい。そんな顔をしないでほしい。ずっとずっと、私のために傍で支えてほしい。
私だけのために、生きてほしい。
「ねぇシス。ご飯、食べさせて」
「自分で食べなよ。急にどうしたのさ」
「疲れた。食べさせてくれないなら、このまま寝る」
「えぇ……? もう、しょうがないなぁ」
そうして、私はもう一度生きることを捨てることにした。自発的に生きようとしない。シスに生活の全てを委ねて、彼が居ないと生命活動が滞るようにした。そうすれば、シスはずっとずっと私のために生きてくれる。シスが自分の価値を認めないのなら、私の才能なんて腐ってしまえば良い。彼の居ない世界なんて、必要無いから。シス無しでは、私の全てが無意味になってしまえば良い。
「シス。髪と身体洗って」
「シス。一緒に寝て」
「シス。服着せて」
「シス」
「シス」
「シス」
彼は困ったような顔をしながらも、決して私の要求を断ることはしなかった。必ず、私のお願いを聞いてくれる。私のことを第一に考えてくれる。私のためにその身を使ってくれる。私のために。私のために。私のために。
「ふふっ……♡」
ゾクゾクした。段々と、彼無しでは生きていけなくなる自分にも、シスがこんなどうしようもない私のために世話を焼いてくれるのも。その全てが、快感だった。
そのためには、私は何だって出来た。私が強くなって、彼の言う才能のある人間として花開けば、それを生かすために必要なシスもまた、同じくらい価値のある人間なのだと言えるから。
私は覚え立ての快楽に酔って、歪な関係を続けた。それが多分、私の初めの過ちだった。
「セロ、少しお願いがあるんだ。この『破魔の石』ってアイテム、取ってきてくれないか? もちろん、お金は払うからさ」
「別にお金は要らない。それくらい、すぐに取ってきてあげる。何に必要なの?」
「えっと……ごめん、今は話せないかな。上手くいくかも分からないし」
「……そっか。ならいい。でもその代わり、後で何でも言うこと聞いてね」
「出来ることならね。じゃあ、よろしく頼むよ」
シスが珍しく、私に危険な仕事をお願いしてきた。彼は私を私利私欲で使うことは無かったので、そんな彼がとても気になった。
でも、私は何でもという言葉ばかり気にして、その変化を見逃した。今でも少し、そのことは後悔している。シスを独占するという私の夢は、私の与り知らぬところで破壊されてしまったのだから。
「少し出掛けるね。日が暮れる前には戻るから、お昼は何か食べてきて」
「……やだ。シスが食べさせて」
「ごめん。晩ご飯は絶対一緒に取るからさ。今日だけ、我慢してよ」
「分かっ、た……いってらっしゃい」
ずきんと、頭が痛んだ。今まで、シスの時間はその殆どを私が独占していた。それがこれからも続くと思っていたのに。彼はあっさりと、私との時間以外を選んでしまった。
それが一度だけだったらまだ良かった。それから不定期に、彼は何処かへ出掛けるようになった。
それは、朝早くから。それは、お昼が終わった後に。それは、彼の仕事が終わった後、家に帰る前に。私の日々から少しづつ、シスが居なくなっていった。
焦燥感はあった。でも、過度に干渉してシスに嫌われたなら、私は生きていけない。だから、彼が何処へ行っているのか気になっても、それを調べることはなかった。
だから……あれは、本当に偶然だった。
「今日はこの仕事をお願い。簡単な仕事だから、すぐに終わると思うよ」
「うん。終わったら早めに帰る」
「今日、僕は休みだから、仕事が終わったらゆっくりしようか。お昼、何が食べたい?」
「……! シスの作るものなら何でも。肉だと嬉しい」
「そっか。じゃあ、市場で良さそうなものを見ておくよ」
いつもと同じ日々。金銭にも余裕の出来てきた私達は、休養を罪悪感無く取れるくらいにはなっていた。その日も偶々、お互いにほとんど仕事が無い日だった。
「……え? 取り消しになった?」
「えぇ、すみません。なので、今回は違約金だけお支払いさせて頂きます」
そんな仕事も偶然、依頼主が突然のキャンセルをしたために無くなった。私はたった数十分で借りていた宿屋に戻ることになり、上機嫌で部屋へ戻った。
そこにシスの姿は無かった。買い出しに行ったのだと思い、市場を歩く。人混みに潰されそうになりながら散策したが、どこにも彼の姿はなかった。聞けば、彼はここに来ていないそうだった。
「……何処、行ったんだろ」
部屋で待っていれば、そのうちシスは帰ってくるだろう。だが、もし……彼が危険な眼に遭っていたら? もし、私が見過ごしたせいでシスが居なくなってしまったら? 私はもう、二度と立ち上がることは出来ないだろう。
「仕方ない。そう、これは仕方ないこと」
溢れる不安を解消するため、私はもう一度シスの痕跡を辿ることにした。彼が出掛けてから、それほど時間は経っていない。まだ、魔力の残滓が残っているかもしれない。
念入りに調べると、すぐに彼の魔力を発見した。どうやら、彼は市場とは反対側へ行ったらしい。しかし、その方向には畑や孤児院など、もはや私達の生活には無縁の場所ばかりだ。一体、何をしにいったのだろう?
ほとんど見えなくなった痕跡を辿り、私はシスを探した。彼を連れ帰ってから、この胸のざわめきを晴らすため、うんと甘えることにしよう。今日はシスがなんと言おうと、絶対に離さない。そう思うと、俄然やる気が出るというものだった。
そして、見つけた。人気の少ない湖の畔で、彼が誰かと居るのを。
「ありがとうございます、シスさん。おかげで、少しづつ神聖術が使えるようになってきました」
「僕は何もしてないって。ただ、少しアドバイスをしただけ。そこから頑張ったのは、全部ユリの成果だよ」
「えへへ……じゃあ、そういうことにしておきます。なら、シスさん。頑張った私に、何かご褒美はないのですか?」
「よしよし……良く頑張ったね。とても偉いよ、ユリ」
「…………♡」
それは、黒髪の少女だった。馴れ馴れしくも私のシスに身体を預け、私のシスを誑かしていた。全くもって許されることではない。心が冷え切っていき、心の奥から憎悪が滲み出るのが分かった。
それは私の光だ。それは私の意義だ。それは私の理由だ。それは私の全てだ。それを奪おうとしたんだ。どうなったとしても、文句は言えないだろう。
「……シス? 何、してるの?」
私は飛びかかりそうになるのを必死に抑えながら、二人の前に歩み出たのだった。
酷く不安定な世の構造に、アンバランスな貧富の格差。些細なことで終わる命の軽さ。全てが拙く、そこに重さは無く、ただ漠然とした自分だけがそんな世界で立っている。
私には生への活力というものが欠けていた。本来、人は生きるために必死になるはずだ。けれど私は、ただ身体が人よりも頑丈で死にづらいだけで、積極的に生きようとはしてこなかった。暇だから、生きていた。
「ねぇ。これ、食べる?」
「…………? なんで?」
「だって、食べないと死ぬよ? ほら、体力が2しか無いし」
そんな、生きているだけの私に、彼は声をかけてきた。
その人は体力がどうのと、訳の分からないことを言っていた。でも、差し出されたパンは貴重な食料なので受け取る。きっと、彼は頭がおかしいのだろうと思った。
その男の子は、シスというらしい。彼は私がパンを頬張るのを見て、にこりと笑った。どうしてそんな顔をするのかと尋ねると、彼は嬉しそうに声をあげた。
「いや、君は食べるのが好きなんだと思ってね。だって、パンを食べた瞬間、体調がすぐに良くなったからさ」
「よく、分からない。私、食べるのが好きなの?」
「まぁ餓死寸前だったし、何でも美味しく感じるってのもあるかも」
「……おい、しい」
今まで、食べ物に対して味を感じようなど考えもしなかった。ただ、栄養があるかどうか。食べられるかどうか、それだけだった。私は初めて、美味しいという意味を知った。
「……うん。とっても、美味しかった。ありがとう、シス」
「なら良かった。じゃあね、セロ。今度は餓死する前に何か食べなよ」
「……セロって、誰のこと?」
「え、君のことだけど? ステータスにそう書いてあるから」
「私、セロって名前なの?」
「た、ぶん……? 今までステータスの名前が違ったことは無いから、君はセロで間違いないと思うよ」
その時、私は初めてこの世界に立てたような気がした。名を知り、生きるための活動をして、その行為に様々な感情を感じる。私はようやく、生きるということを覚えたのだった。
それからの私は、シスからこの世界について教えて貰う毎日だった。私は彼の後ろを付いて回り、彼と暮らすことを選んでいた。
食べられる植物や、格安で食べられる料理。子供でも稼ぐ方法と、身を休める寝床の作り方。シスは何も知らない私に、何でも教えてくれた。彼と過ごす日々は、今までの生活より何倍も輝いて見えた。生きることが、楽しいと思えた。
「セロは人よりも能力値が高いね。レベルのステータス上昇率も高い。僕とは比べものにならないよ」
「そうなんだ……それって、凄いこと?」
「凄いよ! 僕はこうやって数値を見るしか出来ないから……セロが羨ましいよ」
「ふーん……そういうものなんだ」
シスは私のことをしきりに褒める。それはとても嬉しいことだ。でも、私としては生きるための知識を持っている点や、無知な私に才能があると教えてくれる彼の方が何倍も凄いと思う。けれど、彼は自分の価値を認めようとしない。
「僕は見るだけで、何にも出来ないからさ……腕っ節だってないし、特別な才能だって特に無い。ただ、人より少し見えるものが多いだけだ」
「…………」
胸の奥が痛んだ。どうして、彼は自分を蔑むのだろう? 私なんて、生きる気力も無かった屍だったのに。そんな私を、シスは人間にしてくれた。本能ではなく、心から生きたいと、そう思わしてくれた。
彼が自分を卑下しないようにするには、どうすればいいのだろう。彼には、ずっと笑っていてほしい。そんな顔をしないでほしい。ずっとずっと、私のために傍で支えてほしい。
私だけのために、生きてほしい。
「ねぇシス。ご飯、食べさせて」
「自分で食べなよ。急にどうしたのさ」
「疲れた。食べさせてくれないなら、このまま寝る」
「えぇ……? もう、しょうがないなぁ」
そうして、私はもう一度生きることを捨てることにした。自発的に生きようとしない。シスに生活の全てを委ねて、彼が居ないと生命活動が滞るようにした。そうすれば、シスはずっとずっと私のために生きてくれる。シスが自分の価値を認めないのなら、私の才能なんて腐ってしまえば良い。彼の居ない世界なんて、必要無いから。シス無しでは、私の全てが無意味になってしまえば良い。
「シス。髪と身体洗って」
「シス。一緒に寝て」
「シス。服着せて」
「シス」
「シス」
「シス」
彼は困ったような顔をしながらも、決して私の要求を断ることはしなかった。必ず、私のお願いを聞いてくれる。私のことを第一に考えてくれる。私のためにその身を使ってくれる。私のために。私のために。私のために。
「ふふっ……♡」
ゾクゾクした。段々と、彼無しでは生きていけなくなる自分にも、シスがこんなどうしようもない私のために世話を焼いてくれるのも。その全てが、快感だった。
そのためには、私は何だって出来た。私が強くなって、彼の言う才能のある人間として花開けば、それを生かすために必要なシスもまた、同じくらい価値のある人間なのだと言えるから。
私は覚え立ての快楽に酔って、歪な関係を続けた。それが多分、私の初めの過ちだった。
「セロ、少しお願いがあるんだ。この『破魔の石』ってアイテム、取ってきてくれないか? もちろん、お金は払うからさ」
「別にお金は要らない。それくらい、すぐに取ってきてあげる。何に必要なの?」
「えっと……ごめん、今は話せないかな。上手くいくかも分からないし」
「……そっか。ならいい。でもその代わり、後で何でも言うこと聞いてね」
「出来ることならね。じゃあ、よろしく頼むよ」
シスが珍しく、私に危険な仕事をお願いしてきた。彼は私を私利私欲で使うことは無かったので、そんな彼がとても気になった。
でも、私は何でもという言葉ばかり気にして、その変化を見逃した。今でも少し、そのことは後悔している。シスを独占するという私の夢は、私の与り知らぬところで破壊されてしまったのだから。
「少し出掛けるね。日が暮れる前には戻るから、お昼は何か食べてきて」
「……やだ。シスが食べさせて」
「ごめん。晩ご飯は絶対一緒に取るからさ。今日だけ、我慢してよ」
「分かっ、た……いってらっしゃい」
ずきんと、頭が痛んだ。今まで、シスの時間はその殆どを私が独占していた。それがこれからも続くと思っていたのに。彼はあっさりと、私との時間以外を選んでしまった。
それが一度だけだったらまだ良かった。それから不定期に、彼は何処かへ出掛けるようになった。
それは、朝早くから。それは、お昼が終わった後に。それは、彼の仕事が終わった後、家に帰る前に。私の日々から少しづつ、シスが居なくなっていった。
焦燥感はあった。でも、過度に干渉してシスに嫌われたなら、私は生きていけない。だから、彼が何処へ行っているのか気になっても、それを調べることはなかった。
だから……あれは、本当に偶然だった。
「今日はこの仕事をお願い。簡単な仕事だから、すぐに終わると思うよ」
「うん。終わったら早めに帰る」
「今日、僕は休みだから、仕事が終わったらゆっくりしようか。お昼、何が食べたい?」
「……! シスの作るものなら何でも。肉だと嬉しい」
「そっか。じゃあ、市場で良さそうなものを見ておくよ」
いつもと同じ日々。金銭にも余裕の出来てきた私達は、休養を罪悪感無く取れるくらいにはなっていた。その日も偶々、お互いにほとんど仕事が無い日だった。
「……え? 取り消しになった?」
「えぇ、すみません。なので、今回は違約金だけお支払いさせて頂きます」
そんな仕事も偶然、依頼主が突然のキャンセルをしたために無くなった。私はたった数十分で借りていた宿屋に戻ることになり、上機嫌で部屋へ戻った。
そこにシスの姿は無かった。買い出しに行ったのだと思い、市場を歩く。人混みに潰されそうになりながら散策したが、どこにも彼の姿はなかった。聞けば、彼はここに来ていないそうだった。
「……何処、行ったんだろ」
部屋で待っていれば、そのうちシスは帰ってくるだろう。だが、もし……彼が危険な眼に遭っていたら? もし、私が見過ごしたせいでシスが居なくなってしまったら? 私はもう、二度と立ち上がることは出来ないだろう。
「仕方ない。そう、これは仕方ないこと」
溢れる不安を解消するため、私はもう一度シスの痕跡を辿ることにした。彼が出掛けてから、それほど時間は経っていない。まだ、魔力の残滓が残っているかもしれない。
念入りに調べると、すぐに彼の魔力を発見した。どうやら、彼は市場とは反対側へ行ったらしい。しかし、その方向には畑や孤児院など、もはや私達の生活には無縁の場所ばかりだ。一体、何をしにいったのだろう?
ほとんど見えなくなった痕跡を辿り、私はシスを探した。彼を連れ帰ってから、この胸のざわめきを晴らすため、うんと甘えることにしよう。今日はシスがなんと言おうと、絶対に離さない。そう思うと、俄然やる気が出るというものだった。
そして、見つけた。人気の少ない湖の畔で、彼が誰かと居るのを。
「ありがとうございます、シスさん。おかげで、少しづつ神聖術が使えるようになってきました」
「僕は何もしてないって。ただ、少しアドバイスをしただけ。そこから頑張ったのは、全部ユリの成果だよ」
「えへへ……じゃあ、そういうことにしておきます。なら、シスさん。頑張った私に、何かご褒美はないのですか?」
「よしよし……良く頑張ったね。とても偉いよ、ユリ」
「…………♡」
それは、黒髪の少女だった。馴れ馴れしくも私のシスに身体を預け、私のシスを誑かしていた。全くもって許されることではない。心が冷え切っていき、心の奥から憎悪が滲み出るのが分かった。
それは私の光だ。それは私の意義だ。それは私の理由だ。それは私の全てだ。それを奪おうとしたんだ。どうなったとしても、文句は言えないだろう。
「……シス? 何、してるの?」
私は飛びかかりそうになるのを必死に抑えながら、二人の前に歩み出たのだった。
0
あなたにおすすめの小説
付きまとう聖女様は、貧乏貴族の僕にだけ甘すぎる〜人生相談がきっかけで日常がカオスに。でも、モテたい願望が強すぎて、つい……〜
咲月ねむと
ファンタジー
この乙女ゲーの世界に転生してからというもの毎日教会に通い詰めている。アランという貧乏貴族の三男に生まれた俺は、何を目指し、何を糧にして生きていけばいいのか分からない。
そんな人生のアドバイスをもらうため教会に通っているのだが……。
「アランくん。今日も来てくれたのね」
そう優しく語り掛けてくれるのは、頼れる聖女リリシア様だ。人々の悩みを静かに聞き入れ、的確なアドバイスをくれる美人聖女様だと人気だ。
そんな彼女だが、なぜか俺が相談するといつも様子が変になる。アドバイスはくれるのだがそのアドバイス自体が問題でどうも自己主張が強すぎるのだ。
「お母様のプレゼントは何を買えばいい?」
と相談すれば、
「ネックレスをプレゼントするのはどう? でもね私は結婚指輪が欲しいの」などという発言が飛び出すのだ。意味が分からない。
そして俺もようやく一人暮らしを始める歳になった。王都にある学園に通い始めたのだが、教会本部にそれはもう美人な聖女が赴任してきたとか。
興味本位で俺は教会本部に人生相談をお願いした。担当になった人物というのが、またもやリリシアさんで…………。
ようやく俺は気づいたんだ。
リリシアさんに付きまとわれていること、この頻繁に相談する関係が実は異常だったということに。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
趣味で人助けをしていたギルマス、気付いたら愛の重い最強メンバーに囲まれていた
歩く魚
ファンタジー
働きたくない元社畜、異世界で見つけた最適解は――「助成金で生きる」ことだった。
剣と魔法の世界に転生したシンは、冒険者として下積みを積み、ついに夢を叶える。
それは、国家公認の助成金付き制度――ギルド経営によって、働かずに暮らすこと。
そして、その傍で自らの歪んだ性癖を満たすため、誰に頼まれたわけでもない人助けを続けていたがーー
「ご命令と解釈しました、シン様」
「……あなたの命、私に預けてくれるんでしょ?」
次第にギルドには、主人公に執着するメンバーたちが集まり始め、気がつけばギルドは、愛の重い最強集団になっていた。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる