性の精霊に契約された僕は、十年越しの幼なじみに再会する

moca

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0話 後悔の10年

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僕にはずっと好きな人がいる。
僕なんかより男らしくて、かっこよくて、いつも僕を守ってくれる人。

小さい時からずっと一緒に過ごしてきた、隣の家の幼なじみを――
意識し始めたのは、性に興味を持ち始めた頃だった。

「好きな子いないの?」
みんなで集まった時、お決まりのように出てくる質問。
友達はそれぞれ、好きな女の子や気になる子の名前を言っていた。

でも僕の頭に浮かぶのは、たった一人。
幼なじみの彼の顔だけだった。
それでも言えるはずがなくて、
「好きな子はいない」
そう答えるしかなかった。

登下校はいつも一緒だった彼とも──
気づけば、中学の後半から避けられるようになった。

僕が何かしたのだろうか。
もしそうなら謝りたい。
許してほしい。
隣に居ることすら許されないのが、ひどく苦しかった。

そんな時、両親の海外転勤が決まった。
悩んだけれど、苦しい日々を続けるくらいならと、ついて行くことにした。

幼なじみに、一言も言わずに。

それから十年近く経ち、僕は24歳になった。
海外の大学を卒業し、ひとりで日本に戻ってきた。
……未練があったからだ。

けれど、日本に帰ってきた瞬間、
幼なじみが“僕の手の届かない存在”になっていることを知る。

空港のロビー。
人混みの向こうに、大きな広告ポスターがあった。
そこに写っていたのは──一ノ瀬 怜。

十年経っても分かる横顔。
切れ長の目、くっきりした鼻筋、薄い唇。
何も変わっていないのに、圧倒的に綺麗になっていた。
昔は黒髪だったのが、今は銀髪に染められている。

「……すごい人になっちゃったんだな」

そう思うと同時に、
“何しに日本に戻ってきたんだろう” と落ち込んだ。

それから一ヶ月。
今の僕は、小さな落ち着いたカフェで働いている。
席数も少なく、チェーン店よりずっとこじんまりした場所。
静かな空間で、気持ちの整理を少しずつしていた。

もう、二度と会うことはない。
思い出せば思い出すほど後悔に蝕まれる。
でも――
あの日、海外に行く前に「好きだ」って言えていたら。

僕はまだ知らなかった。

カラン、カラン。

「いらっしゃいませ──……!!」

この音が、あの日をもう一度やり直させてくれることを。
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