最強竜騎士~ドラゴンの絆~神々の裁きの聖戦

影葉 柚希

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10章

83話「今一度自分の心と向き合って」

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「エテルナ様! 新しい神が降臨されました!」
「どういう事ですか? 誰かが降臨させたと……?」
「そ、それが……」
 エテルナの元に伝えに来た神官は大きく震えながら言葉を探す。そこまでの様子にエテルナは困惑を覚えてしまい首を傾げてしまうが、ルーディスがそこに死の気配を感じ取り空を見上げる。
『死の気配が近い……誰かが命を捧げたのだろう。だが……この気配は……』
「どういう事ですか? ルーディス様、誰かが命を使って新しい神を降臨させているのですか?」
『……リルーズの気配が消えていく。リルーズの魂が神降ろしをしたのだろう』
「!?、そんな……リルーズは何処にいるのですか!?」
「奥の儀式の間にて息絶えられております……その横に新しい神が降臨されているのです……」
 神官の言葉にエテルナは涙を溜めて言葉を失くす。ルーディスがそっとエテルナの身体を抱き締めてやる事でエテルナはショックを受けて癇癪を起こす事はなかったが、それでも相当のショックではあるが。
 エテルナを抱き上げてリルーズの元に向かう為に歩いているとエテルナは静かに涙を流す。だが、決して泣き言を言わないのをルーディスは知っている。
 そっと儀式の間に向かった2人を出迎えたのは物言わぬ遺体になったリルーズと、横に赤ん坊の姿をしている神だろう者が存在していた。その神の力を感じたルーディスは眉根を下げてエテルナに告げる。
『この神は……私の末の妹の生まれ変わりらしい』
「それでは……ルーディス様の妹神様になるのですか……?」
『リルーズは自分の命を元に私の死んだ妹を蘇らせたのだ……リルーズの清らかなる魂ならば復活も出来ると言う事か……そこまでして私達に希望を託したのだな』
「リルーズっ、リルーズ……」
 骸になったリルーズの身体にエテルナは泣きつき、最期の瞬間にきっと思ってくれていただろうリルーズの想いを感じるのであった。リルーズの最期の言葉が残されている訳ではない、訳ではないのだがそれでも想いを知る事は出来る。
 リルーズの命を受けて復活した神の名をルーディスは優しく呟く、そして、その名を聞いた妹神はキャッキャッと笑いながらルーディスの手を握り締める。エテルナの涙を妹神は神力で拭い取る。
『アデレア……お前は彼女を、エテルナを認めてくれるか?』
『兄様、私はこのお姉様を愛しています。実の姉の様に慕ってもよろしいでしょうか?』
「私を……慕って、下さるのですか……?」
『エテルナお姉様、私を愛して下さりますか? 私は貴女の為に命を貰い受けたのです』
「リルーズはアデレア様を私の為に呼んでくれた、と言う事でしょうか……?」
『アデレア、リルーズはどうしてお前を呼んだのだ? 私達に話をしてくれるか?』
『リルーズは自分の命を使って私を蘇らせ、そして、エテルナお姉様のお力になる事を望みました。その願いの果てに自分の大好きなエテルナお姉様の幸せが叶えられる様に』
 アデレアの言葉にエテルナは涙が止まらなくなる、リルーズは自分の命を使ってエテルナの未来を案じてくれた。幸せを願ってくれた事が何よりも心から嬉しい事でもあり、悲しみでもあった。
 リルーズは主であるエテルナの事を誰よりも愛してくれていたし、尽くしてくれていた。それをエテルナは常にありがたいと感謝し、そして、受け入れていた。
 だが、失くして気付くのだ、大事な人の命を自分は守れなかった事を。そして、その果てに愛する人の妹が蘇って力になってくれる事がこんなにも嬉しくもなる。
『エテルナ、アデレアを頼めるか』
「ルーディス様……?」
『リルーズの魂をちゃんと成仏させてやりたい。何よりもエテルナと俺の未来を案じてくれた事を感謝したい』
「っ、お願いしますっ……アデレア様、私の腕で我慢してもらえますか?」
『お姉様の腕で私は幸せです。どうかそんなご自身を卑下なされないでお姉様』
 ルーディスの力によりリルーズの魂は静かに成仏する事が出来た。エテルナの腕に抱かれたアデレアは金髪の髪に黄金色の瞳を持っている赤子としてエテルナの顔を見上げていた。
 エテルナの腕に抱かれている安心感から、アデレアはエテルナの事を誰よりも慕っている様に見える。そうだろうとルーディスの脳裏には浮かんでいた。
 アデレアが産まれた時、どうしても神気が足りなくて死んでしまった時の母アデリスの悲しみをルーディスは知っている。そして、アデレアが死んだ事で父ガデルズがおかしくなったのも知っているからだ。
『エテルナ、今一度自分の心と向き合ってみてはどうだ?』
「自分の心と向き合う、ですか……?」
『それは確かに必要な事ではありますね。エテルナお姉様、今一度ご自身の心とお向き合い下さい。そして、その心の言葉を聞いて下さい』
「心の声を聞く……。分かりました……少し自分と向き合ってみたいなと思います」
 エテルナの腕からアデレアを受け取りルーディスはそっとエテルナの頬に口付ける。その触れ合いに落ち着きを維持していたエテルナも赤くなりながらその場から立ち去る。
 エテルナの姿が見えなくなるとアデレアが少し不思議そうに長神のルーディスを見つめる。その視線にルーディスはアデレアが何を言いたいのかを察して苦笑を浮かべる。
『エテルナは強いが、それだけで私の伴侶にはなれないと言いたいのだろう?』
『それもございますが……神々の伴侶となる為に必要な儀式もありますから』
『神々が愛した人間と共に生きるには神が人間となるか、人間が神になるかのどちらかでしか共にはいられない』
『愛し合う者達の絆は決して切れてはなりません。それは神々が種を生かしてきた理由であります。神とて全知全能ではありません……創造主様以外には』
『創造主、か……』
 ルーディスはその言葉を口にしたと同時に脳裏に浮かぶ母アデリスの言葉があった。母アデリスと父ガデルズは創造主から何かを任されていた事を知っているのはアルドゥラ達も知っている筈なのだ。
 そして、それは同時に自分達の存在を確たるものにする為に知り得なくてはならない事実でもあるのだろうが、それでも、アルドゥラ達はそれを知ろうとしているのかすら今は怪しい。知ったとして、それがあの弟妹達に何か影響があるのだろうかと懸念される事ではあるのだが。
『ルーディス兄様、アルドゥラ兄様達は間違っておいでです。神々は決して種を選択し、新世界を切り開く為に今の世界を滅ぼす権利はございません』
『そう、だな……。私達を生かすのは人間達を始めとする生きとし生ける種達の信仰と祈りだ。それが無くなっても私達は生きる為に種を選んではいけないのだから』
 ルーディスとアデレアがそんな会話をしている間に、エテルナは1人部屋の中で自分の心と向き合っていた。1人で自分の心と向き合うのは少し大変さを感じていたが、それでも向き合わないといけないのは事実である。
 エテルナの心は自分の言葉を問い掛けていた、それは今の自分の生き方を問う言葉。今のエテルナは神であるルーディスを愛し、敬愛し、そして共に生きる為に運命を担う事を望んでいる。
「私はルーディス様と共に生きる、その為に王子として生きる事を止めた。それが正しくなかったと言う事なのでしょうか……? それとも、私は自分のこの生き方を疑問に思っているとでも……」
 自分の心と向き合っているエテルナの眉間には皺が寄ると深い悩む表情が浮かべられる。自分の信じた様に生きていると思っていたのに、実際は違うのだろうかとの疑問を浮かべてしまえば果てしない沼の様に考えてしまう。
 だが、1つずつ疑問に向き合って、1つずつに答えを出していけばそれはきっと答えに繋がっていくのだとエテルナは亡きリルーズの教えで覚えている。そして、その答えの果てにきっと自分の本当の生きる意味を見出す事が出来るのも分かっている。
「長年、私はルーディス様を想い続けてきた……そして、その想いを殺してでも王子として生きようとしていた。でも、愛される喜びを知り、そして、本当の愛を知って……」
 エテルナはそこで不意に思う。ハルトが以前王子として生きる事が何よりも必要な事なのか? と話をされて、エテルナは言葉を返せなかった。
 それがどうして今になって考えたのか? それは未練があるからか? 違う、王子としての人生より、女としての人生を望んだ事が今のエテルナを造り上げている事に気付くからだ。女としての喜びを受け入れた事は何よりもルーディスの力を増す事をエテルナは知っている。
「私は、ルーディス様の力になりたいと思って愛したいんじゃない。愛したかった……愛されたいから愛したんじゃない。誰か1人をただ愛したかったのです」
 エテルナの言葉に応じる光があった。それはアデレアがエテルナが答えに辿り着いた時に祝福としてエテルナの力になる為に用意していた祝福である。
 エテルナの身体を包み込む光はとても温かく、そして、慈しむべくな力の温もり。それがエテルナを光の道へと導く為の指針になるのを感じ取れていた。
「私はこの真実を大事にして、リルーズ……貴方が願ってくれた幸せの未来を歩く為に頑張ります。だから、見守ってて下さい……」
 祈りを捧げるエテルナの祈りを聞き届ける神がいるとしたらルーディスとアデレアだけかもしれないが、それでも、2人の神はこの聖女の心を酷く大事に寄り添ってくれる事だろう。聖女の祈りが神々の力だとも言えるが、それ以上にエテルナと言う1人の女性が捧げる願いの清らかさを知っているからだとも言える。
『私達が生きる為に必要だと言うのであれば神など必要ではない。本当に必要なのは種に愛され、種を愛し、共に生きていく事が出来る存在なのだろう』
『その存在に私達神々がなってはならないのです。私達は共に歩く、隣人でいなくてはならないのですから』
 ルーディスとアデレアはそんな事を話しながら今は悲しみに染まった空を見上げるのであった。そして、古代都市ロードに向かったアルスとハルトの方でも色々と進捗があったのは次なるお話での内容になるだろう――――。
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