騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

文字の大きさ
5 / 63
1章

4話「全ての真実が優しいとは限らない事を知る」

しおりを挟む
 ガラの村の村人達の墓石1つ1つに花を添えて行くガイアとフェランドは決意も新たに村人達へ祈りを捧げて行く。自分達にオルガスタンの未来を託した村長の老人を始めとする大陸全ての人々の希望になる為に、ガイアとフェランドは命を賭して魔神アガルダを撃破する。
 それがどんなに困難な事であっても希望を捨てる気は一切無かった。2人の中にある転生者の記憶、それが2人に勇気を与えているのは明白である。
 コーネルドとガラハッドの記憶には必ず光があった。それは2人が希望を担う騎士として神々に愛されている証拠でもあったからだ。
「そろそろ迎えが来る筈だ。準備はいいか?」
「うん。スジエルに戻って始まりの音を鳴らす。そして、そこからオルガスタンの希望を担っていく……コーネルドとガラハッドの願いを胸に刻んで」
「コーネルドとガラハッドは希望半ばで魔神アガルダの手下である四天王であるローガッドルの策略で死んだ。その無念が神々に救われて新しい希望を担う騎士として俺達の魂になって転生を果たす。そして、同時にそれはこのオルガスタンを始めとする世界を秩序と調和を導く戦いになる。負けてしまえば絶望は闇を育てて人々は2度と光を望む事は出来ない。大丈夫、俺達にはまだ光がある。負ける事はない」
「俺達が光自体になってオルガスタンを照らし出す。それが出来る様に神々は俺達を祝福して下さった。行けるって言える」
 ガイアとフェランドの右手が淡い光を生み出す。その手甲を外して手の甲に浮かぶ紋章に2人は静かに見つめる。
 その紋章はコーネルドとガラハッドの魂を転生させた神々によって器になっているガイアとフェランドに神々の祝福を与えた証拠である。光と共に闇に立ち向かう者達に与えられる光の加護の証でもあった。
 2人は右手を天に翳して光を解放させる。その光に包まれたガラの村は静かに木々や草花に囲まれて村としての名残姿を消していく。
 静かに眠れ、その意味を込めて2人はガラの村に最後の別れを告げる。そして、村の入口で困惑しているスジエルから迎えに来た騎士達に気付き2人は手甲をはめて出迎えに行く。
「それではその新人の騎士達がコーネルドとガラハッドの転生者だと言うのは間違いないのか?」
「あぁ、まさか俺達と同じ様に希望を担う騎士がいるとは正直思っていなかったが……彼らは正真正銘の”希望”の担うべき騎士達だ。俺とエヴァの様に世界樹の”希望”を担っている騎士ではない。どう見る? この騎士達を」
「希望を担う騎士だと言うのであれば間違いなく祝福は受けているのだろう。そして、いつかはその重さに迷う事になる。その時に支えられる仲間が、友が必要だ。行かせるつもりなんだろう?」
「あはは、エヴァは本当に俺の思考を先読みするのが上手いな。そうさ、彼らにはこのオルガスタン大陸を救う使命がある。それは途方にもない困難な道のりになるのは避けれない。ならば共に使命を果たすべく立ち上がる友が、仲間が必要だ。そして、彼らの存在は同時にスジエルだけではない。オルガスタン全土の人々の希望に成り代わっていく。その為にも旅立たせて世界を知らせなくてはならない。……神々が本当にこの世界を愛しているのであれば彼らを導くだろう」
「そうでなければ俺やアルフォードがこうしてスジエルを取り返し、世界樹の希望を担って戦っている意味がない。俺達は世界樹と共にあるが、彼らは神々と共にある。全ての真実が優しいとは限らないが、それでも彼らは進むべきなんだ。世界の果てにあるという魔神アガルダの真実を知る為に」
 スジエル王城の作戦執務室でスジエル騎士団総騎士団長アルフォードと軍事軍師を担っているエヴァが2人だけで会話をしている。話の中心に上がっているのはガイアとフェランドの事。
 そして、アルフォードとエヴァはガイア達の事を旅立たせる事を考えているのが伺える。そう、まだガイア達の実力では魔神アガルダを撃破するのは不可能だと2人は知っていたのだ。
 だからこそ、力を付ける為にも共にアガルダを倒す為に力を合わせられる仲間の存在を探す必要があった。エヴァもアルフォードもオルガスタン大陸の地図を見ながらじっくりと考察する。
「まずは手始めにオルターナに行くべきだろう。あそこにも魔神アガルダの支配下にありながらも未だに抵抗しようとしている人々をまとめ上げている者がいると聞く」
「オルターナを取り戻せば自然と戦力も整える事が出来てスジエルと足並みを揃えれば魔神アガルダの支配エリアを縮小させる事も叶う。総団長として指示を出して行かせてみよう」
「彼らの旅路に神々の導きがある事を」
 スジエルに戻ってきたガイアとフェランドはすぐにルーベリド王女に会いたいと連絡を受ける。2人は王女が真実を聞いて会いたいと伝えているのは察していたので礼儀を尽くして部屋に向かった。
 コンコンとノックするガイアの背後にフェランドが立って室内から入るように声が聞こえてくるのを受けて2人は静かにルーベリド王女の部屋に入った。部屋の中には軍師騎士アベルゾの姿もあって、ガイアとフェランドに視線を向けて傍に来るように促してくるので2人は従う。
「君達は……転生者だったのだと総団長から伺った。君達の本音を聞きたい」
「俺達の本音、ですか?」
「私は貴方方にこのオルガスタンを救う姿を見ます。でも、それはあくまでも貴方方の魂に刻まれた使命を果たす姿。では、貴方方の個としての心はどうなのでしょうか? それが気になりお呼びしたのです」
「俺達自身の意思を確認したい、って事ですね?」
「もし、魂に刻まれた使命を果たすだけの騎士であるようであれば、私は貴方達を止めないといけない。そんな虚ろな目的のままで剣を握ればいつかは闇に落ちてしまう恐れがあるからです」
「俺もフェランドもこの使命を果たした後に叶えたい夢があります。その夢を叶えて本当の意味で自由になるまで迷う事はありません」
「俺達はこの夢を2人の手で叶えて本当の意味で転生者としての呪縛から解き放たれた時に、生きている意味を知ると思っています」
 ガイアとフェランドは迷いのない瞳と真っ直ぐな言葉をアベルゾとルーベリド王女に伝えて行く。2人が叶えたいという夢とはどんなのだろうか、それは2人の口から語られる事はこの時は無かった。
 総団長アルフォードがガイアとフェランドに招集を掛ける。この時がきっと2人にとって待ち望んだ始まりの音だって2人は気付いている。
 総団長室に訪れた2人は静かに開かれた扉を抜けて室内に入って敬礼するとアルフォードは微笑みながら隣に立つエヴァと共にガイアとフェランドを出迎える。初めてエヴァと対面した2人は少し緊張しているが不思議とエヴァからは威圧感を感じる事は無かった。
「君達が転生者の魂を持つ騎士か。初めまして、私はエヴァ。世界樹の”希望”を担う者だ」
「世界樹の”希望”を担う……? では総団長も?」
「そうだ。俺達は転生者ではないが世界樹の願いを、心を継いだ人間だ。君達と同じ様に魔人アガルダを倒す為に立ち上がったコーネルドとガラハッドの様な人間だって事だ」
「それでは俺達が転生者としてしなきゃいけない事もご理解しているということですか?」
「あぁ、君達の使命は魔神アガルダを撃破し、オルガスタンに秩序と調和をもたらす事。それは志半ばで死したコーネルドとガラハッドの使命を引き継いだ事になる。そして、君達は……”魂の解放”を望んでいるのだろう?」
「……俺とフェランドはこの転生者としての使命を果たした時、肉体は死したコーネルドとガラハッドの魂に明け渡す事になります。その時に俺とフェランドの魂は肉体に封じられてしまうと聞いています。だから”魂の解放”を叶えて俺達は新しい命となって転生するという夢を持っています」
「その方法を俺達の方でも調べてみよう。神々が本当に俺達の事を認めているのであれば何かしらの提示はある筈だ。君達の使命を果たす時まで俺達も全力でサポートする。そして、知るといい……このオルガスタンの果てにあるとされている真実を」
 エヴァとアルフォードはガイアとフェランドに父親の様な兄の様な微笑みを向けて受け入れた。それが2人の心を守る大きな障壁になって闇落ちを塞ぐ事になっているのを知るのはもう少し先の話。
 2人の前にある書簡が差し出される。ガイアが代表で受け取り開くとスジエルから距離にして2か月を要する場所にあるオルターナ国への向かう指令が書かれていた。
 オルターナ国への出向にガイアもフェランドもアルフォードを見上げる。アルフォードは少し気を引き締めた表情で2人に指令の内容を説明する。
「オルターナはスジエルに次いで魔神アガルダに抵抗していた国の1つ。大国と言われる大きさを誇り、軍事力もそれなりにあった国だ。今は多くのモンスターが俳諧していると聞くがまだ国内には魔神アガルダに抵抗し続けている人々と、その人々をまとめ上げている者がいると情報が入った。オルターナ解放を果たし、その人々と共に立ち上がる為の橋渡しをしてほしい。オルターナも取り返す事が出来れば魔神アガルダも寛容にはいられなくなる。戦いは熾烈を極めるとは思うが、このオルターナ解放は君達の使命にも大きく繋がる事になる」
「分かりました。すぐに準備して向かいます」
「あくまで今回は表向きには動きを見せる訳にはいかない。騎士団の中でも君達の事を話をして安心して同行させれる者達を厳選した。彼らと共にオルターナを解放してほしい」
「はい、俺達の手でオルターナを解放して吉報をお届けしたいと思います」
「君達に神々の祝福があらんことを」
 ガイアとフェランドは指令書を持って準備の為に総団長室を後にする。背を見送ったエヴァとアルフォードはお互いの瞳を見つめて頷く。
 オルターナへ向かう騎士達が集まっている場所にやってきたガイアとフェランドの前に軍師騎士アベルゾと彼の背後には本部内でも歴戦だと言われている実力者達が揃っていた。皆がガイアとフェランドの事をアルフォードから聞かされて同行を受け入れた騎士達だとアベルゾが説明する。
「私も最初は信じ難かったですが、アルフォード総団長がハッキリと断言された以上間違いないのだと思い同行を願い出たのです。オルターナは軍事の中でも重要な国家……取り返す事は困難を極めるとは思いますが私達が出来なければオルガスタンの希望もまた費えると考えます。君達の使命を果たす為にも手を取り合いましょう」
「よろしくお願いします」
「お願いします。オルターナへ向かいましょう」
 こうして希望を担う騎士達はオルターナへ向けて旅立つ。この旅の果てにある真実が一体どんな絶望を持ち、どんな希望を抱かせるのか。
 それを知った時のガイアとフェランドは一体どんな判断をするのか。まだ物語は始まったばかり――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

処理中です...