騎士の勇気・世界樹の願い

影葉 柚希

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2章

16話「白の神殿」

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 アベルゾは総団長であるアルフォードの元にガイアと共に訪れる。目的は先程までガイアと共に話し合っていた白の神殿についての調査を行うべきであるとの提言をしに。
 ガイアもこの提言が許可される可能性は低いのは充分に理解しているし、許可されないならアベルゾは独断で調査に名乗り出るのを知っている。自分の取るべき道を見極める必要性を考えなくてはならない事には変わりはない。
「失礼します。軍師騎士アベルゾ、新人騎士ガイア、入ります」
「どうしたのだ? 君達が揃って来るとは」
「総団長、少し提言をしに参りました。お話だけでもお聞き下さりませんか?」
「ふむ、いいだろう。話してみなさい」
「スジエル市街地にある白の神殿の内部調査を提言致します」
「……それはどの様な意味を持っている?」
「転生者の探索、それらに関する情報は我々には一切情報が降りてきておりません。ガイア君とフェランド君が転生者である、そう告げたのは巫女カーネル様だともお伺いはしておりますが、それはあくまで白の神殿と彼ら本人からの口からです。我々は白の神殿を知らな過ぎると思います」
 アベルゾの言葉に椅子に座って聞いていたアルフォードは眉を寄せて少し考え込む。ガイアにはその様子が何かを察しているように見えて違和感を生み出していた。
 アベルゾはアルフォードの返事を待つ間に次の言葉を考えて用意しているのだろう、一切の迷いは感じられない。ガイアは2人のやり取りを黙って聞いて自分の中に生まれている違和感を見極めようとしていた。
「その提言に急ぎはあるか?」
「いえ。ですが、遅かれ早かれ白の神殿を敵に回す可能性が含まれている以上、簡単に決めれるとは思っておりません。しかし、白の神殿が我々に隠している何かはもしかしたらスジエルを闇に染める事に近い事も考えられる可能性もございます」
「……私1人では決め兼ねる。エヴァにも意見を貰う必要があるだろう。少し時間をくれないだろうか。私達はこのスジエルを守る騎士団として存在する意義を持つ。だが、その騎士団が間違った道を歩むのは決して許される事ではない。あくまでしっかりとした大義名分が必要になる。その為にも意見を集めたい」
「……分かりました。最悪私が犠牲となっても構いません。どうかこの提言を心の片隅に置き留めて頂きますよう……失礼します。ガイア君」
「……失礼しました」
 ガイアはアベルゾと共にアルフォードの前を辞する。2人が出て行って少しの間アルフォードは真剣に考えていた。
 あの2人が言い出す前から白の神殿については色々と不審な部分があるのは自分も気付いていた。そして、相棒でもあるエヴァもそれとなしに調べる事を提言してきている事も。
 その頃、ルーデリッシュと訓練を終えたフェランドは汗を流しに大浴場に来ていた。アーマーを脱いでインナー姿になった時だった……何者かの視線を背中に感じて振り向く。
「気のせい……か」
 振り向いて誰か視線を向けている相手がいるだろうかと確認するが誰もそこにはいない。だが、それで気のせいだと思いまたインナーを脱ぐ為に前を向いても背中には視線を感じている。
 明らかに誰かが自分を見ているのだと感じながらも、その視線には悪意も殺意も感じない事から放置する事に決めた。いつの間にか視線の事は忘れたフェランドは腰にタオルを巻いて大浴場に足を進める。
 湯気が立ち込める大浴場の洗い場で身体と髪を洗ってから大きな浴槽に足先から入る。じんわりと温かい温もりを感じて肩まで浸かると気持ち良さからの吐息を吐き出した。
「はぁ~……朝練後のお風呂は気持ちいいや……。ガイアはまだ寝ているかな」
「お、フェランドじゃないか。朝練後の入浴か?」
「ポリッオ、君も朝帰り?」
「俺は夜警の終わりだよ。毎回朝帰りしている訳じゃねぇ。ガイアじゃあるまいし」
「むっ、ガイアは朝帰りの時はちゃんと理由言うじゃないか。女遊びじゃないのが大半だろう?」
「理由なんていくらでも作れるじゃん。あの顔の美青年だぜ? 街の女が簡単に手放すと思うか? いくら幼馴染みでもそこら辺信用し過ぎだぞフェランド」
 ポリッオ、赤い髪の毛の持ち主で切れ長の瞳を持つフェランドとガイアの同期騎士。見目が良い事でよく市街地で女と遊んで朝帰りしている騎士で、素行の事で教育係りから色々と指摘はされているが本人は至って気にしている様子は見られない。
 そのポリッオからガイアの事で色々と言われて苛立ちを感じていたフェランドは真面目に湯に沈めてやろうかと考え始めていた矢先。ポリッオの首根っこを掴んだ人物がいた。
 その人物に気付いたフェランドには笑みが浮かび、ポリッオは青褪めて慌て出す始末。そう、今話題に上がっていたガイアがそこにいたのである。
「ポリッオ……お前の口は本当にいい加減の事しか言わないな? 1回その口を解剖してやりたくなる」
「が、ガイア……だ、だってお前昨日だって街に繰り出していたのを俺は見たんだぞ!! 間違いなく夜遊びか女を買いに行った証拠だろ!?」
「あぁ、昨日は女を買いに行った。理由は省くがちゃんとした理由ありきでな。それよりポリッオ……フェランドに何を言った?」
「な、何も言ってねぇよ!?」
「なら、お前の事を殺そうとまで怒気を孕んでいるフェランドはどういうことだ?」
「なっ……ひっ!?」
「ガイア、ポリッオは俺が始末するから離してやってよ。ガイアの事を悪くいう奴は地獄に叩き落とす」
「まぁまぁ、こいつは俺が締めとくからフェランドはしっかり温まってこい。ポリッオ、付き合え」
「ひぇぇぇぇー!!!」
 まだ服を着ているガイアは腰にタオルしか巻いてないポリッオを連れて脱衣場に戻っていく。フェランドは少し不貞腐れていたが昨日のガイアが女を買いに行った理由の原因は自分にあるのを思い出して無意識に赤面して、湯にブクブクと顔を半分沈めて浸かっていた。
 脱衣場で身体を拭くように促されたポリッオはトボトボとしてタオルで身体を拭いていたが、ガイアが周囲を見回してからポリッオに小声で問い掛けてくる。その内容にポリッオは少しぽかんとしてガイアを見つめた。
「ポリッオは白の神殿の巫女と寝た事はあるか?」
「へっ?」
「あるかないか教えろ」
「いや、普通はないだろ。でも、お前が聞いてくるって事は聞いたのか?」
「何をだ?」
「今、白の神殿に出入りしている女達が男を求めている話。なんでも、神様に選ばれなかった巫女達の慰めを求めているって話だ」
「慰め……。お前は寝ないのか?」
「うーん、狙っている女はいるが中々近付けなくてさ。押しに弱いとは分かっているんだけれど周辺の巫女達が堅物で近付けさせてくれねぇの。そんな事をお前が聞くなんて、女日照りか?」
「いや、別の意味で白の神殿に近付く必要があってな。それでどうしたら巫女達と会える?」
「んー、一番手っ取り早いのは神殿の指導下にある教会に出向く事だな。そこで巫女達の祈りを聞いて親睦を深めるのが手っ取り早い。上手く行けば相手から誘ってくる」
 ポリッオはインナーを着込みながらそんな事を教えてくる。このポリッオは剣の腕もいいし、見目もいいので女とはよく寝ている男でもあり女の事についてはこの男に聞くのが早いのだ。
 ガイアは朝の時間帯にアベルゾから聞かされた白の神殿調査に何かしらの手掛かりを取れないかと頼まれてポリッオを探していたのだ。上手く利用させてもらえれば自分達の有利に働く事には変わりない。
 ガイアはポリッオに耳打ちする、それはポリッオが狙っている巫女と近付く事が出来る方法。それを聞いたポリッオは目を見開いてガイアを笑顔で見やった。
「お前もやっぱり男だな! でもサンキュ、良い情報だわ」
「上手く活かせよ。あんまり常套句には使えないが」
「いやいや、初回さえ落とせれば問題ない。よーし、ひと眠りしたら早速仕掛けてくる!」
「頑張れよ」
 ポリッオは意気揚々とアーマーを持って大浴場から出て行った。ここまで順調に事は進んでいる、あとは何か打てる手はないかと考えていたガイアはそろそろフェランドが上がってくる事に気付いて待つ事にした。
 スジエル城、軍事団長室にエヴァは騎士団本部から訪れていたアルフォードと向き合って座っていた。お互いに内密な話をする時にはこの椅子に座って人払いをした上で話し始める事がお決まりになっている。
 アルフォードはエヴァに1枚の書類を提出する、そこには白の神殿内部調査許可書と書かれていた。そうアルフォードはこの許可書を取りにこのスジエル城に訪れたのである。
「間違いないのだな?」
「アベルゾとガイアが朝から俺の元に来てな。白の神殿を調査したい、と明確に提言してきた。それが俺達が考えていたのとほぼほぼ同時期で驚きはしたが」
「それだけ感じる部分があるって事だろう。それでお前がこれを取りに来たって事は」
「あぁ、白の神殿は間違いない……魔神アガルダ側の者達によって動いている」
「やはりか。今ルーベリド王女にもユリウス様にもそれなりに事情をお話をしているが、お2人は信じられないと申されている。だが、確たる証拠は……」
「ガイアとフェランドだな。あの2人を転生者として導いた事、これが何より確たる証拠だ。転生者は神には判別出来ない……そう、転生させた魔神に、しかな……」
「この事は2人には?」
「まだだ。だが、時期が来る前に伝えておくべき事だろう。実行に移す前に話す予定だ」
「俺も動こう。どう足掻いても白の神殿を敵に回す事は大義名分が必要になる。転生者の後の行動をしやすくするためにも手を打つ」
 エヴァもアルフォードも自分達のやるべき事の役目は理解している。だからこそ、転生者であるフェランドとガイアを守る事が出来るのであれば、汚れ役も被るつもりなのである。
 ガイアとフェランドは朝飯を食べてから部屋で朝のガイアがアベルゾから聞かされている白の神殿についての事を話をしていた。フェランドはその話に対してあまり驚きは見せないかったがガイアはそれに驚く。
「驚かないのか?」
「んー、なんか本能的に俺あの神殿嫌いなんだ」
「好き嫌いの問題か?」
「分かっている。でも、なんていうか……嫌な感じがするんだよ。簡単に言うなら何か凄い何かを隠しているって気がする」
「まぁ、アベルゾさんもそれを察しているから調査を提言したんだろうけれど……」
「何か大きな真実が隠されている気がするよ」
 この2人が真実を知るまでまだ時間はある。だが、真実は時に残酷で、時に猛威なのだと2人は知る事となる――――。
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