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2章
18話「新人騎士アレス誕生」
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最終試験を終えた受験者達、最終試験ではアクシデントに見舞われたが幸いな事に死者は出なかったのが不幸中の幸いだとランスロットの言葉である。そして、試験最中に負傷したアレスは本国であるティクス国に戻ってすぐに治療を受けた事もあって回復は早かった。
アレス以外の受験者達の回復も早く、全員が揃って試験結果の発表を受ける事が叶う。アレスはアルと共に受験者達の中で試験結果の発表を待っていた。
「どうなるんだろうな」
「こればっかりはなんとも言えないよ。だって私達、団長の言い付けを守らないで残って戦ってしまったんだし……。これで落ちたとしても仕方ないよ思う」
「まぁ、来年の試験を受ければいいだけの話だしな。お、結果が来たみたいだぜ」
担当官の姿が見えて受験者達に緊張の色が浮かぶ。アレスとアルも僅かに息を飲んで担当官から聞こえてくる言葉を聞き逃すまいと耳に意識を集中させる。
担当官はまず試験の最中に起こったアクシデントによる試験結果の判断査定は公平に行われた事と、今回の結果は団長と一部の騎士達による投票にて決まった事を告げた。これで全受験者達は結果が不公平ではなかった事と、今回の結果は受け入れるべきである事を理解する。
「それでは新人騎士試験の最終合格者を発表する。全受験者8名の中から最終合格者は……4名。1人目は……」
「4人、それだけしか合格しなかったって事か……」
「でも、それだけの実力者が合格したって事でもあるよね」
「3人目、アルフォッド」
「えっ?」
「おめでとうアル。合格したね」
「マジで? えっ、嘘じゃないよな??」
「最後の合格者……4人目、アレス」
「私の名が……呼ばれた?」
「アレスも合格じゃん! やったじゃんか!」
担当官は発表を終えると名を呼ばれた受験者達に向けて最後の言葉を紡ぐ。それは担当官を通じての合格者への連絡でもあった。
「今名を呼ばれた合格者達は速やかにこの後移動をして、騎士勲章の授与式に向かう様に。授与式は既に市民に知れ渡っているので式典に遅れたりしない様にする事」
「式典って……」
「俺達、もう騎士勲章を受け取れるのか?」
アレスとアルはお互いの顔を見合わせてキョトンとしていたが、すぐに状況を思い出して式典会場になるティクス城へ移動をし始める。他の2名の合格者達も一緒に移動をしていたが途中で1人の合格者である女性から声がアレスに届く。
「アレスさん」
「あ、はい?」
「お礼を言いたいの。ありがとう」
「えっ、どうしてお礼を言われるのですか?」
「最終試験の時に貴女が冷静さを持つ様に言わなかったら私死んでいたの。だから命の恩人よ貴女は」
「そんな。私はあの時無我夢中で叫んでいただけで……」
「貴女が言わなかったらきっと私も他の受験者達も命を落としていた。貴女は騎士になるべくなった素敵な人よ」
「……ありがとうございます。あのお名前をお伺いしても?」
「私はリディル。同じ女性騎士としてこれからは共に切磋琢磨していきましょう?」
「はいっ!」
リディルと名乗った茶色のセミロングと印象的なレッドアイを持つ女性は微笑みながらアレスの肩を叩く。それがアレスにとって騎士団に所属する事が決まって初めての友人でもあった。
アルとリディルと共に式典会場になる玉座の間に到着したアレスは緊張した面持ちで片膝を付いて玉座に座る国王ケンベルトの言葉を聞いていた。玉座の間には大臣達と共に軍師のロゼット、そして兄であり騎士団団長であるランスロットの姿もあった。
1人ずつ騎士勲章をケンベルトから授与していくと最後にアレスが呼ばれる。アレスはゆっくりとケンベルトの前に立ってしっかりとした眼差しをケンベルトに向けて授与される勲章を両手で受け取った。
「ここに4人の聖なる騎士が誕生した。これは我が国の宝でもあり、誇りでもあり、そして愛おしい我が子達でもある。この騎士達に神々の加護があらんことを」
「本日付で君達は聖騎士団の一員となる。団長であるランスロットの元で訓練を積み、来るべき時に備えて騎士としての成長を期待しているぞ」
「「「「はいっ!!」」」」
玉座の間から辞したアレス達を先輩騎士であるガルドとハルウッドが出迎えて歓迎会と称しての新人のお披露目会会場へと4人を連れて行く。食堂にて行われるこの歓迎は騎士団の習慣でもあるので先輩騎士達は今年の新人達に労いとこれからの関係を構築していく為の場所にもなるのであった。
玉座の間ではケンベルト・ロゼット・ランスロットの3名が今年の新人騎士について色々と話し込んでいた。注目はアルフォッドとアレスである。
「それにしてもアレスの存在は今年の騎士の中では優秀だな」
「あの少女が他の受験者達に冷静さを叫ばなかったら全滅は避けられなかったという報告も聞いている。お前の妹にしてはもったいない気もするがな」
「だが、まだ幼いし未熟だ。これからは俺達がしっかり導いてやって一人前の騎士に成長させないといけない。妹、だけの理由で甘やかす訳にはいかないだろう」
「ランスロット、それは城にいる間だけにしておけよ。家では出来るだけ甘やかしてやれ。なんせお前の傍にいる為だけに幼い頃の時間を全部この日の為に費やしてるのだからな」
「お前は変な所で頑固だからアレスの前でも団長面してそうだが、それは友人としても忠告するが、止めておけ。愛想を尽かされて兄離れされたら寂しいだろうからな」
「2人は妹じゃないから簡単に言うが、俺だって考えなきゃいけないんだからな」
ケンベルトとロゼットにこっぴどく言われて少々不機嫌になるランスロットに2人も微笑みを浮かべているのだった。歓迎会は夜遅くまで行われてアルとリディルとは別のテーブルで先輩騎士達に囲まれていたアレスにガルドとハルウッドが近寄り誘い出す。
アレスは2人に誘われて会場を後にして案内された場所に向かった。アレスも2人が自分だけを誘ったのも理由を察してる。
「ここがランスロット様の執務室です。中にランスロット様と部下の者が待っています」
「本当なら歓迎会にランスロットも行かせたかったんだが、団長という身分の手前簡単に抜け出せないんでな。会いたいだろう?」
「でも、お忙しいのでは……」
「そう言うと思って私達が仕事を分担して終わらせております。この後は兄妹の時間としてお過ごし頂ける予定ですよ」
「ランスロット、アレスを連れてきたぞ」
「あぁ、入ってくれ」
団長室から聞こえてきたランスロットの声にアレスの心が騒ぎ出す。初めてまともに妹としてランスロットの前に立つ事になる。
アレスはガルドに背を押されて団長室のドアをくぐった。中にはローレンスとロルゾの姿もあり、優しい微笑みを2人は向けてくれていた。
アレスの身体を優しく押して執務机の前に移動させたガルドはアレスから離れてローレンス達と共に団長室から辞する。アレスは少し戸惑いながらも真っ直ぐにランスロットを見つめていた。
「こうして話すのは初めてだな。……よく頑張った」
「あの……えっと……団長のご期待に応えれたなら良かったです……」
「ふふっ、ここでは団長と呼ぶのが正解ではあるが……兄とは呼んではくれないのか?」
「っ、そ、その……よ、呼んでもいいのですか……?」
「アレスと俺はたった1人の家族なんだ。俺が呼んで欲しいと言っているんだし呼んでいいんだぞ」
「……兄さん……ランスロット兄さん……」
「アレス……すぐにこの腕に迎えてやれなくてすまなかった……こんな俺を許してくれ」
「兄さん、兄さん!」
椅子から立ち上がりアレスの幼い身体を抱き締めたランスロットの腕の中でアレスは大粒の涙を流す。やっと迎える事の出来た愛おしい家族、兄と妹の時間がここから動き始める。
ブルーの髪の毛を優しく撫でながらまだあどけなさが残るアレスをランスロットは酷く大事にしたいと思ってしまう。この小さな身体を精一杯に使って自分に抱き着くアレスが酷く愛おしい。
アレスの身体を抱き上げてソファーに座って膝に座らせたランスロットは、まだ涙が残るアレスの目尻に口付けてそっと背中を撫でてやる。アレスの幼い両腕がランスロットの首に回って身体を寄せてスリスリと甘えてくる姿にランスロットの保護欲が高まっていく。
「アレス、これからは騎士としてもそうだが妹としても俺の傍にいてくれないか?」
「それ、は……」
「家族としての時間を過ごしたい」
「……」
「アレス?」
「私……宿舎で生活するつもりです……騎士になったから、それが当たり前だから……」
「そんな事を考えていたのか? お前は数少ない女性騎士だ。何が起こるかも分からない宿舎での生活を俺が許すと思うか?」
「で、でも……」
「離れていた分、お前の事を護りたい。お前がどうしても嫌だと言うなら団長権限で宿舎の改築を行って男が入れない様にするから」
ランスロットの瞳を驚いて見たアレスは気付く。この兄は本気でやり兼ねない事を。
だが、アレスにも事情がある。言ってしまえば兄との生活を拒みたい訳ではない。
だが、今のアレスにはどうしても一緒に生活する事を簡単に受け入れる事は出来なかった。こんなにも触れ合ってしまって気付いてしまっていた……アレスの中にランスロットへの感情が兄としての感情ではなく、男としてのランスロットへの想いがある事に。
そんな事を知られたら妹としても傍にいる事も、騎士としても傍にいる事も叶わなくなる。それだけは避けなくてはならない。
「あの……すぐには無理だけれど……落ち着いたら一緒に住むから……今すぐはごめんなさいさせて……」
「……分かった。だが、何かあればすぐに相談するように。お前が辛い想いをするのは兄として本意じゃない」
「……はい」
僅かな猶予を貰ってアレスは一先ず安心する。この期間で兄への恋心を殺すか封じなくてはならないのだから。
ランスロットの胸元に顔を埋めて温もりを感じながらアレスはこの先の自分の心との戦いに意識を向ける事になる。だが、それはほんの些細な抵抗であって運命の前では無駄な抵抗だったと後になってアレスは身をもって知る事になる。
新人騎士アレスの誕生が騎士団にどんな光を与え、ランスロットの心を救うのかはまだ誰も、アレスも知らない事である――――。
アレス以外の受験者達の回復も早く、全員が揃って試験結果の発表を受ける事が叶う。アレスはアルと共に受験者達の中で試験結果の発表を待っていた。
「どうなるんだろうな」
「こればっかりはなんとも言えないよ。だって私達、団長の言い付けを守らないで残って戦ってしまったんだし……。これで落ちたとしても仕方ないよ思う」
「まぁ、来年の試験を受ければいいだけの話だしな。お、結果が来たみたいだぜ」
担当官の姿が見えて受験者達に緊張の色が浮かぶ。アレスとアルも僅かに息を飲んで担当官から聞こえてくる言葉を聞き逃すまいと耳に意識を集中させる。
担当官はまず試験の最中に起こったアクシデントによる試験結果の判断査定は公平に行われた事と、今回の結果は団長と一部の騎士達による投票にて決まった事を告げた。これで全受験者達は結果が不公平ではなかった事と、今回の結果は受け入れるべきである事を理解する。
「それでは新人騎士試験の最終合格者を発表する。全受験者8名の中から最終合格者は……4名。1人目は……」
「4人、それだけしか合格しなかったって事か……」
「でも、それだけの実力者が合格したって事でもあるよね」
「3人目、アルフォッド」
「えっ?」
「おめでとうアル。合格したね」
「マジで? えっ、嘘じゃないよな??」
「最後の合格者……4人目、アレス」
「私の名が……呼ばれた?」
「アレスも合格じゃん! やったじゃんか!」
担当官は発表を終えると名を呼ばれた受験者達に向けて最後の言葉を紡ぐ。それは担当官を通じての合格者への連絡でもあった。
「今名を呼ばれた合格者達は速やかにこの後移動をして、騎士勲章の授与式に向かう様に。授与式は既に市民に知れ渡っているので式典に遅れたりしない様にする事」
「式典って……」
「俺達、もう騎士勲章を受け取れるのか?」
アレスとアルはお互いの顔を見合わせてキョトンとしていたが、すぐに状況を思い出して式典会場になるティクス城へ移動をし始める。他の2名の合格者達も一緒に移動をしていたが途中で1人の合格者である女性から声がアレスに届く。
「アレスさん」
「あ、はい?」
「お礼を言いたいの。ありがとう」
「えっ、どうしてお礼を言われるのですか?」
「最終試験の時に貴女が冷静さを持つ様に言わなかったら私死んでいたの。だから命の恩人よ貴女は」
「そんな。私はあの時無我夢中で叫んでいただけで……」
「貴女が言わなかったらきっと私も他の受験者達も命を落としていた。貴女は騎士になるべくなった素敵な人よ」
「……ありがとうございます。あのお名前をお伺いしても?」
「私はリディル。同じ女性騎士としてこれからは共に切磋琢磨していきましょう?」
「はいっ!」
リディルと名乗った茶色のセミロングと印象的なレッドアイを持つ女性は微笑みながらアレスの肩を叩く。それがアレスにとって騎士団に所属する事が決まって初めての友人でもあった。
アルとリディルと共に式典会場になる玉座の間に到着したアレスは緊張した面持ちで片膝を付いて玉座に座る国王ケンベルトの言葉を聞いていた。玉座の間には大臣達と共に軍師のロゼット、そして兄であり騎士団団長であるランスロットの姿もあった。
1人ずつ騎士勲章をケンベルトから授与していくと最後にアレスが呼ばれる。アレスはゆっくりとケンベルトの前に立ってしっかりとした眼差しをケンベルトに向けて授与される勲章を両手で受け取った。
「ここに4人の聖なる騎士が誕生した。これは我が国の宝でもあり、誇りでもあり、そして愛おしい我が子達でもある。この騎士達に神々の加護があらんことを」
「本日付で君達は聖騎士団の一員となる。団長であるランスロットの元で訓練を積み、来るべき時に備えて騎士としての成長を期待しているぞ」
「「「「はいっ!!」」」」
玉座の間から辞したアレス達を先輩騎士であるガルドとハルウッドが出迎えて歓迎会と称しての新人のお披露目会会場へと4人を連れて行く。食堂にて行われるこの歓迎は騎士団の習慣でもあるので先輩騎士達は今年の新人達に労いとこれからの関係を構築していく為の場所にもなるのであった。
玉座の間ではケンベルト・ロゼット・ランスロットの3名が今年の新人騎士について色々と話し込んでいた。注目はアルフォッドとアレスである。
「それにしてもアレスの存在は今年の騎士の中では優秀だな」
「あの少女が他の受験者達に冷静さを叫ばなかったら全滅は避けられなかったという報告も聞いている。お前の妹にしてはもったいない気もするがな」
「だが、まだ幼いし未熟だ。これからは俺達がしっかり導いてやって一人前の騎士に成長させないといけない。妹、だけの理由で甘やかす訳にはいかないだろう」
「ランスロット、それは城にいる間だけにしておけよ。家では出来るだけ甘やかしてやれ。なんせお前の傍にいる為だけに幼い頃の時間を全部この日の為に費やしてるのだからな」
「お前は変な所で頑固だからアレスの前でも団長面してそうだが、それは友人としても忠告するが、止めておけ。愛想を尽かされて兄離れされたら寂しいだろうからな」
「2人は妹じゃないから簡単に言うが、俺だって考えなきゃいけないんだからな」
ケンベルトとロゼットにこっぴどく言われて少々不機嫌になるランスロットに2人も微笑みを浮かべているのだった。歓迎会は夜遅くまで行われてアルとリディルとは別のテーブルで先輩騎士達に囲まれていたアレスにガルドとハルウッドが近寄り誘い出す。
アレスは2人に誘われて会場を後にして案内された場所に向かった。アレスも2人が自分だけを誘ったのも理由を察してる。
「ここがランスロット様の執務室です。中にランスロット様と部下の者が待っています」
「本当なら歓迎会にランスロットも行かせたかったんだが、団長という身分の手前簡単に抜け出せないんでな。会いたいだろう?」
「でも、お忙しいのでは……」
「そう言うと思って私達が仕事を分担して終わらせております。この後は兄妹の時間としてお過ごし頂ける予定ですよ」
「ランスロット、アレスを連れてきたぞ」
「あぁ、入ってくれ」
団長室から聞こえてきたランスロットの声にアレスの心が騒ぎ出す。初めてまともに妹としてランスロットの前に立つ事になる。
アレスはガルドに背を押されて団長室のドアをくぐった。中にはローレンスとロルゾの姿もあり、優しい微笑みを2人は向けてくれていた。
アレスの身体を優しく押して執務机の前に移動させたガルドはアレスから離れてローレンス達と共に団長室から辞する。アレスは少し戸惑いながらも真っ直ぐにランスロットを見つめていた。
「こうして話すのは初めてだな。……よく頑張った」
「あの……えっと……団長のご期待に応えれたなら良かったです……」
「ふふっ、ここでは団長と呼ぶのが正解ではあるが……兄とは呼んではくれないのか?」
「っ、そ、その……よ、呼んでもいいのですか……?」
「アレスと俺はたった1人の家族なんだ。俺が呼んで欲しいと言っているんだし呼んでいいんだぞ」
「……兄さん……ランスロット兄さん……」
「アレス……すぐにこの腕に迎えてやれなくてすまなかった……こんな俺を許してくれ」
「兄さん、兄さん!」
椅子から立ち上がりアレスの幼い身体を抱き締めたランスロットの腕の中でアレスは大粒の涙を流す。やっと迎える事の出来た愛おしい家族、兄と妹の時間がここから動き始める。
ブルーの髪の毛を優しく撫でながらまだあどけなさが残るアレスをランスロットは酷く大事にしたいと思ってしまう。この小さな身体を精一杯に使って自分に抱き着くアレスが酷く愛おしい。
アレスの身体を抱き上げてソファーに座って膝に座らせたランスロットは、まだ涙が残るアレスの目尻に口付けてそっと背中を撫でてやる。アレスの幼い両腕がランスロットの首に回って身体を寄せてスリスリと甘えてくる姿にランスロットの保護欲が高まっていく。
「アレス、これからは騎士としてもそうだが妹としても俺の傍にいてくれないか?」
「それ、は……」
「家族としての時間を過ごしたい」
「……」
「アレス?」
「私……宿舎で生活するつもりです……騎士になったから、それが当たり前だから……」
「そんな事を考えていたのか? お前は数少ない女性騎士だ。何が起こるかも分からない宿舎での生活を俺が許すと思うか?」
「で、でも……」
「離れていた分、お前の事を護りたい。お前がどうしても嫌だと言うなら団長権限で宿舎の改築を行って男が入れない様にするから」
ランスロットの瞳を驚いて見たアレスは気付く。この兄は本気でやり兼ねない事を。
だが、アレスにも事情がある。言ってしまえば兄との生活を拒みたい訳ではない。
だが、今のアレスにはどうしても一緒に生活する事を簡単に受け入れる事は出来なかった。こんなにも触れ合ってしまって気付いてしまっていた……アレスの中にランスロットへの感情が兄としての感情ではなく、男としてのランスロットへの想いがある事に。
そんな事を知られたら妹としても傍にいる事も、騎士としても傍にいる事も叶わなくなる。それだけは避けなくてはならない。
「あの……すぐには無理だけれど……落ち着いたら一緒に住むから……今すぐはごめんなさいさせて……」
「……分かった。だが、何かあればすぐに相談するように。お前が辛い想いをするのは兄として本意じゃない」
「……はい」
僅かな猶予を貰ってアレスは一先ず安心する。この期間で兄への恋心を殺すか封じなくてはならないのだから。
ランスロットの胸元に顔を埋めて温もりを感じながらアレスはこの先の自分の心との戦いに意識を向ける事になる。だが、それはほんの些細な抵抗であって運命の前では無駄な抵抗だったと後になってアレスは身をもって知る事になる。
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