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5章
39話「本国の危機」
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ティクス国の城に戻ってきたランスロットはすぐにロゼットの部下から事情を説明される。現段階で総指揮を取っているのがロゼットであり、国王のケンベルトは私室でディズ国の王女と出ようとはしていない事を伝えられる。
ケンベルトがそんな状態になっている事も驚きではあったが、今は本国の危機でもある。ランスロットは聖騎士団の団長として総指揮を執っているロゼットの元に駆け付けた。
「失礼」
「戻ったか。すぐにで悪いが聖騎士団の指揮を任せるぞ」
「それは承知の上だが、何が起こっている? 国王のケンベルト陛下が動かないとはかなり危険ではないか?」
「正直、ディズ国の王女に肩入れされ過ぎているのだがそれを今話しても解決策にはならない。今は国境を突破してきているディズ国の魔法騎士団の迎撃が優先だ」
「国境を超えているのか。それではこちらの部隊もそれに応じた編成にする。動かせる騎士は動かすぞ」
「あぁ、頼む。防衛線が突破されれば国内だけではない。城下の市民達にも被害が出るのは避けられん。何が何でも迎撃してくれ」
「分かった」
ランスロットはロゼットの手から指示の命令書を受け取ると颯爽と騎士団本部に駆け込む。ハルウッドとローレンスが既に準備を整えているのが幸いしてすぐに騎士団の再編成を行う事が出来た。
魔法騎士団の対応には同じ魔法騎士をぶつけるのが上策。そして、ティクスはディズ国に劣れはあるもの、魔法の騎士達の腕前は魔法を除いてもディズ国に引けは取らない。
ハルウッドを隊長に魔法騎士団の迎撃部隊の編成を完了させるとすぐに出立させた。ローレンスが占星術で読んだ未来を聞いてランスロットは暫く考え込む。
「ケンベルトの様子にも気掛りはある。ディズ国の王女の魔法に取り込まれている説も考えられるな」
「それに関してはロゼット様がそれなりに調査している筈でございます。ですが何の進展も見られている様子がないのであればきっとそれは違う答えだという事になります」
「それじゃケンベルト本人の意思、であると?」
「考えられる可能性として一番に高いのはそれです。しかし、陛下が何故に王女にそこまで拘られるのかは我々には分かり兼ねます」
「取り敢えずアレス達が戻り次第国内の守備も固める。ロルゾ達からの定期報告を受け取り次第報告を頼む」
「分かりました」
ローレンスが団長室から出ていくとランスロットは不意に足元に小さくなって見上げているルトを見付ける。ルトは黒い体毛の子猫、だが、ランスロットは何故かこのルトは普通の子猫じゃない、そんな気がして落ち着かないのである。
そして、その考えは明らかに当たっている事を知るのはこの後の言葉にて分かる。ルトの瞳は以前は金色にでは無かったのをに気付いてランスロットはルトに手を伸ばして固まる。
『気付いたか』
「……誰だ」
『そう警戒するでない。私はお前に危害を加える気はサラサラない。私の名はそのままルトと呼ぶとよいだろう』
「……ルト、お前は一体……」
『私は神々が遣わせた神々の力から産まれた神獣のルード。この姿は仮初なのは申し訳ないが、お前とアレスの存在を悪しきものから守る様に命じられている』
「神々の力が産んだ神獣……。俺とアレスを守る為に子猫の姿で傍にいたのか?」
『そうだ。そして、私の言葉を理解出来るのはお前とアレスのみだ。それ以外の者達には子猫の鳴き声にしか聞き取れん』
ランスロットはそこまで話を聞いて、この目の前にいるルトが本当に神々が遣わせた神獣なのかと疑ってしまっていた。ルトもそれに気付いているのだろう、尻尾を揺らしながら身体から淡い光を出すとランスロットの右手に光を宿す。
ランスロットの右手に淡い光が宿り、その光は段々とランスロットの身体の中に浸透していき、次第に身体の内部から思っている以上の光を感じ始める。急な光を感じたランスロットの瞳が大きく見開かれる。
『これでお前の瞳には”見える”ようになっている筈だ。真実を見せる力を与えている』
「真実を見せる力? 何が言いたい」
『国王である男の傍にいる娘、本当に”人間”か見極めるといい』
「まさか……」
『時は待ってはくれんぞ』
「くそっ!」
ルトの言葉に危機感を抱いたランスロットの行動は早かった。団長室から出ると急いでケンベルトの私室に向かう。
途中でガルドとロルゾに連れられたアレスも合流し、4人でケンベルトの私室に駆け込んだ。私室ではベッドの上にケンベルトが横たわり、その隣にディズ国の王女が横たわっている。
一見すると眠っている様に見えているが明らかに今のティクス国の状況では考えにくい。ランスロットの瞳がその2人の状態を見て違和感を感じ取った。
ケンベルトの身体に纏わりつく見えない程の白い糸。それが身体中に巻き付いているだけではない、首を締め付けるだけの太さにまで巻き付いているのが見えていたのである。
「ケンベルト! 目を覚ませ!」
「お、おいランスロット!!」
「いいのかよ、私室でそんな大声上げて……」
「兄さんには何か分かるのかも知れません。陛下の御身に何かあったのでしょうか」
ケンベルトの身体を揺さぶるランスロットの手にはケンベルトの異変は明らかに伝わってくる。これだけ近くで大声で叫んでも目を覚まさない、これは明らかに”異常”。
ディズ国の王女だと思われる女性の方に視線を向けたランスロットの瞳は、その女性の本来の姿……大きな鎌を持った死神の姿を捉えていた。ケンベルトの命を刈り取る為に化けているのがランスロットの瞳は捉えていたのである。
ラインハッドを引き抜いたランスロットにロルゾとガルドは目を見開くが、アレスには信じているのだろう、驚きは見せずにケンベルトを守る様に腰から剣を引き抜きランスロットの背後に控えた。
ランスロットの愛剣であり、神々の加護を受けた神剣ラインハッドを王女である女性の身体に突き刺すと女性は悲鳴を上げて、次第に黒くて鎌を持った死神へと変貌していく。ガルドとロルゾも事態を飲み込んで武器を構えた。
「いいか! ケンベルトに一切近付けさせるな!」
「俺とアレスで陛下を守るぞ!」
「はいっ!」
「ランスロット、よく見抜いた。こうなりゃ外に追い出す方が得策だ。任せてもらうぞ」
ガルドがそう告げて死神相手に聖なる魔法の力で出来た結界を展開させる。それと同時に死神は窓から外に飛び出して逃げ出そうとしている。
ランスロットとガルドが後を追って庭先に出ると死神は巨大な鎌を振り上げて構えていた。ランスロットとガルドの2人も剣を構えて死神と対峙する。
死神の窯が空を切ってガルドに迫る。ガルドはその鎌を白銀の剣で受け止めて動きを封じると魔法で死神の身体に聖なる魔法を打ち込む。
『グガガッ!!』
「死神だけあって聖なる魔法が苦手の様だな? いいぜ。沢山飲ませてやるから味わってくれや」
「油断はするな。相手は死神だ、何を隠し持っているかは不明だぞ」
「それならば問題はねぇ、この手の相手には俺様は百戦錬磨なんでな。行くぞ!!」
ガルドの白銀の剣が光を帯び始める。それを受けた死神が鎌から手を離して逃げる様に距離を取る。
だが、それすらも予測していたガルドが追撃に入る。死神はとっさに両腕を身体の前にクロスさせて防御姿勢になるが、ガルドはそんな防御すらも厭わないかの様に白銀の剣で振り抜く。
死神の身体が真っ二つに割れて……死神が2体に分裂してしまう。だが、それこそがガルドの狙いでもあった。
「やっぱりそこに核があるな? ありがとよ、わざわざ教えてくれて……よっ!!」
『!!』
「ガルド!」
ガルドの白銀の剣が片方の死神の頭を貫く。すると死神の身体は砂の様にサラサラと黒い粉になって消えていく。残された死神も同じ様に身体を黒い粉に変えて消えてしまった。
死神を倒してガルドは白銀の剣を肩に担いでラインハッドを片手に駆け寄るランスロットの方に向いて、ニカッと笑みを浮かべて親指を立てる。この逞しい仲間のお陰でランスロットはケンベルトの救出に成功。
アレスとロルゾが見守る中、意識を取り戻したケンベルトは重い身体を動かしながら起き上がって2人から事情を聞いていた。暫くの間沈黙していたケンベルトだが、アレスがそっとその手に触れて回復魔法を唱える。
「これでお身体の怠さは取れるかと」
「ありがとう。……ロルゾ、ロゼットを呼んでくれ。現状を把握次第ディズ国に報復行動を行う」
「承知しました」
「しかし、どうしてディズ国はこの様な行動を取ったのでしょうか。こんな危険な行動を」
「明らかにこのティクスを潰す為だと感じられる。アレスとランスロットが戻って来なかったら、俺はあのまま死んでいたのだろう」
「御身がご無事でようございました。兄も安心します」
アレスがそう言ってケンベルトの身体を支えていると、ランスロットとガルドが部屋に戻ってくる。ランスロットがガルドに入口の警備を任せてケンベルトに近付く。
ケンベルトはランスロットが戻った事に申し訳なさそうに頭を下げる。こんな目に遭わせる気は無かったのだから謝罪したかったのだろうとランスロットは思った。
「すまない」
「いや、お前が無事で良かった。それよりも伝えなくてはならない事がある」
「それはお前とアレスに関わる事か?」
「それとは別の事だ。お前の……先代の王についての事だ」
「親父の? どうして親父の事を今更聞かなきゃいけない? あの親父は国を捨てて行った愚かな……」
「それは違います陛下。先代の国王様はディズ国からティクス国を守る為に御身を犠牲にされておいででした」
「犠牲にしていた?」
「これから話すのはご本人のお口から聞いた事でもある。だが、決して先代の国王は国を捨てていた訳ではない。それだけは心の端に留めてこの話を聞いてくれ」
エドゥル国にいた間に知った先代のティクス国の国王の事や、水面下で交わされていた同盟の話を、そして、新たにエドゥル国とティクス国の国交を回復させたい意思がエドゥル国にある事。それらの話をランスロットはケンベルトに真正面から話をしていく。
最初はケンベルトも驚きと疑問に満ちた顔をしながら聞いていたが、ランスロットの真剣な表情と声でそれが真実であり望まれている事である事を理解すると真剣な顔で検討する考えに入る。そして、ケンベルトが考え込んでいる間にロゼットがロルゾと共にやってきて、ランスロットからケンベルトに話した内容が伝えられる。
「それが事実であるならばティクスの先代王は聡明なご判断をされた、と国民には示せる。そして、エドゥル国との国交回復も急がなくてはならないだろう」
「俺達の国がまだ安全とは言えない。市民達を逃がす為にもエドゥル国に同盟を申し込む為にも国交回復は急務だと思われる」
「……だが、正式な使者を立てたとして、エドゥル国にその気が本当にあればいいんだがな?」
「どういう事だ?」
「親父が本当に国を思っているのであれば何かしら手は打てていた筈だ。それを今まで何もしなかったのはどういう事だって事だ。まぁ、親父の事だから息子の俺の腕前を見極めようとしていたんだろうがな」
ケンベルトの言葉にロゼットとランスロットは溜め息を吐き出す。2人もケンベルトが子供の様に拗ねている事には気付いているからだ。
アレスが小さく微笑みを浮かべていたがそこに新しい報告が入ってくる。まだティクスの危機は去った訳ではない事を全員が思い出すのであった――――。
ケンベルトがそんな状態になっている事も驚きではあったが、今は本国の危機でもある。ランスロットは聖騎士団の団長として総指揮を執っているロゼットの元に駆け付けた。
「失礼」
「戻ったか。すぐにで悪いが聖騎士団の指揮を任せるぞ」
「それは承知の上だが、何が起こっている? 国王のケンベルト陛下が動かないとはかなり危険ではないか?」
「正直、ディズ国の王女に肩入れされ過ぎているのだがそれを今話しても解決策にはならない。今は国境を突破してきているディズ国の魔法騎士団の迎撃が優先だ」
「国境を超えているのか。それではこちらの部隊もそれに応じた編成にする。動かせる騎士は動かすぞ」
「あぁ、頼む。防衛線が突破されれば国内だけではない。城下の市民達にも被害が出るのは避けられん。何が何でも迎撃してくれ」
「分かった」
ランスロットはロゼットの手から指示の命令書を受け取ると颯爽と騎士団本部に駆け込む。ハルウッドとローレンスが既に準備を整えているのが幸いしてすぐに騎士団の再編成を行う事が出来た。
魔法騎士団の対応には同じ魔法騎士をぶつけるのが上策。そして、ティクスはディズ国に劣れはあるもの、魔法の騎士達の腕前は魔法を除いてもディズ国に引けは取らない。
ハルウッドを隊長に魔法騎士団の迎撃部隊の編成を完了させるとすぐに出立させた。ローレンスが占星術で読んだ未来を聞いてランスロットは暫く考え込む。
「ケンベルトの様子にも気掛りはある。ディズ国の王女の魔法に取り込まれている説も考えられるな」
「それに関してはロゼット様がそれなりに調査している筈でございます。ですが何の進展も見られている様子がないのであればきっとそれは違う答えだという事になります」
「それじゃケンベルト本人の意思、であると?」
「考えられる可能性として一番に高いのはそれです。しかし、陛下が何故に王女にそこまで拘られるのかは我々には分かり兼ねます」
「取り敢えずアレス達が戻り次第国内の守備も固める。ロルゾ達からの定期報告を受け取り次第報告を頼む」
「分かりました」
ローレンスが団長室から出ていくとランスロットは不意に足元に小さくなって見上げているルトを見付ける。ルトは黒い体毛の子猫、だが、ランスロットは何故かこのルトは普通の子猫じゃない、そんな気がして落ち着かないのである。
そして、その考えは明らかに当たっている事を知るのはこの後の言葉にて分かる。ルトの瞳は以前は金色にでは無かったのをに気付いてランスロットはルトに手を伸ばして固まる。
『気付いたか』
「……誰だ」
『そう警戒するでない。私はお前に危害を加える気はサラサラない。私の名はそのままルトと呼ぶとよいだろう』
「……ルト、お前は一体……」
『私は神々が遣わせた神々の力から産まれた神獣のルード。この姿は仮初なのは申し訳ないが、お前とアレスの存在を悪しきものから守る様に命じられている』
「神々の力が産んだ神獣……。俺とアレスを守る為に子猫の姿で傍にいたのか?」
『そうだ。そして、私の言葉を理解出来るのはお前とアレスのみだ。それ以外の者達には子猫の鳴き声にしか聞き取れん』
ランスロットはそこまで話を聞いて、この目の前にいるルトが本当に神々が遣わせた神獣なのかと疑ってしまっていた。ルトもそれに気付いているのだろう、尻尾を揺らしながら身体から淡い光を出すとランスロットの右手に光を宿す。
ランスロットの右手に淡い光が宿り、その光は段々とランスロットの身体の中に浸透していき、次第に身体の内部から思っている以上の光を感じ始める。急な光を感じたランスロットの瞳が大きく見開かれる。
『これでお前の瞳には”見える”ようになっている筈だ。真実を見せる力を与えている』
「真実を見せる力? 何が言いたい」
『国王である男の傍にいる娘、本当に”人間”か見極めるといい』
「まさか……」
『時は待ってはくれんぞ』
「くそっ!」
ルトの言葉に危機感を抱いたランスロットの行動は早かった。団長室から出ると急いでケンベルトの私室に向かう。
途中でガルドとロルゾに連れられたアレスも合流し、4人でケンベルトの私室に駆け込んだ。私室ではベッドの上にケンベルトが横たわり、その隣にディズ国の王女が横たわっている。
一見すると眠っている様に見えているが明らかに今のティクス国の状況では考えにくい。ランスロットの瞳がその2人の状態を見て違和感を感じ取った。
ケンベルトの身体に纏わりつく見えない程の白い糸。それが身体中に巻き付いているだけではない、首を締め付けるだけの太さにまで巻き付いているのが見えていたのである。
「ケンベルト! 目を覚ませ!」
「お、おいランスロット!!」
「いいのかよ、私室でそんな大声上げて……」
「兄さんには何か分かるのかも知れません。陛下の御身に何かあったのでしょうか」
ケンベルトの身体を揺さぶるランスロットの手にはケンベルトの異変は明らかに伝わってくる。これだけ近くで大声で叫んでも目を覚まさない、これは明らかに”異常”。
ディズ国の王女だと思われる女性の方に視線を向けたランスロットの瞳は、その女性の本来の姿……大きな鎌を持った死神の姿を捉えていた。ケンベルトの命を刈り取る為に化けているのがランスロットの瞳は捉えていたのである。
ラインハッドを引き抜いたランスロットにロルゾとガルドは目を見開くが、アレスには信じているのだろう、驚きは見せずにケンベルトを守る様に腰から剣を引き抜きランスロットの背後に控えた。
ランスロットの愛剣であり、神々の加護を受けた神剣ラインハッドを王女である女性の身体に突き刺すと女性は悲鳴を上げて、次第に黒くて鎌を持った死神へと変貌していく。ガルドとロルゾも事態を飲み込んで武器を構えた。
「いいか! ケンベルトに一切近付けさせるな!」
「俺とアレスで陛下を守るぞ!」
「はいっ!」
「ランスロット、よく見抜いた。こうなりゃ外に追い出す方が得策だ。任せてもらうぞ」
ガルドがそう告げて死神相手に聖なる魔法の力で出来た結界を展開させる。それと同時に死神は窓から外に飛び出して逃げ出そうとしている。
ランスロットとガルドが後を追って庭先に出ると死神は巨大な鎌を振り上げて構えていた。ランスロットとガルドの2人も剣を構えて死神と対峙する。
死神の窯が空を切ってガルドに迫る。ガルドはその鎌を白銀の剣で受け止めて動きを封じると魔法で死神の身体に聖なる魔法を打ち込む。
『グガガッ!!』
「死神だけあって聖なる魔法が苦手の様だな? いいぜ。沢山飲ませてやるから味わってくれや」
「油断はするな。相手は死神だ、何を隠し持っているかは不明だぞ」
「それならば問題はねぇ、この手の相手には俺様は百戦錬磨なんでな。行くぞ!!」
ガルドの白銀の剣が光を帯び始める。それを受けた死神が鎌から手を離して逃げる様に距離を取る。
だが、それすらも予測していたガルドが追撃に入る。死神はとっさに両腕を身体の前にクロスさせて防御姿勢になるが、ガルドはそんな防御すらも厭わないかの様に白銀の剣で振り抜く。
死神の身体が真っ二つに割れて……死神が2体に分裂してしまう。だが、それこそがガルドの狙いでもあった。
「やっぱりそこに核があるな? ありがとよ、わざわざ教えてくれて……よっ!!」
『!!』
「ガルド!」
ガルドの白銀の剣が片方の死神の頭を貫く。すると死神の身体は砂の様にサラサラと黒い粉になって消えていく。残された死神も同じ様に身体を黒い粉に変えて消えてしまった。
死神を倒してガルドは白銀の剣を肩に担いでラインハッドを片手に駆け寄るランスロットの方に向いて、ニカッと笑みを浮かべて親指を立てる。この逞しい仲間のお陰でランスロットはケンベルトの救出に成功。
アレスとロルゾが見守る中、意識を取り戻したケンベルトは重い身体を動かしながら起き上がって2人から事情を聞いていた。暫くの間沈黙していたケンベルトだが、アレスがそっとその手に触れて回復魔法を唱える。
「これでお身体の怠さは取れるかと」
「ありがとう。……ロルゾ、ロゼットを呼んでくれ。現状を把握次第ディズ国に報復行動を行う」
「承知しました」
「しかし、どうしてディズ国はこの様な行動を取ったのでしょうか。こんな危険な行動を」
「明らかにこのティクスを潰す為だと感じられる。アレスとランスロットが戻って来なかったら、俺はあのまま死んでいたのだろう」
「御身がご無事でようございました。兄も安心します」
アレスがそう言ってケンベルトの身体を支えていると、ランスロットとガルドが部屋に戻ってくる。ランスロットがガルドに入口の警備を任せてケンベルトに近付く。
ケンベルトはランスロットが戻った事に申し訳なさそうに頭を下げる。こんな目に遭わせる気は無かったのだから謝罪したかったのだろうとランスロットは思った。
「すまない」
「いや、お前が無事で良かった。それよりも伝えなくてはならない事がある」
「それはお前とアレスに関わる事か?」
「それとは別の事だ。お前の……先代の王についての事だ」
「親父の? どうして親父の事を今更聞かなきゃいけない? あの親父は国を捨てて行った愚かな……」
「それは違います陛下。先代の国王様はディズ国からティクス国を守る為に御身を犠牲にされておいででした」
「犠牲にしていた?」
「これから話すのはご本人のお口から聞いた事でもある。だが、決して先代の国王は国を捨てていた訳ではない。それだけは心の端に留めてこの話を聞いてくれ」
エドゥル国にいた間に知った先代のティクス国の国王の事や、水面下で交わされていた同盟の話を、そして、新たにエドゥル国とティクス国の国交を回復させたい意思がエドゥル国にある事。それらの話をランスロットはケンベルトに真正面から話をしていく。
最初はケンベルトも驚きと疑問に満ちた顔をしながら聞いていたが、ランスロットの真剣な表情と声でそれが真実であり望まれている事である事を理解すると真剣な顔で検討する考えに入る。そして、ケンベルトが考え込んでいる間にロゼットがロルゾと共にやってきて、ランスロットからケンベルトに話した内容が伝えられる。
「それが事実であるならばティクスの先代王は聡明なご判断をされた、と国民には示せる。そして、エドゥル国との国交回復も急がなくてはならないだろう」
「俺達の国がまだ安全とは言えない。市民達を逃がす為にもエドゥル国に同盟を申し込む為にも国交回復は急務だと思われる」
「……だが、正式な使者を立てたとして、エドゥル国にその気が本当にあればいいんだがな?」
「どういう事だ?」
「親父が本当に国を思っているのであれば何かしら手は打てていた筈だ。それを今まで何もしなかったのはどういう事だって事だ。まぁ、親父の事だから息子の俺の腕前を見極めようとしていたんだろうがな」
ケンベルトの言葉にロゼットとランスロットは溜め息を吐き出す。2人もケンベルトが子供の様に拗ねている事には気付いているからだ。
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