私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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5章

40話「ギリギリの防衛線」

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「ご報告致します! 国境を超えた魔法騎士部隊を迎撃に出られたハルウッド様の部隊が撃破に成功! しかしながら、まだディズ国の進軍は止まず、魔法騎士団が防衛しておりますがギリギリだと援軍要請が届いております!」
「ハルウッド達でも厳しいか」
「ロルゾ、ローレンスとアレスと共に編成部隊の準備を整えろ。俺も出る」
「了解」
「兄さんっ」
「ここで防衛線が突破されたら国自体が危ない目に遭う。騎士としてそれは止めないといけない。分かるな?」
「陛下、ディズ国の動きを読んでこちらからも仕掛ける時かも知れません。例の部隊を動かすご許可を」
「そうだな。その部隊の指揮はロゼットお前が執れ。俺が前線に出たいが国王が前線に出るのは最後の瞬間だろうからな。それまで力を蓄えておく」
「ケンベルト、例の部隊ってなんだ?」
「行きながら説明する。陛下、失礼します」
 ロゼットと共にランスロット達も私室から出ていく。アレスはロルゾと共にロゼットとランスロットの背後に並んで歩き、ランスロットはロゼットの口から語られる部隊の詳細を聞いていく。
 その部隊は過去にエルンシア家が暗部を請け負っていた頃に育成していた、秘密裏に結成された部隊の残存兵達であるとはロゼットから話をされる。そして、その部隊を使う事はそれだけティクス国が本気、である事を示している事にも繋がっている。
 ランスロットは暗部の人間達であるレダルを使っているが、そのレダルとは別の人間達の部隊ともなれば多少の手荒さは仕方ないのかも知れない。そう考えているとロゼットがアレスとロルゾに振り向き2人に告げる。
「ロルゾ、アレス、今後は騎士団長ランスロットの事を守り通せるだけの戦力を整えておけ。今後はランスロットの事を狙ってくる輩も増えて来るぞ」
「任せてくれ。騎士団長の1人も守れないで何が騎士だ」
「私も全力で兄を守り通します」
「2人とも……」
「ランスロット。お前とアレス、2人はこのティクスの要とも言える。くれぐれも危ない橋を渡るのは要注意しながら渡ってくれ」
「……そうだな。肝に命じておこう」
 ランスロットはアレスとロルゾと共に騎士団本部に戻って行く。ロゼットは秘密の部隊を編成に向かう為に騎士団本部の前で別れた。
 ロルゾとアレスは今後の防衛線の事について話し合っているがランスロットは空を見上げて考える。この天気だと魔法騎士団も簡単には実力を発揮するのは難しいかも知れないな、と考えて。
 ローレンスがガルドと共に編成に入れれる騎士達の招集を行っている最中だった。そして、同時にランスロットの命令1つで戦地へ行けるだけの戦力を用意してもくれていた。
「準備は出来ているぜ」
「戦地の状況から、ディズ国の重歩兵隊の部隊が先行している模様。魔法騎士隊では少々荷が重いかと。なので、こちらの騎兵隊をメインに揃えております」
「ロルゾ、天気は?」
「明日に掛けて豪雨だ。雷も激しいだろう。だが、地面がぬかるむのなら重歩兵部隊にはかなり不利な状況にはなる」
「ディズ国には風読み師はいないが星読み師はいると聞きます。こちらの事も読んでいるかと思われます」
「騎兵団の出立を命じる。それと同時に弓兵と軽兵の騎士達の部隊を再編成。防衛ラインの構築を行うぞ」
 ランスロットがテキパキと指示を出し、それをアレスとローレンスが処理してロルゾとガルドが部下達に指示を伝えていく。ハルウッド達からの援軍として騎兵隊を向かわせている間に、ランスロットがルトをチラッと見つめる。
 ルトはちょこんと座ってランスロットに視線を合わせている。そんなルトの鳴き声が団長室に響くとアレスがピシっと動きを止めた。
「えっ……?」
「どーしたアレス?」
「にゃ~ん」
「気のせい、だよね……あ、すみません。すぐに指示を伝えてきます!」
「ルト、意図的に鳴くな。アレスが”驚く”だろう」
「にゃ?」
「そりゃ無理だろ。ルトに俺達の言葉が分かってくれるだけの才能があったら、こんな殺伐とした空気の中にいねぇよ」
 ロルゾが苦笑しながらアレスの指示とは別の指示を持って団長室を出て行く。団長室にはルトとランスロットしかいなくなる。
 ランスロットは小さく溜め息を吐き出してルトが何故”鳴いた”のかを問い掛ける。そうルトは神々がランスロットとアレスを守る為に遣わせた神獣であり、その言葉を聞けるのはランスロットとアレスだけである事を前にランスロットに話をしているのである。
「それで、何故鳴いた?」
『それは簡単だ。アレスに危機感を持たせる為だ』
「危機感を持たせてどうする。まだあの子を前線に出すとは決めていない」
『気付いてないだけではないか? この城の中にもアレスを手に入れようとする者達は溢れているのだぞ。女はいつだってか弱い存在だ』
「……」
『お前の力を奪う事を考えている者達がアレスを野放しにするならば、それは大きな勘違いというものよ。お前の一番の弱点はあのアレス。それを知らぬ者達はおらぬ』
 ルトの言葉にランスロットも危機感を再確認する。確かに、ディズ国の手の者がこの城内に入り込んでいる事も視野に入れていたが、その者達がアレスを狙わないとは限らない事を思い出す。
 アレスを手元に置けば安心するかと言えるかも知れない。だが、現実はアレスが傍にいる事は殆ど不可能に近い状況でもある。
 ルトの言葉を考えてどうするのが一番の方法かと考えていると、話題になっているアレスが戻ってくる。ランスロットとルトの姿にアレスは少しぎこちなくランスロットに近寄り言いにくそうに質問してきた。
「ランスロット……少し変な事を聞いてもいい?」
「どうした?」
「……ルトが喋る……っておかしいよね?」
「……」
「あぁ! 聞かなかった事にして!!」
『別に聞いてもいいのではないか?』
「ひっ!? ル、ルトなの!?」
「アレス、ルトは神々が俺とアレスを守る為に遣わされた神獣だそうだ。だからアレスと俺にしか言葉は聞こえない。だからビックリさせてすまないとは思っていたんだが」
 アレスはルトの正体を聞いて驚きの連続で固まる。そんなアレスの足元にヒョコっとルトは降りて身体を押し付けるとにゃーんと鳴いて見上げる。
 その鳴き声は普通に子猫の鳴き声で、アレスは真面目に困惑した顔をランスロットに向ける。ランスロットはそんなアレスの頭をポンポンとしながらルトを片手で抱き上げて胸元に持つ。
『アレス、少しばかり思わしくないのだろう?』
「あ、そうだった……。今ハルウッド様の部隊からの報告が。ディズ国の城門から謎の魔法が放たれたのが確認されているそうです」
「謎の魔法? どんな現象が起きているか報告には?」
「それが確認をしようにも、重歩兵達の追撃が思っている以上に激しいのか、伝令の騎士も傷だらけで医務室に運ばれてそれ以上の事は……」
『ランスロット。もしかしても知れんが……禁呪の1つを使ってる事も視野に入れておけ』
「そうだな。考えられるありとあらゆる悪い事は考えておくべきだろう。情報を集める為に特定の騎士達を行かせるか」
「禁呪……」
 アレスが不安気な顔をしているとルトが尻尾をアレスの頬に押し当てて宥める。ルトも小さな身体でアレスを落ち着かせる姿にランスロットは少々ではあるが違和感を感じします。
 そして、ランスロットはルトをアレスに渡すとアレスに団長室で留守番を頼み、団長室を後にした。向かうはレダルの控えている騎士団の隅にある影の者達の部屋。
 ロゼットが動かす者達よりも精鋭でもあるし、エルンシア家の人間であるランスロットの命令には忠実なレダル。アレスを守る事も命令には含めれるのを思い出したのである。
「入るぞ」
「主様」
「暫く暗部の仕事は表立ってないが、お前達に頼みがある」
「我らに命令があるのですか?」
「命令ではない。頼みだ」
「??」
「今後、俺が不在の時でいい。アレスを守ってほしい。俺に何かあればアレスがお前達の次期主になる」
「次期主様を守れと。承知しました。アレス様をお守りします」
「あぁ、すまないが頼む。アレスの危機にはお前達が全力で守ってくれ」
 レダルの人間達は全員がランスロットの弱点であるアレスを知っている。だからこそ主であるランスロットの命令は絶対であり、頼みだろうと受け入れるのがレダルだ。
 ギリギリの防衛線を突破されたらアレスも自然と戦場に出なくてはならない。その時にランスロットは傍にいる事は叶わない。
 なので、レダルの力を持って守る事はエルンシア家の為でもあり、ランスロットの為にも繋がる。アレスはこの先エルンシア家の要にもなる事は明白である。
 レダルに頼んだランスロットは静かにその足を礼拝堂に向ける。嫌な予感ではない、ないのだが、少しでも神々に願っておきたかった。
 この状況下でアレスの事を願っておこうと考えていた。ランスロットの中でアレスの事が何よりも心にあるのは愛する者だから、だけではない。
「……」
「あ、ランスロット様。お祈りでございますか?」
「あぁ、今いいだろうか」
「はい。出立されていく方々も先程お祈りを終えられたので。それでは私はあちらにいますので、お好きにお使いになられて下さい」
「すまない」
 神父の男性に感謝して、ランスロットは礼拝堂の中央まで歩みを進める。そして、床に片膝をついて祈りの体勢を取ると神々に祈りを捧げる。
 どうかこの胸の中に生まれてくる不安をどうにか出来ないかとかは言わない。ただ、アレスの事をどうかお守り下さい、そう祈っていた。
 光がステンドグラスから差し込みランスロットの身体を包み込む。まるでランスロットの祈りを受け取った神々からの返事の様な光をランスロットは静かに受け入れる。
「神々よ、この危機的状況を救ってみせます。だから……アレスをお見守り下さい」
 そう告げてランスロットは身体を立たせてから礼拝堂を後にする。そして、向かうのはアレスが留守番をしている団長室。
 状況は刻々と悪化していく、だが、それでも諦める事はランスロットはしない。それはきっと自分の中にある光を信じれなくなった時にする最終的な判断であると、ランスロットは考えているからだ。
 全てはランスロットの世界はアレス無しでは回らない事に繋がっている。そう、アレスとランスロットの2人がいる世界こそ神々が愛した世界なのだから――――。
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