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8章
63話「叶わないのと諦めたりする心に」
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「離して!」
「お前は人質だと忘れている様だが、お前の行動1つでティクス国も滅ぶのだぞ?」
「っ、そんな事……出来る訳がない!」
『それが可能だとしたら?』
「!」
アレスは部屋から闇の眷属達により死者の塔最上階の門の前に連れて来られていた。そこで聞こえて来た声に身体を反応させて門を凝視してしまう。
その凝視している先にクッキリとではあるが大きな身体を持った霊体が浮かび上がってくる。その威圧感はアレスには初めてで、恐怖もあったが奮い立たせる様にアレスは大声で叫ぶ。
「どんな方法を使ったとしても、ランスロットが貴方なんかに負けたりする訳がない! 私は信じている! ランスロットがティクスを守ってくれるって事を!」
『だがな、それはあの男の加護があればの話だ』
「……何が言いたいの」
『お前がその身を汚された事を知って激情ゆえに神々の力を使わないで闇に染まったとしたら……どうなるかな?』
「なにを……嫌ッ! 何するの!?」
アレスの着ていた服を闇の眷属達は引き裂いていく。そして下着姿にしたアレスの身体を固定して破者の王であるラオンの前に差し出す。
門から触手の様な物体が生えて来ればアレスの身体に巻き付き、そして下着を消化液で溶かし始める。下手に動けば消化液が皮膚に掛かって怪我を負う事をアレスは本能的に察して動きが取れない。
裸になってしまう事に羞恥心を煽られ、唇を噛み締めて耐えているが足を闇の眷属者達の手により限界にまで開かされて蜜壺を露わにされてしまう。これにはアレスも息を詰めて抵抗する様に足を閉じようとする。
『クククッ、聖女とも呼ばれている女の身体を闇の力が染め上げたと知ったら……あの男は冷静さを保てていられるだろうかな?』
「っ……た、例え私は身体を穢されても、心は、魂だけは貴方になんかに屈したりしない!」
『ならば、その身体を我が子を成す為の器にしてくれるわ。味わうがいい、過去の聖王と呼ばれた我が精をその身体を持って受け止めよ!』
「ひっ、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
死者の塔の最上階に響くアレスの叫び声にフィンもルトも何も出来ずに、ただ歯を食い縛って耐えるしか無かった。今アレスを救えるのは誰もいない。
身体を貫かれる痛みと苦しみに耐えながら、アレスは必死に心の中でランスロットの名を呼び続ける。そうしないと精神も心も魂も穢されると思っていたから。
どれくらいの時間が経過したか、アレスは既に意識のない状態で部屋に戻されていた。フィンがすぐに風呂に入れてラオンの出した液体を丁寧に蜜壺から掻き出して、子を受胎するのを阻止してくれたお陰でアレスの身体に子が成す事はなかった。
だが、アレスの身体には闇の力を受け入れた証拠として蔓の様な、鎖の様な痣が手足に出始めているのをフィンとルトは見ている。そして、フィンはアレスの身体に光の力を満たす為に、自分の知に宿る光を注ぐように手を握り締めていた。
「アレス……神々よ、どうかこの愛おし子にご加護をお与えくださいませ……」
『まさか、破者の王がアレスを穢すとはな……この事をランスロットが知ったらどうなる事か……』
「それでも、アレスにはきっと神々のご加護がある……この闇の力に染まってしまう前にランスロットが助けに来てくれればいいのですが……」
ランスロットが来る事を一途に信じているアレスにとって、この死者の塔から助け出される事が一番の救いでもある。そして、アレスの精神世界に変化が訪れ始める。
深い闇に包まれていく精神世界の中で、アレスは1人歩いている。その中でアレスに伸びてくる闇の触手にアレスは捕まり声も無く怯えるしか無かった。
『我が子を成せ』
『我が子を成せ』
『我が子を成せ』
「っ、いや……助けて……ランスロットっ……助けてっ」
アレスの身体を絡み取る触手達はアレスの身体を縛り上げていく。そして、身体を纏う服を溶かしていき、またその触手で犯そうとし始める。
それに恐怖を感じているアレスは段々と光の力を感じる事に気付く。周囲が光を生み出すのを見たアレスは光にランスロットの力を感じ取る。
「ランスロット!!」
『アレス』
『光、消す!』
『この女の光を消せ!』
触手達が光を消そうとするが光は一気に強さを上げて触手たちを消滅させていく。そして、アレスの身体を包み込む光にはランスロットの愛情をアレスは確かに感じ取る事が出来た。
現実のアレスも意識を浮上させて伏せていた瞼を上げて覚醒するとフィンが顔を覗き込む。アレスはまだぼんやりする意識の中でフィンを見て涙を浮かべる。
「アレスっ」
「おば……さ、ま……私……」
「よく耐えました。あの闇の力に屈しなかった事は素晴らしい事です。ごめんなさい……私には何も出来なかった……」
「だいじょ、ぶです……ランスロットが……守ってくれたから……」
「ランスロットが?」
アレスは自分の左手の薬指に嵌められている指輪を見つめる。愛している、と刻まれている文字を持つこの指輪にはランスロットの愛が詰め込まれている。
それがアレスをあの闇から救ってくれたのだと、フィンはそこで気付く。アレスの手足の痣はまだ消えないが、それでもアレスには絶望の色は見えなかった。
諦めたりしないでいられるのは、それだけランスロットの愛情がアレスを守っている事に繋がっている。それがフィンには救いであった。
自分にはアレスを守る事は出来ない。この死者の塔をランスロットが攻略するまでアレスの身を闇から守る以外の方法しかフィンにはない。
「ルト、私には何が出来るのでしょうか……。孫であるアレスの身を闇から守るしか出来ない私に出来る事とは……」
『アレスの心を守る事ではないか? アレスにとってランスロットもお前も大事な家族には変わりない。その家族こそアレスの光の力になるというのは間違いないのだからな』
「私の存在がアレスの力になるのであればいいのですが……。闇の眷属達にこれ以上好きにさせない為にもアレスに光を満たさなくては……」
フィンはそう言いながら自身の光をアレスに注いでいく。アレスも次第に意識を覚醒させていきながら徐々に状況を理解し始める。
このままだとアレスの身体を味わった破者の王はこれから何度でもアレスの身体を穢す為に、何度でもこの身体を犯しに掛かるだろう。そして、その度にアレスは闇に怯えて、光の力を削られていく。
このままでいればアレスはそう遠くない未来に、闇に染まってしまう。ランスロットを待っている間になんとかして光を強める事を考えなくてはならない。
だが、アレスは希望を失っている訳ではなかった。信じられる、光を、ランスロットの事を。
「ん……よし、身体はある程度落ち着いた……お婆様、手を貸して下さい」
「どうするの?」
「お婆様の血が私に力を貸してくれるのであれば、こうする事できっと……」
アレスはフィンの手を握り締めて祈りを捧げると、フィンの身体に光が感じられる。これにはフィンも感じ取れた光であり、その光には懐かしさを感じ取る事も出来た。
死者の塔にいたとしても神々がアレスを見放したりしている訳ではない事をフィンはこの時点で知る事が出来た。そう、アレスの身体に光が差し込んで部屋中に光が満ちているのである。
「これは……神々の安らぎの力……」
『まさか、聖女の力が覚醒し始めたのか? だとしてもこんなに光の力を集めれるのは……』
「神々の指先が触れる……神々の吐息が聞こえる……神々の唇による安らぎ……」
アレスの口から漏れる言葉にフィンもルトも驚きが見られる。そして、それは同時にアレスが聖女としての覚醒をし始めた事を知る事にも繋がった。
皮肉だな、とルトは思う。身体を汚された結果、聖女としての力に覚醒し始めるのはあまり喜ばしい事ではないと言えるのは事実である。
だが、これで破者の王に対抗する力の1つにはなれるのもまた事実ではあった。ルトとフィンはアレスの身体に光が満ちて闇の痣が消えるのを確認している。
「お婆様、この力の使い方を教えて下さい。私は負けたりしたくない」
「……険しい力になりますよ。それでもいいのですね?」
「はい。私は愛する人達の為にこの力を使って光を導きます。そして、聖女としてランスロットの隣でティクス国を守る力になります」
強い決意を秘めた瞳に迷いは無かった。それどころかアレスの瞳には微かに神の力を引く者の証が見え始めている。
フィンとルトはそれに気付きながらも自分達の力と同等以上の力を持つだろうアレスに、心を砕く事以外の方法が見当たらなかった。それだけの力を恐らくランスロットの身体にも覚醒が出始める事になる事も2人は知っている。
ランスロットの方でもその力の前兆はあった。攻略部隊の最終調整が始まって少しした頃に、ランスロットの元に天から光が差し込んだのである。
これを見ていた他の騎士達は神々がランスロットに力を与えている、と思い士気が上がっていたが実際はランスロットの心にアレスが穢された事、そして、聖女として覚醒し始めた事を伝えている最中であった。アレスが穢された事を知って怒りを覚えていたランスロットの心に神々が言葉を掛ける。
『ランスロットの力を感じたからこそ、聖女は闇に打ち勝ったのだとしたらどうする?』
「俺の力を感じた?」
『お前が聖女に贈った指輪、あれが聖女の光を守ったのだ。お前が祈りを捧げて贈った指輪の存在が聖女の心を守ったのだよ』
「あの指輪が……。アレスは無事なのですか?」
『今はな。聖女として目覚めればそう長くは無事ではいられるまい。急ぎ取り返すのだ。そして、聖女と共に闇の王を倒し、ガハランド大陸に光をもたらしてくれ』
「分かりました」
光が消えるとランスロットの愛剣、ラインハッドが強い力を帯びる。神々がまた新しい力を与えてくれたのだとラインハッドの柄を撫でながらランスロットは思う。
アレスを穢したのは恐らく破者の王、ラオンだろうと目星を付けるとランスロットの瞳には憎悪よりも怒りよりも深い決意が宿る。アレスの受けた苦しみをその身を以って味わわせないと気が済まないとランスロットの心の中は物凄い荒れ模様ではあった。
一歩間違えれば闇に近い程の感情の入り乱れ方に、ランスロットの心は少々冷静さを欠けているがそれでもアレスが自分の贈った指輪を見て助かったと知った時は嬉しいと素直に思えた。離れていても愛し合っている、愛を繋げている、そう言われている気がしたから。
「アレス、待っていろよ。もう少しの辛抱だから……この腕に取り戻すまで耐えてくれ」
ランスロットは静かにそう呟いて調整が終わったと聞こえて来た言葉に意識を戻して、団長としての命令を出しに移動し始める。攻略部隊の前に立ったランスロットは闇夜にも映える美しい銀髪に星々の光を浴びてより気高さを魅せる。
「これより死者の塔攻略に向かう。そして、聖女アレス・エルンシアの救出を最優先とし、我々神聖国ティクスの聖騎士団である力を以って、破者の王ラオンを倒すぞ!」
「おー!!」
「勇気ある、気高し聖騎士達よ! 剣を握り、いざ神々の名の下に進軍開始!」
ランスロットの一言で攻略部隊はティクス国を夜の暗闇に負けない輝きを以って発つ。目指すはガハランド大陸北部にある死者の塔、破者の王ラオン――――!
「お前は人質だと忘れている様だが、お前の行動1つでティクス国も滅ぶのだぞ?」
「っ、そんな事……出来る訳がない!」
『それが可能だとしたら?』
「!」
アレスは部屋から闇の眷属達により死者の塔最上階の門の前に連れて来られていた。そこで聞こえて来た声に身体を反応させて門を凝視してしまう。
その凝視している先にクッキリとではあるが大きな身体を持った霊体が浮かび上がってくる。その威圧感はアレスには初めてで、恐怖もあったが奮い立たせる様にアレスは大声で叫ぶ。
「どんな方法を使ったとしても、ランスロットが貴方なんかに負けたりする訳がない! 私は信じている! ランスロットがティクスを守ってくれるって事を!」
『だがな、それはあの男の加護があればの話だ』
「……何が言いたいの」
『お前がその身を汚された事を知って激情ゆえに神々の力を使わないで闇に染まったとしたら……どうなるかな?』
「なにを……嫌ッ! 何するの!?」
アレスの着ていた服を闇の眷属達は引き裂いていく。そして下着姿にしたアレスの身体を固定して破者の王であるラオンの前に差し出す。
門から触手の様な物体が生えて来ればアレスの身体に巻き付き、そして下着を消化液で溶かし始める。下手に動けば消化液が皮膚に掛かって怪我を負う事をアレスは本能的に察して動きが取れない。
裸になってしまう事に羞恥心を煽られ、唇を噛み締めて耐えているが足を闇の眷属者達の手により限界にまで開かされて蜜壺を露わにされてしまう。これにはアレスも息を詰めて抵抗する様に足を閉じようとする。
『クククッ、聖女とも呼ばれている女の身体を闇の力が染め上げたと知ったら……あの男は冷静さを保てていられるだろうかな?』
「っ……た、例え私は身体を穢されても、心は、魂だけは貴方になんかに屈したりしない!」
『ならば、その身体を我が子を成す為の器にしてくれるわ。味わうがいい、過去の聖王と呼ばれた我が精をその身体を持って受け止めよ!』
「ひっ、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁー!!!!!」
死者の塔の最上階に響くアレスの叫び声にフィンもルトも何も出来ずに、ただ歯を食い縛って耐えるしか無かった。今アレスを救えるのは誰もいない。
身体を貫かれる痛みと苦しみに耐えながら、アレスは必死に心の中でランスロットの名を呼び続ける。そうしないと精神も心も魂も穢されると思っていたから。
どれくらいの時間が経過したか、アレスは既に意識のない状態で部屋に戻されていた。フィンがすぐに風呂に入れてラオンの出した液体を丁寧に蜜壺から掻き出して、子を受胎するのを阻止してくれたお陰でアレスの身体に子が成す事はなかった。
だが、アレスの身体には闇の力を受け入れた証拠として蔓の様な、鎖の様な痣が手足に出始めているのをフィンとルトは見ている。そして、フィンはアレスの身体に光の力を満たす為に、自分の知に宿る光を注ぐように手を握り締めていた。
「アレス……神々よ、どうかこの愛おし子にご加護をお与えくださいませ……」
『まさか、破者の王がアレスを穢すとはな……この事をランスロットが知ったらどうなる事か……』
「それでも、アレスにはきっと神々のご加護がある……この闇の力に染まってしまう前にランスロットが助けに来てくれればいいのですが……」
ランスロットが来る事を一途に信じているアレスにとって、この死者の塔から助け出される事が一番の救いでもある。そして、アレスの精神世界に変化が訪れ始める。
深い闇に包まれていく精神世界の中で、アレスは1人歩いている。その中でアレスに伸びてくる闇の触手にアレスは捕まり声も無く怯えるしか無かった。
『我が子を成せ』
『我が子を成せ』
『我が子を成せ』
「っ、いや……助けて……ランスロットっ……助けてっ」
アレスの身体を絡み取る触手達はアレスの身体を縛り上げていく。そして、身体を纏う服を溶かしていき、またその触手で犯そうとし始める。
それに恐怖を感じているアレスは段々と光の力を感じる事に気付く。周囲が光を生み出すのを見たアレスは光にランスロットの力を感じ取る。
「ランスロット!!」
『アレス』
『光、消す!』
『この女の光を消せ!』
触手達が光を消そうとするが光は一気に強さを上げて触手たちを消滅させていく。そして、アレスの身体を包み込む光にはランスロットの愛情をアレスは確かに感じ取る事が出来た。
現実のアレスも意識を浮上させて伏せていた瞼を上げて覚醒するとフィンが顔を覗き込む。アレスはまだぼんやりする意識の中でフィンを見て涙を浮かべる。
「アレスっ」
「おば……さ、ま……私……」
「よく耐えました。あの闇の力に屈しなかった事は素晴らしい事です。ごめんなさい……私には何も出来なかった……」
「だいじょ、ぶです……ランスロットが……守ってくれたから……」
「ランスロットが?」
アレスは自分の左手の薬指に嵌められている指輪を見つめる。愛している、と刻まれている文字を持つこの指輪にはランスロットの愛が詰め込まれている。
それがアレスをあの闇から救ってくれたのだと、フィンはそこで気付く。アレスの手足の痣はまだ消えないが、それでもアレスには絶望の色は見えなかった。
諦めたりしないでいられるのは、それだけランスロットの愛情がアレスを守っている事に繋がっている。それがフィンには救いであった。
自分にはアレスを守る事は出来ない。この死者の塔をランスロットが攻略するまでアレスの身を闇から守る以外の方法しかフィンにはない。
「ルト、私には何が出来るのでしょうか……。孫であるアレスの身を闇から守るしか出来ない私に出来る事とは……」
『アレスの心を守る事ではないか? アレスにとってランスロットもお前も大事な家族には変わりない。その家族こそアレスの光の力になるというのは間違いないのだからな』
「私の存在がアレスの力になるのであればいいのですが……。闇の眷属達にこれ以上好きにさせない為にもアレスに光を満たさなくては……」
フィンはそう言いながら自身の光をアレスに注いでいく。アレスも次第に意識を覚醒させていきながら徐々に状況を理解し始める。
このままだとアレスの身体を味わった破者の王はこれから何度でもアレスの身体を穢す為に、何度でもこの身体を犯しに掛かるだろう。そして、その度にアレスは闇に怯えて、光の力を削られていく。
このままでいればアレスはそう遠くない未来に、闇に染まってしまう。ランスロットを待っている間になんとかして光を強める事を考えなくてはならない。
だが、アレスは希望を失っている訳ではなかった。信じられる、光を、ランスロットの事を。
「ん……よし、身体はある程度落ち着いた……お婆様、手を貸して下さい」
「どうするの?」
「お婆様の血が私に力を貸してくれるのであれば、こうする事できっと……」
アレスはフィンの手を握り締めて祈りを捧げると、フィンの身体に光が感じられる。これにはフィンも感じ取れた光であり、その光には懐かしさを感じ取る事も出来た。
死者の塔にいたとしても神々がアレスを見放したりしている訳ではない事をフィンはこの時点で知る事が出来た。そう、アレスの身体に光が差し込んで部屋中に光が満ちているのである。
「これは……神々の安らぎの力……」
『まさか、聖女の力が覚醒し始めたのか? だとしてもこんなに光の力を集めれるのは……』
「神々の指先が触れる……神々の吐息が聞こえる……神々の唇による安らぎ……」
アレスの口から漏れる言葉にフィンもルトも驚きが見られる。そして、それは同時にアレスが聖女としての覚醒をし始めた事を知る事にも繋がった。
皮肉だな、とルトは思う。身体を汚された結果、聖女としての力に覚醒し始めるのはあまり喜ばしい事ではないと言えるのは事実である。
だが、これで破者の王に対抗する力の1つにはなれるのもまた事実ではあった。ルトとフィンはアレスの身体に光が満ちて闇の痣が消えるのを確認している。
「お婆様、この力の使い方を教えて下さい。私は負けたりしたくない」
「……険しい力になりますよ。それでもいいのですね?」
「はい。私は愛する人達の為にこの力を使って光を導きます。そして、聖女としてランスロットの隣でティクス国を守る力になります」
強い決意を秘めた瞳に迷いは無かった。それどころかアレスの瞳には微かに神の力を引く者の証が見え始めている。
フィンとルトはそれに気付きながらも自分達の力と同等以上の力を持つだろうアレスに、心を砕く事以外の方法が見当たらなかった。それだけの力を恐らくランスロットの身体にも覚醒が出始める事になる事も2人は知っている。
ランスロットの方でもその力の前兆はあった。攻略部隊の最終調整が始まって少しした頃に、ランスロットの元に天から光が差し込んだのである。
これを見ていた他の騎士達は神々がランスロットに力を与えている、と思い士気が上がっていたが実際はランスロットの心にアレスが穢された事、そして、聖女として覚醒し始めた事を伝えている最中であった。アレスが穢された事を知って怒りを覚えていたランスロットの心に神々が言葉を掛ける。
『ランスロットの力を感じたからこそ、聖女は闇に打ち勝ったのだとしたらどうする?』
「俺の力を感じた?」
『お前が聖女に贈った指輪、あれが聖女の光を守ったのだ。お前が祈りを捧げて贈った指輪の存在が聖女の心を守ったのだよ』
「あの指輪が……。アレスは無事なのですか?」
『今はな。聖女として目覚めればそう長くは無事ではいられるまい。急ぎ取り返すのだ。そして、聖女と共に闇の王を倒し、ガハランド大陸に光をもたらしてくれ』
「分かりました」
光が消えるとランスロットの愛剣、ラインハッドが強い力を帯びる。神々がまた新しい力を与えてくれたのだとラインハッドの柄を撫でながらランスロットは思う。
アレスを穢したのは恐らく破者の王、ラオンだろうと目星を付けるとランスロットの瞳には憎悪よりも怒りよりも深い決意が宿る。アレスの受けた苦しみをその身を以って味わわせないと気が済まないとランスロットの心の中は物凄い荒れ模様ではあった。
一歩間違えれば闇に近い程の感情の入り乱れ方に、ランスロットの心は少々冷静さを欠けているがそれでもアレスが自分の贈った指輪を見て助かったと知った時は嬉しいと素直に思えた。離れていても愛し合っている、愛を繋げている、そう言われている気がしたから。
「アレス、待っていろよ。もう少しの辛抱だから……この腕に取り戻すまで耐えてくれ」
ランスロットは静かにそう呟いて調整が終わったと聞こえて来た言葉に意識を戻して、団長としての命令を出しに移動し始める。攻略部隊の前に立ったランスロットは闇夜にも映える美しい銀髪に星々の光を浴びてより気高さを魅せる。
「これより死者の塔攻略に向かう。そして、聖女アレス・エルンシアの救出を最優先とし、我々神聖国ティクスの聖騎士団である力を以って、破者の王ラオンを倒すぞ!」
「おー!!」
「勇気ある、気高し聖騎士達よ! 剣を握り、いざ神々の名の下に進軍開始!」
ランスロットの一言で攻略部隊はティクス国を夜の暗闇に負けない輝きを以って発つ。目指すはガハランド大陸北部にある死者の塔、破者の王ラオン――――!
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