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9章
72話「もう離さない」
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腕の中で眠っているアレスを感じながらランスロットはうとうとしていた。腕枕をしたままアレスの髪の毛を撫でながらランスロットは眠い目を閉じそうになっているが、寝る訳にはいかなかった。
徹夜をするのが慣れている訳ではないが、それでもアレスが寝ている間に魘されているのを知っていると無理して起こす訳にもいかず。だから起きた時に問い掛けるしか出来ない訳なのだが。
「……んぅ」
「……起きたか……?」
「らん、すろっと……?」
「おはよう、気分はどうだ?」
「……あれ……私……」
寝ぼけ眼でランスロットを見上げてくるアレスの瞳に少し影が過ぎる。それをランスロットは見逃さない。
アレスのブルーの髪を撫でながら優しく問い掛けてみながら、微かな光をアレスの身体に注いでいく。その光のお陰でアレスの思考も纏まり始めているのか、次第に覚醒していくのが伺えた。
「あぁ……お屋敷で、ランスロットの腕枕で寝ていたんだっけ……」
「何か白昼夢でも見ていたかの様な口振りだな。何か夢でも見ていたのか?」
「あのね……少し不思議な夢を見ていたの……」
「ん、聞かせて?」
ランスロットがそっとアレスの額に口付けて優しく促すと、アレスは少し照れた様に赤くなりながら微笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。そして、その見ていた夢を聞いたランスロットの瞳は大きく開かれた。
「お婆様がいて、ランスロットがいて、私がベッドで赤ん坊を抱いてて、その赤ん坊が私とランスロットの子供だって分かる……幸せな夢を見ていたの」
「……」
「あ、おかしいとか言わないでね!? 私の理想が夢に出てきただけの話なんだから……」
「……アレス、その夢を叶えたいと思わないか?」
「えっ……」
「その話を聞いたら我慢出来なくなった。愛し合おう」
「ちょ、あぁ……もう、ランスロットのバカっ」
結局、朝から愛し合ってベッドの住民と化したアレスの世話をランスロットがするのは既に当たり前の事になっている。そして、暫く屋敷で愛し合っていた日々を過ごしてアレスは完全に穢れも祓われ、聖女として力に満ちている身体でティクス王城に登城していた。
隣には当たり前の様にランスロットの姿があって。アレスは騎士の姿ではなく、ローブ姿の聖女としての服装に身を包んで登城している。
アレスの聖女の力を以ってティクスの守りを固める必要がある為に、朝から神殿に向かって聖女の力を使う心構えを会得している。そして、アレスは救出されて初めてティクスの城の玉座の間に姿を見せた。
「アレス! 身体はもう大丈夫なのですか?」
「はい。ご心配をお掛け致しました。本日より騎士ではなく、聖女として城に仕える事になります。ロック陛下、どうかこのお力をお役立て下さい」
「ランスロットの許可があるのであれば何かと心配はないだろうが、アレス、お前の祖母であるフィン殿と共に城の守りを頼めるか」
「はい、それでお婆様は?」
「今ハルウッド達と共にエドゥル国の騎士達の守護を祈ってもらっている。直にエリッド達とここに来る事になっている」
「アレス、ランスロット様、お2人の存在が揃ったので初めてお話する事になりますが、国内のマリージュ達に新しい神託が下されています。そのご神託はお2人はもうお聞きになっていたりしますか?」
「いえ、私もランスロットもここに来るまで何も。聞いている?」
「いや、俺も聞いていない」
アレスが隣に立つランスロットを見上げるとランスロットも首を横に振って聞いていない事を知らせる。そしてロックは神託について書き残されている書面をアレスとランスロットも見れる様にと兵士に持って来させて読ませてくれた。
マリージュ達に下された神託の内容を読み進めて行く2人。2人は読み終わると顔を上げてロックと向き合った。
「これが誠なら……ラオンはやはり」
「あの異界での姿を考えれば、俺以外の依代を得ていたと考えてもおかしい話ではないが。まさかディズ国の人間の肉体を依代にするとはな」
「はい。そして、ラオンはこのティクスに宣戦布告をしてくると思われています。市民の避難は済んでいますので、このティクス国内にて最終決戦を行う必要があるかと思います。その為にもお2人にはお力をお借りしたいと思っています」
ロックが見せてきた神託の書かれた紙に記されていたのは次の様な文面であった。
『異界の王、新たな肉体の器を得、神聖国に迫り、そして争いの幕が開ける』
この文面からラオンが新しいランスロット以外の依代を手に入れてガハランド大陸に出てきて、そして、神聖国ティクス国に戦争を仕掛けに来ると考えていいだろう。そして、その場合の防衛はランスロットの役目である。
ロックも既に決戦の決意は固まっているのだろう。1人の王として最後までこの国を守るという決意は固い。
そして、父親でエドゥル国の王でもあるルーディルは既にエドゥル国の騎士達に向かって命令を出していた。共にティクス国を守るつもりらしい。
「陛下、この度の戦いでは聖騎士団に随行する事をお許し下さい」
「ですが、また危ない目に合うかもしれません。それでも行くのですか?」
「私の聖女の力は聖騎士団の者達を支える「光」となります。激戦になるだろう最前線の騎士達の心の拠り所になる事が聖女の役目でもあります。私の事を信じてくれる騎士達の為にも行かせて下さい」
「……ランスロットはいいのか?」
「アレスがこんなに強く望んでいる。俺としては陛下のご許可が下るのであれば全力でアレスを守り通すまでだ」
「分かりました。それでは国王として聖女アレスに命じます。騎士達と共にこの神聖国ティクスを守りなさい」
「はい」
こうしてアレスは聖騎士団と共に最前列に行く事が定まった。そして、フィンと合流したアレスは城の内部にある礼拝堂に赴き祈りを捧げてくると言うのでアルフォッドとオルベを護衛に、アレスとランスロットは別れてそれぞれの役目を全うし始める。
ハルウッド達と共に騎士団の今の戦力を確認をし始めるとローレンスが星読みをした結果を報告してくれる。どうもラオンの進軍速度は予想に反して早いとの結果が出たという。
それに対して騎士団の疲労や防衛に回せる騎士団の人数を計算しているとエリッド達が団長室にやってくる。彼らもまた今回最前線に出てくれるとロゼットから聞かされている。
「ラオンの進行速度が早いってローレンスさんから聞きました。ランスロットさんはどうお考えですか?」
「向こうの戦力は魔物とアンデット部隊だろうと思われる。その為に確実に戦力を削る為に今決戦の地を決めている所だ」
「何処でも同じなんじゃないの?」
「我々聖騎士団は魔法の力、ロドの力が強いと本来以上の力を使う事が出来ます。その為に決戦の地はロドが使いやすい場所の方がいいのですよ」
ローレンスの言葉にアルディシア達も納得する。聖騎士団の本領発揮出来れば少しの戦力差があったとしてもそう簡単に覆されたりはしないだろうと知っているからだ。
そして、今回の騎士団の随行に聖女であるアレスもいる。騎士団の総指揮を執るランスロットは気合いが充分に入ってる事もあって、他の騎士達も気合いが入っているのだろうと推測が出来る。
エリッド達やローレンス達と検討を重ねた結果。決戦の地はティクス国から東の平原に定まった。
そこの平原は草木の生えていない、本当にまっ平な平原で見通しも良く、ロドの高まりもいい具合に高いのが決戦の地に選ばれた理由である。ここならラオンの戦力を削りやすい。
「それでは上手くこの地にラオンを誘い込めればいいんだね」
「その心配はないでしょう。ラオンはランスロット様の肉体をまだ欲している筈。そして、最終決戦の地にアレス嬢もいれば自然とラオンはこちらに来ます。肉体と聖女を手に入れればラオンの勝利は確定ですからね」
「その為にもランスロット様の御身を守らないといけませんが。ガルド、分かっていますね?」
「おうよ。親衛騎士としてしっかり守るさ」
「俺やローレンスは武器での攻撃よりも魔法での攻撃がメインだから、接近戦ではお前達が頼りだ。頼んだぜ、最強の親衛騎士様達」
「ロルゾに言われると立場がないな2人とも。だが、ここまで来たんだ……あとは俺達がしっかり勝利をすればティクスだけじゃない、ガハランド大陸にも光が満ちる」
ランスロットの瞳は未来を見据えていた。アレスとの間に生まれてくる我が子、祖母のフィンとの生活、そして、平和な家庭を築く事。
それらの為にもランスロットはこの戦いを勝ち抜くつもりでいる。勝たなければならないのも分かってはいるのだが。
ランスロットはフィンを連れて戻ってきたアレスにそっと寄り添う。フィンの手を借りて歩いていたアレスが気になったからだ。
「ごめんなさい……履き慣れない靴で足が痛くて……」
「騎士として履いていた靴とは聖女の靴は異なるから、無理をしていたみたいなのです」
「無理はするなと約束したのを忘れていたのか? 見せてみなさい」
「ごめんなさい……」
アレスの靴は騎士の時はブーツタイプだったが、聖女の靴はサンダルタイプで。踵の部分が赤く腫れ上がっていた。
ランスロットはアレスを優しくお姫様抱っこすると団長椅子に座らせて踵に治癒魔法を掛ける。そして、回復させるとすぐに以前から用意していたアレスに贈ろうとしていた靴を履かせる。
「これって……」
「前に欲しがっていたタイプの靴だ。これなら痛みも出ないだろう。帰りはこれで帰ろう。お婆様も今日は屋敷に来てください」
「あら、いいのですか? 執事の人達もビックリするでしょう」
「大丈夫ですよ。父さんの代から仕えてくれている人達なので、お婆様の事を歓迎してくれます。いいよなアレス?」
「うんっ! お婆様、一緒に帰りましょう?」
「それじゃ……お言葉に甘えて帰りましょうか」
こうして家族3人は下城して屋敷に向かう。屋敷ではフィンの部屋を事前に用意する様にとランスロットは連絡していたので、帰宅と同時に執事達がフィンを優しく迎えた。
フィンは用意された部屋に案内され、アレスも部屋で着替えを、ランスロットは自室にてラフな部屋着に着替えると少し窓辺に寄って空を見上げていた。このティクスを守る事はアレスとフィンの事を守る事に繋がる事を考えていたのである。
「ランスロット、入ってもいい?」
「どうぞ」
「お婆様がこれをランスロットにって」
「これは……」
「私にも同じのを下さったの。なんでも光の力を強めてくれる守護石を使っているとは聞いている」
「お婆様にもご心配をお掛けしてしまったな。……アレス」
「なぁに?」
「もう離さない……二度と俺の前からいなくなるな」
「……うん、離さないで」
アレスと抱き合って言葉を紡ぎ合う2人は決して離れる事はないのだろう。例え運命が2人を引き離したとしても、それは運命ではなく、試練だと2人は思うのであろう――――。
徹夜をするのが慣れている訳ではないが、それでもアレスが寝ている間に魘されているのを知っていると無理して起こす訳にもいかず。だから起きた時に問い掛けるしか出来ない訳なのだが。
「……んぅ」
「……起きたか……?」
「らん、すろっと……?」
「おはよう、気分はどうだ?」
「……あれ……私……」
寝ぼけ眼でランスロットを見上げてくるアレスの瞳に少し影が過ぎる。それをランスロットは見逃さない。
アレスのブルーの髪を撫でながら優しく問い掛けてみながら、微かな光をアレスの身体に注いでいく。その光のお陰でアレスの思考も纏まり始めているのか、次第に覚醒していくのが伺えた。
「あぁ……お屋敷で、ランスロットの腕枕で寝ていたんだっけ……」
「何か白昼夢でも見ていたかの様な口振りだな。何か夢でも見ていたのか?」
「あのね……少し不思議な夢を見ていたの……」
「ん、聞かせて?」
ランスロットがそっとアレスの額に口付けて優しく促すと、アレスは少し照れた様に赤くなりながら微笑みを浮かべて言葉を紡ぐ。そして、その見ていた夢を聞いたランスロットの瞳は大きく開かれた。
「お婆様がいて、ランスロットがいて、私がベッドで赤ん坊を抱いてて、その赤ん坊が私とランスロットの子供だって分かる……幸せな夢を見ていたの」
「……」
「あ、おかしいとか言わないでね!? 私の理想が夢に出てきただけの話なんだから……」
「……アレス、その夢を叶えたいと思わないか?」
「えっ……」
「その話を聞いたら我慢出来なくなった。愛し合おう」
「ちょ、あぁ……もう、ランスロットのバカっ」
結局、朝から愛し合ってベッドの住民と化したアレスの世話をランスロットがするのは既に当たり前の事になっている。そして、暫く屋敷で愛し合っていた日々を過ごしてアレスは完全に穢れも祓われ、聖女として力に満ちている身体でティクス王城に登城していた。
隣には当たり前の様にランスロットの姿があって。アレスは騎士の姿ではなく、ローブ姿の聖女としての服装に身を包んで登城している。
アレスの聖女の力を以ってティクスの守りを固める必要がある為に、朝から神殿に向かって聖女の力を使う心構えを会得している。そして、アレスは救出されて初めてティクスの城の玉座の間に姿を見せた。
「アレス! 身体はもう大丈夫なのですか?」
「はい。ご心配をお掛け致しました。本日より騎士ではなく、聖女として城に仕える事になります。ロック陛下、どうかこのお力をお役立て下さい」
「ランスロットの許可があるのであれば何かと心配はないだろうが、アレス、お前の祖母であるフィン殿と共に城の守りを頼めるか」
「はい、それでお婆様は?」
「今ハルウッド達と共にエドゥル国の騎士達の守護を祈ってもらっている。直にエリッド達とここに来る事になっている」
「アレス、ランスロット様、お2人の存在が揃ったので初めてお話する事になりますが、国内のマリージュ達に新しい神託が下されています。そのご神託はお2人はもうお聞きになっていたりしますか?」
「いえ、私もランスロットもここに来るまで何も。聞いている?」
「いや、俺も聞いていない」
アレスが隣に立つランスロットを見上げるとランスロットも首を横に振って聞いていない事を知らせる。そしてロックは神託について書き残されている書面をアレスとランスロットも見れる様にと兵士に持って来させて読ませてくれた。
マリージュ達に下された神託の内容を読み進めて行く2人。2人は読み終わると顔を上げてロックと向き合った。
「これが誠なら……ラオンはやはり」
「あの異界での姿を考えれば、俺以外の依代を得ていたと考えてもおかしい話ではないが。まさかディズ国の人間の肉体を依代にするとはな」
「はい。そして、ラオンはこのティクスに宣戦布告をしてくると思われています。市民の避難は済んでいますので、このティクス国内にて最終決戦を行う必要があるかと思います。その為にもお2人にはお力をお借りしたいと思っています」
ロックが見せてきた神託の書かれた紙に記されていたのは次の様な文面であった。
『異界の王、新たな肉体の器を得、神聖国に迫り、そして争いの幕が開ける』
この文面からラオンが新しいランスロット以外の依代を手に入れてガハランド大陸に出てきて、そして、神聖国ティクス国に戦争を仕掛けに来ると考えていいだろう。そして、その場合の防衛はランスロットの役目である。
ロックも既に決戦の決意は固まっているのだろう。1人の王として最後までこの国を守るという決意は固い。
そして、父親でエドゥル国の王でもあるルーディルは既にエドゥル国の騎士達に向かって命令を出していた。共にティクス国を守るつもりらしい。
「陛下、この度の戦いでは聖騎士団に随行する事をお許し下さい」
「ですが、また危ない目に合うかもしれません。それでも行くのですか?」
「私の聖女の力は聖騎士団の者達を支える「光」となります。激戦になるだろう最前線の騎士達の心の拠り所になる事が聖女の役目でもあります。私の事を信じてくれる騎士達の為にも行かせて下さい」
「……ランスロットはいいのか?」
「アレスがこんなに強く望んでいる。俺としては陛下のご許可が下るのであれば全力でアレスを守り通すまでだ」
「分かりました。それでは国王として聖女アレスに命じます。騎士達と共にこの神聖国ティクスを守りなさい」
「はい」
こうしてアレスは聖騎士団と共に最前列に行く事が定まった。そして、フィンと合流したアレスは城の内部にある礼拝堂に赴き祈りを捧げてくると言うのでアルフォッドとオルベを護衛に、アレスとランスロットは別れてそれぞれの役目を全うし始める。
ハルウッド達と共に騎士団の今の戦力を確認をし始めるとローレンスが星読みをした結果を報告してくれる。どうもラオンの進軍速度は予想に反して早いとの結果が出たという。
それに対して騎士団の疲労や防衛に回せる騎士団の人数を計算しているとエリッド達が団長室にやってくる。彼らもまた今回最前線に出てくれるとロゼットから聞かされている。
「ラオンの進行速度が早いってローレンスさんから聞きました。ランスロットさんはどうお考えですか?」
「向こうの戦力は魔物とアンデット部隊だろうと思われる。その為に確実に戦力を削る為に今決戦の地を決めている所だ」
「何処でも同じなんじゃないの?」
「我々聖騎士団は魔法の力、ロドの力が強いと本来以上の力を使う事が出来ます。その為に決戦の地はロドが使いやすい場所の方がいいのですよ」
ローレンスの言葉にアルディシア達も納得する。聖騎士団の本領発揮出来れば少しの戦力差があったとしてもそう簡単に覆されたりはしないだろうと知っているからだ。
そして、今回の騎士団の随行に聖女であるアレスもいる。騎士団の総指揮を執るランスロットは気合いが充分に入ってる事もあって、他の騎士達も気合いが入っているのだろうと推測が出来る。
エリッド達やローレンス達と検討を重ねた結果。決戦の地はティクス国から東の平原に定まった。
そこの平原は草木の生えていない、本当にまっ平な平原で見通しも良く、ロドの高まりもいい具合に高いのが決戦の地に選ばれた理由である。ここならラオンの戦力を削りやすい。
「それでは上手くこの地にラオンを誘い込めればいいんだね」
「その心配はないでしょう。ラオンはランスロット様の肉体をまだ欲している筈。そして、最終決戦の地にアレス嬢もいれば自然とラオンはこちらに来ます。肉体と聖女を手に入れればラオンの勝利は確定ですからね」
「その為にもランスロット様の御身を守らないといけませんが。ガルド、分かっていますね?」
「おうよ。親衛騎士としてしっかり守るさ」
「俺やローレンスは武器での攻撃よりも魔法での攻撃がメインだから、接近戦ではお前達が頼りだ。頼んだぜ、最強の親衛騎士様達」
「ロルゾに言われると立場がないな2人とも。だが、ここまで来たんだ……あとは俺達がしっかり勝利をすればティクスだけじゃない、ガハランド大陸にも光が満ちる」
ランスロットの瞳は未来を見据えていた。アレスとの間に生まれてくる我が子、祖母のフィンとの生活、そして、平和な家庭を築く事。
それらの為にもランスロットはこの戦いを勝ち抜くつもりでいる。勝たなければならないのも分かってはいるのだが。
ランスロットはフィンを連れて戻ってきたアレスにそっと寄り添う。フィンの手を借りて歩いていたアレスが気になったからだ。
「ごめんなさい……履き慣れない靴で足が痛くて……」
「騎士として履いていた靴とは聖女の靴は異なるから、無理をしていたみたいなのです」
「無理はするなと約束したのを忘れていたのか? 見せてみなさい」
「ごめんなさい……」
アレスの靴は騎士の時はブーツタイプだったが、聖女の靴はサンダルタイプで。踵の部分が赤く腫れ上がっていた。
ランスロットはアレスを優しくお姫様抱っこすると団長椅子に座らせて踵に治癒魔法を掛ける。そして、回復させるとすぐに以前から用意していたアレスに贈ろうとしていた靴を履かせる。
「これって……」
「前に欲しがっていたタイプの靴だ。これなら痛みも出ないだろう。帰りはこれで帰ろう。お婆様も今日は屋敷に来てください」
「あら、いいのですか? 執事の人達もビックリするでしょう」
「大丈夫ですよ。父さんの代から仕えてくれている人達なので、お婆様の事を歓迎してくれます。いいよなアレス?」
「うんっ! お婆様、一緒に帰りましょう?」
「それじゃ……お言葉に甘えて帰りましょうか」
こうして家族3人は下城して屋敷に向かう。屋敷ではフィンの部屋を事前に用意する様にとランスロットは連絡していたので、帰宅と同時に執事達がフィンを優しく迎えた。
フィンは用意された部屋に案内され、アレスも部屋で着替えを、ランスロットは自室にてラフな部屋着に着替えると少し窓辺に寄って空を見上げていた。このティクスを守る事はアレスとフィンの事を守る事に繋がる事を考えていたのである。
「ランスロット、入ってもいい?」
「どうぞ」
「お婆様がこれをランスロットにって」
「これは……」
「私にも同じのを下さったの。なんでも光の力を強めてくれる守護石を使っているとは聞いている」
「お婆様にもご心配をお掛けしてしまったな。……アレス」
「なぁに?」
「もう離さない……二度と俺の前からいなくなるな」
「……うん、離さないで」
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