私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

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10章

78話「2人で手を取り合って」

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 魂と身体の清めを行う為に、ティクス国内の神殿に赴いているランスロットとアレス。2人は神殿に到着するとまずは大巫女より神々の祝福を授かる事を提案される。
 祝福は名前の通り、祝われる事なのだが何に対しての祝福かとランスロットは大巫女に問い掛けると大巫女は静かに微笑みながらマリージュ達から聞かされている神託について、ランスロットとアレスに伝えておきたい事があると告げる。そのマリージュ達から聞かされている神託の内容を2人は聞かせてもらう事にした。
「まず、聖女に新しい生命の輝きが見えると神々が申しておいでです。それは即ち女性だから出来る、子を授かるという事でしょう」
「それでは……」
「私のお腹に赤ちゃんがいるって事ですか……?」
「そうです。その命は愛し合い、そして、望まれて授かった命。その命の為にも神々はより一層貴方達を愛して下さりましょう。そして、神託の一番重要な神託の内容ですが……神々が聖女と申し子に新しい力を授ける事を示唆しております」
「神々が新しい力を俺達に……それはありがたいのですが、その神託通りに事が進むにはまずは清めの儀式を済ませなくてはならないのではありませんか?」
「そうですね。ですので、まず新しい命に祝福を与え、そして、そこから清めの儀式に入りたいなと考えています」
 ランスロットとアレスの両名は静かに大巫女から神々の祝福を受ける事にする。少なくとも2人の愛の結晶であるお腹の子供の為にも、神々の祝福は受け取るべきだと2人は判断したのである。
 祝福を受ける為に祈りを捧げていたランスロットとアレスを神々は静かに見守る。そして、2人の間に出来た子供へ祝福を授けてくれる様に、光が神殿を中心にティクス国に広がりを見せる。
 祝福を受け終わった2人はまずは身体の清めから始める為に、別々となって身体の清めに向かう。ランスロットには男の神官達が付き添い、長い髪の毛を中心に身体の隅々まで清めていく。
 アレスの方は女性の巫女達が付き添い、身体全体を清めていくと続いて魂の清めにアレスは充分な時間を掛ける事になる。ラオンの手により穢された身体と魂をいくらランスロットの光とフィンの光があったとしても、完全に穢れを祓うには神殿で魂の清めを行い、身体と魂を正常な清らかな状態にしなくてはならないのである。
 それが結果としてランスロットの光を増させる事にも繋がる事もなる上に、アレス自身の力を増す事にもなるのである。アレスの光が正常に増さないとランスロットが純血の天使を呼ぶ事は叶わない。
「それでは聖女様、こちらの台座に横になられて下さい」
「はい」
「まずは身体の清めを終えているので魂の穢れをこちらの神具によって魂から引き剥がします。そして、その穢れを浄化し、魂に残る傷を癒していきます」
「お願いします」
 大巫女の説明をしっかり聞いたアレスはそっと部屋の中央にある台座に上がって横になる。ブルーの髪の毛が台座からはみ出て水が溢れ出ているかの様なイメージを浮かばせる。
 アレスの身体に白い布が掛けられて、神具が用意されると大巫女が聖魔法の呪文を詠唱し始める。それと同時に神具へとアレスの魂が受けた穢れが吸い込まれていき始める。
 痛みはなく、ただ身体中の悪い毒素の様な者が抜けていく感じをアレスは感じていた。そして、アレスの意識が徐々に穏やかな眠りに落ちるかの様な速度で落ちていく。
 アレスの意識が落ちたのを確認した大巫女は、そのアレスの額に手を添えてそっと印を結ぶ。その印がアレスの身体中の光を増加させて身体全体に生命力を溢れさせてくれる。
「あとは自然と穢れが浄化されるのを待ちます。皆は聖女様の事をしっかりお見守りするのですよ。私は申し子様の方に行きますのでここは任せます」
 大巫女は巫女達にアレスを任せて、部屋から出て行くとランスロットのいる部屋に向かって歩いて行く。ランスロットの方では台座ではなく椅子に座って魂の浄化を受けている途中であった。
 大巫女が到着すると同時にランスロットの意識も落ちて、大巫女はランスロットの右手に印を結ぶ。少しだけランスロットの眉間が寄るがそれも一時的なものですぐに穏やかな寝顔に変わる。
 神官達にランスロットの身体を冷やさぬようにと指示をしてから大巫女は深い祈りを捧げる。その祈りを受けた神々の力がランスロットの身体を包み込んでいくのが伺えた。
「申し子様と聖女様の意識が回復したら温かいスープで身体を温める様に。そして、例の物を用意しておいて下さい。この方々には必要な物です」
 ランスロットとアレスが目覚めたのは清めの儀式が行われて3時間後の昼時。身体を動かして硬くなった筋肉を解してから、用意されているスープで中から身体を温める。
 アレスは聖女の正装着としてのローブを着込み、そして、腰には短剣を持つ事を許された。ランスロットは元々着けていた鎧を着込み、ラインハッドを腰に差すと髪を高い位置で結い上げて気合いを入れる。
「聖女様、申し子様、清めは無事に終わりました。これで闇の穢れは無くなりお2人は神々の光の力を強く受け取る事が出来ます」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました。それじゃ私達はもう前線に戻っても?」
「その前にお1つお渡ししておきたい物がございます。どうぞこちらにお越しください」
 大巫女が歩いて案内した先の部屋には1本の矢が置かれていた。ランスロットはその矢が何か既視感を覚え、アレスはその矢に強い光を感じる事が出来て、首を傾げてしまう。
 2人を矢の前に案内して、その矢を守る結界を魔法で解除すると両手で持ち上げる。矢は重厚な光を帯びており、まるで自我のある様な存在感を感じさせる。
「この矢は……聖なる武器の力を受け、神々の加護を受けた聖樹から切り出されて作成された「聖なる矢」でございます。この矢から感じられるかと思いますが、この矢には「自我」があります」
「聖なる武器の力を受けているのであれば……この矢の力は闇を祓う力だと思っても?」
「そうです。そして、この矢も神々の力の元「人の姿」を持つ矢でもあります」
「人の姿を持つ……。それじゃ時が来たら私達の力になってくれるって事ですね」
「お2人のお力になりたい、そうこの矢はマリージュ達に告げていました。なので、この矢をお2人にお渡しします。どうか、闇を祓う力を以って闇の者達をこのガハランド大陸から退けて下さいませ」
 大巫女から矢を譲り受けた2人は馬車に揺られて一度城へと向かう。ロックの元に向かい、清めの完了報告をする為とアレスの聖女としての祈りを城を中心にティクス全体に広げる為でもある。
「アレス!」
「!、リディル! え、どうしてここにいるの?」
「実はカセル様の頼みで出産が終わった後に補佐役として戻ってきて欲しいって頼まれたの。大丈夫? 色々とあったと聞いているわ」
「そうだったの……。でも、私には愛するランスロットがいるから負けないと信じていた。でも、こうしてリディルと話せると戻ってきて良かったと実感するよ」
「アレス、リディルと少し話をしていなさい。俺は陛下に話に行く」
「分かった、私もある程度したら祈りを捧げに行くね」
「団長もお疲れ様です。アレスは私が礼拝堂にしっかりお連れします」
「あぁ、頼むよ。それじゃまた後で」
 リディルとの久々の再会に心を弾ませているアレスをリディルと一緒に行動させ、ランスロットは玉座の間に向かう。ロックはランスロットが一時的に戻ってきて清めの儀式を受けている間も政治的な判断をして、近隣諸国に協力を願っている所でもあった。
「失礼致します」
「ランスロット様っ!」
「陛下、清めの儀式を終えた事をご報告に上がりました」
「そうですか。それならば最終決戦に備えてまた戻られるのですよね?」
「はい。何か問題でもありましたか?」
「国全体の守りにはエンドル卿とカセル卿の両名に頑張ってもらっているので、大して問題は起こっていません。ただ……近隣諸国はラオンとの戦闘にはやはり消極的という事が問題で」
「そればっかりは仕方ないとは思います。しかし、戦局がこちらに有利になればまた近隣諸国も考えを変えて援軍を出す事もしてくれるでしょう。それまでは陛下の努力が必要にはなりますが……」
 ランスロットの言葉にロックは笑顔を浮かべて頷く。その笑顔の裏にはどれだけランスロットやロゼット達がいない事での不安が隠されているかは容易に検討が付く。
 それでも必死に政治的交渉や、政治的判断をしながらランスロット達の事を待ち続けているロックを、ランスロット達は必ず安心させる為にもラオンとの戦いには勝利しなくてはならない。そして、ロックの隣には妹で王女のリーシルベが姿を見せていた。
「ランスロット様、兄に代わりお願いしたい事がございます」
「なんでございましょうかリーシルベ様」
「この戦いが終わったら、どうかこのティクスの光を絶やさぬ様に兄を支えてほしいのです」
「それは私でよろしいのでしょうか。ロゼットもいますが」
「ランスロット様が兄の後見人だから、と言う訳でお話をしている訳ではありません。父、ルーディルからも進言されているのもあるからです」
 ルーディルがランスロットを信頼しているというのは些か買われ過ぎている気もしなくもないのだが。それでもランスロットを信用しているリーシルベとロックの信頼を裏切る事もしたいとは思わない。
 ランスロットは片膝をついて服従の姿勢を見せるとリーシルベとロックに告げる。その言葉に2人は心から嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
「俺は必ずこの戦いに勝利をこのティクスに持ち帰ります。そして、陛下とリーシルベ様の心をお支えして、このティクスを光に導かんと致します」
「信じています、ランスロット様」
「ありがとうございます。アレスとどうか私を支えて下さい」
「はい。それではアレスを迎えに行って前線に戻ります」
 ランスロットは2人の前を辞すると城内の礼拝堂に向かって歩いて行く。既に光が城内からティクスの全体に広がっているのが分かる。
 2人で手を取り合ってこの後の戦いに立ち向かうべき事なんだろう。そうランスロットは考えて静かに礼拝堂へと入って行くのであった――――。
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