私の恋人は異母兄で聖騎士団団長の凄い人

影葉 柚希

文字の大きさ
81 / 107
10章

80話「封印を解く者」

しおりを挟む
 ティクス国の若き王であるロックは非常に勉強家である事は誰から見ても分かる程で。今も前線に立っているランスロット達の為に何か出来ないかと、過去の書物を漁り力になりそうな事の情報を集める事に意識を割いていた。
 前線部隊から戻ってきたガーベルにも協力をしてもらい、ロックはある事実を突き止める。聖なる武器の存在に対を成す存在がティクスにはある事を知るのであった。
 その存在はティクスの創立時に神々がこのティクス国の永遠の繁栄を願った力を込めた物である、そこまでロックは突き止めていた。だが、その存在は聖なる武器に対になるとは到底考えられないのだ。
「この存在が聖なる武器の対となるならばそれだけの力を秘めている……でも、全ての書物にはそんな事実は書かれていない。そして、その存在がある場所も書かれていない……」
 ロックはパラパラと書物を何十回と読み込んでいるが、そんな事実は何処にも書かれていなかった。だが、その存在はティクス国の歴史書にはしっかり書かれているのである。
 少し謎のある存在を調べていたロックの元にガーベルが定期報告をしにやってくる。ロックは調べていた書物から顔を上げてガーベルを迎え入れる。
「お疲れ様です、ガーベル様」
「陛下、まだお調べになられていたのですか?」
「えぇ。この存在はティクスの危機的状況になった時に必ず歴史書の中に書かれているのをどうしても気になって。本当に謎の多い存在ではありますが……」
「しかし、誰1人その存在を見た者はおりません。歴史書の中にしか書かれていないのも気にはなります」
「私個人の考えではありますが……ティクスの地下迷宮にあるのではないだろうかと考えております。あの迷宮とは名のばかりの地下通路ではありますけれども」
「地下通路にある可能性は否定出来ませんね。あの通路はまだ解明がされていないエリアもございますから。それでしたら私が調査隊を編成して調査に当たりましょう」
「いいのですか? 私個人の見方ですから間違いの方が大きいのもある可能性が高いですよ?」
「地下通路の解明は行うべきだと思います。そして、それはいざって時に陛下の避難経路にも使えますから」
 ガーベルはそこまで話をして、一礼してロックの執務室から出て行く。ロックの考えは恐らく外れていないだろうとガーベルは見込んでいた。
 ティクスの城から市内の地下には巨大な通路がある。過去の王達が避難経路としても活用していたと言われているが、どうしてそんな通路があるのかは不明である。
 そして、ガーベルはこの通路の一角に不思議な力が感じられるとの報告を大臣に着任した直後に聞いていたのである。もしかしたらその区画に存在があるのかも知れないと考えたのである。
 ガーベルはすぐに冒険者達に協力を仰ぎ、地下通路の区画を地図にもする為に調査を行う事にした。冒険者達の中にも地図作成に協力的な能力者がいた事もあって調査初日からかなりの広さを調査し、紙に詳細の地図を書き起こす事が出来た。
「ガーベル様、この先に何か違和感を感じます」
「違和感、ですか。どんな風な違和感ですか?」
「まるで、何かを隠しているって感じですねぇ」
「隠している……行ってみましょう」
 冒険者の1人がある調査の日にそんな違和感を感じてガーベルに告げてくる。そして、ある程度の地図の書き起こしが済んだのを確認したガーベルがその違和感を感じる場所に向かう。
 一見するとその場所は普通の行き止まりであり、地図にもこの先には道はないと記されている。だが、冒険者達は違和感を感じたその行き止まりを調査し始めた。
 ガーベルはこういう場合は決して口を挟まない。何故ならこの場合の冒険者達の感覚で違和感を覚えたのであればそれは間違いないのだとガーベルは知っているからだ。
「あ! ここになにかあるぞ」
「このパターンはここ等辺に……ビンゴだ!」
「ガーベル様! 開きました!」
「ありがとうございます。数名は私と共に中に、残りは入口の安全確保をお願いします」
 ガーベルの元にいる数名の冒険者達はガーベルと共に行き止まりだった先に出来た道を進んで中に入って行く。そこの空間はガーベルが予想していたよりも広く、そして、光が溢れていた。
 冒険者達はガーベルを守りながら空間を進んでいく。そして、中央の光に気付くと注意深く観察する事をし始める。
「これはなんだぁ?」
「あぶねぇもんじゃないよな?」
「どうしましたか?」
「ここに光の何かがあるんですよ。でも、見た感じまるで”眠っている”ようです」
「眠っている……そう言えばどなたかロドの道が見える方がいましたよね?」
「俺が見えます。さっきから見てはいるんですが……どうも城の方に続いているんですよね。もしかしたら城の何かに繋がっているのかもしれません」
「城の何かに繋がっている……他に怪しい場所や道はありませんでしたか?」
「ここ以外は普通ですねぇ。まるでこの通路全体がこの空間を守る為にあるかの様ではありますが」
 冒険者達はそう言って地図に空間の詳細を書き込んでいく。ガーベルはロドの道が見える冒険者を連れて道を追う事にした。
 地下通路を抜けて間違いなく城に続いている道を辿って到着したのは、ロックがいる王の私室だった。冒険者は流石に間違いだろうと道を見直すが間違いなく私室に繋がっている。
 ガーベルは冒険者を連れてロックに話をする為に1度執務室に向かった。ロックはガーベルが地下通路の中に空間を見付けたとの報告を受けていた所であったが、ガーベルが姿を見せると首を傾げる。
「どうかされたのですか?」
「実は……」
 ガーベルが今までの経緯を説明するとロックは少し考えて冒険者とガーベルを私室に招き入れる許可を出す。ロックも同席して私室に入った冒険者はロドの道を見て部屋中を見て回る。
 そして、見付けたのはある鏡の間で止まった事で判明する。冒険者はこの鏡にロドの道が繋がっている事を2人に告げる。
「この鏡にロドが繋がっていますね。あの空間のロドはこの鏡に導かれています」
「鏡? それは間違いないのですか?」
「間違いありません。ロドの道がこの鏡の中に繋がっています」
「この鏡はケンベルト兄様時代の前からある鏡だとお伺いしていますが……何か仕掛けでもあるのかな……わっ!?」
「陛下!」
「ロック様!」
 ロックが鏡を取り外そうとした時、鏡から光が溢れ出しロックとガーベルを飲み込んだ。冒険者は何が起きたのか分からないまま。カランカランと音を立てて床に揺れる鏡を見つめるしか出来なかった。
 ロックが目を覚ました時、ガーベルが自分の膝にロックの頭を乗せてくれているのに気付く。身体を起こそうとして気付いたガーベルがそっと支える。
「頭を打っている可能性もあったので、失礼を承知の上で膝に頭を乗せさせてもらっていました。大丈夫でございますか陛下?」
「あ、はい。ありがとうございます。それにしてもここは一体何処なのでしょうか……。見た限り何もありませんが」
「恐らくここは”鏡の中”だと思われます」
「鏡の中? それじゃ私達は鏡の中に吸い込まれた、という事でしょうか?」
「はい、ですがそれも意味がある事だと思われます。こちらに私が地下通路で見た空間と同じ物体があります」
 ガーベルが立ち上がったロックを連れて空間の中央に存在している光を放つ何かに案内する。ロックはその何かを感じ取ると不思議と怖さはなかった。
 ロックにガーベルが説明をする。それはガーベルが今までの知識を含めた上で色々に考えて導き出された答えの仮説でもある。
「この物体は恐らく陛下がお探しになっている、聖なる武器の対になる存在かと思われます。長年、この状態でティクスの地下にてティクス国の繁栄を祝福していたのだとしたら、この存在がこの状態であるのは頷ける事でもあります」
「もし、そうなのだとしたら今私達はその存在を見付けた……って事になりますね」
「しかしながら、陛下がお調べした通り……この存在は歴史書の中にしか記載されていない存在。どんな効果を持ち、どんな力を持ち、どんな方法で覚醒させれるかは定かではありません」
「……一部の歴史書にはこの存在を目覚めさせる方法に近い事が書かれていたのを思い出しました。それによれば……封印を解きし者だけがその場所に行ける、的な内容の文章を読んだ覚えがあります」
「だとしたら、この場所が封印を解く場所である、と考えてよろしいかと思います。そして、我々がその封印を解ける者であるという可能性もあります」
 ガーベルがそこまで話をしてロックに視線を向けるとロックは恐れるでもなく、その光の物体に両手を差し出し触れてみようとした。その時に光の物体は光を分散させてロックの両手に何かを形成させていく。
 ロックもガーベルも、それが何かの物に形成されていくのを確認しながら黙って見守る。そして、少しの間時間を掛けて形成されたのは1張の弓であった。
 その弓がロックの手の中に収まる形で形成されると、何処からか声が2人の耳に届く。その声はまるで待ち侘びていた人との再会を喜ぶ様な声であった。
『私達の本当の力を解放する時が訪れたのですね』
「この声は……」
「その弓の声かも知れません。しっかり聞いておきましょう陛下」
「はい」
『私達は長年、神々に愛されし神聖国ティクスの繁栄を願い続けて力をこの国に捧げてきた。でも、それは表向きの事実であり、本当はティクス国を始めとするガハランド大陸に闇が迫る時に私達は目覚める為にここで眠っていた』
『そして、今こうして私達は目覚める事が出来た。それはガハランド大陸に闇が迫っている証拠でもある。私達を解放した者よ。どうか、私達の力を光と共にガハランド大陸に捧げ給え。そして、闇を祓い、光溢れる大地にしたまえ』
 声はそれで終わったが、ロックは手の中にある弓を見つめる。装飾は金細工が施されているが、派手ではなく補強する意味での装飾に見て取れる程に控え目でもあった。
 それだけではなく、弓全体に光と神々の祝福の力が感じ取れる。ロックとガーベルはお互いの顔を見合わせて頷く、これはランスロット達に大きな力になってくれる存在であると。
 ロック達は鏡の中からいつの間にか私室に戻ってきていた。冒険者が鏡を元の位置に戻してくれて2人の戻りを安心した様に迎えてくれる。
「神々は決してティクスを守る為だけにこの弓を遣わせてくれたんじゃないと思います。この弓を使う事が出来るのは恐らくランスロット様だけ。あの方の力を信じているからこそ神々はこの弓を与えて下さったんだと思います」
「そうですね。そして、その為の力はきっとランスロット様には既にあるのでしょう。光の申し子としての力が」
 ガーベルはそこまで話をしてロックから弓を預かる。ここから先はガーベルの仕事である。
 弓をランスロットの元に持って行く事はロックの信頼を持つガーベルの役目だ。ロックもガーベルの姿を見送って窓から見える空に祈りを捧げる。
 この空の果てにいるだろう神々に、力を授けて下さった事への感謝をする為の祈りを――――。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

【完結・おまけ追加】期間限定の妻は夫にとろっとろに蕩けさせられて大変困惑しております

紬あおい
恋愛
病弱な妹リリスの代わりに嫁いだミルゼは、夫のラディアスと期間限定の夫婦となる。 二年後にはリリスと交代しなければならない。 そんなミルゼを閨で蕩かすラディアス。 普段も優しい良き夫に困惑を隠せないミルゼだった…

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...