エンドレス ライフ オンライン -ELO-

文字の大きさ
5 / 6

白き怪物

しおりを挟む

由奈が王国に着き滞在手続きを済ませると、国王からまずは伝承を聞かされた。
エルフの伝承の中には、世界各地に存在するとされる最高位モンスターや古代魔法についての内容が数多く語られてるのだとベルティナ国王は話し、由奈を王国の地下へと連れて行き、木々が生い茂り光に満ちた空間を案内した。
ここに生息する植物は、エルフの先祖が生活していた頃の環境がそのまま保存されているらしく、エルフの歴史そのものなのだと言う。
そんな空間の中央には一部だけ植物が生えていないところに柱状の結晶が立っており、文字や絵などが刻まれているように見える。
国王は、結晶の前に立ち「生命の光、悲壮の影」と言い、虹色に輝く龍と白い龍を指し、この世界の龍という存在について語ってくれた。
龍は、その圧倒的な強さと驚異の寿命をもつことから生命の象徴とされるだけでなく、美しさや気品もあることから崇拝の対象にされてきた。しかし、その白い龍は他の龍と大きく異なり、結果として不幸や不吉の象徴として嫌われる存在になってしまった。
それからはあまり目撃されなくなったものの、月夜には自分の醜い姿に悲しむ姿から、後々のエルフ達は悲壮の影と呼んだらしい。
由奈の特訓が始まったのは、その翌日からだった。

・・・

キャンプの近くにある川で汗を流していると、ネモが岸から話しかけてきた。

「今さっき帰ったパーティーが見慣れない痕跡を見つけたそうだ」

「おお   それでリーダーはどうするんだって?」

「統機構に報告したところ、可能ならば調査対象に加えてくれとのことらしい」

「そうか   そうなると帰還する日は遅れそうだな」

ネモもそれに共感したのか、大きくため息を吐き珍しく愚痴を言ってきた。ネモが大分疲れた顔をしているのも、小パーティーのリーダーを任されているからだろうし、ましてや責任感の強いあいつなら尚更だろう。
愚痴を言ってすっきりしたのか、さっきよりは良い表情をしていると伝えると、さっきの俺よりお前の方が酷い顔してると言われてしまった。

それから夕食をとり、全体に明日の予定が知らされた後で自分のテントへ戻ろうとした時、同じパーティーの男(唱矢)が俺を呼んでいるのに気付き、行ってみると相談を聞いてほしいと言われた。
何の相談をされるのか少し緊張していると、何とも男子的な悩みで、以前から好意をよせている子が欲しがっていたアイテムをここら辺で見たという話をパーティーのメンバーに聞き、採りに行くのに着いてきてほしいと言うことだった。
何もモンスターの巣にあるアイテムを採りに行く訳ではないし、一人で行けよと言ったが、告白する前に死んでしまう様な事は絶対に避けたいと懇願され、仕方なく着いていくことにした。

唱矢は、暗視スキルで夜間もアイテムを見付け易いですよと張り切って話しかけてくるのを適当にあしらっていると、早くもアイテムを見つけたそうだ。

「えっと  アイテム名が…リムール草!  合ってます!」

お目当てのアイテムも無事見つかったらしく、しっかりとポーチに入ったことを確認し、帰りましょうと言われた。
帰るまでが遠足ですよなんて、懐かしいネタで唱矢をからかっていると、唱矢が急に足を止めた。まさか、こいつ冗談通じないやつだったのかと思い謝ろうとすると。

「霞川さん  あれって何に見えますか?」

「いや、俺は暗視スキル使ってないから真っ暗だよ」

暗視スキルを使った唱矢の説明を聞く限り、そこには大きな岩に湯葉を張り付けたような物があるらしいが、俺にはただの岩にしか見えない。夕食はしっかり食べたかと聞くと、食べましたよと笑いながらの答えが帰って来た。
厚い雲の隙間からは時より光がさし、地面に散らばるそれに輝きを与える。
その時、二人の心臓は異常な頻度で全身へと血液を送り出していた。

「…こんな大量のキメイア  一体どこから」

以前、ダンジョンで見た数の一割程度しかいないが、戦闘で勝てるかと言ったら話は別になってくるうえ、弱点が腹部なのでこうも密集されると戦いようがない。

「唱矢!  こんなの勝てる訳がない  キャンプへ戻るぞ!」

「 …… 」

「おいっ!  唱矢!!」

「 …霞川さん  岩なんかじゃないですよ…生きてますよ」

ひしめき合うキメイアの中心で広げた翼を羽ばたかせ、深紅の眼がずっとこちらを凝視している。翼は月光に照され、血管とそのなかを流れる血液が浮かび上がり、背中から生える8本ほどの棘のような部位が月を撫で回すように躍動する。
その異様な姿のモンスターに、恐怖しきった唱矢が言葉を溢す。

「…き …きもぢ  わる…    ******」

唱矢が嘔吐したその瞬間、棘の様な部位が咆哮と共に放たれた。

「あぁぁぁぁぁ!」

夜空にうち上がった腕が血を撒き散らしながら宙を舞う。
激痛と大出血の相乗効果なのか意識が遠のく中で、モンスターが動揺したように後退りながら夜空の彼方に消えていくのを見送ると意識を失ってしまった。
目を覚ましたのは、キャンプの医療用キャンプの中で、ネモと唱矢が心配そうに俺を見ている。何ともないよう見せようと、起きようとしたところバランスを崩し倒れてしまい、笑ってごまかしながら床を探っていると、唱矢が俺の前で何度も頭を下げ誤り出した。

「そっか   …腕   無いんだったわ」

あの時、腕を出したのは目の前に居たのが一瞬由奈に見えたからかで、それなら今腕が無いことにも満足はできる。大切な人が危ないときに、びびって何も出来ないで後悔するよりはましだと思えたからだ。
でも、これじゃ今度は守れないから何か代わりは探さないとな。

・・・

夜中にネモが布に包まれた何かを持ってテントへ来ると、今日行われた追加の調査の話を聞かせてくれた後で、その布に包まれた物を渡してきたが、これを渡すことが正しいのかは分からないから気を悪くしないで欲しいと言われた。
中には、大小様々な骨が入っているが、その正体をネモに尋ねたところ俺の左腕の骨らしい。まさかと思い、肉の部分を食べたのか尋ねるとネモは苦笑いしながら否定し、それだけ話せるなら大丈夫だと言い久しぶりに素の笑顔をみせたので俺も何だか日常に戻ってきた感じがした。

しかし、どうして骨だけなのかは気になったままで、改めて聞いたところ、モンスターの攻撃によって切り離された腕が、死んだという判定で時間加速が適応されたのではないかとネモは考えているらしい。
まぁ、あんな一撃を食らえば、あのモンスターの強さなんて嫌でも感じる訳だが、綺麗に骨だけになっていたことからすると10等級は確実だろうと思う。

結局のところ、今回の調査での一番の成果はあのモンスターの発見だと言われた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

『ミッドナイトマート 〜異世界コンビニ、ただいま営業中〜』

KAORUwithAI
ファンタジー
深夜0時——街角の小さなコンビニ「ミッドナイトマート」は、異世界と繋がる扉を開く。 日中は普通の客でにぎわう店も、深夜を回ると鎧を着た騎士、魔族の姫、ドラゴンの化身、空飛ぶ商人など、“この世界の住人ではない者たち”が静かにレジへと並び始める。 アルバイト店員・斉藤レンは、バイト先が異世界と繋がっていることに戸惑いながらも、今日もレジに立つ。 「袋いりますか?」「ポイントカードお持ちですか?」——そう、それは異世界相手でも変わらない日常業務。 貯まるのは「ミッドナイトポイントカード(通称ナイポ)」。 集まるのは、どこか訳ありで、ちょっと不器用な異世界の住人たち。 そして、商品一つひとつに込められる、ささやかで温かな物語。 これは、世界の境界を越えて心を繋ぐ、コンビニ接客ファンタジー。 今夜は、どんなお客様が来店されるのでしょう? ※異世界食堂や異世界居酒屋「のぶ」とは 似て非なる物として見て下さい

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

それは思い出せない思い出

あんど もあ
ファンタジー
俺には、食べた事の無いケーキの記憶がある。 丸くて白くて赤いのが載ってて、切ると三角になる、甘いケーキ。自分であのケーキを作れるようになろうとケーキ屋で働くことにした俺は、無意識に周りの人を幸せにしていく。

ボロ雑巾な伯爵夫人、やっと『家族』を手に入れました。~旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます2~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
 第二夫人に最愛の旦那様も息子も奪われ、挙句の果てに家から追い出された伯爵夫人・フィーリアは、なけなしの餞別だけを持って大雨の中を歩き続けていたところ、とある男の子たちに出会う。  言葉汚く直情的で、だけど決してフィーリアを無視したりはしない、ディーダ。  喋り方こそ柔らかいが、その実どこか冷めた毒舌家である、ノイン。    12、3歳ほどに見える彼らとひょんな事から共同生活を始めた彼女は、人々の優しさに触れて少しずつ自身の居場所を確立していく。 ==== ●本作は「ボロ雑巾な伯爵夫人、旦那様から棄てられて、ギブ&テイクでハートフルな共同生活を始めます。」からの続き作品です。  前作では、二人との出会い~同居を描いています。  順番に読んでくださる方は、目次下にリンクを張っておりますので、そちらからお入りください。  ※アプリで閲覧くださっている方は、タイトルで検索いただけますと表示されます。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

悪役女王アウラの休日 ~処刑した女王が名君だったかもなんて、もう遅い~

オレンジ方解石
ファンタジー
 恋人に裏切られ、嘘の噂を立てられ、契約も打ち切られた二十七歳の派遣社員、雨井桜子。  世界に絶望した彼女は、むかし読んだ少女漫画『聖なる乙女の祈りの伝説』の悪役女王アウラと魂が入れ替わる。  アウラは二年後に処刑されるキャラ。  桜子は処刑を回避して、今度こそ幸せになろうと奮闘するが、その時は迫りーーーー

処理中です...