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獣人幼女にご注意を!!
しおりを挟む無事と言って良いのかは分からないが、調査も終わりパーティーは昨日の昼頃に帰還した。
昨夜は久しぶりにふかふかのベッドで寝ることができ心身ともに良好で、今日の昼にネモやこの調査で仲良くなった仲間で集まることになっている。
それまで俺は、アイテムの換金や整理、装備を加治屋に出した後に統機構の医療施設を訪れ、左腕の検査を受けた帰り際に、転移前は義手などを作る仕事の経験がある人物がいると伝えられ、今週中にでも会おうと思う。
もうそろそろ昼だし、早めに行って待っていようかと思い待ち合わせの食事処へ行くと既に数人が集まって賑やかく食事や話をしているとこだった。
「よおっ! やっと来たかカッスミー!!」
ツッコミたいところが多すぎるのでスルーして席につくと、大量の料理が運ばれてきた。旅で食べた料理の比にならないくらい旨く、俺達全員まるで飢えたモンスターのように食事に食らいついていると、近くにいた子供の言葉でふと我に帰り、顔を見合わせて笑った。
この宴は深夜まで続き大半のやつがダウンしたのでお開きになった。
満たされた腹部を擦りながら宿への道を歩いていると、通りの横路地から飛び出してきたものにぶつかり地面に仰向けになったのだと思う。視界が真っ暗で息苦しい、顔にフィットするように何かが押し当てられ確実に俺の息の根を止めようとしているんではないかと思考を巡らしている内に息苦しくなり堪らずに噛みつくと、それは自ら離れていった。
「助かった…」
呼吸を整え立ち上がり、見渡してみるがこれといって何もなく、半ば諦め宿の方向を向くと女の子が立っている。話を聞こうと思い、優しく話しかけてみるが下を向いたまま黙り込んでしまい、こっちを見てもくれないのでしゃがんでみると、女の子は下唇を噛みしめ今にも泣きそうな顔をしているじゃないか。俺の中にどっと罪悪感が沸き上がり、慰めようと試みるも何の意味もなく泣き始めてしまった。
・・・
結局、宿に連れて帰ったのだがむしろ罪悪感が増したように思え、必死に言い訳を並べて肯定しようとしていると、こんな日に限って宿主が部屋に顔を出すので完全な「詰み」の状況となってしまった。
やっとのことで事情を説明し終えると、宿主は納得はしていないものの理解はしてくれたようでやっと収拾がついたかと思うと、女の子が駄々をこね始める始末で、一体なぜ異世界で子供の面倒を見ているのか、ほとほと疲れ眠りに落ちた。
・・・
「…ごんっ!!」
「痛ってぇぇ」
痛みと混乱で何事かと思い目を開けると、宿主が呆れた顔で立っており、何か言ってやろうと起き上がった時に何かとても柔らかい半球状のものに捉えた。まさかとは思い、恐る恐る手元に目を向けると、思った通り最悪の状況が用意されているではないか。
「…何でここで寝てるの………しかも裸で」
・・・
今日の朝食は、もらい事故のせいでお預けだと言われ朝から主人の手伝いをさせられるはめになってしまった。
お昼前には手伝いも終わり、今日は何をしようか考えているところに、女の子がやって来て冒険者案内所に連れていって欲しいと言うので、そのついでに町も案内してあげることにした。
案内所に着くなり、受付で何やら渡している。
「これ、お願いします」
「えーと これを霞川さんにお渡しすれば ……あっ そこにいるのが霞川さんですよ」
「えっ!」「えっ!!」
二人の驚きがシンクロした後に、俺はまたしても理不尽な事で女の子から問い詰められ、何でこんなにも不幸な事が続くのか、腕が片方無くなっただけでは足りないのだろうか。
そんな事に頭を悩ませていると、何やら改めて名前を呼ばれた。
「霞川さん 本当に本人なんですか?」
「ああ、そうだよ」
さっきから俺が霞川だと何度も言っているのに聞き返してくるので、呆れた態度で応答したが特に反撃される事はなく、その代わりに手紙を渡された。
「由奈さんからのお手紙です」
その思いがけない名前に驚いた俺は二、三度ほど、女の子と手紙を交互に見た後に由奈とどうい関係なのか聞こうとしたが、それより先に女の子が喋り始めた。
「由奈さんは今、フォールナク王国で自身が望んだ力を手に入れるため日夜、勉強と修練に励んでおられます。そんな姿をお気に掛けられた国王ベルティナ様が手紙を書くように勧められ、彼女の書いた手紙をお届けに来たのが私です」
今の話を聞くと由奈はしっかり前に進めているようで、それには安心したし、こいつもわざわざ王国から来てくれたのだから少しは感謝しないといけないと思ったが、今頃になって名前を聞いていなかった事に気が付いた。名前を聞くにしてもまずは謝らないといけないか。
「あのさ、色々してくれていたみたいなのにごめんな」
「あぇっ! い、いいのよ!!」
何だか、思っていたより可愛らしいじゃないかと思い、頭を撫でてやると見えない何かがそこにあるようで、手探りで何なのか探っていると急に女の子は「きゃっ!」と反射的な声を上げると赤らんだ顔に甘えるような瞳で見上げてくる姿は何とも、心がときめく可愛さだ。
そうすると、何やら決心したらしく俺の目を見つめながら話を始めた。
「私はミミ 獣人種の15歳です」
自己紹介を終えると、不可視の魔法で隠していたのか頭の上に耳らしきものが付いており、その先端を弄りながらはにかみながら思いもしない事を言い放った。
「私のご主人様になってください!!!!」
めちゃくちゃ可愛い子が自分を従えて下さいとお願いしている。こんな男の夢叶えちゃいます!みたいな話があるのだろうかと自問自答する俺に、会心の一撃をミミは食らわせてきやがった。
「…だめ ですか?」
「・・・だめじゃない です…」
ああああああああ、完全に俺の理性の負けだし、こんなのに勝てるわけないじゃないか。
俺は幸せな敗北感を感じながら無邪気に喜ぶミミを見て手持ちの金額を確かめると、あることを決意した。
・・・
自宅の購入だ。
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