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第五章 王太子の愛情 メイヴィス×シャーロット❷
6・聖女と王太子と密偵
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馬車で移動中のシャーロットは、メイヴィスから貰ったペンダントを飽きもせずにずっと眺めている。メイヴィスの瞳と同じ琥珀色の石を見ると彼と見つめ合っている心地になれて、シャーロットは有頂天だった。
シャーロットの目の前に座るアリーはその様子をずっとジト目で見ているが、夢見心地のシャーロットは全然気が付かない。
「ねぇシャーロット、いつまでそのペンダントを眺めてるつもりなの」
「アリー、時間が許す限りずっと眺めていたいわ」
アリーに答えを返す間もシャーロットはペンダントから眼を離さない。アリーはうんざりして馬車の外に顔を向けると、並走している護衛騎士の姿が見えた。
シャーロットが王太子の婚約者になった事で今回初めて護衛が二人ついたのだ、一人は小隊長を務める騎士で、もう一人はメイヴィスも信を置く凄腕の魔法剣士らしい。
アリーがシャーロットに眼を戻すと、彼女はまだペンダントを眺めてニヨニヨしていた、今日の壊れ具合は酷い。
今回の巡回治癒では三箇所の教会を回る予定で、メイヴィスとは最後に訪問する教会で落ち合う事になっている。そろそろ馬車は一箇所目の教会へ着こうとしていた。
アリーは気持ちをアリッサでは無く、聖女としての自分に切り替える、一人でも多くの人を治癒するのだ。
◆◇◆◇◆◇
メイヴィスは視察する地方の資料を読み込んでいた。真の目的は辺境伯領の調査だが、地方視察も疎かにする気は無く、今回は辺境伯領へ向かう途中に数箇所回って視察する予定だ。
資料によると、数年前まで盗賊の被害が多発していたある地方では、地域全体の防犯を高める取り組みを行い、犯罪を減らしたと有る。
素晴らしい取り組みだ、王都や他の地方にも有効な方法なら是非活用したい。メイヴィスは続けて別の地方の資料にも眼を通すと、グリードと共に出立した。
馬車に乗るのはメイヴィスとグリードの二人だ。暫くして馬車が王都を抜けるとグリードがマーリオからの情報をメイヴィスに報告し始めた。
「盗賊上がりのガラムという男が密かに奴隷を使って他領の金鉱山を盗掘している様です」
「最近、金の価格が値崩れしていたのはそれが原因か、奴隷制度を禁止している我国に奴隷はいない筈だが、どう云う事だ?」
「マーリオの報告によると奴隷商人から秘密裏に購入して、人目がつかない場所に閉じ込めて作業させている様です」
「人身売買に盗掘に脱税か大層大きな不正をしていたのだな、辺境を守護する筈の者が辺境という地を私利私欲の為に使うとは嘆かわしい事だ」
メイヴィスは馬車の外に眼を向ける、美しい顔に浮かぶ表情はもの憂げだ。
・・・・上に立つ者が下を幸せにしなくてどうするのか・・・何故こんな愚か者が存在するのか・・・必要なら鉄槌を下すだけだが・・・・鉄槌など必要の無い国に出来ないものなのか・・・・
グリードは憂鬱な面持ちのメイヴィスを労る様に見つめていた。
・・・・我が主君は弱き者を助ける為に必要とあらば悪にでも染まる人だ、だが愛情深くて優しいこの方は、それによって目に見えない傷を負うだろう・・・・私達臣下がこの方を護らなくてはいけない・・・・
グリードは既に忠誠を誓っている主君に対して、新たに忠誠を誓い直した。
◆◇◆◇◆◇
ザカリー辺境伯の邸に潜入しているマオことマーリオは、ガラムの様子を伺っていた。盗掘に従事させている奴隷の住処を探るためだ。
ガラムは元々盗賊の頭領を務めていただけあって用心深くて隙が無い男だ。しかしプリシラといい仲になり、彼女と一緒に居る時は隙が出来る。
さっき見張り小屋にプリシラとしけ込んだから、小一時間は余裕で大丈夫だろう、マーリオは見張り小屋の周辺を偵知し始めた。
密かに入手した奴隷商人の売買記録では十人位は居そうだが、それだけの人数が人目に付かずに暮らせる場所とは何処だろうか。
恐らく劣悪な環境に置かれているだろう彼等を救う為に、そして友人の探しモノを見つける為にマーリオは必死で探す、それは見張り小屋から見渡せるそう遠くない場所に有った。
誰も恐れて近づかない魔獣の森の近くに作られた小屋に彼らは監禁されていた。マーリオは密かに建物内を見渡して、直ぐに助け出す必要の無い事を確認すると、ガラムや奴隷達に気付かれる前に静かに立ち去った。
そして何食わぬ顔で自室へ戻ると、赤い蜥蜴を呼び出して奴隷の居場所を記した書付を預ける。これでマーリオの仕事はほぼ終わりだ、後は主が邸に来るまで待機して主が引き上げたら全て完了だ。
長かった潜入調査の終わりが見えたマーリオは、少しだけ気を緩めて友人達に思いを馳せる、主に帯同している一人とはもう直ぐ逢える。王都に残っている友人には今回の情報を持って久し振りに会いに行こう。
友人に思いを馳せるマーリオの顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
シャーロットの目の前に座るアリーはその様子をずっとジト目で見ているが、夢見心地のシャーロットは全然気が付かない。
「ねぇシャーロット、いつまでそのペンダントを眺めてるつもりなの」
「アリー、時間が許す限りずっと眺めていたいわ」
アリーに答えを返す間もシャーロットはペンダントから眼を離さない。アリーはうんざりして馬車の外に顔を向けると、並走している護衛騎士の姿が見えた。
シャーロットが王太子の婚約者になった事で今回初めて護衛が二人ついたのだ、一人は小隊長を務める騎士で、もう一人はメイヴィスも信を置く凄腕の魔法剣士らしい。
アリーがシャーロットに眼を戻すと、彼女はまだペンダントを眺めてニヨニヨしていた、今日の壊れ具合は酷い。
今回の巡回治癒では三箇所の教会を回る予定で、メイヴィスとは最後に訪問する教会で落ち合う事になっている。そろそろ馬車は一箇所目の教会へ着こうとしていた。
アリーは気持ちをアリッサでは無く、聖女としての自分に切り替える、一人でも多くの人を治癒するのだ。
◆◇◆◇◆◇
メイヴィスは視察する地方の資料を読み込んでいた。真の目的は辺境伯領の調査だが、地方視察も疎かにする気は無く、今回は辺境伯領へ向かう途中に数箇所回って視察する予定だ。
資料によると、数年前まで盗賊の被害が多発していたある地方では、地域全体の防犯を高める取り組みを行い、犯罪を減らしたと有る。
素晴らしい取り組みだ、王都や他の地方にも有効な方法なら是非活用したい。メイヴィスは続けて別の地方の資料にも眼を通すと、グリードと共に出立した。
馬車に乗るのはメイヴィスとグリードの二人だ。暫くして馬車が王都を抜けるとグリードがマーリオからの情報をメイヴィスに報告し始めた。
「盗賊上がりのガラムという男が密かに奴隷を使って他領の金鉱山を盗掘している様です」
「最近、金の価格が値崩れしていたのはそれが原因か、奴隷制度を禁止している我国に奴隷はいない筈だが、どう云う事だ?」
「マーリオの報告によると奴隷商人から秘密裏に購入して、人目がつかない場所に閉じ込めて作業させている様です」
「人身売買に盗掘に脱税か大層大きな不正をしていたのだな、辺境を守護する筈の者が辺境という地を私利私欲の為に使うとは嘆かわしい事だ」
メイヴィスは馬車の外に眼を向ける、美しい顔に浮かぶ表情はもの憂げだ。
・・・・上に立つ者が下を幸せにしなくてどうするのか・・・何故こんな愚か者が存在するのか・・・必要なら鉄槌を下すだけだが・・・・鉄槌など必要の無い国に出来ないものなのか・・・・
グリードは憂鬱な面持ちのメイヴィスを労る様に見つめていた。
・・・・我が主君は弱き者を助ける為に必要とあらば悪にでも染まる人だ、だが愛情深くて優しいこの方は、それによって目に見えない傷を負うだろう・・・・私達臣下がこの方を護らなくてはいけない・・・・
グリードは既に忠誠を誓っている主君に対して、新たに忠誠を誓い直した。
◆◇◆◇◆◇
ザカリー辺境伯の邸に潜入しているマオことマーリオは、ガラムの様子を伺っていた。盗掘に従事させている奴隷の住処を探るためだ。
ガラムは元々盗賊の頭領を務めていただけあって用心深くて隙が無い男だ。しかしプリシラといい仲になり、彼女と一緒に居る時は隙が出来る。
さっき見張り小屋にプリシラとしけ込んだから、小一時間は余裕で大丈夫だろう、マーリオは見張り小屋の周辺を偵知し始めた。
密かに入手した奴隷商人の売買記録では十人位は居そうだが、それだけの人数が人目に付かずに暮らせる場所とは何処だろうか。
恐らく劣悪な環境に置かれているだろう彼等を救う為に、そして友人の探しモノを見つける為にマーリオは必死で探す、それは見張り小屋から見渡せるそう遠くない場所に有った。
誰も恐れて近づかない魔獣の森の近くに作られた小屋に彼らは監禁されていた。マーリオは密かに建物内を見渡して、直ぐに助け出す必要の無い事を確認すると、ガラムや奴隷達に気付かれる前に静かに立ち去った。
そして何食わぬ顔で自室へ戻ると、赤い蜥蜴を呼び出して奴隷の居場所を記した書付を預ける。これでマーリオの仕事はほぼ終わりだ、後は主が邸に来るまで待機して主が引き上げたら全て完了だ。
長かった潜入調査の終わりが見えたマーリオは、少しだけ気を緩めて友人達に思いを馳せる、主に帯同している一人とはもう直ぐ逢える。王都に残っている友人には今回の情報を持って久し振りに会いに行こう。
友人に思いを馳せるマーリオの顔には、穏やかな笑みが浮かんでいた。
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