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第二章
奇襲攻撃と分断
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伝令がオルター将軍を見つけたときは、すでに部隊は川を渡り切っていた。
「オルター将軍!アルトゥース殿下より伝令があります!」伝令が声を掛けるとオルター将軍はピクッと反応し、振り向くとあからさまに嫌な顔をする。
「なんだ?」
「至急、森に放った斥候が全員無事かお確かめください!そして何かあればすぐに橋をお戻りください!罠の可能性があります!」
「また罠というのか?今回は森に斥候部隊も放っている。一人や二人じゃないんだぞ?どうやってやられるというのかね?何か異変があればすぐに報せが入るようになっておるのだ。煩わしいことを言うなと殿下にお伝えいただきたい」
オルターの苛立ちは、殿下に対して明らかに非礼な言い方であると理解しつつも収まらなかった。その非礼さは伝令の兵にもよく伝わり、むっとした表情でオルターに答えた。
「わかりました。それではオルター中将の言、一言一句そのまま正確に殿下にお伝えいたします!失礼します!」オルターも伝令の皮肉を受け取り、ますます苛立った。
アルスの元に伝令が戻って来たときにはオルター中将の部隊は完全に橋を渡り切ってしまっていた。
「アルトゥース殿下!ただいま戻りました」
伝令が戻って報告を受けたが、一向に止まらない行軍の様子を見ていれば報告内容の予想は出来る。予想通りの内容だったが、がっくりと肩を落としている場合ではなくリース将軍にも確認を取るように伝令を送っていた。
幸いリース将軍はアルスの助言を受け入れてくれ、独自で斥候部隊を放つと約束してくれた。あとは結果がどう出るか?じりじりしながらアルスは進むしかない。
その時は突然訪れた。
「うぁぁぁぁ!」
無数の剣戟の音に加え、怒声と悲鳴が森の静寂を破った。橋を渡っているリース中将の部隊が、橋の向こう側で森の中から突然現れた伏兵に次々と倒されていく。直後、複数の火矢が橋のたもとに向かって放たれたかと思うと、大爆発を起こした。
橋は橋脚が破壊され橋を渡っていた兵たちは悲鳴を上げながら人馬共に川に流されていった。やられた!アルスは悔いた。普段ならもっと早くに気付けたはず。ゴットハルト将軍のことが頭のどこかで気になっていたのかもしれない。それとも、ハインリッヒ兄さんの死のことか・・・・・・?アルスは頭を振る。今はこんなこと考えている場合じゃない!そう思った瞬間だった。
森の奥から無数の矢が前方を行くリース部隊に降り注ぐ。山賊のような恰好をした兵士たちがわらわらと現れ、バタバタと倒れ混乱しているリース兵たちに襲い掛かった。
「森から距離を取れ!」
アルスは咄嗟の判断で隊に距離を取らせる。リース将軍もアルスに続いて森から距離を取り始めた。中がどうなっているかわからない森のそばにいるより川沿いに下りつつ距離を取るべきだとリースも判断したのだろう。適切な判断だ。
それにしてもいったいどうやって斥候部隊に気付かれずに森の中をあれだけの部隊が・・・・・・いや、今はそれより。
「エミール、少し距離があるけど、リース部隊を狙ってるルンデル兵をそこから狙えるか?」
「もちろんいけます」
「よし!それなら派手に頼むよ。やられっぱなしじゃいられないからね」
エミールは結晶石の矢じりがセットされた矢をつがえ、弓を引いた。風が南からさわさわと吹いてくる。
エミールがアルスのところに相談に来たのは、武器につける結晶石が完成した直後だった。
「アルスさま、僕に結晶石を作ってくれませんか?」
「どういうこと?」
「みんなは剣にオーラを込められますが、僕の場合は弓がメインです。弓に埋め込んだ結晶石にオーラを込めたところであまり意味はありません」
「まぁ、確かにそうだね」
「・・・・・・」
「今の結晶石の特性なんだけど、僕が作ってる結晶石は溢れたオーラがフローするように作ってるんだ」
そう言うと、アルスは手近にあった結晶石を持って説明を始めた。結晶石にオーラを込め続けていくと、オーラは結晶石から溢れ出す仕組みになっている。ただし、この結晶石に蓋をしてしまうと、限界を超えたオーラを外に逃がすことが出来なくなる。その結果、爆発する。アルスはその説明をしたうえでエミールに提案した。
「オーラを圧縮しつつ結晶石に流し込むんだ。オーラのコントロールが難しいかもしれないけど、それが出来れば矢じりにつけて飛ばすことが出来る。どう?」
「それ、たくさん作ってもらってもいいですか!?」
「もちろん!」
「すみません、多分かなり練習用に使っちゃうと思いますけど」
「大丈夫だよ」
それからエミールは矢じりに結晶石を付けてオーラを込める練習を毎日始める。最初は結晶石に魔素を流し込むとすぐに割れたり爆発してしまった。めげずに何度も失敗を繰り返すことで、ようやく適切なオーラ量を圧縮しながら限界まで流し込むことが出来るようになったのだ。
そこにオーラの性質を変化させることでさらに戦闘の幅が広がった。先日のメリア鉱山での戦いで見せたのもその一端である。
一瞬風が弱くなったと同時にエミールの弓から放たれた矢が青い光を放ちながら飛んで行く。山賊スタイルの兵たちが森から出てくるところにエミールの矢が突き刺さった。刹那、矢は青白い光を放出したかと思うと周囲に爆炎が沸き上がる。突然のことに山賊兵もリース兵も一瞬戦闘を忘れて、爆発音のする方に視線が移った。
そこへ第二矢が山賊兵の足元に突き刺さり、またもや爆発が起こる。山賊兵たちは矢の軌跡から飛んできた方向を確認したらしい。アルス隊のほうに先ほどの復讐とばかりに突撃してきた。
「オルター将軍!アルトゥース殿下より伝令があります!」伝令が声を掛けるとオルター将軍はピクッと反応し、振り向くとあからさまに嫌な顔をする。
「なんだ?」
「至急、森に放った斥候が全員無事かお確かめください!そして何かあればすぐに橋をお戻りください!罠の可能性があります!」
「また罠というのか?今回は森に斥候部隊も放っている。一人や二人じゃないんだぞ?どうやってやられるというのかね?何か異変があればすぐに報せが入るようになっておるのだ。煩わしいことを言うなと殿下にお伝えいただきたい」
オルターの苛立ちは、殿下に対して明らかに非礼な言い方であると理解しつつも収まらなかった。その非礼さは伝令の兵にもよく伝わり、むっとした表情でオルターに答えた。
「わかりました。それではオルター中将の言、一言一句そのまま正確に殿下にお伝えいたします!失礼します!」オルターも伝令の皮肉を受け取り、ますます苛立った。
アルスの元に伝令が戻って来たときにはオルター中将の部隊は完全に橋を渡り切ってしまっていた。
「アルトゥース殿下!ただいま戻りました」
伝令が戻って報告を受けたが、一向に止まらない行軍の様子を見ていれば報告内容の予想は出来る。予想通りの内容だったが、がっくりと肩を落としている場合ではなくリース将軍にも確認を取るように伝令を送っていた。
幸いリース将軍はアルスの助言を受け入れてくれ、独自で斥候部隊を放つと約束してくれた。あとは結果がどう出るか?じりじりしながらアルスは進むしかない。
その時は突然訪れた。
「うぁぁぁぁ!」
無数の剣戟の音に加え、怒声と悲鳴が森の静寂を破った。橋を渡っているリース中将の部隊が、橋の向こう側で森の中から突然現れた伏兵に次々と倒されていく。直後、複数の火矢が橋のたもとに向かって放たれたかと思うと、大爆発を起こした。
橋は橋脚が破壊され橋を渡っていた兵たちは悲鳴を上げながら人馬共に川に流されていった。やられた!アルスは悔いた。普段ならもっと早くに気付けたはず。ゴットハルト将軍のことが頭のどこかで気になっていたのかもしれない。それとも、ハインリッヒ兄さんの死のことか・・・・・・?アルスは頭を振る。今はこんなこと考えている場合じゃない!そう思った瞬間だった。
森の奥から無数の矢が前方を行くリース部隊に降り注ぐ。山賊のような恰好をした兵士たちがわらわらと現れ、バタバタと倒れ混乱しているリース兵たちに襲い掛かった。
「森から距離を取れ!」
アルスは咄嗟の判断で隊に距離を取らせる。リース将軍もアルスに続いて森から距離を取り始めた。中がどうなっているかわからない森のそばにいるより川沿いに下りつつ距離を取るべきだとリースも判断したのだろう。適切な判断だ。
それにしてもいったいどうやって斥候部隊に気付かれずに森の中をあれだけの部隊が・・・・・・いや、今はそれより。
「エミール、少し距離があるけど、リース部隊を狙ってるルンデル兵をそこから狙えるか?」
「もちろんいけます」
「よし!それなら派手に頼むよ。やられっぱなしじゃいられないからね」
エミールは結晶石の矢じりがセットされた矢をつがえ、弓を引いた。風が南からさわさわと吹いてくる。
エミールがアルスのところに相談に来たのは、武器につける結晶石が完成した直後だった。
「アルスさま、僕に結晶石を作ってくれませんか?」
「どういうこと?」
「みんなは剣にオーラを込められますが、僕の場合は弓がメインです。弓に埋め込んだ結晶石にオーラを込めたところであまり意味はありません」
「まぁ、確かにそうだね」
「・・・・・・」
「今の結晶石の特性なんだけど、僕が作ってる結晶石は溢れたオーラがフローするように作ってるんだ」
そう言うと、アルスは手近にあった結晶石を持って説明を始めた。結晶石にオーラを込め続けていくと、オーラは結晶石から溢れ出す仕組みになっている。ただし、この結晶石に蓋をしてしまうと、限界を超えたオーラを外に逃がすことが出来なくなる。その結果、爆発する。アルスはその説明をしたうえでエミールに提案した。
「オーラを圧縮しつつ結晶石に流し込むんだ。オーラのコントロールが難しいかもしれないけど、それが出来れば矢じりにつけて飛ばすことが出来る。どう?」
「それ、たくさん作ってもらってもいいですか!?」
「もちろん!」
「すみません、多分かなり練習用に使っちゃうと思いますけど」
「大丈夫だよ」
それからエミールは矢じりに結晶石を付けてオーラを込める練習を毎日始める。最初は結晶石に魔素を流し込むとすぐに割れたり爆発してしまった。めげずに何度も失敗を繰り返すことで、ようやく適切なオーラ量を圧縮しながら限界まで流し込むことが出来るようになったのだ。
そこにオーラの性質を変化させることでさらに戦闘の幅が広がった。先日のメリア鉱山での戦いで見せたのもその一端である。
一瞬風が弱くなったと同時にエミールの弓から放たれた矢が青い光を放ちながら飛んで行く。山賊スタイルの兵たちが森から出てくるところにエミールの矢が突き刺さった。刹那、矢は青白い光を放出したかと思うと周囲に爆炎が沸き上がる。突然のことに山賊兵もリース兵も一瞬戦闘を忘れて、爆発音のする方に視線が移った。
そこへ第二矢が山賊兵の足元に突き刺さり、またもや爆発が起こる。山賊兵たちは矢の軌跡から飛んできた方向を確認したらしい。アルス隊のほうに先ほどの復讐とばかりに突撃してきた。
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