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第三章
ゴドア商業ギルド
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「それはすごい!これで光明が見えたぞ!」
ヴェルナーが興奮気味にリヒャルトに続く。
「待て。そりゃいいんだが、信頼できる薬師ってのはどこにいるんだ?3大ギルドの息が掛かってる奴かどうかなんか俺たちにゃわからんぞ」
「そのためのジェルモさんというわけですよね」
コレットが振り返って言った。
「ああ、そうだな。彼なら信頼出来る薬師もきっと知っているだろう」
リヒャルトはコレットの言葉に大きく頷いて答えた。
次の日、アチャズとマリア、エミールの3人でジェルモが言っていたゴドア商業ギルドを訪ねることとなった。
安全が確認出来ない状況では全員で行くわけにもいかず、アルスと最も近しいマリアと、直接話したエミールのふたりに加えてアチャズというメンバーで行く。
ゴドア商業ギルドは北の大国ゴドアの国営となるギルドで当然ながら歴史も古いギルドである。ゴドアの経済は、大きな取引はその国営ギルドが担っているため、その分3大ギルドなどは入る余地がなく常に対立している。だが、だからこそ信頼が置けるギルドともいえた。
商業区の中心に大きな建物があり、そこにゴドアの看板と門がある。門の内側には衛兵がおり、警備も厳重である。アチャズはそこで馬車を止めると、降りて衛兵に話しかけた。ふたりはフードを目深に被りながら様子をじっと見守る。
アチャズがカードを見せながらジェルモの紹介だと告げると最初は不躾だった衛兵の態度が急に丁重な姿勢に変わった。ジェルモの名前はゴドア商業ギルドではそれだけ影響力があるのかもしれない。門を開けてもらい、馬車ごと中に入ると様々な交易品をやり取りしている商人や順番を待っている商人が数人いる。
その姿を横目に3人は奥の階段から上の階へと登って行き、別室でしばらく待つことになった。どれくらい待っただろうか。かなりの時間が経過したとき、白い衣装に身を包んだジェルモが現れた。
「お待たせして申し訳ございません。今日は大きな取引がいくつかありましたので、時間が掛かってしまいました」
ジェルモが現れると三人は立ち上がった。
「いえ、ジェルモさん。私たちのほうこそ突然訪ねてしまいすみません。どうしてもお力をお借りしたいと思ってここに来ました」
そう言うと、マリアは深々と頭を下げる。
「アルトゥース殿下のことですね?」
言いながらジェルモは3人に席に座るよう手で促した。
「どうしてそれを?」
「もう噂になっておりますよ。もっとも積極的に情報を流しているのでしょうね。だいたい想像がつきますが」
そこまで言うと、ジェルモ自身も椅子に座った。
「そこまでご存じなのですか」
驚きと共に、事態の進展の速さにショックを隠し切れないマリアを見ながらジェルモは続ける。
「ええ、私でなくとも情報通の商人どもはだいたい知っていることと思います。街の一般市民に知れ渡るのも時間の問題かと思います」
「そうですか・・・・・・」
「残念ながら。それで、私がお手伝い出来そうなことがあれば良いのですが」
「単刀直入に申し上げます。実は昨日、ここにいるエミールがアルスさまに会っているんです」
「昨日、と申しますと?」
マリアに代わってエミールが答えた。
「例の会食の後です。アルスさまが囚われている牢獄まで行って僕が直接お話をしました」
「なんと!?いったいどのようにして?いえ、あなた方にこの手の質問は愚問ですね。失礼しました、忘れてください。それで、殿下はなんと仰っていたのですか?」
エミールはアルスから聞いた経緯を詳しくジェルモに説明する。そして、話し終わると小瓶にしまっていた蓋を開け、中に入っている紫色に染まったハンカチを見せた。ハンカチは小瓶にしまっていたせいで、まだしっとりと濡れている。
「これはレーヘのファディーエ王子が持っていたハンカチです。これに毒が含まれたワインが沁み込んでいます」
「なるほど、確かにこれがあれば毒を抽出して分析すれば使われている材料もわかりますね。しかし、殿下も凄いお方だ。あの状況で証拠の回収までなさるとは」
「ははは、私も初めてお会いした時からビックリさせられっぱなしです」
アチャズが愉快そうに笑う。重たい空気を少しでも払拭しようとアチャズなりに気を遣っているようだった。
実際、彼はノルディッヒでのアルスの活躍をこの目で実際に見ていた張本人のひとりだ。
「なるほど、それで信頼できる薬師を探しているのですな」
「そうなんです。余り時間はないかと思うので、すぐに取り掛かってくれる方がいらっしゃれば幸いなのですが」
マリアがハンカチの入れた小瓶を握りしめながら答えた。
「大丈夫です。私に心当たりがあります、すぐに取り掛からせましょう」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
終始緊張していたマリアの表情がパッと明るくなった。
ヴェルナーが興奮気味にリヒャルトに続く。
「待て。そりゃいいんだが、信頼できる薬師ってのはどこにいるんだ?3大ギルドの息が掛かってる奴かどうかなんか俺たちにゃわからんぞ」
「そのためのジェルモさんというわけですよね」
コレットが振り返って言った。
「ああ、そうだな。彼なら信頼出来る薬師もきっと知っているだろう」
リヒャルトはコレットの言葉に大きく頷いて答えた。
次の日、アチャズとマリア、エミールの3人でジェルモが言っていたゴドア商業ギルドを訪ねることとなった。
安全が確認出来ない状況では全員で行くわけにもいかず、アルスと最も近しいマリアと、直接話したエミールのふたりに加えてアチャズというメンバーで行く。
ゴドア商業ギルドは北の大国ゴドアの国営となるギルドで当然ながら歴史も古いギルドである。ゴドアの経済は、大きな取引はその国営ギルドが担っているため、その分3大ギルドなどは入る余地がなく常に対立している。だが、だからこそ信頼が置けるギルドともいえた。
商業区の中心に大きな建物があり、そこにゴドアの看板と門がある。門の内側には衛兵がおり、警備も厳重である。アチャズはそこで馬車を止めると、降りて衛兵に話しかけた。ふたりはフードを目深に被りながら様子をじっと見守る。
アチャズがカードを見せながらジェルモの紹介だと告げると最初は不躾だった衛兵の態度が急に丁重な姿勢に変わった。ジェルモの名前はゴドア商業ギルドではそれだけ影響力があるのかもしれない。門を開けてもらい、馬車ごと中に入ると様々な交易品をやり取りしている商人や順番を待っている商人が数人いる。
その姿を横目に3人は奥の階段から上の階へと登って行き、別室でしばらく待つことになった。どれくらい待っただろうか。かなりの時間が経過したとき、白い衣装に身を包んだジェルモが現れた。
「お待たせして申し訳ございません。今日は大きな取引がいくつかありましたので、時間が掛かってしまいました」
ジェルモが現れると三人は立ち上がった。
「いえ、ジェルモさん。私たちのほうこそ突然訪ねてしまいすみません。どうしてもお力をお借りしたいと思ってここに来ました」
そう言うと、マリアは深々と頭を下げる。
「アルトゥース殿下のことですね?」
言いながらジェルモは3人に席に座るよう手で促した。
「どうしてそれを?」
「もう噂になっておりますよ。もっとも積極的に情報を流しているのでしょうね。だいたい想像がつきますが」
そこまで言うと、ジェルモ自身も椅子に座った。
「そこまでご存じなのですか」
驚きと共に、事態の進展の速さにショックを隠し切れないマリアを見ながらジェルモは続ける。
「ええ、私でなくとも情報通の商人どもはだいたい知っていることと思います。街の一般市民に知れ渡るのも時間の問題かと思います」
「そうですか・・・・・・」
「残念ながら。それで、私がお手伝い出来そうなことがあれば良いのですが」
「単刀直入に申し上げます。実は昨日、ここにいるエミールがアルスさまに会っているんです」
「昨日、と申しますと?」
マリアに代わってエミールが答えた。
「例の会食の後です。アルスさまが囚われている牢獄まで行って僕が直接お話をしました」
「なんと!?いったいどのようにして?いえ、あなた方にこの手の質問は愚問ですね。失礼しました、忘れてください。それで、殿下はなんと仰っていたのですか?」
エミールはアルスから聞いた経緯を詳しくジェルモに説明する。そして、話し終わると小瓶にしまっていた蓋を開け、中に入っている紫色に染まったハンカチを見せた。ハンカチは小瓶にしまっていたせいで、まだしっとりと濡れている。
「これはレーヘのファディーエ王子が持っていたハンカチです。これに毒が含まれたワインが沁み込んでいます」
「なるほど、確かにこれがあれば毒を抽出して分析すれば使われている材料もわかりますね。しかし、殿下も凄いお方だ。あの状況で証拠の回収までなさるとは」
「ははは、私も初めてお会いした時からビックリさせられっぱなしです」
アチャズが愉快そうに笑う。重たい空気を少しでも払拭しようとアチャズなりに気を遣っているようだった。
実際、彼はノルディッヒでのアルスの活躍をこの目で実際に見ていた張本人のひとりだ。
「なるほど、それで信頼できる薬師を探しているのですな」
「そうなんです。余り時間はないかと思うので、すぐに取り掛かってくれる方がいらっしゃれば幸いなのですが」
マリアがハンカチの入れた小瓶を握りしめながら答えた。
「大丈夫です。私に心当たりがあります、すぐに取り掛からせましょう」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
終始緊張していたマリアの表情がパッと明るくなった。
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