大国に囲まれた小国の「魔素無し第四王子」戦記(最強部隊を率いて新王国樹立へ)

たぬころまんじゅう

文字の大きさ
176 / 187
第四章

アルル城 攻略戦

しおりを挟む
「ベルトルト、この城を水攻めしたい。どのくらいの堤が必要か測量をお願いしたいんだけど、いいかな?」

「そのために呼ばれたのはわかってましたよ。すぐに取り掛かります」

  ベルトルトはニコっと笑うと、早速仕事に取り掛かった。  

「水攻めも良いんじゃが、一度も攻めないというのも味気なくはないかの?」

「そうだぜ、王子さまよ。水攻めを否定はしないが、それはちっと軟弱な考えだ。城門まで一本道なら俺が強行突破して道を作るってのもひとつの手だぜ?」

 ミラの提案を横で聞いていたジャンは、攻めたくてしょうがないという感じでグイグイ来る。

「うーん・・・・・・じゃあ、お任せしようかな?」

 アルスが苦笑いしながら答えると、ギュンターも勢いよく割って入って来る。

「アルスさま!私も行きます」

「え、ギュンターも!?」

「はい、ぜひ!」

「じゃ、じゃあ、お願いしようかな」

「ありがとうございます!私が突破しますので、アルスさまは安心して見ててください」

 ギュンターにしては、珍しいな。ジャン将軍に対抗意識でも燃やしてるのかな?引きつった笑顔でアルスがそんなことを考えていると、ミラ主導で正面から攻める準備が進んでいた。

 アルル城を正面から攻めるには、まず橋を渡り小さい島に辿り着く必要がある。これは人工で造ったものだ。面積が狭いうえに形が細長い台形になっており、城に近づくほどふたり並んで通るのが難しいほど細長い通路となる。そこを抜けてさらに橋を渡るといよいよ城門に辿り着く構造だ。大軍勢で囲んでも、少人数での突破を余儀なくされる厄介な造り。当然、先頭を率いる者にはそれを任せられるだけの武が必要になる。

 このアルル城を守るのはマクシミリアン公爵の弟リュシアン・ルジェーヌだった。リュシアンは、部下たちに命じて早速、正面の守りを固める。リュシアンの視線の先には、ミラの『魔女の騎士団』の旗とローレンツの旗が揺れていた。

「シャルミールの魔女が、ローレンツと組んで反旗を翻すとはな・・・・・・。狼煙も機能してないところを見ると、既に抑えられたか」

「どうも、これは予想外でしたね。私はてっきり包囲されてるレバッハかヴァールの救援に行くと思っていたのですが」

 部隊長サンドルの呟きに、リュシアンは少し考えてから返答する。

「ここが戦略上の要衝だからだろう。ここを落とせばレバッハを包囲しているマクシミリアン軍は、寄る辺ない赤子と同じだ。レーヘにとってもここは心の臓と同じ。ここを抑えられたら物資や情報は分断される。そうなれば一気に形成は変わってくる」

「それが、やつらにはわかってるということですか」

 シャルミールの魔女が政治だけでなく、軍略にも明るいことは気付いていた。確かに戦に出れば華々しい戦果を上げている。だが、こんなにも大胆な戦略を描けるのか?ローレンツの入れ知恵なのだろうか。

 だが、亡国の危機に瀕しているのはローレンツであってこちらではない。攻撃は最大の防御とは言うが・・・・・・それをこんな形で実行しようとする者がいるのか。そこまで考えてリュシアンは笑った。

「わかってようがなんだろうが、この城が落ちねば意味がない。サンドル、バルナバ、このアルルがなぜ不落の城なのかという理由を敵に教えてこい」



 ミラの部隊1000が城の正面に集結する。先頭にはジャンとギュンターという組み合わせが立つ。本来であれば、もっと兵力を投入したいところだが、城の構造上これが適切と判断した。

「若造、きっちり仕事してくれよっ!」

「言葉遣いもなってない奴に、若造呼ばわりされる覚えはない」

「なんだおまえ、俺が王子に話しかけたときのこと、まだ根に持ってるのか?」

 ジャンが、溜め息をつきながらやれやれという表情になる。

「あたりまえだっ!殿下に対して不敬極まりない」

「おまえんとこは、そんな硬い雰囲気なのか?そうは見えなかったがな」

「そっちはそっち、こっちはこっちだ!おまえはアルスさまの部下でもないだろうが」

「わかったわかった。俺の仕事の邪魔だけはしてくれるなよ」

 ジャンが面倒くさそうに対応すると、ギュンターはますますヒートアップした。

「それはこっちのセリフだっ」

 ふたりの言い争いは、声は聞こえなくとも高台から見ていたアルスやミラにも感じ取れた。

「何をしとるんじゃ、あのバカは!」

 ミラは明らかにイライラしている様子である。ミラから提案したことである、責任も感じているんだろう。参ったな、普段あれだけ冷静なギュンターが、戦を前に言い争いをするなんて・・・・・・。

「シャル!一時、貴様の護衛の任を解く。あのバカが暴走したら止めろ」

「わかりました」

 ミラに命じられて、執事のシャルは風のように走り去っていった。そうこうしているうちに、角笛が鳴り城攻めが始まった。ジャンに率いられた1000の兵は一斉に橋を渡っていく。

 他方、アルル城の城門も開き、こちらからも兵士がわらわらと出て来た。ジャンとギュンターが橋を渡り切り、小さな島に着くとアルルの城兵は一斉に弓を放つ。兵士たちは盾を掲げて防御しながらも前進するが、城門と城壁の上からの矢の雨に加え、出撃した兵たちの斜め角度からの矢で次々と水に落ちていった。

「思ってたよりも城兵の数が多いかのぅ・・・・・・」

「1万以上はいる感じだね」

 ミラの呟きに反応したアルスだが、ミラの行動がどうしても気になってしまう。ミラはさっきからその辺の草をブチブチと抜きながら、じーっと見ている。よくわからないが、さっきので相当ストレスが溜まっているのかもしれない・・・・・・。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

異世界を制御魔法で切り開け!

佐竹アキノリ
ファンタジー
「第7回アルファポリスファンタジー小説大賞」特別賞受賞作! ネットで超話題の運命制御系ファンタジー、待望の書籍化! ある日、没落貴族の四男エヴァン・ダグラスはふと思い出した。前世の自分は、地球で制御工学を学ぶ大学生だったことを――日本人的な外見のせいで家族から疎まれていたエヴァンは、これを機に一念発起。制御工学の知識を生かして特訓を重ね、魔力ベクトルを操る超絶技巧「制御魔法」を修得する。やがて獣人メイドのセラフィナとともに出奔した彼は、雪山を大鬼オーガが徘徊し、洞窟に魔獣コボルトが潜む危険な剣と魔法の世界で、冒険者として身を立てていく。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...