とある猫のお話

オオトリ

文字の大きさ
1 / 1

とある猫のお話

しおりを挟む
 どうも。

 私は、小林家の一員である。

 小林家には、お父さんとお母さんと私。そして、私の弟のヒロがいる。

 名前を「ふぁろんまろん」という。



 私は猫である。



 ヒロは、私が小林家の一員となってから1年後にやって来たので、私の一歳下の弟である。



 このヒロというやつは、なかなかニブイやつで、始めの何ヶ月かは自力で歩くことも出来なかった。



 何かあるとすぐに、ニャアニャアと私を呼ぶ。



 言葉も下手くそで、全くなにを言っておるのかわからんが、ひとまずうるさいので横に並んで尻尾であやしてやる。…痛い!掴むにゃ!



 空腹時等は私の尻尾の絶妙な技をもってしても鳴き止ますことは出来ぬ。

 その時は、お母さんを呼んで乳を与えてもらう。お母さん!私も抱っこ…!



 昼間は、ヒロはほとんど寝ているので、私は横に付き添ってやらねばならない。

 尻尾でリズムを取ってやると、あっと言う間に…ムニャムニャ…



 そうしているうちに、私が教えてやった甲斐があり、しっかりヒロも歩けるようになった。

 そうだ。右と左、前と後の足を順番に出すのだぞ。走るときは、前足と後ろ足は揃えるのだ。うん。まだ上手に走れぬか…。焦らず付いてこい。…痛い!耳を引っ張るにゃ!



 …なんと…。ヒロは私よりも先に二足歩行が出来るようになったか。

 うん。目出度いな。心の広い私は、弟の成長は喜ぶぞ!

 …ちょっとそこに掴まって立つ練習でもしようかな…。…痛い!お母さん助けて!爪が布に引っかかって抜けないニャー!



 ヨタヨタと二足歩行の練習をしているヒロだが、まだ不安定でしょっちゅうあちこちにぶつかっていく。

 そのため、私はぶつかると危ないところに爪でしるしを付けてやらねばならない。カリカリ…ガリガリ…。ふう、スッキリした!



 ヒロの二足歩行が安定してくると、今度はまた私を真似て高いところに飛び乗る練習を始めたようだ。

 ヒロは、私よりも体が大きいので場所を取る。

 仕方がないので、台の上をヒロのために空けてやることとする。

 これもあれも邪魔にゃー!ポイポイなのにゃー!



 やがて、ヒロは言葉が上手くなり、私のことをちゃんと「ふぁろんまろん」と呼べるようになった。お父さんとお母さんにも、私の名前は難しいらしく「ふぁー」と呼ぶので、ヒロは言葉がとても上手いのだろう。

 上手に呼べると、褒めてやらねば。「ふぁろんまろん!」「ニャ~!」



 その頃には、ヒロはほとんど毎日出かけるようになった。

 帰り道がわからなくなってはいけないので、毎日私は玄関でヒロを待つ。

 今日もなんとか帰って来たようだ。やめろ!なんだそれは!トゲトゲをくっつけるな!離れない!お母さん取ってニャア…!



 ヒロが出かけることが多くなってからしばらく経つと、今度はトモダチを連れて来るようになった。未だに夜は一人で眠れず、私が横にいてやらねばならない甘えん坊であることがトモダチにバレては可哀想だ。

 私が居ては、甘えたくなってしまうだろうから姿を隠さねば!

 決して、知らぬ子供に撫でまわされるのが嫌だからではにゃい!



 ヒロは、いつの間にかチューガクセーというものになったらしい。

 最近は、ジュケンセーにもなり、椅子に座っていることが増えた。

 まだまだ甘えん坊だからな。一人では寂しいだろう。机の上で見守ってやるぞ。…なぜ避ける。ここは私の場所ニャー!



 やがて、ヒロはコーコーセーになって、帰りが遅くなった。

 この頃には、もう一人で帰って来れるだろうと弟を信じて見守るのも私の役目だ。

 玄関には行かず、寝床で待っているぞ。



 未だにお父さんもお母さんも私をちゃんと呼べないでいるが、ヒロだけはちゃんと「ふぁろんまろん」と呼ぶ。今も向こうで呼んでいるが、ちょっと起きるの面倒だから、尻尾で返事をした。パタリパタリ



 今日も、遠くから「ふぁろんまろん?起きて?」とヒロの声がする。遠くから呼ばないで、近くに来い。

 いや、優しく撫でる手を感じる。これはヒロの手で間違いない。ちらりと目を開けて見ると、すぐ近くでヒロが鳴いている。

 どうした。急にしゃべるのが下手になったのか?何を言ってるかわからんぞ。

「ふぁろんまろん!目を開けて!」

 そう言われても、温い手が気持ちよくて眠いんだ。

 でも、弟が呼んでるから返事はしてやらないとな。眠いから尻尾でごめん。

 パタリパタリ



 深ーく深ーく眠りに入る前に「ふぁー!ずっとずっとありがとう!うちの猫はふぁーだけだからね!」とヒロの声が聞こえた。









 どうも。



 小林家には、お父さんとお母さんと私。そして、私の弟のヒロがいる。



 今日から「ふぁー」に改名したらしい。どうぞよろしく。





 私は小林家唯一の猫である。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

aion0809
2021.01.14 aion0809

素敵なお話ありがとうございます……胸がいっぱいになって涙が…

2021.01.14 オオトリ

aion0809様

優しいお言葉ありがとうございます!

実は、猫さんと一緒に暮らしたことのない作者ですが、周りの猫好きーの人々の話を聞いてできた作品です

少しでもお楽しみいただけましたら幸いです♪
ご感想ありがとうございました!

解除

あなたにおすすめの小説

ローズお姉さまのドレス

有沢真尋
児童書・童話
*「第3回きずな児童書大賞」エントリー中です* 最近のルイーゼは少しおかしい。 いつも丈の合わない、ローズお姉さまのドレスを着ている。 話し方もお姉さまそっくり。 わたしと同じ年なのに、ずいぶん年上のように振舞う。 表紙はかんたん表紙メーカーさまで作成

きたいの悪女は処刑されました

トネリコ
児童書・童話
 悪女は処刑されました。  国は益々栄えました。  おめでとう。おめでとう。  おしまい。

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

ぼくの家族は…内緒だよ!!

まりぃべる
児童書・童話
うちの家族は、ふつうとちょっと違うんだって。ぼくには良く分からないけど、友だちや知らない人がいるところでは力を隠さなきゃならないんだ。本気で走ってはダメとか、ジャンプも手を抜け、とかいろいろ守らないといけない約束がある。面倒だけど、約束破ったら引っ越さないといけないって言われてるから面倒だけど仕方なく守ってる。 それでね、十二月なんて一年で一番忙しくなるからぼく、いやなんだけど。 そんなぼくの話、聞いてくれる? ☆まりぃべるの世界観です。楽しんでもらえたら嬉しいです。

ゆずことまほうのてがみ

結崎悠菜@w@
絵本
ゆずこはおかあさんもおとうさんもだいすきです。

傷ついている君へ

辻堂安古市
絵本
今、傷ついている君へ 僕は何ができるだろうか

ママのごはんはたべたくない

もちっぱち
絵本
おとこのこが ママのごはん たべたくないきもちを ほんに してみました。 ちょっと、おもしろエピソード よんでみてください。  これをよんだら おやこで   ハッピーに なれるかも? 約3600文字あります。 ゆっくり読んで大体20分以内で 読み終えると思います。 寝かしつけの読み聞かせにぜひどうぞ。 表紙作画:ぽん太郎 様  2023.3.7更新

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。