TRPGの世界に召喚されて全滅した仲間を生き返らせて元の世界へ帰るために、チート能力「ダイス目操作」を駆使してこの世界を蹂躙します。

桐山じゃろ

文字の大きさ
21 / 32

21 飛び級と準備

しおりを挟む
 夕食の後、深夜を回った頃にチャバさんが帰宅した。

「デガー! 無事だったかー!」
 僕に抱きついてきたチャバさんからは濃いアルコールの臭いがする。
「おかえりなさいチャバさん、また酔ってますね」
「お酒断れないんだもーん」
「喉痛めますよ」
「飴ちゃん食べてるからヘーキヘーキ」
 酒場の歌姫としてちょっとした有名人になったチャバさんは、歌い終わるとファンからお酒や食べ物を貢がれるようになった。
 チャバさんはお酒にあまり強くない。ほぼ毎晩のように、こうして酔っ払って帰ってくる。
「チャバさん、お水どうぞ」
「ありがとベルー。ベルも無事だったねー、いい子いい子」
 チャバさんは水の入ったコップを受け取り、飲まずにベルを片手で抱きしめた。
「ちょっ、ど、どこ触ってるんですか」
「ぐへへー、ふわふわー」
 ドコ触ってるんですかね。僕とカイトはふいっと目を逸らした。

 ベルがチャバさんを誘導してお風呂に入らせ寝かしつけるのが、恒例になってきた。
「いつも悪いね」
「とんでもない。皆様にお仕えできることがわたくしの喜びですので」
 聖女みたいなことを言う。……そういえば、正真正銘聖女だった。



 どんなに酔っ払っても、宿酔いにはならないのがチャバさんの凄いところだ。
「でね、結構貯められたのよ。はい」
 チャバさんが革袋を食卓の真ん中にどすん、と置く。
 今は朝食の後だ。チャバさんは珍しく早い時間に起きてきたとおもったら、唐突に「仕事が上手くいっている」という話をしはじめて、革袋を取り出したのだ。
「これは?」
「一千万マグ入ってる。あたしの正規の給金分はちゃんと別に取ってあるから、大丈夫。ま、デガたちの稼ぎに比べたら微々たるものだけどさ」
 チャバさんは得意げにニッと笑った。
「気にしなくていいって言ったのに」
「デガ、実は俺も」
 カイトの手によって、食卓の上に革袋が追加される。
「俺からも一千万マグ。冒険者ギルドのシステム改良したら、他の町のギルドも恩恵が受けられたってんで、特別ボーナス貰いまくりなんだ」
 自宅のテーブルの上に、二千万マグが無造作に置いてある。不思議な光景だ。
「助かるよ。ただ……言い辛いんだけど」
「一人分にすら届かないのは十分承知だ」
「いや、そういうことじゃないんだ。実は」

 そもそも材料がなくて、お金を積んでも聖石が入手できないことを話した。

「ああー……」
「無いものはしかたないねぇ」
 カイトとチャバさんが揃って唸る。
「だから、今日はこれからベルと一緒に、危険度SSの魔物を討伐しようかと」
「結局デガ頼りかぁ」
「適材適所だよ」
「どうしてデガだけチートあるんだろうなぁ」
 カイトがぽつりと漏らした言葉に、僕は突然、この世界へ来る直前のことを思い出した。

「この世界へ来る前、モニターが発光したよね」
「した」
「したねぇ」
「もにたー?」
 ベルに対して説明を挟みつつ、話を続けた。
「最初は目を瞑ってたんだけど、僕、足元にコーラこぼしちゃって。それで一瞬目を開けたんだ。その時に……」
 白髪白髯の老人の姿が見えて、僕はチートを授かった。
「それ、もしかして……」
「多分、あいつだと思う」

 僕たちがこの世界へ来るきっかけとなったTRPG「D&T」のオリジナルシナリオのGK、GOD。
 今どこで、何をしているのだろうか。



 カイト、ベルと一緒に冒険者ギルドへ行くと、カイトが速攻で呼ばれた。
「これ、どうやるのかこっちの新人君に教えてやってくれるか」
「わかりました」
 この世界へ来て、まだ三ヶ月も経っていない。カイトは生き返ってから二ヶ月半ほどで、すっかり冒険者ギルドの職員としてなくてはならない存在になっていた。
 僕とベルはカイトを見送って、別の受付さんにギルド長を呼んでもらうように頼んだ。

「危険度SSの魔物討伐か。無いことはないが……。ああ、デガのランクを上げればいいのか」
「そんな簡単に決めていいんですか?」
「魔王討伐してきた者が何を言う。今からデガの冒険者ランクはSSSだ」
 SSを飛び越えて、いきなりSSS、冒険者の最高ランクだ。
 早速、ギルド長自らカードの更新をしてくれた。
 ベルのランクは上がらなかった。ギルド長はランクSSにすると言ってくれたが、本人が「わたくしは何もしておりませんので」と固辞したのだ。
「デガのランクがあれば、ミヒャエル嬢と二人で危険度SSの仕事をしても問題ない」
「ありがとうございます」

 後は依頼板で危険度SSの魔物討伐の仕事を請けて、魔核が出るまで魔物を倒すだけだ。
「よっし、頑張ろう」
「はい!」

 魔物は危険度が高いほど、町から遠く離れた場所にいることが多い。
「町の近くに出ないなら、仕事の数は少ないんじゃ……」
「遠方へ出かける方、主に商人などが道中に遭遇する可能性を下げるために、依頼が出されることは多いですよ」
「なるほど」
 とはいえ、ベルが選んできた依頼メモは、クウちゃんに連れて行ってもらっても、日帰りが厳しい距離のものばかりだった。
「僕、野宿って経験無いんだ」
 日本じゃキャンプが流行っていたが、僕には何が楽しいのかわからなくて、やったことがない。
「そうでしたか。やれそうですか?」
「四の五の言ってる場合じゃないからね。色々と教えて欲しい」
「承知しました」

 町で野営に必要なものをベルに教わりながら買い込むだけで、この日は終わってしまった。


「野営かぁ。俺もやったことないな」
 自宅での夕食の後、カイトに話を振ったらこう返ってきた。
「興味はある?」
「無い。外じゃノーパソ一台持ってくくらいしかできないだろ?」
 カイトは「朝起きたらパソコンに電源入れないと、俺も目覚めない」と言い切るほど、パソコンとは親密な生活を送っていた。この世界にはパソコン自体が無いため、その情熱が受付の仕事や料理に回っているのだ。
「デガはどうなんだ」
「色々買い物して野営道具見てたら、ちょっと興味出てきたとこ」
 何事も準備している時間ってワクワクするよね。
 火を熾す道具や携帯式の折り畳める焚き火台、小ぶりの食器やテントに寝袋。日常じゃ使わないものを、早く使ってみたい。
「若いっていいねぇ」
 カイトが腕を組んでうんうんと頷く。
 キャンプに興味が出るのと年齢はあまり関係ない気がするが。
「そういうわけだから、明日から家をあけるよ」
「わかった」
 初の危険度SS討伐の仕事は、最短で一泊二日の予定だ。
 僕はダイス目チートの『他人のダイスに干渉できる』技能を駆使して、カイトやチャバさんに危機が訪れた際、危機回避のためのダイスロールは全てクリティカルが出るように設定してある。
 地下室で眠る二人や家自体にも設定したかったが、死体や家はダイスを振れないのでできなかった。当然か。


 翌朝、僕とベルはいつもより早く起きた。
「おはよう、デガ、ベル」
「おはよう……って、チャバさん、どうしたの?」
 キッチンへ向かうと、なんとチャバさんが起きていた。手元では目玉焼きを作っている。
「デガ達としばらく会えなくなるって聞いたからさ。顔見ておこうと思って。コレはついでだよ」
 コレ、のところでフライパンを軽く持ち上げた。
「しばらく、って言ってもほんの二、三日だよ」
「まあいいじゃん。さ、できたよ。食べて食べて」
 いつもカイトが作ってくれるのと同じ朝食、つまり、サラダとスープに、焼いたベーコンと目玉焼きが乗った食パンが揃っていた。
「あれ? チャバさんほんとに起きてたんだ。……で、俺の分は?」
 カイトもやってきて、食卓の上を見る。朝食は二人分しかない。
「無いよ。二人分作るのが精一杯だった」
 チャバさんがアハハと笑うと、カイトは脱力した。
「だったら俺が作るのに……」
「あの、わたくしの分を」
「いいっていいって。すぐ出るんだろ?」
「その……はい。では、いただきます」
 僕とベルはお言葉に甘えて、朝食を頂いた。
 チャバさんの料理は、ちょっとだけ味付けが濃かった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

さんざん馬鹿にされてきた最弱精霊使いですが、剣一本で魔物を倒し続けたらパートナーが最強の『大精霊』に進化したので逆襲を始めます。

ヒツキノドカ
ファンタジー
 誰もがパートナーの精霊を持つウィスティリア王国。  そこでは精霊によって人生が決まり、また身分の高いものほど強い精霊を宿すといわれている。  しかし第二王子シグは最弱の精霊を宿して生まれたために王家を追放されてしまう。  身分を剥奪されたシグは冒険者になり、剣一本で魔物を倒して生計を立てるようになる。しかしそこでも精霊の弱さから見下された。ひどい時は他の冒険者に襲われこともあった。  そんな生活がしばらく続いたある日――今までの苦労が報われ精霊が進化。  姿は美しい白髪の少女に。  伝説の大精霊となり、『天候にまつわる全属性使用可』という規格外の能力を得たクゥは、「今まで育ててくれた恩返しがしたい!」と懐きまくってくる。  最強の相棒を手に入れたシグは、今まで自分を見下してきた人間たちを見返すことを決意するのだった。 ーーーーーー ーーー 閲覧、お気に入り登録、感想等いつもありがとうございます。とても励みになります! ※2020.6.8お陰様でHOTランキングに載ることができました。ご愛読感謝!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...