TRPGの世界に召喚されて全滅した仲間を生き返らせて元の世界へ帰るために、チート能力「ダイス目操作」を駆使してこの世界を蹂躙します。

桐山じゃろ

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24 三人目と四人目

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 ベルが完全復活したので、早速教会へ行き、聖石を買い求めた。
 僕たちが危険度SSを倒しに行ったり休んだりしている間に、教会にストックが一つ増えていて、更に持ち込んだ魔核でもう一つ聖石が完成した。
 資金は十分稼いであったので、即決で二つ入手した。
 つまり今、二つの聖石が手元にある。

「本当に大丈夫?」
「はい。わたくしが消耗するものは殆どありませんので」
 ベルは地下室で眠るジョーとピヨラ、二人を同時に蘇生させると言い出したのだ。

 蘇生の儀に必要なものは聖石と、聖女または聖者の力。
 この聖女の力というのは、聖女の魔力を少し消費するだけらしい。
 これまで、カイトとチャバさんを一人ずつ蘇生してくれた時は確かに疲れた様子は全く見せなかったが、ベルは僕たちのこととなると無茶をする傾向にある。
「ベル、嘘だったら承知しないよ」
「はい。本当に大丈夫ですから」
 蘇生にはカイトとチャバさんも立ち会った。

「では――」

 地下室に優しい光が満ちる。
 光はジョーとピヨラにそれぞれ同じくらい降り注ぎ……二人は目を覚ました。
「ジョー、解るか?」
「ピヨラ!」
 カイトがジョーに、チャバさんがピヨラに声をかける。
「ん……えっと、カイト、だっけ……」
「チャバ、さん? ……うう、なんだか、体が重い……」
 二人を地下室から個室へ運び、男女別で介抱した。

 ピヨラは二日目に、ジョーは三日目には、体を起こせるようになった。
 蘇生後に起きられるまでの時間は、個人差だったようだ。

 ジョーとピヨラは蘇生後すぐに簡単な説明をしておいたが、蘇生後四日目に全員でリビングに集まり、更に詳しく説明をした。
「はー……。デガが、チートをね。オレには無さそうだ」
「私も無いわね。いいなぁ、チート」
 二人は僕に「羨ましい」とひとしきり言いまくった後、立ち上がって頭を下げた。
「蘇生、ありがとう。死んだままだったら、化けて出るとこだった」
「ありがとう。生き返ることができて、嬉しいわ」

 これで、全員の蘇生が完了した。

「あとは日本へ帰る方法だけだね」
 僕がそう口にすると、チャバさんが僕を見た。なんていうか、睨みつけられてる。
「?」
「デガ、あんたは……」
「チャバさん、カイトにだって……日本も同じだけ時間が流れてたら、心配してる」
「んん、それもそうか」
 チャバさんが何か言い掛けて、カイトがまた何か別のことを言い、チャバさんが引き下がった。
 何の話だろう。
「元の世界への帰還方法は、ドルズブラの連絡を待つしかありませんね。少々せっついて来ましょうか。わたくし先日、神聖なる黙示録セイクリッド・アポカリプスという攻撃魔法を覚えまして……」
「ベルそれ絶対城で使っちゃ駄目だよ!?」
 神々しすぎて物騒な名前の攻撃魔法がどんな効果なのかは分からないが、僕は必死に止めた。


 それから一週間、僕たちは普通に過ごした。
 僕とベルは冒険者ギルドの仕事、カイトは夕方まで冒険者ギルドの受付をして、夕食を作る係。
 チャバさんは夜の間、酒場で歌い手。
 ジョーとピヨラは全員分の家事を引き受けてくれた。

 ピヨラは高校生だった。現在十六歳。バイトの経験も、チートも無い未成年に仕事をさせるわけにはいかない。
「異世界でまでそんな悠長なこと言ってていいんですかね」
「いいんだよ。説明しただろ、デガの稼ぎがヤバイって。万が一、日本に帰れなくても、十八歳になるまでは俺らが面倒みる」
 不安がるピヨラにカイトが言って聞かせた。
「でも私だけ……せめて家事くらいはします」
「まあそんくらいなら手伝ってもらおうかな。ジョーはどうする?」
「オレも一旦家事組に入るよ。まだ何ができるか分かんねぇし。いいか?」
「構わないよ」
 TRPGのチャットルームで繋がった仲間たちは、各々自分のやることを決めて、この異世界で新しい生活に馴染んでいった。

 ドルズブラから連絡が来たのは、そんな時だ。



 呼ばれたのは僕とベル、そして冒険者ギルド長。
 当事者は全員蘇生したと連絡したのに、他の皆は呼ばれなかった。

 というか、またしても例の扉の前で放置された。

「――天に坐す高き存在に、聖女フィンベル・ミヒャエルが祈りを捧げます。我が仇敵となるものに粛清の光を――」
「ベルっ! それ詠唱だよねぇ!? 絶対こないだ言ってた攻擊魔法でしょ! 駄目って言ったじゃん!!」
 ベルが目を閉じて手を組み荘厳な語句を紡ぐと、ベルの周囲に魔力を持たない僕でも「これが魔力か」と解る力が充満して、白く光りだした。
 騒いでいたら、扉が細く開いた。デジャヴだ。
「何事……おお、そなたたちか。すまぬ、またしても連絡がどこかで途切れていたようだ。ささ、入ってくれ」
 顔を出した宰相は、今にも攻撃魔法を放たんと魔力をバヂバヂさせているベルを見て、慌てて僕たちを促した。
 ベルは詠唱を止めて魔力を引っ込め、僕の後ろに付き従った。
 もう誰もこれ以上ベルを怒らせないでください。僕の心臓が持たない。


「実は、記録と記憶に齟齬が生じておる。城の何人かの人間は、我らが禁術を行ったことを覚えているのだが……禁術を行使した人間の記憶にはなく、記録もない。しかし、禁術を行った部屋には間違いなく禁術を行使した痕跡が残っているのだ」
 宰相の言う通りなら、ちぐはぐだ。
 禁術を使った記録と、実際に使った人たちに記憶がないのに、痕跡と別人の記憶には残ってるだなんて。
「別人の中には僕や、召喚された皆も含まれますよね」
「ああ、そういうことになるな」
「城では、どういう人達が覚えているんですか?」
「準備や手伝いをした者たちだ。言われたものを用意した使用人や、当日の部屋の警備に当たっていた兵士だな」
 該当する使用人や兵士は確かに、禁術に必要な物品を運んだり、禁術を行った部屋をいつもより強固に警備をした記憶があると証言した。
 痕跡というのは、僕たちが召喚された時、床に描かれていた魔法陣や、魔力を帯びた大量の燭台のことを指している。
「結論を言えば、我が国はそなたたちを召喚したことは認める。だが、目的は誰も憶えておらず、記録もない。魔王討伐を命じたという証拠がない故……」
「報奨は出せない、と?」
 ベルが再び魔力を迸らせながら、宰相を睨む。
 ギルド長も、今にも腰の剣に手をかけそうな雰囲気だ。
「いやっ、そういうことではない! 喚び出した件に関する責任は取る! 魔王の討伐者には国が定めた報奨も与える! ただ一つだけ、頼みがあるのだ」
 僕は立ち上がってベルとギルド長を宥め、宰相に話の続きをお願いした。
「納得できる内容なら、頼みというのは聞き入れます。ですが、それ以前にお伺いしたいことが」
「何でも聞いてくれ」

「僕たちは、元の世界に帰れますか? 帰らせてもらえますか?」
 ギルド長は黙って、ベルは俯いて宰相の答えを待った。

「可能だ。望むなら帰らせて差し上げたい。しかし、必要な魔力が溜まるまでに、あと半年はかかる。生活の保証はする故、辛抱してもらいたい」

 僕はほっとして、力が抜けた。

「それで、頼みは聞いてもらえるか?」
「はい、何でしょう」
「デガ殿たちにおいては、別の世界から来たことを、公言しないでもらえるだろうか。既に知っておるものには口止めを願いたい」

 頼まれる前から、ベルとギルド長と副ギルド長以外に召喚されたことなんて話していない。
 カイトとチャバさんは職場の人にも話していないと言っていた。
 ジョーとピヨラは蘇生後に家を出たことがないから、誰かに話す隙なんてない。
「構いませんよ」
「反対です」
 ベルはすっくと立ち上がって、宰相を見下ろした。
「ベル?」
「こればかりは、デガさんの言うことを聞けません」
 ベルは瞳に確固たる決意を漲らせている。

「この世界の住人は、他の世界を知らねばなりません。わたくしたちの世界がどれだけ歪んでいるかを思い知り、デガさん達に助けを乞うべきです」

 宰相は唇をぎゅっと引き結んだ。
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