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第二章
2 背中を預ける
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モルイを出たのが昼過ぎだったから、目的地の少し手前につく頃には日が暮れていた。
チェスタ達三人は流石に野営の準備に慣れている。僕も経験はあるけれど、手つきが段違いだ。
殆ど終わった頃にチェスタが声をかけてきた。
「ヨイチ、料理はできるか」
「そこそこ」
前に家で僕の手料理をヒスイ達に食べてもらった時、わりと好評だった。ヒスイの料理には絶対にかなわないけど。
「じゃあお願い!」「頼んでいいか」「頼む」
三人がものすごい熱量で言い募ってきたので、頷くしかなかった。
料理をしながら、僕が入る以前にいた仲間についての話を聞いた。
ひとりはランクBの剣士で、剣の腕が確かで、パーティで唯一まともな料理を作れる人だったとか。
冒険者を辞めた理由は、妊娠だそうだ。
「ちなみに父親はコイツよ」
キュアンがチェスタを肘でつつく。チェスタは気まずそうに目をそらした。
「ここにいていいの?」
身重の妻の側にいてあげなくても大丈夫なのだろうか。
「正式な結婚はしてないんだ。もう少し稼がないと、ちゃんと養えないからな」
……これ、もしかしてフラグ?『この戦いが終わったら結婚するんだ』的な。
へし折らねば。
「そっか。じゃあ明日は頑張るよ」
出来上がった料理を皆の前にとんとん、と置く。ここへ来る途中で討伐したフォレストボアという魔物の串焼きと、きのこスープだ。
「美味っ」
「おいしー!」
「まともな野営飯なんていつぶりだ……」
煮たり焼いたりしただけのシンプル料理だけど、皆すごい勢いでがっついている。アトワに至っては涙ぐんでいる。……この三人の料理、どういう状態だったのだろう。
野営の夜は、不寝番を立てる。
魔物よけの簡易結界は安価な魔道具が出回っているけれど、人間の野盗には効かない。
不寝番は二人で順番に行う。
最初は僕とキュアンだ。
「抜けたもう一人のことって、聞いてもいい?」
チェスタの奥さんについては向こうから話してくれたのに、もう一人の話題は出なかった。
単純な好奇心で聞いてみたら、キュアンは少し困ったような顔になった。
「いや、言い辛いなら」
「ううん。もう一人も女性なんだけどね、チェスタのことを好きだったみたいなの」
「ああー……。チェスタ、モテそうだもんね」
顔は整っているし、僕に声をかけた時みたいに人見知りしないし、喋り方や雰囲気も爽やかな好青年だ。
「本人に自覚がないのが厄介なのよね。まあ、チェスタは奥さん一筋で、もう一人のことは寄せ付けなかったんだけど。妊娠をきっかけに完全に諦めて、パーティも抜けちゃったわ」
うーん。こういうゴチャゴチャした人間関係って煩わしいなぁ。
かといって人間生きてる以上、恋愛沙汰は避けて通れない……かなぁ。
「ヨイチは、いい人いるの?」
キュアンが眠たげな目をキラキラさせながら「ん? ん?」とせっついてくる。
「いや、そういうのはないです」
同級生の女の子三人と暮らしているけど、あの三人はここのところ僕を主としてメイドに徹している。
皆、家にいるときはローズがデザインしたおそろいのお仕着せで、僕に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだ。
いくら遠慮してもやめそうにないので、諦めて付き合っている。
僕が嫌なことは絶対しないし、向こうは楽しんでやっているようだから、問題ないかなと。そのうち飽きるだろうし。
「そっかー。ヨイチもモテそうなのに」
「からかわないでくださいよ」
冗談を受け流したら、キュアンが「ヨイチもかぁ」と小さく呟いた。何のことだろう。
キュアンと交代で、アトワが起きてきた。
焚き火で温めた湯でお茶を作って渡すと、アトワがカップを両手で持ってずずず、と飲む。
「茶も美味い」
アトワがしみじみとつぶやく。
「まさか、お茶も?」
「ああ。色のついた湯というか、湯のほうがマシだった」
壊滅的じゃないか。このクエスト、三人で請けていたらどうなってしまってたんだ。
「冷たい携帯食料と水のみでは、力が出にくくてな。助かる」
なるほど。食糧問題はそうやって解決していたのか。
アトワは飲み干したカップを横に置くと、僕に向き直った。
「短期間限定加入なのが惜しいな」
「まだ料理しただけですよ」
「ランクAだろう? それに、フォレストボアを討伐した手腕も見事だった」
フォレストボアの殺気にいち早く気づいたのは僕だった。
前を歩いていたキュアンに声をかけ、キュアンが他の二人に合図を送って臨戦態勢を整えた。
フォレストボアは茂みからまっすぐキュアンに飛びかかろうとしたところを、僕が横から剣で両断して終わった。
「たまたま近くにいただけで」
「チェスタなら反応できていたかもしれないが、俺とキュアンには無理だった。余計な怪我をせずに済んだ」
アトワが言ったことは、あの時のキュアンも同じようなことを言っていた。
普通、冒険者は魔物の気配を察知しても、反応できるかどうかは実力と運次第だ。
反応できなかったり運が悪かったりすると一撃食らい、それから反撃する。当然、最初の一撃で怪我を負う。
本命のクエストに辿り着く前に引き返す、なんてことはざらにある。
僕がひとりで一日に何匹も魔物を倒すのが異常なのだと、話を聞いて思い知らされた。
「ここを抜けた後もパーティが必要になったら、いつでも言ってくれ。歓迎する」
無表情で考えの読みにくいアトワが、明らかに笑みを浮かべた。
この後、アトワとチェスタ、チェスタとキュアンが交代で番をして朝を迎えた。
朝食も僕が作った。といっても、マジックボックスに入れてあったパンに昨夜の残りの肉と、食べられる野草を摘んで挟み、ヒスイ特製の万能ドレッシングをかけただけの代物だ。
「すげぇ……栄養バランスまで考えてある……」
「このドレッシング箱で買おう」
「美味しい……美味しい……」
大丈夫かなこの三人。美味しいって言ってもらえるのは嬉しいけど。
僕たちは更に進み、今回のクエストの本命であるブラックウルフの群生地にたどり着いた。
作戦は、道すがら打ち合わせしてある。
まずアトワが僕とチェスタに強化魔法をかける。
アトワとキュアンは少し離れた場所で待機し、その場にアトワが結界魔法を施しておく。
キュアンが手近な一匹に魔法を撃ち込み、こちらへ向かってくるブラックウルフを僕とチェスタで斬り倒す。
アトワとキュアンは結界の中から僕とチェスタを支援し、魔物にも適宜攻撃魔法を撃つ。
少々乱暴な作戦だけれど、いつもこの方法でやっているそうだ。
「何か疑問や質問はあるか?」
チェスタに訊かれても、特に思い浮かばなかったので首を横に振った。
僕のやることは、目の前に来た狼を剣で倒すだけだ。
「よし、ならば行こう」
チェスタの合図とともに、キュアンの攻撃魔法がブラックウルフの一体に炸裂した。
僕が三十匹目を斬ると、辺りは静かになっていた。
百近くいたはずのブラックウルフは全て地に伏している。
狼系の魔物は賢くて連携攻撃もしてくるから、一人だとかなり手こずっていたはずだ。
「アトワ」
チェスタが声をかけると、アトワはその場で目を閉じ、すぐに開けた。
「終わった」
アトワはスキル[気配察知]で、遭遇した魔物と同じ魔物が近くに居ないかどうかを調べることができるのだとか。
僕の[心眼]の効果との違いが気になる。
「ふぃー、おつかれー。やっぱりヨイチすごいねぇ」
僕とチェスタが剣を鞘に収めながら結界魔法のあった場所まで行くと、キュアンが労ってくれた。
「皆が凄いんだよ。やりやすかった」
アトワは結界魔法を維持しながら僕とチェスタに途切れることなく強化魔法をかけ続けてくれた。
キュアンは攻撃魔法で直接倒せなくても、僕やチェスタの動きの邪魔になるブラックウルフを牽制していた。
背中はチェスタが守ってくれていたから、僕は限りなく少ない憂慮で剣を振るうことが出来たのだ。
「いや、ヨイチは凄いぞ。こんなに連携が上手くいったのは初めてだ」
「完璧に狼の注意を引いてくれていたから、こちらも存分に支援できた」
チェスタとアトワに手放しで褒められて背中がこそばゆい。
「やはり短期間というのは惜しいなぁ」
「だがランクAをこんな小さなパーティに置きっぱなしはよくないだろう」
「じゃあさ、ヨイチがパーティ募集したら皆でそっちに移籍しようよ」
「それは移籍って言うのか?」
雑談しながらブラックウルフの死骸を集め、チェスタ以外の三人のマジックボックスへ放り込む。
「二十」
「二十五」
「四十八」
キュアン、アトワ、僕の順で収納した数を報告する。全部で九十三匹いたらしい。
「マジックボックスの容量も凄いねぇ……」
キュアンが羨ましそうに僕のマジックボックスを見つめる。
「魔力だけはあるんだよね。魔法はあんまりだけど」
「ヨイチならすぐ使えそう。そしたら魔法剣士? かっこいいー!」
「ははは……」
僕が曖昧に笑っていると、周囲を確認していたチェスタが皆に声をかけた。
「忘れ物はないか? 長居は無用だ、引き上げよう」
全員がブラックウルフ群生地跡に背を向けた時だった。
「ヒヒュウ……」
「何か言ったか?」
「いや?」
何かの声のようなものは、全員に聞こえていたらしい。
しかし誰も声でもなかった。
「ヒヒュ……」
「やっぱり何かいない?」
「生き残りか!?」
「その割には……」
「あれは?」
キュアンが指差した場所には、白い石のようなものがある。
よくよく見ると、石の表面が風で靡いている。
砂埃ではなく、毛にみえる。
「ヒ……ヒュ……」
駆け寄ってみると、それは生き物だった。
よくよく観察すると、頭を身体に埋めてまるまった犬のように見える。
例の「ヒヒュ」というのは鳴き声というより、瀕死の呼吸音だ。
思わず抱き上げると、血まみれだった。
慌てて治癒魔法を発動するも、どういうわけか効きが悪い。
「こいつは一体……。アトワ、鑑定できないか?」
チェスタの問いに、アトワが浅く頷いて犬を見つめる。
「ブラックウルフらしいが……細かい部分がわからないな」
「ブラックウルフ? 白いよ?」
「僕も見てみる」
「ヨイチも[鑑定]持ちか。どうだ?」
ブラックウルフ(アルビノ)
レベル1
種族:魔狼
属性:聖
ソウルリンク条件:魔力交流
「ブラックウルフのアルビノで、ソウルリンク条件が魔力交流らしいんだけど」
ソウルリンクって何? と聞こうとしたら、三人が一斉にザッと引いた。
チェスタ達三人は流石に野営の準備に慣れている。僕も経験はあるけれど、手つきが段違いだ。
殆ど終わった頃にチェスタが声をかけてきた。
「ヨイチ、料理はできるか」
「そこそこ」
前に家で僕の手料理をヒスイ達に食べてもらった時、わりと好評だった。ヒスイの料理には絶対にかなわないけど。
「じゃあお願い!」「頼んでいいか」「頼む」
三人がものすごい熱量で言い募ってきたので、頷くしかなかった。
料理をしながら、僕が入る以前にいた仲間についての話を聞いた。
ひとりはランクBの剣士で、剣の腕が確かで、パーティで唯一まともな料理を作れる人だったとか。
冒険者を辞めた理由は、妊娠だそうだ。
「ちなみに父親はコイツよ」
キュアンがチェスタを肘でつつく。チェスタは気まずそうに目をそらした。
「ここにいていいの?」
身重の妻の側にいてあげなくても大丈夫なのだろうか。
「正式な結婚はしてないんだ。もう少し稼がないと、ちゃんと養えないからな」
……これ、もしかしてフラグ?『この戦いが終わったら結婚するんだ』的な。
へし折らねば。
「そっか。じゃあ明日は頑張るよ」
出来上がった料理を皆の前にとんとん、と置く。ここへ来る途中で討伐したフォレストボアという魔物の串焼きと、きのこスープだ。
「美味っ」
「おいしー!」
「まともな野営飯なんていつぶりだ……」
煮たり焼いたりしただけのシンプル料理だけど、皆すごい勢いでがっついている。アトワに至っては涙ぐんでいる。……この三人の料理、どういう状態だったのだろう。
野営の夜は、不寝番を立てる。
魔物よけの簡易結界は安価な魔道具が出回っているけれど、人間の野盗には効かない。
不寝番は二人で順番に行う。
最初は僕とキュアンだ。
「抜けたもう一人のことって、聞いてもいい?」
チェスタの奥さんについては向こうから話してくれたのに、もう一人の話題は出なかった。
単純な好奇心で聞いてみたら、キュアンは少し困ったような顔になった。
「いや、言い辛いなら」
「ううん。もう一人も女性なんだけどね、チェスタのことを好きだったみたいなの」
「ああー……。チェスタ、モテそうだもんね」
顔は整っているし、僕に声をかけた時みたいに人見知りしないし、喋り方や雰囲気も爽やかな好青年だ。
「本人に自覚がないのが厄介なのよね。まあ、チェスタは奥さん一筋で、もう一人のことは寄せ付けなかったんだけど。妊娠をきっかけに完全に諦めて、パーティも抜けちゃったわ」
うーん。こういうゴチャゴチャした人間関係って煩わしいなぁ。
かといって人間生きてる以上、恋愛沙汰は避けて通れない……かなぁ。
「ヨイチは、いい人いるの?」
キュアンが眠たげな目をキラキラさせながら「ん? ん?」とせっついてくる。
「いや、そういうのはないです」
同級生の女の子三人と暮らしているけど、あの三人はここのところ僕を主としてメイドに徹している。
皆、家にいるときはローズがデザインしたおそろいのお仕着せで、僕に甲斐甲斐しく世話を焼いてくれるのだ。
いくら遠慮してもやめそうにないので、諦めて付き合っている。
僕が嫌なことは絶対しないし、向こうは楽しんでやっているようだから、問題ないかなと。そのうち飽きるだろうし。
「そっかー。ヨイチもモテそうなのに」
「からかわないでくださいよ」
冗談を受け流したら、キュアンが「ヨイチもかぁ」と小さく呟いた。何のことだろう。
キュアンと交代で、アトワが起きてきた。
焚き火で温めた湯でお茶を作って渡すと、アトワがカップを両手で持ってずずず、と飲む。
「茶も美味い」
アトワがしみじみとつぶやく。
「まさか、お茶も?」
「ああ。色のついた湯というか、湯のほうがマシだった」
壊滅的じゃないか。このクエスト、三人で請けていたらどうなってしまってたんだ。
「冷たい携帯食料と水のみでは、力が出にくくてな。助かる」
なるほど。食糧問題はそうやって解決していたのか。
アトワは飲み干したカップを横に置くと、僕に向き直った。
「短期間限定加入なのが惜しいな」
「まだ料理しただけですよ」
「ランクAだろう? それに、フォレストボアを討伐した手腕も見事だった」
フォレストボアの殺気にいち早く気づいたのは僕だった。
前を歩いていたキュアンに声をかけ、キュアンが他の二人に合図を送って臨戦態勢を整えた。
フォレストボアは茂みからまっすぐキュアンに飛びかかろうとしたところを、僕が横から剣で両断して終わった。
「たまたま近くにいただけで」
「チェスタなら反応できていたかもしれないが、俺とキュアンには無理だった。余計な怪我をせずに済んだ」
アトワが言ったことは、あの時のキュアンも同じようなことを言っていた。
普通、冒険者は魔物の気配を察知しても、反応できるかどうかは実力と運次第だ。
反応できなかったり運が悪かったりすると一撃食らい、それから反撃する。当然、最初の一撃で怪我を負う。
本命のクエストに辿り着く前に引き返す、なんてことはざらにある。
僕がひとりで一日に何匹も魔物を倒すのが異常なのだと、話を聞いて思い知らされた。
「ここを抜けた後もパーティが必要になったら、いつでも言ってくれ。歓迎する」
無表情で考えの読みにくいアトワが、明らかに笑みを浮かべた。
この後、アトワとチェスタ、チェスタとキュアンが交代で番をして朝を迎えた。
朝食も僕が作った。といっても、マジックボックスに入れてあったパンに昨夜の残りの肉と、食べられる野草を摘んで挟み、ヒスイ特製の万能ドレッシングをかけただけの代物だ。
「すげぇ……栄養バランスまで考えてある……」
「このドレッシング箱で買おう」
「美味しい……美味しい……」
大丈夫かなこの三人。美味しいって言ってもらえるのは嬉しいけど。
僕たちは更に進み、今回のクエストの本命であるブラックウルフの群生地にたどり着いた。
作戦は、道すがら打ち合わせしてある。
まずアトワが僕とチェスタに強化魔法をかける。
アトワとキュアンは少し離れた場所で待機し、その場にアトワが結界魔法を施しておく。
キュアンが手近な一匹に魔法を撃ち込み、こちらへ向かってくるブラックウルフを僕とチェスタで斬り倒す。
アトワとキュアンは結界の中から僕とチェスタを支援し、魔物にも適宜攻撃魔法を撃つ。
少々乱暴な作戦だけれど、いつもこの方法でやっているそうだ。
「何か疑問や質問はあるか?」
チェスタに訊かれても、特に思い浮かばなかったので首を横に振った。
僕のやることは、目の前に来た狼を剣で倒すだけだ。
「よし、ならば行こう」
チェスタの合図とともに、キュアンの攻撃魔法がブラックウルフの一体に炸裂した。
僕が三十匹目を斬ると、辺りは静かになっていた。
百近くいたはずのブラックウルフは全て地に伏している。
狼系の魔物は賢くて連携攻撃もしてくるから、一人だとかなり手こずっていたはずだ。
「アトワ」
チェスタが声をかけると、アトワはその場で目を閉じ、すぐに開けた。
「終わった」
アトワはスキル[気配察知]で、遭遇した魔物と同じ魔物が近くに居ないかどうかを調べることができるのだとか。
僕の[心眼]の効果との違いが気になる。
「ふぃー、おつかれー。やっぱりヨイチすごいねぇ」
僕とチェスタが剣を鞘に収めながら結界魔法のあった場所まで行くと、キュアンが労ってくれた。
「皆が凄いんだよ。やりやすかった」
アトワは結界魔法を維持しながら僕とチェスタに途切れることなく強化魔法をかけ続けてくれた。
キュアンは攻撃魔法で直接倒せなくても、僕やチェスタの動きの邪魔になるブラックウルフを牽制していた。
背中はチェスタが守ってくれていたから、僕は限りなく少ない憂慮で剣を振るうことが出来たのだ。
「いや、ヨイチは凄いぞ。こんなに連携が上手くいったのは初めてだ」
「完璧に狼の注意を引いてくれていたから、こちらも存分に支援できた」
チェスタとアトワに手放しで褒められて背中がこそばゆい。
「やはり短期間というのは惜しいなぁ」
「だがランクAをこんな小さなパーティに置きっぱなしはよくないだろう」
「じゃあさ、ヨイチがパーティ募集したら皆でそっちに移籍しようよ」
「それは移籍って言うのか?」
雑談しながらブラックウルフの死骸を集め、チェスタ以外の三人のマジックボックスへ放り込む。
「二十」
「二十五」
「四十八」
キュアン、アトワ、僕の順で収納した数を報告する。全部で九十三匹いたらしい。
「マジックボックスの容量も凄いねぇ……」
キュアンが羨ましそうに僕のマジックボックスを見つめる。
「魔力だけはあるんだよね。魔法はあんまりだけど」
「ヨイチならすぐ使えそう。そしたら魔法剣士? かっこいいー!」
「ははは……」
僕が曖昧に笑っていると、周囲を確認していたチェスタが皆に声をかけた。
「忘れ物はないか? 長居は無用だ、引き上げよう」
全員がブラックウルフ群生地跡に背を向けた時だった。
「ヒヒュウ……」
「何か言ったか?」
「いや?」
何かの声のようなものは、全員に聞こえていたらしい。
しかし誰も声でもなかった。
「ヒヒュ……」
「やっぱり何かいない?」
「生き残りか!?」
「その割には……」
「あれは?」
キュアンが指差した場所には、白い石のようなものがある。
よくよく見ると、石の表面が風で靡いている。
砂埃ではなく、毛にみえる。
「ヒ……ヒュ……」
駆け寄ってみると、それは生き物だった。
よくよく観察すると、頭を身体に埋めてまるまった犬のように見える。
例の「ヒヒュ」というのは鳴き声というより、瀕死の呼吸音だ。
思わず抱き上げると、血まみれだった。
慌てて治癒魔法を発動するも、どういうわけか効きが悪い。
「こいつは一体……。アトワ、鑑定できないか?」
チェスタの問いに、アトワが浅く頷いて犬を見つめる。
「ブラックウルフらしいが……細かい部分がわからないな」
「ブラックウルフ? 白いよ?」
「僕も見てみる」
「ヨイチも[鑑定]持ちか。どうだ?」
ブラックウルフ(アルビノ)
レベル1
種族:魔狼
属性:聖
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