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第12話 彼女が出来て初めての朝➁

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 どうしたらいいのだろうか。
 いや、別にどうしたってこともないんだけどね。
 ただ単にちょっと喧嘩してるというか、何というか……。

 とりあえず、どうにかして欲しい。

「ねえ、あんた本当の本当にお兄ちゃんと付き合ってるの?」

「だからそうだと言っているでしょう。何回同じ説明をすればいいのかしら。昔はもう少し頭が良かったはずなのにね」

 この女同士が喧嘩しているこの場を。

「ちょっと一旦落ち着こうよ。みんなでゆっくりと話し合おう!」

 二人とも喧嘩したせいで息が荒く、座り込んでいた。 
 なんとか俺が収めたものの、俺がいなかったらどうなっていたことか。

「お兄ちゃんのせいでこうなってるんですけど」

「そこに関しては桜ちゃんのことには賛成だわ。あなたが説明もろくにしなかったせいでこうなっているもの」

「なんでそこで結束するんだよ! 本当は仲いいんだろお前ら!」

 はぁ……どうしてこうなった。
 ただ、理沙を家に入れただけなのに。
 暇つぶしをして欲しかっただけなのに……。

 少し前のことを思い出す。 
 理沙を家に入れてすぐのことだ。

「……理沙、流石にこの服は恥ずかしいんだけど……」

 自分の服をみながら言う。
 まだ、身支度も出来ておらずパジャマのままだ。
 正直恥ずかしい。

「ああ、そうよね……いきなり押しかけてしまったし。私はここで待ってるから、その……」

「うん、着替えて来るから」

「……ありがとう」

 少し恥ずかしそうに言ってくる。
 もしかして俺の着替え姿でも想像したのだろうか。
 ……それはそれでいいな。

 そんなことを考えながら階段を上がり、自室へ向かう。
 そして、パジャマを脱ぎ、制服に着替えた。
 
 今日はいつもよりもカッコいい感じに仕上げた。
 彼女が見てるんだ。
 カッコつけるのも当たりまえだろう。

「よし、これでいいかな。さっさと戻って理沙と……」

 すると。

「ああもう、嘘つけ! この大馬鹿やろう!」

「それは、きちんと説明しているのに理解も出来ないあなたの方ではなくて?」

 下の方から叫び声が聞こえて来る。
 おいおい、なにが起こっているんだ……。
 ……いやな予感がする。

 俺は駆け足で向かうと。

「ふざけんのも大概にしなさいよ! 嘘ばっかついてるこの腹グロ女!」

「ふざけているのはあなたでしょう。腹が黒いのはどちらなのかしらね!」

 枕を投げ合っている二人の姿がそこにはあった。

「……何してるんだ……」

「見ればわかるでしょ。喧嘩よ喧嘩。桜ちゃんがいきなり吹っ掛けて来て……」

「それこそ嘘よ。私はただ単にどうしてこの家にいるのか質問していただけだもの。そしたらこの腹グロ女がお兄ちゃんと付き合ってるからとか意味の分からないことばかり言って来て……」

「その腹グロ女って言い方はいいとして私たちが付き合っているというのは本当のことよ。そうよね、颯ちゃん」

「……ああ、まあそうだな」

 颯ちゃんって他の人が居る前で呼ばれるのって結構恥ずかしいな。

「……えええええええええええええ!!」

「ほら、これで私の勝ちね。謝ってもらえるかしら」

「……絶対謝らない! あんたが悪いんだから!!」

「筋が全く通っていないわよ。悪いのはあなたでしょう?」

「こ、この……!」

「なによ、やる?」

 もみ合いを始める。
 悪口を言ったり、軽くパンチをしたり。
 正直そこまで痛くなさそうだが、これでも喧嘩は喧嘩だ。止めなくてはいけない。

「ちょっと止めて! 喧嘩は止めて!!」

「っち、死ね!」

「望むところだわ。喧嘩ならまけるつもりはないし」

「無視しないで!?」

 そこから喧嘩はどんどん広がっていき、結局、俺がそれを止めて現在に至る。 

「……ほら、それなら昔のこととか一緒に話さないか? ちゃんとかつけてるし、昔の思い出とか……いっぱいあるだろ?」

「なにそれ、別に思い出なんか全然ないんですけど。ちょっと昔に三人で遊んだことくらいかしらね」

「それって結構な思い出な気がするけど……」

「……まあいいわよそんなことは。それよりもこれから質問していってこの根暗ブス腹グロ女の本性を……」

「ちょっと桜さん、口が悪すぎるんですけど……」

 そんなことを言い合っていると。
 
 ピーンポーン。

「……おい、またかよ。今度こそ宗教勧誘か? それならきちんと言わないと後々面倒くさいことになるからな……」

 ていうか朝から何回、チャイム鳴らしてくるんだよ。
 玄関に行き、ドアを開ける。

「ちょっとすいませんけどうちはそう言う宗教とか興味ないんでお帰り……ってえ!?」

 外に出ると、そこにいたのは……。

「来ちゃいました先輩!」

「……凛音ちゃん、おはよう……」

 凛音ちゃんだった。

 ああ、終わった俺の人生。
 ドアを開けながらそう思った。
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