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第9話 バトルの開催
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「バトルだと……?」
「ああ、俺とお前でバトルをするだけだ。殺しまでとはいかない。単なる真剣勝負をするだけだ簡単だろ?」
奴は笑みを浮かべ余裕そうにしていた。
なにかあるのかと思ってしまう。
するとリンが、
「本当にただのバトルなんですか? 私にはどうもうさんくさく感じるんですけど」
「クソガキのくせに生意気なこと言いやがる。でも、バトルは本当だ。ルールとしては明日の昼ごろにギルド近くにある広場の中心で待っているからそこに来るだけ。殺したりするのはなしだ。それでいいだろ」
「ルール的には問題はなさそうですけど……」
「俺がやる理由がない」
「たしかに、そういう面ではお前がしなくちゃいけない理由はない。ないんだが……」
さらに、にやけ面になる。
「……なにがおかしい」
「やっぱりバトルには賭け事が必要だよなあ。人生を賭けなくちゃ面白くない」
「!? お前……いったい何しようとしている」
流石に看過しておけなかった。
俺はいつもよりも怒った口調になる。
「おお、なんかお前が怒っているところ初めて見た気がするよ」
「なにがしたいんだよ、お前は……」
「ただたんにお前がが憎いだけさ。弱いだけのなんの取り柄もない雑魚のくせに俺たちと同じ冒険者だなんて。吐き気がするんだよ!」
「そんな言い方ないじゃないですか!」
「事実なんだから仕方がないだろ。採取クエストなんて初期の冒険者がダンジョンに初めて行くときぐらいしか使わないクエストなんだ。そんなもので冒険者を気取っているなんてただの冒険者への侮辱だ!」
「レンさんは……弱くなんてありません。取り消して下さい!」
「だからそのためのバトルなんだよ。それを証明したいならバトルで証明すればいい。この俺に勝てばいい話なんだ」
「そんなバトルなんかしなくてもレンさんはボスを……ぐ!?」
言い終わる前にリンの口を塞ぐ。
手の中でもぐもぐと口が動くが、言わせない。
おさまったところで手を離す。
「…………レンさんなんで!?」
「一旦黙っていてくれ。俺がなんとかするから」
これ以上リンを巻き込むと本当に危なくなる。
俺は落ち着いた様子で話しかける。
「で、お前が言っていた賭けってなんなんだ。俺が行かないといけないってどういう意味だ」
「やっと乗り気になってくれたか。はっきり言おう。俺たちが賭けるのは互いの名誉ってことでどうだ?」
「名誉?」
思っていなかった答えが来て、少し驚く。
「ああ、もしお前がこなかった場合、俺はお前の名誉を亡き者にしてやる。逆に俺がこなかった場合、お前がやれ」
「……具体的にはなにするんだよ」
「お前が勝負にも来られないような腰抜けだって書いた紙を町中にばらまき散らす。こうすれば確実にお前の存在は知れ渡るし、いい手だろ」
「…………」
「なにも言わないってお前もビビったか。流石に町全体に知られるとマズいだろ。暮らすのも困難になるだろうしな!」
「「あははははは」」
笑われ、馬鹿にされる。
普通の人ならば最悪だとか、苦しいだとか、ぶっ殺してやるとかそんな風に思うのだろう。
でも、俺はそうは思わなかった。
逆だった。
よかった、と心の底から安堵した。
それだけのことでよかったのだと、そう思った。
俺は深くため息をついてから言う。
「はぁ……わかった。そういうことならそうする」
「レンさん……」
「はは、やっと納得してくれたか。明日の昼に広場だからな。絶対に忘れるなよ。おい、お前ら行くぞ。早く行かねぇとクエストが終わらなくなっちまう」
「「はい!」」
歩き出す。
ギルドの出入り口に止まって、
「じゃあなクソ雑魚。明日ボコられることを想像していい夢見ろよ」
「来ても来なくても詰んでるとか可哀想な奴だな」
「早くお前が負けた姿が見たいぜ」
「「あははははは」」
3人組は外に出ていく。
これで災難は消えていった。
「俺たちも行くぞ。これ以上ここにいたらまたなにか起きるかもしれない」
「……わかりました」
俺たちもギルドを出ていく。
クレタさんにギルド長がいつ来るのか聞いておきたかったが、これなら仕方ないだろう。
次の機会に聞けばいい。
「いいんですか、あんなバトル受けてしまって……」
「別に問題ない。そもそも行く必要がない」
「行く必要がないって……いったい、どういう意味ですか!?」
「そのままの意味だ。俺は別にあいつと勝負する必要がない」
「でも……町中にレンさんを馬鹿にした紙をばらまくって……」
「それくらいのことだろ。全く問題じゃない」
「それって……あれを認めちゃうんですか!?」
「そうだ」
もしもこれがリンのことだったり、俺ではない誰かであったなら、俺はやらなくちゃいけなかったのかもしれない。
でも、自分のことなら話は別だ。
俺は自分をいい奴だとか思っていない。
むしろ、罰を受けるべきだと思っている。
だから、これくらいされなくちゃいけないのだ。
「そんなの……私、嫌ですよ」
「嫌って……リンには被害が及ばないようにはする。だから、大丈夫だ」
「そうじゃないです! 私は……レンさんになにか起こるのが嫌なんです。おかしいですよ。こんな風にされるなんて……あんなの許せないです!」
「許せる許せないの話じゃない。ああいうのは受け入れてしまった方が楽なんだ」
「楽って、本当はレンさん強いじゃないですか!」
「……俺は強くなんかない」
「どうして……戦えばもしかしたらこの状況が打開できるかもしれないのに。どうして……諦めちゃうんです。やっぱり戦いに行きましょう! 私も行きますから!」
「戦いに意味なんてない。だから、俺は行かない」
「そんな……」
「とにかく、大丈夫だ。今日はもう帰ろう。……それと、あんまり俺と会わない方がいい。またこうなるかもしれないからな」
「…………クエストはどうするんです」
「いつか行こう。……一旦落ち着いたら」
「…………わかりました」
俺はそう言ってリンと別れる。
今日の出来事で俺は実感した。
俺は他の人と関わらないほうがいいということを。
関わってしまえば、未来はないと。
だから、俺は彼女を突き放した。
そして、次の日。
バトルの当日。
リンは家に……来なかった。
「ああ、俺とお前でバトルをするだけだ。殺しまでとはいかない。単なる真剣勝負をするだけだ簡単だろ?」
奴は笑みを浮かべ余裕そうにしていた。
なにかあるのかと思ってしまう。
するとリンが、
「本当にただのバトルなんですか? 私にはどうもうさんくさく感じるんですけど」
「クソガキのくせに生意気なこと言いやがる。でも、バトルは本当だ。ルールとしては明日の昼ごろにギルド近くにある広場の中心で待っているからそこに来るだけ。殺したりするのはなしだ。それでいいだろ」
「ルール的には問題はなさそうですけど……」
「俺がやる理由がない」
「たしかに、そういう面ではお前がしなくちゃいけない理由はない。ないんだが……」
さらに、にやけ面になる。
「……なにがおかしい」
「やっぱりバトルには賭け事が必要だよなあ。人生を賭けなくちゃ面白くない」
「!? お前……いったい何しようとしている」
流石に看過しておけなかった。
俺はいつもよりも怒った口調になる。
「おお、なんかお前が怒っているところ初めて見た気がするよ」
「なにがしたいんだよ、お前は……」
「ただたんにお前がが憎いだけさ。弱いだけのなんの取り柄もない雑魚のくせに俺たちと同じ冒険者だなんて。吐き気がするんだよ!」
「そんな言い方ないじゃないですか!」
「事実なんだから仕方がないだろ。採取クエストなんて初期の冒険者がダンジョンに初めて行くときぐらいしか使わないクエストなんだ。そんなもので冒険者を気取っているなんてただの冒険者への侮辱だ!」
「レンさんは……弱くなんてありません。取り消して下さい!」
「だからそのためのバトルなんだよ。それを証明したいならバトルで証明すればいい。この俺に勝てばいい話なんだ」
「そんなバトルなんかしなくてもレンさんはボスを……ぐ!?」
言い終わる前にリンの口を塞ぐ。
手の中でもぐもぐと口が動くが、言わせない。
おさまったところで手を離す。
「…………レンさんなんで!?」
「一旦黙っていてくれ。俺がなんとかするから」
これ以上リンを巻き込むと本当に危なくなる。
俺は落ち着いた様子で話しかける。
「で、お前が言っていた賭けってなんなんだ。俺が行かないといけないってどういう意味だ」
「やっと乗り気になってくれたか。はっきり言おう。俺たちが賭けるのは互いの名誉ってことでどうだ?」
「名誉?」
思っていなかった答えが来て、少し驚く。
「ああ、もしお前がこなかった場合、俺はお前の名誉を亡き者にしてやる。逆に俺がこなかった場合、お前がやれ」
「……具体的にはなにするんだよ」
「お前が勝負にも来られないような腰抜けだって書いた紙を町中にばらまき散らす。こうすれば確実にお前の存在は知れ渡るし、いい手だろ」
「…………」
「なにも言わないってお前もビビったか。流石に町全体に知られるとマズいだろ。暮らすのも困難になるだろうしな!」
「「あははははは」」
笑われ、馬鹿にされる。
普通の人ならば最悪だとか、苦しいだとか、ぶっ殺してやるとかそんな風に思うのだろう。
でも、俺はそうは思わなかった。
逆だった。
よかった、と心の底から安堵した。
それだけのことでよかったのだと、そう思った。
俺は深くため息をついてから言う。
「はぁ……わかった。そういうことならそうする」
「レンさん……」
「はは、やっと納得してくれたか。明日の昼に広場だからな。絶対に忘れるなよ。おい、お前ら行くぞ。早く行かねぇとクエストが終わらなくなっちまう」
「「はい!」」
歩き出す。
ギルドの出入り口に止まって、
「じゃあなクソ雑魚。明日ボコられることを想像していい夢見ろよ」
「来ても来なくても詰んでるとか可哀想な奴だな」
「早くお前が負けた姿が見たいぜ」
「「あははははは」」
3人組は外に出ていく。
これで災難は消えていった。
「俺たちも行くぞ。これ以上ここにいたらまたなにか起きるかもしれない」
「……わかりました」
俺たちもギルドを出ていく。
クレタさんにギルド長がいつ来るのか聞いておきたかったが、これなら仕方ないだろう。
次の機会に聞けばいい。
「いいんですか、あんなバトル受けてしまって……」
「別に問題ない。そもそも行く必要がない」
「行く必要がないって……いったい、どういう意味ですか!?」
「そのままの意味だ。俺は別にあいつと勝負する必要がない」
「でも……町中にレンさんを馬鹿にした紙をばらまくって……」
「それくらいのことだろ。全く問題じゃない」
「それって……あれを認めちゃうんですか!?」
「そうだ」
もしもこれがリンのことだったり、俺ではない誰かであったなら、俺はやらなくちゃいけなかったのかもしれない。
でも、自分のことなら話は別だ。
俺は自分をいい奴だとか思っていない。
むしろ、罰を受けるべきだと思っている。
だから、これくらいされなくちゃいけないのだ。
「そんなの……私、嫌ですよ」
「嫌って……リンには被害が及ばないようにはする。だから、大丈夫だ」
「そうじゃないです! 私は……レンさんになにか起こるのが嫌なんです。おかしいですよ。こんな風にされるなんて……あんなの許せないです!」
「許せる許せないの話じゃない。ああいうのは受け入れてしまった方が楽なんだ」
「楽って、本当はレンさん強いじゃないですか!」
「……俺は強くなんかない」
「どうして……戦えばもしかしたらこの状況が打開できるかもしれないのに。どうして……諦めちゃうんです。やっぱり戦いに行きましょう! 私も行きますから!」
「戦いに意味なんてない。だから、俺は行かない」
「そんな……」
「とにかく、大丈夫だ。今日はもう帰ろう。……それと、あんまり俺と会わない方がいい。またこうなるかもしれないからな」
「…………クエストはどうするんです」
「いつか行こう。……一旦落ち着いたら」
「…………わかりました」
俺はそう言ってリンと別れる。
今日の出来事で俺は実感した。
俺は他の人と関わらないほうがいいということを。
関わってしまえば、未来はないと。
だから、俺は彼女を突き放した。
そして、次の日。
バトルの当日。
リンは家に……来なかった。
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