ギルド最弱と呼ばれているけれど、実は数年前、大厄災を起こした最強の能力者でした。最高のヒロインと一緒に隠していたチートの力を使って無双します

シア07

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第14話 治療

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「おい、リン! 大丈夫か!」

 俺は奴が倒れた姿を見た後すぐにリンの方へと駆け込む。
 倒れたままで体が動いていない。
 両手両足で4つの穴があいていた。
 あの弓矢に貫かれたのだろう。
 
「起きろ。返事をしろ、リン!」

 身体を揺らしてみる者の返事はない。
 とりあえず血が出ている部分を止血しようとするが、手にはなにも持っていない。
 ここに来る前に荷物をすべて捨てて来たのを思い出す。
 
「あの店に置いてきたんだ……あれを持ってきてさえいれば……」

 回復薬も買っておいたのに。
 でも、いまあそこまで走って行ったら…………リンが死ぬかもしれない。
 それくらいヤバい状況だ。
 一刻を争う事態だ。

「誰か……誰か……回復薬を持っている奴はいないのか!」

 俺は助けを求めて周りに叫んでみるが、いま起こったことで騒ぎになっていてもみ消される。 

「頼む、頼むよ、誰でもいいんだ!」

 奴が倒されたことがそこまで衝撃だったのか、誰一人としてリンのことを心配していない。 
 みている奴もちらほらと出てき始めているが、怯えているように見えた。
 つまるところ、リンのことを助けてくれそうな人はいなかった。

 
「俺が…………治すしかない。この傷を。俺にしかできないことだ」

 覚悟を決める。
 俺の力なら治せるかもしれない。

「…………待ってろ。俺が必ず助けて見せる」

 この世のすべては小さな粒、量子で出来ている。だから、俺の能力なら治せる可能性がある。
 だが、それは可能性なだけで実際は難しい。
 人間には肌だけじゃない。血管とか血液とか他にも色々ある。
 すべて治すのは不可能だろう。

「でも……やるしかないんだ。時間がない」

 リンの右足の傷口付近に手を置く。
 ダラダラと血が流れて来ていて、痛々しい。
 俺は力を使おうとする。

 正直にいえば、怖い。逃げ出したい。
 俺が失敗をしてしまえば、リンが死ぬ。
 でも、他の人には頼れない。

「まったく……いつもこうだ。俺の人生は絶望に満ちている。覚めることない悪夢のようで、最悪なんだ」

 俺の人生において、成功の一文字もない。失敗しかしていない。
 リンがこの状況におかれたのもそうだ。俺の失態だ。
 だが。

「だけど……今日こそ、その悪夢から覚めてやる。一歩ずつ進んでいくんだ。俺が俺であるために、絶対に失敗してなんかいられない。必ずやってのけて見せる」

 腕に力を入れる。
 力を行使し始める。

「ぐ…………」

 思っていた以上に困難だった。
 難しすぎる。
 
「…………頑張れ、俺。やり遂げるんだろ!」

 だらに力を入れる。 体の全神経をそこにそそぐ。
 血管から肌まですべて創り出す。

「俺の量子パーティクルならできる。諦め、るな」

 そして、血のはみだしがないように創り出したものを全部つなぎ合わせる。
 最初からそこにあったように。

「はぁはぁ……まず右足」

 ようやく、右足の治療が完了する。 
 能力をここまで細かく使ったのは初めてだった。
 集中力と体力を異常に使う。体が悲鳴を上げているのを感じた。

「あと残りの穴は3つ。これ……行けるのか……」

 リンよりも俺の体が先にダウンするかもしれない。
 ここまで辛いとなると、本当に無理なのではないかと思ってしまう。
 そこで、考えた。

「また……やめるのか、俺は。成功を目の前にして……諦めるのか」

 リンの顔を見る。
 未だに起きそうになく、どことなく辛そうで悲しそうな表情に見えた。

「どうするんだよ、俺…………」

 きっとここで諦めれば後悔する。
 せっかくここまでやってきた。
 守るべきものはここにあるのに、手を伸ばせば届くというのに、俺はいったいどうしようというのだ。
 治すこと以外なにをしようとしているのだ。

「やっぱそうだよな。やるしかない。やるしかないんだ」

 俺はまた持ち直す。
 続いて左足の方に行く。

「ぎ…………」

 治療を始める。
 右足と同じ要領だったため、さっきよりも時間はかからなさそうだ。

「ふう…………なんとか…………足は全部終わったか」

 体力をごっそり持っていかれた。
 今すぐに寝たいぐらい眠気がおそってくる。
 俺はそれに耐えながら、右手の方に行く。

「残すところはあと2つ。このペースなら多分、間に合うはずだ」

 右手に触れる。
 どくどくと血が流れ続けている。
 物凄く熱い。
 
「俺が元々の原因だ。こんなの……早く治してやらないといけないよな」

 そういいながら治療を始める。 
 足とくらべて致命傷に近く、治すのが大変そうだった。
 力を使っていくが、なかなかに治らない。
 苦しみながらもなんとか持ちこたえる。
 
「はぁはぁ…………あと…………一つ」

 治せた時には吐きそうなくらい疲れていた。
 時間は足の2倍ぐらいはかかっているはずだ。
 やる気も最初の最初の方よりも失せてしまっている。

 そんなときだった。

「頑張れ! 少年!」

 近くから男の声が聞こえてきた。
 そっちの方を向く。

「あの人は…………」

「荷物もここにあるから、早くリンちゃんを治してこっちに来いよ!」

 俺にリンが戦っていることを知らせてくれた店の店主さんだった。
 
「少年よ、頑張りたまえ」

「武器屋の店主さん!?」

「レン君頑張って!」

「クレタさんも!?」

 どんどんと歓声が広がっていた。
 広がっていたといってもほんの少しだけなのだが。
 他の人はなにを言っているんだという目で俺たちを見ている。

「…………」
 
 俺は人一倍交流も少なく、周りからは蔑まれていた。
 そんなことは最初からわかっている。
 でも、数が少なくても、たしかに俺を知ってくれている奴らがいた。応援してくれる奴らがいた。

 そんなのを目にしてここでやめるなんて馬鹿がどこにいる。
 俺は体にある全体力をそこに添える。

「はああああああああああああああああああ! 治れええええええええええ!」

 すべてをそこにありったけを突っ込む。
 守り切って見せる。
 暴走なんか二度とさせてやらない。
 俺が俺であるために。

 そして、ついに。
 
「…………やったのか、俺は。よかった」

 見てみるとリンの体が元通りになっていた。
 血が吹き出ている場所も一つもない。
 なんとかったのだ。

 とてつもない安堵が襲ってくる。
 やってのけたのだ。

「おい、リン……起きろ」

 ゆっくりとリンを揺らす。
 さっきとは違い、ぴくりと反応をした。

「あれ…………レンさん。どうしてここに…………あれ、私は死んだはずじゃ」

「……生きてるんだからいいだろ」

「まあ、そうなんですけど……ってどうしたんですか、疲れてそうな顔して」

「疲れたんだ。すごく眠い」

「なんか、レンさんらしくないですね」

「ふ、そう……かもな」

 そういって目を閉じる。
 俺はリンを助けた。
 その事実を噛み締めながら眠った。
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