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第1章『始まりの村と魔法の薬』編
第2話 過去/Old story
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ミサとソウヤの住む村は深緑の木々と広大な山々に囲まれた、豊かな自然の中に存在していた。
その名も、『コックル村』。
決して大きな村ではないが、暮らすにはそこまで不自由はなく、村人たちは外界から隔離された環境を活かして、自由気ままに生活していた。
時折、橋を隔てた隣の王国「スカースレット王国」から商人がやってきて、村人はそこで村では手に入らない食材や商品を入手でき、また世間の噂や情報などもついでに知ることもできる。
さらに、村の北部にはエレリアが拾われた小さな海岸が存在し、そこで漁を行うことも可能だ。
しかし、最近は不漁続きでまったくと言っていいほど魚が獲れないので、ここ数年は漁港としての機能はあまり果たしておらず、年々海岸は廃れていく一方だった。
そして、ミサとソウヤの住む小さな一軒家は、村の入り口から一番遠い村の隅にあった。
エレリアはさきほどミサが作ってくれたスープを最後の一口まで綺麗に飲み干した。
寝起きの頭痛はすでに消え去り、謎の倦怠感に包まれていた身体も今では嘘のように活気に満ちている。
「…ごちそうさま」
「食べ終わったら、そこに置いといてくれていいよ」
エレリアは食事を終えたことをミサに告げ、スプーンを机の上に置いた。ミサは残った皿を洗いながら、声だけでエレリアに返答する。ソウヤはいつの間にか家を出ており、部屋には二人しかいなかった。
「あっ、そういえば、リアちゃんさ…」
スープの皿を取りに来た際、エレリアの瞳を見つめてミサがしゃべりかけてきた。突然話しかけられたので、エレリアも顔を上げてミサの方を向く。
「あなたはこれからどうするつもりなの?」
「これから…?」
エレリアは尋ねられて言葉を詰まらせた。
これからどうするのかと聞かれても、自分がどこから来て何者なのか、それらを思い出すことができない限り、正直今はどこにも行くあてがない。
しかし、だからと言ってはっきりここに住みたいとも言うこともエレリアはできなかった。
なぜなら、自分はこの村の部外者で、先ほど階段から二人の会話を盗み聞きした時に、この村は自分みたいな部外者を嫌っていると知ったからだ。そんな事情がある以上、わがままを言ってここに居座ることはエレリアはできなかった。
「これから、私はどうやって生きていけばいいんだろう…」
漠然とした不安が一気にエレリアを包み込む。
「あのさ、もしよかったらでいいんだけどさ…」
深く考えあぐねているエレリアを差し置いて、ミサが何やらもじもじと恥ずかしそうなそぶりを見せている。エレリアはミサが何を考えているのか推測できず、黙って彼女の次の言葉を待ち望んだ。
「ここにさ、一緒に住んでみない?」
「えっ…?」
ミサの放った言葉は、エレリアにとっては『意外』の一言に尽きていた。
なので、思わずエレリアは驚きの声を漏らしてしまった。
「そりゃ、この後のことはリアちゃんの自由だし、私がどうこう口出しするのはおかしいんだけど。でもリアちゃん、きっとどこにも行くあてないんでしょ?だったら昔のことを思い出せるまで、私たちと一緒にここで暮らすってのはどうかなって…」
ミサはなぜか緊張気味に、頬を染めてしゃべっている。その姿はエレリアから見たら、突然舞い込んできたチャンスを絶対逃すまいと必死に頼み込んでいるようにも見えた。
そんなエレリアの心の内を見透かしたのではと思わせるようなミサの言葉に、エレリア自身も驚きを隠せないでいる。
なぜミサの方からわざわざお願いしてくるのだろうか。
そして何より、エレリアは自分がここにいて都合が悪くないのか、それが一番気がかりだった。
「でも、あれなんでしょ。私がいると村のみんなが嫌がるんじゃないの?さっき君が話してるとこ聞いたよ」
エレリアの意表をついた発言に、ミサは一瞬言葉を詰まらせた。しかし、ミサは少し言葉を濁しながらも口を開いた。
「だ、大丈夫だよ!この村の人たちは確かに外から来た人に対しては冷たいけど、話をしたら絶対仲良くしてくれるって!実際に私もそうだったし」
ミサは必死にエレリアを納得させようとしている。
エレリアはミサの最後の発言の真意が気にかかったが、それよりも早くミサが言葉をかぶせてきたので、彼女へ真意を尋ねる機会が一時失われた。
「どう?リアちゃん」
ミサが思っていたことを一通り言い終え、エレリアにそのすべての判断を託す。エレリアはミサから懇願され、いったん目をつむった。
部屋にしばし沈黙の空気が流れる。
そして、意を決したエレリアがおもむろに口を開いた。
「ミサ…」
「………」
ミサは突然エレリアの口から名前を呼ばれ、固唾を飲んで静かに彼女の次の言葉を待った。
「それは、私のほうだよ」
「…?」
エレリアの放った一言に、今度はミサの方が一瞬その言葉の意味を理解できずに、驚きに眉を上げていた。
「一緒に住んでくれない?ってさ、それは私の方が言うセリフだよ」
エレリアは少しおかしさに口の端を緩めている。
「…」
そんな微笑むエレリアの姿に、ミサは思わず黙り込んでしまった。
そしてエレリア自身も、思っていることはすべて先ほどの言葉に託したつもりだった。
なぜミサがあれほど必死に一緒に住んでほしいと頼んでいたのかは分からなかったが、エレリアはそのミサの心づかいがただ純粋に嬉しかった。エレリアにとってミサは、何も見えない暗闇の世界に差し込んだ『光』そのものだった。
だから彼女が自分のせいで生活に困らないと知った今、エレリアは何の迷いもなくミサに心のすべてを告白することができた。
「だから逆に聞くよ。私なんかがここで暮らしてもいいの?私は何も覚えてないからきっと何もできないし、かえってミサの邪魔になるだけかもよ?」
今度はエレリアがミサに同じ質問を聞き返した。
そして、少しの間を置いた後、ミサはエレリアの懸念に首を横に振って応じる。
「いいや、リアちゃんは邪魔なんかじゃない。リアちゃんはここにいてくれるだけでいいの。それだけでも、私はとても嬉しい」
ミサはさっきの早口な口調とは代わって、今度は穏やかな口調で語っている。
「それじゃあ、私はここに…」
エレリアは最後に改めてミサに質問した。
「うん。一緒に暮らそ、リアちゃん」
ミサは慈愛に満ちた笑顔をこぼして、エレリアに笑いかける。
「ありがとう…」
エレリアはずっと心の隅で運命というのもを呪っていた。自分を記憶喪失にさせてこの世界に放り込んだあげく、その後のことは知らない顔をし続ける無責任で非情な運命。
しかしエレリアはこの時初めて、ミサのような心優しい人に出会えたことを、運命に感謝した。そして、快く自分を迎え入れてくれたミサにも同じように感謝を伝えた。
そうしてエレリアはミサの了承のもと、記憶が戻るまでの間、この家に住まわせてもらうことになったのであった。
「ねぇ、ミサ」
あれからエレリアはミサが台所での作業が終わったのを見計らって、一つ気になったことを聞いてみた。
「さっき、ソウヤって人とは兄妹じゃない、って言ってたよね。ミサとあの人ってどういう関係なの?」
「ん?ソウくんと?」
ミサは濡れた手をエプロンで拭きながらしゃべってくれた。
「うーん、そうだなぁ。じゃあ、まずはこれから話しておこうかな」
「?」
腕を組み話し始めたミサに、エレリアは首をかしげる。
「私はね、もうリアちゃんは気づいているかも知れないけど、もともとこの村の住人じゃないの」
「えっ」
ミサから明かされた意外な事実に、エレリアは自らの耳を疑った。
「それってミサは最初はどこか違う場所に住んでたってこと?」
「そう、そゆこと」
そんなミサの発言に、エレリアは先ほどの疑問を思い出した。
それはエレリアがミサに、自分がこの村にいていいのかと質問した時のことだ。ミサがエレリアに村人はきっと仲良くしてくれるから大丈夫だと納得させた後、最後に『自分もそうだったから』と言ったのをエレリアは聞き逃さなかった。その時はその意味が分からなかったが、今のミサの発言で辻馬が合った。
「もともと私は、ここからずっと遠く離れた所にある『サラボニーア』という国で生まれたんだ」
エレリアがどこの出身なのかを尋ねる前に、ミサが自分から話し始めてくれた。
「私も小さかったからあまり詳しくは覚えてはないんだけど…、とにかくサラボニーアはすごいところなんだよ。とってもとっても広くて、みんな魔法の絨毯に乗って自由に空を移動してるの」
「ま、魔法の絨毯…?」
「そう、すごいでしょ」
エレリアの感嘆の声に、ミサはどこか誇らしげな表情をしている。エレリアは過去の記憶はなくとも、知識と常識だけはなぜか身についているようだった。
「それじゃあミサは魔法の絨毯に乗れるの?」
「いやいや、私は乗れないよ」
少し目を輝かせているエレリアに、困ったような笑いを浮かべながらミサは手を横に振った。
「もし魔法の絨毯に乗りたかったら、まずその試験を受けなきゃいけないの。それでその試験に晴れて合格した時に、そこで始めて魔法の絨毯を自由に乗りこなすことができるの」
ミサは具体的に魔法の絨毯の操作資格の取得例まで交えて詳しく説明してくれた。
「さっきも言ったみたいに、私は8才の時ぐらいから早くにこの村にやって来たからそんな資格なんか持ってないし、実際に乗った記憶もあまりないかな。まぁ一回乗れることができるのなら乗ってはみたいんだけどね」
ミサは遠い目をしながら、頬杖をついて思いをはせている。
「じゃあ、いつか乗れるといいね、その絨毯に」
「うん、機会があったらね…」
エレリアはミサの願望に寄り添って成就を願う言葉をかけたのだが、ミサはなぜか表情を曇らせていた。気のせいかも知れないが、エレリアにはミサがさえない笑顔を浮かべているように見えた。
すると、話の流れが滞ったのを感じとったミサは会話を繋げるために口を開いた。
「それでね、話を戻すけど、さっきも言ったように私はサラボニーアで生まれて、最初の頃はそこで育っていったの」
再び本題を話し始めたミサに、エレリアもさきほどの懸念をいったん忘れて神妙な態度で耳を傾けた。
「でも、私はみんなと一つだけ違うところがあった…」
「違うところ?」
「うん…」
するとミサは穏やかな顔つきのまま、そっと胸に手を添えて、
「私はね、小さいときから肺が弱かったらしいの。そのせいか、外に出れば町の空気で息が苦しくなるし、友達と一緒に追いかけっこもできない。だから、お母さんとお父さんが私の身体のことを思って、空気が綺麗なこの村に私を送ってくれたんだ」
「今は大丈夫なの?」
エレリアは心配そうな目つきでミサを見つめた。
「あぁ、今は大丈夫だよ。この村の空気のおかけで、ほらこの通り!」
そう言うとミサは力こぶを作って、自分が今は元気なことをエレリアにアピールした。その姿を見て、エレリアも安心する。
その時、エレリアは一つ気になったことがあった。
「でも、ミサは一人でこの村に来たんでしょ?怖くなかったの?」
エレリアは目が覚めた瞬間から独りぼっちだった。
現にあの時、エレリアは誰にも頼れない不安と孤独による恐怖に押しつぶされそうだったのだ。今はミサとソウヤに出会えたから良かったのだが、もし彼らがいなかったらと考えるだけでも背筋が震える。
だからエレリアには孤独の怖さが身をもって理解できた。
そして、ミサが口を開いた。
「うん、とても怖かったよ。それにとても寂しかった」
意外なミサの過去に、エレリアはそのまま黙って話を聞く。
「村に来た最初の数日間、私は村の人が用意してくれた小さな小屋に一人で住んでたの。でね、最初の頃はね、私自身も村での生活に少しワクワクしてたんだ。でも思ってるより暮らしは全然楽しくなかった。一人で来たから知ってる人や頼れる人は誰もいないし、村のみんなは部外者の私に優しくしてくれないし」
「そうだったんだ…」
エレリアはミサの話を聞いていて、彼女へ哀れみと共感の意を覚えた。エレリアはまだ目覚めてすぐなので村人との接触はないにしろ、独りぼっちだったミサの思いだけは、痛いほど共感できた。
「でも、そんな時におばあちゃんが私を救ってくれたの」
「おばあちゃん…?」
「そう。あっ、おばあちゃんって言っても、私とは血は繋がってないからね」
エレリアの質問に、ミサは少し訂正する。
「この村に昔から住んでたおばあちゃんは、身寄りのなかった私を引き取ってくれたんだ」
話が進むにつれて、少し暗かったミサの表情に再び明るい色が戻ってきた。
「それで、その時にソウくんと出会ったの」
「そういうことなんだ」
意外なタイミングでの彼の登場に、エレリアは眉を上げた。
「ソウくんは私が引き取ってもらう前から、このおばあちゃんの家にいた」
「そうなると、ソウヤはおばあちゃんの孫ってこと?」
エレリアの質問に、ミサは首を横に振った。
「いいや、そうじゃない。ソウくんも私と同じようにおばあちゃんに引き取ってもらったらしいの」
そして、ミサは顎に手をあてて天井を見上げた。
「どこだったかなぁ、あの人の出身地。確か『俺は極東の島国ジパ…なんとか、からやって来たんだ!!』って言ってた気がするけど。私もあまり聞いたことのない名前だったから忘れちゃった」
曖昧な記憶にミサは笑ってごまかした。
「とにかく、ソウくんとはそこで初めて出会ったの」
「そうなのか」とエレリアは首を縦に振った。
エレリアからしたらミサとソウヤが彼女にとっての命の恩人になるわけだが、逆に彼らにとってはミサの言う『おばあちゃん』がその恩人になるのだろう。
「じゃあ、ソウヤと出会えたのも、ミサがここで生きていけるのも、全部そのおばあちゃんのおかげってことか」
「そうなるね」
エレリアは先ほどからミサの語る過去を、今の自分の境遇に当てはめて考えていた。
そしてそうすることで、エレリアとミサとは共通点が多いことにも気づいた。村の外からやって来たこと、最初誰にも頼れなかったこと、そして命の恩人とも呼べる人物に出会えたこと。
勝手な憶測に聞こえるかもしれないが、彼女はこうすることで改めてこの不思議なめぐり合いを感じることができたのだった。
「おばあちゃんには本当に感謝してる。おばあちゃんもソウくんも私にとっては、大切な家族の一員なんだ」
それを話すミサの表情はとても穏やかだ。
「それに、おばあちゃんはまだ小さかった私に色々なことを教えてくれたの。料理に、洗濯に、服のたたみ方。そして…」
ミサは一息置いた後、再び喋りだした。
「ポーションの作り方」
「ぽーしょん?」
聞き慣れない言葉に、エレリアは首をかしげる。
「えっとね『ポーション』って言うのはね…、うーんと、なんて言ったらいいんだろう…」
ミサは困った表情で、腕を組んで考える。
「そうだなぁ、まぁ簡単に言ったら薬と魔法を組み合わせた、名づけて『魔法薬』だね」
人差し指を立てて、ミサは分かりやすくエレリアにポーションの概要を説明してくれた。
「おばあちゃんは若いときは王宮に使えるぐらいのすごい薬術師だったらしいの。いつも休みの日には王国に行って、たくさんの病気の人を治してたって聞いたことがあるよ」
「おばあちゃんってすごい人だったんだね…」
ミサの言う『おばあちゃん』という人物の経歴を聞いて、エレリアはその偉業に感嘆の声を漏らした。
「そう、だけどあの人は私と出会って一年後ぐらいに天国に行っちゃったんだ」
ミサの言葉に、部屋の空気が少し重くなる。
「せっかくおばあちゃんが私に残してくれたポーション…」
すると悲しげな表情から一変、ミサは希望に満ちた表情で喋りだす。
「だから私も大きくなったら、おばあちゃんみたいなすごい薬術師になりたいなぁって思ってるの。だから、今もポーションについて絶賛勉強中なんだ。まだまだ、下手くそだけどね」
最後にミサは恥ずかしそうに舌を出して笑った。
「そんなこんなで話が長くなっちゃったけど、私とソウくんはこうしておばあちゃんの残してくれたこの家で二人で暮らしてるってわけ」
「そういうことだったんだ」
エレリアはうなずいてミサに理解の意を示した。
こうしてすべて話を聞き終わって、今でこそミサは明るく振る舞っているが、そんな彼女にもつらい過去があったのだなとエレリアは思い知らされた。
そして、逆境を乗り越えた彼女の瞳は希望に満ち溢れ、力強く輝いているようにも見えた。
すると、すべてを話終えたミサは静かに息を吸って、そっと目を閉じて心の内にある言葉を吐いた。
「だけどね、私はこっちに来て後悔はないと思ってる」
ミサは望んでこの村にやって来たのではないのだ。
そして彼女もエレリアと同じように、理不尽な運命に弄ばれた不幸な被害者の一人だ。
しかし、そんな苦しい状況でも彼女は生き抜いたのだ。
「だってこの村に来たからこそ、私はソウくんに出会えて、おばあちゃんに出会えて、ポーションに出会えて…」
そして、ミサは一息置いて、
「そして、リアちゃんに出会えたんだもん」
とそう言い放った。
その顔はどこか恥ずかしそうで、だがどこか幸せに満ちた表情で溢れていた。
「それでね。出会ってすぐのあなたに、こんなこと言うのもなんだが恥ずかしいんだけど…」
照れを隠すように手を後ろで繋ぎ、ミサはエレリアに話し続けた。
「私、友達というものがずっと欲しかったの」
「…友達?」
エレリアが聞き返すと、ミサはうなずいて、
「うん。別に今は独りぼっちじゃないから寂しいってわけでもないんだけど、なんかね、一緒に心を通わせれるような友達が欲しいなぁ、って。でも、この村に私と同い年の子なんていないし…」
ミサはなぜか先ほどから顔が少し火照っているようにもみえる。
そんなミサのどこかきごちない喋り方で、エレリアはミサの心中を悟った。
きっとミサは自分と友達になって欲しいと言ってくるのだろう、と。
そして、エレリアはふとミサの動揺する反応に興味が湧き、わざと意地悪な質問で彼女の心を揺さぶってみた。
「でも友達って、ソウヤがいるじゃん」
悪魔のしっぽを生やしたようなエレリアの質問に、ミサは慌てて身ぶり手振りで返答する。
「あっ、いや、確かにそうなんだけど…、なんかね、その、男の子だと気が合わないというか、なんというか…」
あたふたと動揺し心の内が透け透けなミサを目の前にして、エレリアは「分かりやすい…」と心の中で呟いた。
「そう!リアちゃんみたいな子と友達になりたいってずっと思ってたの!」
言葉を濁しに濁したあげく、ちょうどいい返答を思いつき、ミサは必死にエレリアにアピールする。
その時すでに、エレリアは彼女の言いたいことの内容はほぼ分かっていた。
しかし、すでに心中をばらまいてしまっていることに気づいてないミサは、胸の内を晒すタイミングが分からずそのまま話しを続けている。
「でね、そんな時にあなたが来てくれたの」
恥じらいに塗りたくられたミサの目に、今度は輝きが宿るのをエレリアは感じ取った。
「これはきっと、神様が私の願いを叶えてくれたに違いない!って私はその時確信した」
そして、恥じらいも照れも全部捨てて、ミサは真剣な顔をしてエレリアの正面に立った。
エレリアも真っ直ぐミサから見つめられ、少し鼻で息を吸い込む。
「だから、リアちゃん…」
それから、意を決した様子で口を開いた。
「私と友達になってくれない?」
勇気を出したミサの渾身の一言。
その言葉は先までの照れで濁したような曖昧な言葉ではなく、純度100%彼女の意思を含んだ真っ直ぐな言葉だった。
そして、その瞳は力強くエレリアを見つめている。
エレリアはそんな真剣なミサの顔を見て、静かに言葉を吐いた。
「ミサ。私はそんな言葉を言うのは違うと思う」
「え…?」
エレリアの意外な発言に、ミサは思わず絶句する。また自分をからかっているのかとミサは一瞬思ったが、エレリアの顔は至って本気だ。
そして、動揺するミサを置いてエレリアは話を続ける。
「だって、友だちになってほしい相手に『友達になってください』って言うのはなんか変じゃない?」
エレリアはおかしそうに微笑みながら、ミサの顔を見つめ返している。そんなミサはエレミアの言った発言に思考が追い付いてない様子だ。
そして、エレリアは、
「『友達』は、心を開き合った瞬間からもう友達だよ」
「リアちゃん…」
ミサはやっと発言の意味が分かったようで、静かに息を吸い込んだ。
そのままエレリアも笑顔になって口を開いた。
「つまり、ミサ。あなたと私はもうすでに、友達、でしょ?」
エレリアにとってこれらの発言にミサを焦らすような異図は全くなかった。
ただミサが一生懸命に勇気を持って心の内をさらしてくれたから、エレリア自身も思ったことのすべてを吐き出そうと行動しただけだ。
だから、それがどんな結果を招くのであれ、不器用ながらにもエレミアは自分の心の中の思うことを真っ直ぐ伝えた。
そしてすべてを言い終えた後、エレリアはミサに優しく笑いかけた。
「あ、…」
そんな天使のような微笑に、ミサは涙をうかべなら歓喜の声をあげる。
「ありがとう、リアちゃん!!」
と、そのままミサは喜びのあまりエレリアに飛び付いてきた。
「うわっ!!ちょっと、ミサ!?」
そして、そんなミサの飛びつきを受け止めきれなかったエレリアは、大きな音を立ててイスごと後ろにひっくり返ってしまった。天井からパラパラとチリが降ってくる。
そして、
「そうだよね、リアちゃんの言うとおりだよ。友達になってほしい人に『友達になってください』って言うのはおかしいよね」
ミサは目をキラキラ輝かせて、夢中でしゃべっている。
「あぁもう、どうしてたんだろう私、そんな当たり前のことにも気づかないで。ドキドキしながら言った自分がバカみたい。でも、ありがとうリアちゃん。リアちゃんのおかげでやっと分かったよ。友達は頼んでできるものじゃないってね。でも、確かに考えてみたら、友達は…」
「ちょっと、ミサ、お、重い…」
喜びと嬉しさに我を忘れて語っているミサは、ふと声のする方を向く。その声は自分の下の方向から聞こえる。
そしてミサが目線を下に向けると、自分の座り込んでいる両足の間に顔をしかめているエレリアの顔がこちらを向いていた。
「はっ!」
その時、我に返って初めて、ミサは自分がエレリアの身体の上に乗っかっているに気づいた。
「ごめん、リアちゃん!!」
ミサは手を口にあてて、目を丸くした。
そして、ミサの下敷きになっているエレリアは苦しそうな表情をしている。エレリアにとって、いくらミサが少女と言えども、重いものは重たかった。
「分かったなら、どいてよ、ミサ…」
「うん、今すぐどく…」
とミサが立ち上がろうと足に力を入れた瞬間、二人のすぐ近くにある家の玄関のドアノブが回り、扉が開かれた。
そう、誰かが家に入ってきた。
ミサは驚いて、開いたドアに急いで視線を送った。
「いやー、しまったしまった。俺としたことが弁当を忘れてしまってたよ」
そうして、家に忘れ物を取りに帰ったソウヤがボソボソと独り言を言いながら部屋の中へ入ってきた。
「おい、ミサ、気づいたんなら、直接俺のところに持ってきてくれたって…」
そして、ミサがエレリアの上から立ち上がる前に、ソウヤは二人を視界に入れた。
「お、おい。なにやってんだ、二人とも…」
ソウヤの目の前には、なぜかエレリアの上に跨がって乗っかったミサの姿があった。
ミサも急に現れたソウヤを見て、頭の中が真っ白になった。
「なんか俺、見ちゃいけないのものを見てしまったのか?」
怪しげな二人を前に、思考が追いつかないソウヤは眉を寄せる。
そこでミサが慌てて立ち上がって、立ち尽くしているソウヤに詰め寄った。
「ちょっと!!なんで、あなたがここにいるの!?!?」
ミサにはなぜここに彼が現れたのか見当もつかなかった。しかも、このタイミングで。
「い、いや、俺はただ持って行き忘れた弁当を取りに来ただけだ。んなことよりおまえ、誰もいない部屋でエレリアに何しようとしてたんだよ…」
ソウヤは不審そうに目を細める。
「ち、違う!やめてよ、何変なこと考えてんの!」
ミサは耳まで真っ赤に染めて、必死に答弁している。
「おいおい、変なこと考えてんのはおまえのほうだろ?俺はまだ何も言って…」
「もう、出てってよ!!」
なかなか後に引かないソウヤにしびれを切らしたミサが、全力で彼を家の外へ追い出そうとする。
「おい、やめろって!」
ミサに全身で背中を押され、ソウヤは抵抗しつつ叫んだ。
「大丈夫だ、ミサ!おまえに百合の興味があったなんて誰にも言わないから…」
「んもうっ、何わけの分からないこと言ってるの!早く、出てって!」
そうしてミサは拒むソウヤを一心不乱に押しきり、そのまま扉の向こうに押し返した。
そして、すぐさま扉に鍵をかけた。
そんな彼らの一連の様子を見て、エレリアは少しおかしな気分になって、笑みをこぼした。
「はぁはぁ、まったく…」
なんとかソウヤを外に追い出して、ミサは重いため息をついた。
「まさかあの人がこのタイミングでやって来るなんて夢にも思ってなかった…」
ミサは未だに現実が信じきれていないような顔つきで、額の冷や汗をぬぐった。
そして、エレリアは自身の服についたほこりを手ではたいて、ゆっくり立ち上がった。
「…」
お互い無言になる。
そして、気まずい重い空気が部屋を包んだ。
何も知らない小鳥の清み渡った鳴き声が、沈黙の空間を裂いて二人のいるダイニングに届けられる。
それから、しばし呆然と立ち尽くしていたミサは急に何かを思いついたように部屋の奥へ走り出して行った。エレリアはどうしたのだろうと、そこはあえて追いかけるようなことはせず、再びイスに腰掛けて彼女が戻ってくるのを静かに待った。
するとしばらく経った後、ミサがエレリアの予想通り部屋に戻ってきた。
彼女の手には、青い色をした何かの液体の入った瓶が握られていた。あれがミサが言っていた『ポーション』なのだろうか、とエレリアは心の中で呟いた。
「ごめんね、リアちゃん。なんか変な空気になっちゃって」
ミサは乾いた笑みをこぼし、視線を泳がせてエレリアに謝罪した。こんな空気になったのは他でもなく自分のせいだ、と。
そして、ミサは手に持っている瓶を両手で持ち直して、
「ちょっと用事を思い出しちゃったから、リアちゃん、しばらくお留守番をお願いしてもいい?」
ミサは申し訳なさそうに、手を合わせる。
「うん、いいけど…」
「ありがとう!ついでによかったら、洗濯物も干してくれてたら嬉しいな。洗濯物はお風呂場にあるからね。それじゃ、行ってきます」
ミサは一方的に用件を伝えるだけ伝えると、照れを隠すように帽子で目元を覆い、そそくさと家を出ていってしまった。
「どうしたんだろ、あんなに急いで」
ミサの行動の意に気づけなかったエレリアは、息つく暇もなく消え去った彼女を引き止めることもできず、家に取り残されてしまった。
一人になったエレリアは、改めて自分の今いる部屋を見回してみた。
一階のフロアはほとんどダイニングが占めているようで、見えるだけで食卓が一つとイスが4つ、台所が隔てなく繋がっていた。決して広いわけではなかったが、三人で生活するにはちょうどいい広いだろう。
二階の小さな部屋と違って、ダイニングはカーペットや植木が置かれてあり、居心地のよい生活空間を演出していた。
そのままエレリアはまだ行ったことのない家の奥の方へ足を進めた。
小さな廊下の途中には古びた扉があり、開いてみるとなんとそのまま地下室に繋がっていた。先ほどミサはここから青い瓶を持ち出してきたようだった。下手に中に入って何か壊したりしたら大変なので、今回はエレリアは入らないようにした。
そして、さらに歩を進める。
するとエレリアは洗面所と脱衣場に行き着きいた。どうやらそこは浴室のようだった。床は青いタイル張りで、そこには小さな浴槽と白い垢のついた鏡、そして無造作に積まれた衣類がかごに入って置いてあった。
「これかな?ミサの言ってた洗濯物は」
エレリアは他にそれらしきものがないのを確認して、たまった洗濯物のかごを両手で持ち上げた。衣類はみなたっぷり水分を含んでおり、ずっしり重かった。どうやら今朝洗われたものようだった。
「どこに干したらいいんだろう…?」
途方に暮れ立ち尽くしたエレリアは、とりあえず外へ出てみることにした。
エレリアは片手で洗濯物を支え、もう片方の手で玄関の扉を開けた。
すると、まぶしい朝の光が目の前に広がった。
「うっ」
暗闇に慣れていた瞳が突然の日差しに面食らったのだろう、思わずエレリアは目を細めた。
そして、少しずつまぶたを開いていってみた。しばらくするとエレリアの瞳も外の日差しに順応し、次第に村の風景が目の前に浮かび上がっていった。
ミサの住む家は村の少し高い丘の上に位置しているようで、エレリアは村全体を端まで一望することができた。
さきほど二階から見たときには気がつかなかったが、村の真ん中には丸い池があり、それに沿って道が続いている。
そして、村のほとんどの建物が木造なのに対し、ミサたちが住んでいる民家はレンガ造りのモダンなデザインをしている。この建物はもともとおばあちゃんのものと言っていたミサの発言からして、いかに彼女が王国で偉業を成していたか、この建物の雰囲気からだけでも充分伝わってきた。
村人は子供から老人まで多様で、さらに馬や豚などの家畜なども見られた。仮に王国からの物資が遮断されたとしても、この村で自給自足していけるだけの設備は整っているようにも見える。
さらにエレリアは遠くの方を眺めてみた。
村の向こう側には二階からも見えた巨大な岩山が連なっていて、まるで村を守っている自然の魔神のようなたたずまいで満ちていた。
そんな岩山の隣には大海原が広がっており、おそらくその辺りで自分は拾われたのだろうとエレリアは想像した。
こうして見てみると、この村は大自然に囲まれた豊かな村だということが分かった。
しかし、なぜこんな村に今自分がいるのか、そしてその真実が見つかる日が来るのか。
エレリアは青空を見上げて、心の中で自問した。
だが、答えは出なかった。
村の全体をざっと見たエレリアは、次に家の裏側に周ってみた。
予想していた通り、そこには洗濯物を干すための物干し竿があった。
家のすぐ後ろは崖と木々で囲まれており、この家が村の隅にあるということを認識させられる。他にも、割れた瓶や古ぼけた日用品などの廃棄物が雑多に捨てられていた。
そして、エレリアは庭の隅に小さな畑があるのを目にした。そこには、どうやら植物が植えてあるようだ。
エレリアは好奇心に背中を押され、持ってきた洗濯物を一旦地面に置き、その畑に近づいてみた。
「なんだろう、これ。『ポニオン』?」
エレリアは畑の隅にある『ポニオン』と手書きで書かれた看板を見つけた。聞き慣れない名前にエレリアは首をかしげる。
緑色の分厚い葉っぱが特徴的なその植物は丸っこい形状をしており、畑の黒い土に覆いかぶさるように無数に存在していた。
「料理か何かに使うのかな?」
エレリアは膝を折り、ポニオンと呼ばれる植物に鼻を近づけてみた。
土の混じった柔らかな植物特有の香りが鼻腔をくすぐる。
そして、近くで葉をよく観察してみると、表面にうっすら水滴が浮いており、土壌から雨の匂いが沸き立っているのを感じた。おそらく、最近この村で雨が降り続いていたのだろう。ミサの洗濯物を干すのを頼んだ理由も、エレリアはなんとなく理解できた。
「これが何なのか、後でミサに聞いてみよ」
一通り畑を眺めた後、エレリアは自分の実務をこなすためにいったんその場を後にした。
エレリアは戻って、置いていた洗濯物を手に取り、濡れた衣服を物干し竿に干し始めた。
空はどこまでも青く、白い雲がゆっくりと流れている。
知らない場所のはずなのに、なぜか自分がずっとずっと前からここに住んでいるような感覚にエレリアは陥った。もちろん、根拠などなにもなかったが、時おり吹き付ける涼しい風にふかれて、エレリアはふとそんな思いに駆られた。
衣服はミサとソウヤの二人分あった。
特にソウヤのものと思われる衣服はどれも汚れが薄汚れていて、なぜか炎で焼けた後のように黒く汚れていた。そういえばソウヤは今頃どこにいるのだろうか。エレリアが朝食のスープを食べ終わる時には、気づけばいなくなっていた。エレリアは手を動かしながら、そんな疑問を抱いた。
対してミサの服は綺麗に着こなされているものの、どれも映えない質素なものが多かった。どうやらミサは「ファッション」というものに少しも興味を持っていないらしい。少なくともエレリアはそんな印象を持った。
まぶしい太陽の光が燦々と降り注ぐ。
エレリアは手を止めず、広大な青空の下で、夢中になって衣服を干し続けた。
「よし、終わった…」
すべての衣服を物干し竿に干し終え、エレリアは腰に手を置いた。目の前で、様々な衣服たちが風で揺られている。
二人分の量だったので、思ったより時間はかからなかった。
そしてエレリアは誰かに見つかると面倒なことになると考え、空になった洗濯かごを手に取り、そのまま家の中に身を翻した。
これまで家を見回って分かったことは、ミサの家は二階建てのお風呂と地下室のついた家だということ。
裏庭はそれほど広くはなかったが、謎の作物を育てている畑と物干し竿があり、裏庭で何か活動をするには充分なスペースだった。
家の中に入り、洗濯かごを風呂場へ戻した後、エレリアは再び二階へ上がった。
廊下を経由して、手前にエレリアの寝ていた小さな部屋があり、奥にももう一つ小さな部屋があった。
「何があるんだろう…」
気になったエレリアは廊下を進み、こっそり奥の部屋の中を覗いてみた。
すると、そこはどうやら物置部屋のようで、使わなくなった家具などの様々な用具がところ狭しと収納されている。よく見ると、部屋の真ん中にはなぜか布団が敷いてあるように置かれてある。
部屋の広さはエレリアの寝ていた小さな部屋のさらに半分くらいで、充分に清掃が行き届いていないせいか、その部屋はほこりが充満していた。なので、エレリアは思わず咳き込んでしまった。
そしてついに耐えきれなくなって、エレリアは急いで扉を閉めた。
やることが無くなったエレリアは、一階のダイニングでミサの帰りを待つことにした。
朝座っていた食卓のイスに腰を下ろす。
「…」
しばらくエレリアは誰もいない部屋で、シンクの上に飾られていた一輪の花を眺めて暇を持て余していたが、なかなかミサは帰ってこない。
「遅いなぁ、ミサ。本当にどこに行ったんだろう…」
エレリアはもうしばらく彼女の帰りを待つことにしたが、それでも結果は同じだった。
このまま待ち続けていても意味がないと悟ったエレリアは、イスから立ち上がり、仕方なく自分の中の寝ていた小さな部屋に戻ることにした。
再び小さな部屋に戻ってきたエレリアは、自分が寝ていたベッドの上に大の字に仰向けになった。
「知らない天井…。あたりまえか」
静寂に包まれた小さな部屋で、エレリアはぼそりと呟く。
「私は本当に、誰なんだ…?」
そして、エレリアは無意識に心の隅に追いやっていた自問の感情を呼び戻した。
しかし依然として、思いだそうとしても何も思い出せない。
それどころか、記憶をたどろうとすればするほど、鈍い痛みがエレリアの頭をキリキリ締め付けた。
「うっ…」
だんだんもどかしくなったエレリアは寝転がって、現実から逃げるように布団をぎゅっと抱き寄せた。
そして、そのまま重いため息を吐いた。
「私の家族はどうしてるかな。きっと今頃、私のことを探してくれてるんだろうなぁ…」
泣きそうになりながらエレリアは記憶には現れない自分の家族の姿を想像して、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
その名も、『コックル村』。
決して大きな村ではないが、暮らすにはそこまで不自由はなく、村人たちは外界から隔離された環境を活かして、自由気ままに生活していた。
時折、橋を隔てた隣の王国「スカースレット王国」から商人がやってきて、村人はそこで村では手に入らない食材や商品を入手でき、また世間の噂や情報などもついでに知ることもできる。
さらに、村の北部にはエレリアが拾われた小さな海岸が存在し、そこで漁を行うことも可能だ。
しかし、最近は不漁続きでまったくと言っていいほど魚が獲れないので、ここ数年は漁港としての機能はあまり果たしておらず、年々海岸は廃れていく一方だった。
そして、ミサとソウヤの住む小さな一軒家は、村の入り口から一番遠い村の隅にあった。
エレリアはさきほどミサが作ってくれたスープを最後の一口まで綺麗に飲み干した。
寝起きの頭痛はすでに消え去り、謎の倦怠感に包まれていた身体も今では嘘のように活気に満ちている。
「…ごちそうさま」
「食べ終わったら、そこに置いといてくれていいよ」
エレリアは食事を終えたことをミサに告げ、スプーンを机の上に置いた。ミサは残った皿を洗いながら、声だけでエレリアに返答する。ソウヤはいつの間にか家を出ており、部屋には二人しかいなかった。
「あっ、そういえば、リアちゃんさ…」
スープの皿を取りに来た際、エレリアの瞳を見つめてミサがしゃべりかけてきた。突然話しかけられたので、エレリアも顔を上げてミサの方を向く。
「あなたはこれからどうするつもりなの?」
「これから…?」
エレリアは尋ねられて言葉を詰まらせた。
これからどうするのかと聞かれても、自分がどこから来て何者なのか、それらを思い出すことができない限り、正直今はどこにも行くあてがない。
しかし、だからと言ってはっきりここに住みたいとも言うこともエレリアはできなかった。
なぜなら、自分はこの村の部外者で、先ほど階段から二人の会話を盗み聞きした時に、この村は自分みたいな部外者を嫌っていると知ったからだ。そんな事情がある以上、わがままを言ってここに居座ることはエレリアはできなかった。
「これから、私はどうやって生きていけばいいんだろう…」
漠然とした不安が一気にエレリアを包み込む。
「あのさ、もしよかったらでいいんだけどさ…」
深く考えあぐねているエレリアを差し置いて、ミサが何やらもじもじと恥ずかしそうなそぶりを見せている。エレリアはミサが何を考えているのか推測できず、黙って彼女の次の言葉を待ち望んだ。
「ここにさ、一緒に住んでみない?」
「えっ…?」
ミサの放った言葉は、エレリアにとっては『意外』の一言に尽きていた。
なので、思わずエレリアは驚きの声を漏らしてしまった。
「そりゃ、この後のことはリアちゃんの自由だし、私がどうこう口出しするのはおかしいんだけど。でもリアちゃん、きっとどこにも行くあてないんでしょ?だったら昔のことを思い出せるまで、私たちと一緒にここで暮らすってのはどうかなって…」
ミサはなぜか緊張気味に、頬を染めてしゃべっている。その姿はエレリアから見たら、突然舞い込んできたチャンスを絶対逃すまいと必死に頼み込んでいるようにも見えた。
そんなエレリアの心の内を見透かしたのではと思わせるようなミサの言葉に、エレリア自身も驚きを隠せないでいる。
なぜミサの方からわざわざお願いしてくるのだろうか。
そして何より、エレリアは自分がここにいて都合が悪くないのか、それが一番気がかりだった。
「でも、あれなんでしょ。私がいると村のみんなが嫌がるんじゃないの?さっき君が話してるとこ聞いたよ」
エレリアの意表をついた発言に、ミサは一瞬言葉を詰まらせた。しかし、ミサは少し言葉を濁しながらも口を開いた。
「だ、大丈夫だよ!この村の人たちは確かに外から来た人に対しては冷たいけど、話をしたら絶対仲良くしてくれるって!実際に私もそうだったし」
ミサは必死にエレリアを納得させようとしている。
エレリアはミサの最後の発言の真意が気にかかったが、それよりも早くミサが言葉をかぶせてきたので、彼女へ真意を尋ねる機会が一時失われた。
「どう?リアちゃん」
ミサが思っていたことを一通り言い終え、エレリアにそのすべての判断を託す。エレリアはミサから懇願され、いったん目をつむった。
部屋にしばし沈黙の空気が流れる。
そして、意を決したエレリアがおもむろに口を開いた。
「ミサ…」
「………」
ミサは突然エレリアの口から名前を呼ばれ、固唾を飲んで静かに彼女の次の言葉を待った。
「それは、私のほうだよ」
「…?」
エレリアの放った一言に、今度はミサの方が一瞬その言葉の意味を理解できずに、驚きに眉を上げていた。
「一緒に住んでくれない?ってさ、それは私の方が言うセリフだよ」
エレリアは少しおかしさに口の端を緩めている。
「…」
そんな微笑むエレリアの姿に、ミサは思わず黙り込んでしまった。
そしてエレリア自身も、思っていることはすべて先ほどの言葉に託したつもりだった。
なぜミサがあれほど必死に一緒に住んでほしいと頼んでいたのかは分からなかったが、エレリアはそのミサの心づかいがただ純粋に嬉しかった。エレリアにとってミサは、何も見えない暗闇の世界に差し込んだ『光』そのものだった。
だから彼女が自分のせいで生活に困らないと知った今、エレリアは何の迷いもなくミサに心のすべてを告白することができた。
「だから逆に聞くよ。私なんかがここで暮らしてもいいの?私は何も覚えてないからきっと何もできないし、かえってミサの邪魔になるだけかもよ?」
今度はエレリアがミサに同じ質問を聞き返した。
そして、少しの間を置いた後、ミサはエレリアの懸念に首を横に振って応じる。
「いいや、リアちゃんは邪魔なんかじゃない。リアちゃんはここにいてくれるだけでいいの。それだけでも、私はとても嬉しい」
ミサはさっきの早口な口調とは代わって、今度は穏やかな口調で語っている。
「それじゃあ、私はここに…」
エレリアは最後に改めてミサに質問した。
「うん。一緒に暮らそ、リアちゃん」
ミサは慈愛に満ちた笑顔をこぼして、エレリアに笑いかける。
「ありがとう…」
エレリアはずっと心の隅で運命というのもを呪っていた。自分を記憶喪失にさせてこの世界に放り込んだあげく、その後のことは知らない顔をし続ける無責任で非情な運命。
しかしエレリアはこの時初めて、ミサのような心優しい人に出会えたことを、運命に感謝した。そして、快く自分を迎え入れてくれたミサにも同じように感謝を伝えた。
そうしてエレリアはミサの了承のもと、記憶が戻るまでの間、この家に住まわせてもらうことになったのであった。
「ねぇ、ミサ」
あれからエレリアはミサが台所での作業が終わったのを見計らって、一つ気になったことを聞いてみた。
「さっき、ソウヤって人とは兄妹じゃない、って言ってたよね。ミサとあの人ってどういう関係なの?」
「ん?ソウくんと?」
ミサは濡れた手をエプロンで拭きながらしゃべってくれた。
「うーん、そうだなぁ。じゃあ、まずはこれから話しておこうかな」
「?」
腕を組み話し始めたミサに、エレリアは首をかしげる。
「私はね、もうリアちゃんは気づいているかも知れないけど、もともとこの村の住人じゃないの」
「えっ」
ミサから明かされた意外な事実に、エレリアは自らの耳を疑った。
「それってミサは最初はどこか違う場所に住んでたってこと?」
「そう、そゆこと」
そんなミサの発言に、エレリアは先ほどの疑問を思い出した。
それはエレリアがミサに、自分がこの村にいていいのかと質問した時のことだ。ミサがエレリアに村人はきっと仲良くしてくれるから大丈夫だと納得させた後、最後に『自分もそうだったから』と言ったのをエレリアは聞き逃さなかった。その時はその意味が分からなかったが、今のミサの発言で辻馬が合った。
「もともと私は、ここからずっと遠く離れた所にある『サラボニーア』という国で生まれたんだ」
エレリアがどこの出身なのかを尋ねる前に、ミサが自分から話し始めてくれた。
「私も小さかったからあまり詳しくは覚えてはないんだけど…、とにかくサラボニーアはすごいところなんだよ。とってもとっても広くて、みんな魔法の絨毯に乗って自由に空を移動してるの」
「ま、魔法の絨毯…?」
「そう、すごいでしょ」
エレリアの感嘆の声に、ミサはどこか誇らしげな表情をしている。エレリアは過去の記憶はなくとも、知識と常識だけはなぜか身についているようだった。
「それじゃあミサは魔法の絨毯に乗れるの?」
「いやいや、私は乗れないよ」
少し目を輝かせているエレリアに、困ったような笑いを浮かべながらミサは手を横に振った。
「もし魔法の絨毯に乗りたかったら、まずその試験を受けなきゃいけないの。それでその試験に晴れて合格した時に、そこで始めて魔法の絨毯を自由に乗りこなすことができるの」
ミサは具体的に魔法の絨毯の操作資格の取得例まで交えて詳しく説明してくれた。
「さっきも言ったみたいに、私は8才の時ぐらいから早くにこの村にやって来たからそんな資格なんか持ってないし、実際に乗った記憶もあまりないかな。まぁ一回乗れることができるのなら乗ってはみたいんだけどね」
ミサは遠い目をしながら、頬杖をついて思いをはせている。
「じゃあ、いつか乗れるといいね、その絨毯に」
「うん、機会があったらね…」
エレリアはミサの願望に寄り添って成就を願う言葉をかけたのだが、ミサはなぜか表情を曇らせていた。気のせいかも知れないが、エレリアにはミサがさえない笑顔を浮かべているように見えた。
すると、話の流れが滞ったのを感じとったミサは会話を繋げるために口を開いた。
「それでね、話を戻すけど、さっきも言ったように私はサラボニーアで生まれて、最初の頃はそこで育っていったの」
再び本題を話し始めたミサに、エレリアもさきほどの懸念をいったん忘れて神妙な態度で耳を傾けた。
「でも、私はみんなと一つだけ違うところがあった…」
「違うところ?」
「うん…」
するとミサは穏やかな顔つきのまま、そっと胸に手を添えて、
「私はね、小さいときから肺が弱かったらしいの。そのせいか、外に出れば町の空気で息が苦しくなるし、友達と一緒に追いかけっこもできない。だから、お母さんとお父さんが私の身体のことを思って、空気が綺麗なこの村に私を送ってくれたんだ」
「今は大丈夫なの?」
エレリアは心配そうな目つきでミサを見つめた。
「あぁ、今は大丈夫だよ。この村の空気のおかけで、ほらこの通り!」
そう言うとミサは力こぶを作って、自分が今は元気なことをエレリアにアピールした。その姿を見て、エレリアも安心する。
その時、エレリアは一つ気になったことがあった。
「でも、ミサは一人でこの村に来たんでしょ?怖くなかったの?」
エレリアは目が覚めた瞬間から独りぼっちだった。
現にあの時、エレリアは誰にも頼れない不安と孤独による恐怖に押しつぶされそうだったのだ。今はミサとソウヤに出会えたから良かったのだが、もし彼らがいなかったらと考えるだけでも背筋が震える。
だからエレリアには孤独の怖さが身をもって理解できた。
そして、ミサが口を開いた。
「うん、とても怖かったよ。それにとても寂しかった」
意外なミサの過去に、エレリアはそのまま黙って話を聞く。
「村に来た最初の数日間、私は村の人が用意してくれた小さな小屋に一人で住んでたの。でね、最初の頃はね、私自身も村での生活に少しワクワクしてたんだ。でも思ってるより暮らしは全然楽しくなかった。一人で来たから知ってる人や頼れる人は誰もいないし、村のみんなは部外者の私に優しくしてくれないし」
「そうだったんだ…」
エレリアはミサの話を聞いていて、彼女へ哀れみと共感の意を覚えた。エレリアはまだ目覚めてすぐなので村人との接触はないにしろ、独りぼっちだったミサの思いだけは、痛いほど共感できた。
「でも、そんな時におばあちゃんが私を救ってくれたの」
「おばあちゃん…?」
「そう。あっ、おばあちゃんって言っても、私とは血は繋がってないからね」
エレリアの質問に、ミサは少し訂正する。
「この村に昔から住んでたおばあちゃんは、身寄りのなかった私を引き取ってくれたんだ」
話が進むにつれて、少し暗かったミサの表情に再び明るい色が戻ってきた。
「それで、その時にソウくんと出会ったの」
「そういうことなんだ」
意外なタイミングでの彼の登場に、エレリアは眉を上げた。
「ソウくんは私が引き取ってもらう前から、このおばあちゃんの家にいた」
「そうなると、ソウヤはおばあちゃんの孫ってこと?」
エレリアの質問に、ミサは首を横に振った。
「いいや、そうじゃない。ソウくんも私と同じようにおばあちゃんに引き取ってもらったらしいの」
そして、ミサは顎に手をあてて天井を見上げた。
「どこだったかなぁ、あの人の出身地。確か『俺は極東の島国ジパ…なんとか、からやって来たんだ!!』って言ってた気がするけど。私もあまり聞いたことのない名前だったから忘れちゃった」
曖昧な記憶にミサは笑ってごまかした。
「とにかく、ソウくんとはそこで初めて出会ったの」
「そうなのか」とエレリアは首を縦に振った。
エレリアからしたらミサとソウヤが彼女にとっての命の恩人になるわけだが、逆に彼らにとってはミサの言う『おばあちゃん』がその恩人になるのだろう。
「じゃあ、ソウヤと出会えたのも、ミサがここで生きていけるのも、全部そのおばあちゃんのおかげってことか」
「そうなるね」
エレリアは先ほどからミサの語る過去を、今の自分の境遇に当てはめて考えていた。
そしてそうすることで、エレリアとミサとは共通点が多いことにも気づいた。村の外からやって来たこと、最初誰にも頼れなかったこと、そして命の恩人とも呼べる人物に出会えたこと。
勝手な憶測に聞こえるかもしれないが、彼女はこうすることで改めてこの不思議なめぐり合いを感じることができたのだった。
「おばあちゃんには本当に感謝してる。おばあちゃんもソウくんも私にとっては、大切な家族の一員なんだ」
それを話すミサの表情はとても穏やかだ。
「それに、おばあちゃんはまだ小さかった私に色々なことを教えてくれたの。料理に、洗濯に、服のたたみ方。そして…」
ミサは一息置いた後、再び喋りだした。
「ポーションの作り方」
「ぽーしょん?」
聞き慣れない言葉に、エレリアは首をかしげる。
「えっとね『ポーション』って言うのはね…、うーんと、なんて言ったらいいんだろう…」
ミサは困った表情で、腕を組んで考える。
「そうだなぁ、まぁ簡単に言ったら薬と魔法を組み合わせた、名づけて『魔法薬』だね」
人差し指を立てて、ミサは分かりやすくエレリアにポーションの概要を説明してくれた。
「おばあちゃんは若いときは王宮に使えるぐらいのすごい薬術師だったらしいの。いつも休みの日には王国に行って、たくさんの病気の人を治してたって聞いたことがあるよ」
「おばあちゃんってすごい人だったんだね…」
ミサの言う『おばあちゃん』という人物の経歴を聞いて、エレリアはその偉業に感嘆の声を漏らした。
「そう、だけどあの人は私と出会って一年後ぐらいに天国に行っちゃったんだ」
ミサの言葉に、部屋の空気が少し重くなる。
「せっかくおばあちゃんが私に残してくれたポーション…」
すると悲しげな表情から一変、ミサは希望に満ちた表情で喋りだす。
「だから私も大きくなったら、おばあちゃんみたいなすごい薬術師になりたいなぁって思ってるの。だから、今もポーションについて絶賛勉強中なんだ。まだまだ、下手くそだけどね」
最後にミサは恥ずかしそうに舌を出して笑った。
「そんなこんなで話が長くなっちゃったけど、私とソウくんはこうしておばあちゃんの残してくれたこの家で二人で暮らしてるってわけ」
「そういうことだったんだ」
エレリアはうなずいてミサに理解の意を示した。
こうしてすべて話を聞き終わって、今でこそミサは明るく振る舞っているが、そんな彼女にもつらい過去があったのだなとエレリアは思い知らされた。
そして、逆境を乗り越えた彼女の瞳は希望に満ち溢れ、力強く輝いているようにも見えた。
すると、すべてを話終えたミサは静かに息を吸って、そっと目を閉じて心の内にある言葉を吐いた。
「だけどね、私はこっちに来て後悔はないと思ってる」
ミサは望んでこの村にやって来たのではないのだ。
そして彼女もエレリアと同じように、理不尽な運命に弄ばれた不幸な被害者の一人だ。
しかし、そんな苦しい状況でも彼女は生き抜いたのだ。
「だってこの村に来たからこそ、私はソウくんに出会えて、おばあちゃんに出会えて、ポーションに出会えて…」
そして、ミサは一息置いて、
「そして、リアちゃんに出会えたんだもん」
とそう言い放った。
その顔はどこか恥ずかしそうで、だがどこか幸せに満ちた表情で溢れていた。
「それでね。出会ってすぐのあなたに、こんなこと言うのもなんだが恥ずかしいんだけど…」
照れを隠すように手を後ろで繋ぎ、ミサはエレリアに話し続けた。
「私、友達というものがずっと欲しかったの」
「…友達?」
エレリアが聞き返すと、ミサはうなずいて、
「うん。別に今は独りぼっちじゃないから寂しいってわけでもないんだけど、なんかね、一緒に心を通わせれるような友達が欲しいなぁ、って。でも、この村に私と同い年の子なんていないし…」
ミサはなぜか先ほどから顔が少し火照っているようにもみえる。
そんなミサのどこかきごちない喋り方で、エレリアはミサの心中を悟った。
きっとミサは自分と友達になって欲しいと言ってくるのだろう、と。
そして、エレリアはふとミサの動揺する反応に興味が湧き、わざと意地悪な質問で彼女の心を揺さぶってみた。
「でも友達って、ソウヤがいるじゃん」
悪魔のしっぽを生やしたようなエレリアの質問に、ミサは慌てて身ぶり手振りで返答する。
「あっ、いや、確かにそうなんだけど…、なんかね、その、男の子だと気が合わないというか、なんというか…」
あたふたと動揺し心の内が透け透けなミサを目の前にして、エレリアは「分かりやすい…」と心の中で呟いた。
「そう!リアちゃんみたいな子と友達になりたいってずっと思ってたの!」
言葉を濁しに濁したあげく、ちょうどいい返答を思いつき、ミサは必死にエレリアにアピールする。
その時すでに、エレリアは彼女の言いたいことの内容はほぼ分かっていた。
しかし、すでに心中をばらまいてしまっていることに気づいてないミサは、胸の内を晒すタイミングが分からずそのまま話しを続けている。
「でね、そんな時にあなたが来てくれたの」
恥じらいに塗りたくられたミサの目に、今度は輝きが宿るのをエレリアは感じ取った。
「これはきっと、神様が私の願いを叶えてくれたに違いない!って私はその時確信した」
そして、恥じらいも照れも全部捨てて、ミサは真剣な顔をしてエレリアの正面に立った。
エレリアも真っ直ぐミサから見つめられ、少し鼻で息を吸い込む。
「だから、リアちゃん…」
それから、意を決した様子で口を開いた。
「私と友達になってくれない?」
勇気を出したミサの渾身の一言。
その言葉は先までの照れで濁したような曖昧な言葉ではなく、純度100%彼女の意思を含んだ真っ直ぐな言葉だった。
そして、その瞳は力強くエレリアを見つめている。
エレリアはそんな真剣なミサの顔を見て、静かに言葉を吐いた。
「ミサ。私はそんな言葉を言うのは違うと思う」
「え…?」
エレリアの意外な発言に、ミサは思わず絶句する。また自分をからかっているのかとミサは一瞬思ったが、エレリアの顔は至って本気だ。
そして、動揺するミサを置いてエレリアは話を続ける。
「だって、友だちになってほしい相手に『友達になってください』って言うのはなんか変じゃない?」
エレリアはおかしそうに微笑みながら、ミサの顔を見つめ返している。そんなミサはエレミアの言った発言に思考が追い付いてない様子だ。
そして、エレリアは、
「『友達』は、心を開き合った瞬間からもう友達だよ」
「リアちゃん…」
ミサはやっと発言の意味が分かったようで、静かに息を吸い込んだ。
そのままエレリアも笑顔になって口を開いた。
「つまり、ミサ。あなたと私はもうすでに、友達、でしょ?」
エレリアにとってこれらの発言にミサを焦らすような異図は全くなかった。
ただミサが一生懸命に勇気を持って心の内をさらしてくれたから、エレリア自身も思ったことのすべてを吐き出そうと行動しただけだ。
だから、それがどんな結果を招くのであれ、不器用ながらにもエレミアは自分の心の中の思うことを真っ直ぐ伝えた。
そしてすべてを言い終えた後、エレリアはミサに優しく笑いかけた。
「あ、…」
そんな天使のような微笑に、ミサは涙をうかべなら歓喜の声をあげる。
「ありがとう、リアちゃん!!」
と、そのままミサは喜びのあまりエレリアに飛び付いてきた。
「うわっ!!ちょっと、ミサ!?」
そして、そんなミサの飛びつきを受け止めきれなかったエレリアは、大きな音を立ててイスごと後ろにひっくり返ってしまった。天井からパラパラとチリが降ってくる。
そして、
「そうだよね、リアちゃんの言うとおりだよ。友達になってほしい人に『友達になってください』って言うのはおかしいよね」
ミサは目をキラキラ輝かせて、夢中でしゃべっている。
「あぁもう、どうしてたんだろう私、そんな当たり前のことにも気づかないで。ドキドキしながら言った自分がバカみたい。でも、ありがとうリアちゃん。リアちゃんのおかげでやっと分かったよ。友達は頼んでできるものじゃないってね。でも、確かに考えてみたら、友達は…」
「ちょっと、ミサ、お、重い…」
喜びと嬉しさに我を忘れて語っているミサは、ふと声のする方を向く。その声は自分の下の方向から聞こえる。
そしてミサが目線を下に向けると、自分の座り込んでいる両足の間に顔をしかめているエレリアの顔がこちらを向いていた。
「はっ!」
その時、我に返って初めて、ミサは自分がエレリアの身体の上に乗っかっているに気づいた。
「ごめん、リアちゃん!!」
ミサは手を口にあてて、目を丸くした。
そして、ミサの下敷きになっているエレリアは苦しそうな表情をしている。エレリアにとって、いくらミサが少女と言えども、重いものは重たかった。
「分かったなら、どいてよ、ミサ…」
「うん、今すぐどく…」
とミサが立ち上がろうと足に力を入れた瞬間、二人のすぐ近くにある家の玄関のドアノブが回り、扉が開かれた。
そう、誰かが家に入ってきた。
ミサは驚いて、開いたドアに急いで視線を送った。
「いやー、しまったしまった。俺としたことが弁当を忘れてしまってたよ」
そうして、家に忘れ物を取りに帰ったソウヤがボソボソと独り言を言いながら部屋の中へ入ってきた。
「おい、ミサ、気づいたんなら、直接俺のところに持ってきてくれたって…」
そして、ミサがエレリアの上から立ち上がる前に、ソウヤは二人を視界に入れた。
「お、おい。なにやってんだ、二人とも…」
ソウヤの目の前には、なぜかエレリアの上に跨がって乗っかったミサの姿があった。
ミサも急に現れたソウヤを見て、頭の中が真っ白になった。
「なんか俺、見ちゃいけないのものを見てしまったのか?」
怪しげな二人を前に、思考が追いつかないソウヤは眉を寄せる。
そこでミサが慌てて立ち上がって、立ち尽くしているソウヤに詰め寄った。
「ちょっと!!なんで、あなたがここにいるの!?!?」
ミサにはなぜここに彼が現れたのか見当もつかなかった。しかも、このタイミングで。
「い、いや、俺はただ持って行き忘れた弁当を取りに来ただけだ。んなことよりおまえ、誰もいない部屋でエレリアに何しようとしてたんだよ…」
ソウヤは不審そうに目を細める。
「ち、違う!やめてよ、何変なこと考えてんの!」
ミサは耳まで真っ赤に染めて、必死に答弁している。
「おいおい、変なこと考えてんのはおまえのほうだろ?俺はまだ何も言って…」
「もう、出てってよ!!」
なかなか後に引かないソウヤにしびれを切らしたミサが、全力で彼を家の外へ追い出そうとする。
「おい、やめろって!」
ミサに全身で背中を押され、ソウヤは抵抗しつつ叫んだ。
「大丈夫だ、ミサ!おまえに百合の興味があったなんて誰にも言わないから…」
「んもうっ、何わけの分からないこと言ってるの!早く、出てって!」
そうしてミサは拒むソウヤを一心不乱に押しきり、そのまま扉の向こうに押し返した。
そして、すぐさま扉に鍵をかけた。
そんな彼らの一連の様子を見て、エレリアは少しおかしな気分になって、笑みをこぼした。
「はぁはぁ、まったく…」
なんとかソウヤを外に追い出して、ミサは重いため息をついた。
「まさかあの人がこのタイミングでやって来るなんて夢にも思ってなかった…」
ミサは未だに現実が信じきれていないような顔つきで、額の冷や汗をぬぐった。
そして、エレリアは自身の服についたほこりを手ではたいて、ゆっくり立ち上がった。
「…」
お互い無言になる。
そして、気まずい重い空気が部屋を包んだ。
何も知らない小鳥の清み渡った鳴き声が、沈黙の空間を裂いて二人のいるダイニングに届けられる。
それから、しばし呆然と立ち尽くしていたミサは急に何かを思いついたように部屋の奥へ走り出して行った。エレリアはどうしたのだろうと、そこはあえて追いかけるようなことはせず、再びイスに腰掛けて彼女が戻ってくるのを静かに待った。
するとしばらく経った後、ミサがエレリアの予想通り部屋に戻ってきた。
彼女の手には、青い色をした何かの液体の入った瓶が握られていた。あれがミサが言っていた『ポーション』なのだろうか、とエレリアは心の中で呟いた。
「ごめんね、リアちゃん。なんか変な空気になっちゃって」
ミサは乾いた笑みをこぼし、視線を泳がせてエレリアに謝罪した。こんな空気になったのは他でもなく自分のせいだ、と。
そして、ミサは手に持っている瓶を両手で持ち直して、
「ちょっと用事を思い出しちゃったから、リアちゃん、しばらくお留守番をお願いしてもいい?」
ミサは申し訳なさそうに、手を合わせる。
「うん、いいけど…」
「ありがとう!ついでによかったら、洗濯物も干してくれてたら嬉しいな。洗濯物はお風呂場にあるからね。それじゃ、行ってきます」
ミサは一方的に用件を伝えるだけ伝えると、照れを隠すように帽子で目元を覆い、そそくさと家を出ていってしまった。
「どうしたんだろ、あんなに急いで」
ミサの行動の意に気づけなかったエレリアは、息つく暇もなく消え去った彼女を引き止めることもできず、家に取り残されてしまった。
一人になったエレリアは、改めて自分の今いる部屋を見回してみた。
一階のフロアはほとんどダイニングが占めているようで、見えるだけで食卓が一つとイスが4つ、台所が隔てなく繋がっていた。決して広いわけではなかったが、三人で生活するにはちょうどいい広いだろう。
二階の小さな部屋と違って、ダイニングはカーペットや植木が置かれてあり、居心地のよい生活空間を演出していた。
そのままエレリアはまだ行ったことのない家の奥の方へ足を進めた。
小さな廊下の途中には古びた扉があり、開いてみるとなんとそのまま地下室に繋がっていた。先ほどミサはここから青い瓶を持ち出してきたようだった。下手に中に入って何か壊したりしたら大変なので、今回はエレリアは入らないようにした。
そして、さらに歩を進める。
するとエレリアは洗面所と脱衣場に行き着きいた。どうやらそこは浴室のようだった。床は青いタイル張りで、そこには小さな浴槽と白い垢のついた鏡、そして無造作に積まれた衣類がかごに入って置いてあった。
「これかな?ミサの言ってた洗濯物は」
エレリアは他にそれらしきものがないのを確認して、たまった洗濯物のかごを両手で持ち上げた。衣類はみなたっぷり水分を含んでおり、ずっしり重かった。どうやら今朝洗われたものようだった。
「どこに干したらいいんだろう…?」
途方に暮れ立ち尽くしたエレリアは、とりあえず外へ出てみることにした。
エレリアは片手で洗濯物を支え、もう片方の手で玄関の扉を開けた。
すると、まぶしい朝の光が目の前に広がった。
「うっ」
暗闇に慣れていた瞳が突然の日差しに面食らったのだろう、思わずエレリアは目を細めた。
そして、少しずつまぶたを開いていってみた。しばらくするとエレリアの瞳も外の日差しに順応し、次第に村の風景が目の前に浮かび上がっていった。
ミサの住む家は村の少し高い丘の上に位置しているようで、エレリアは村全体を端まで一望することができた。
さきほど二階から見たときには気がつかなかったが、村の真ん中には丸い池があり、それに沿って道が続いている。
そして、村のほとんどの建物が木造なのに対し、ミサたちが住んでいる民家はレンガ造りのモダンなデザインをしている。この建物はもともとおばあちゃんのものと言っていたミサの発言からして、いかに彼女が王国で偉業を成していたか、この建物の雰囲気からだけでも充分伝わってきた。
村人は子供から老人まで多様で、さらに馬や豚などの家畜なども見られた。仮に王国からの物資が遮断されたとしても、この村で自給自足していけるだけの設備は整っているようにも見える。
さらにエレリアは遠くの方を眺めてみた。
村の向こう側には二階からも見えた巨大な岩山が連なっていて、まるで村を守っている自然の魔神のようなたたずまいで満ちていた。
そんな岩山の隣には大海原が広がっており、おそらくその辺りで自分は拾われたのだろうとエレリアは想像した。
こうして見てみると、この村は大自然に囲まれた豊かな村だということが分かった。
しかし、なぜこんな村に今自分がいるのか、そしてその真実が見つかる日が来るのか。
エレリアは青空を見上げて、心の中で自問した。
だが、答えは出なかった。
村の全体をざっと見たエレリアは、次に家の裏側に周ってみた。
予想していた通り、そこには洗濯物を干すための物干し竿があった。
家のすぐ後ろは崖と木々で囲まれており、この家が村の隅にあるということを認識させられる。他にも、割れた瓶や古ぼけた日用品などの廃棄物が雑多に捨てられていた。
そして、エレリアは庭の隅に小さな畑があるのを目にした。そこには、どうやら植物が植えてあるようだ。
エレリアは好奇心に背中を押され、持ってきた洗濯物を一旦地面に置き、その畑に近づいてみた。
「なんだろう、これ。『ポニオン』?」
エレリアは畑の隅にある『ポニオン』と手書きで書かれた看板を見つけた。聞き慣れない名前にエレリアは首をかしげる。
緑色の分厚い葉っぱが特徴的なその植物は丸っこい形状をしており、畑の黒い土に覆いかぶさるように無数に存在していた。
「料理か何かに使うのかな?」
エレリアは膝を折り、ポニオンと呼ばれる植物に鼻を近づけてみた。
土の混じった柔らかな植物特有の香りが鼻腔をくすぐる。
そして、近くで葉をよく観察してみると、表面にうっすら水滴が浮いており、土壌から雨の匂いが沸き立っているのを感じた。おそらく、最近この村で雨が降り続いていたのだろう。ミサの洗濯物を干すのを頼んだ理由も、エレリアはなんとなく理解できた。
「これが何なのか、後でミサに聞いてみよ」
一通り畑を眺めた後、エレリアは自分の実務をこなすためにいったんその場を後にした。
エレリアは戻って、置いていた洗濯物を手に取り、濡れた衣服を物干し竿に干し始めた。
空はどこまでも青く、白い雲がゆっくりと流れている。
知らない場所のはずなのに、なぜか自分がずっとずっと前からここに住んでいるような感覚にエレリアは陥った。もちろん、根拠などなにもなかったが、時おり吹き付ける涼しい風にふかれて、エレリアはふとそんな思いに駆られた。
衣服はミサとソウヤの二人分あった。
特にソウヤのものと思われる衣服はどれも汚れが薄汚れていて、なぜか炎で焼けた後のように黒く汚れていた。そういえばソウヤは今頃どこにいるのだろうか。エレリアが朝食のスープを食べ終わる時には、気づけばいなくなっていた。エレリアは手を動かしながら、そんな疑問を抱いた。
対してミサの服は綺麗に着こなされているものの、どれも映えない質素なものが多かった。どうやらミサは「ファッション」というものに少しも興味を持っていないらしい。少なくともエレリアはそんな印象を持った。
まぶしい太陽の光が燦々と降り注ぐ。
エレリアは手を止めず、広大な青空の下で、夢中になって衣服を干し続けた。
「よし、終わった…」
すべての衣服を物干し竿に干し終え、エレリアは腰に手を置いた。目の前で、様々な衣服たちが風で揺られている。
二人分の量だったので、思ったより時間はかからなかった。
そしてエレリアは誰かに見つかると面倒なことになると考え、空になった洗濯かごを手に取り、そのまま家の中に身を翻した。
これまで家を見回って分かったことは、ミサの家は二階建てのお風呂と地下室のついた家だということ。
裏庭はそれほど広くはなかったが、謎の作物を育てている畑と物干し竿があり、裏庭で何か活動をするには充分なスペースだった。
家の中に入り、洗濯かごを風呂場へ戻した後、エレリアは再び二階へ上がった。
廊下を経由して、手前にエレリアの寝ていた小さな部屋があり、奥にももう一つ小さな部屋があった。
「何があるんだろう…」
気になったエレリアは廊下を進み、こっそり奥の部屋の中を覗いてみた。
すると、そこはどうやら物置部屋のようで、使わなくなった家具などの様々な用具がところ狭しと収納されている。よく見ると、部屋の真ん中にはなぜか布団が敷いてあるように置かれてある。
部屋の広さはエレリアの寝ていた小さな部屋のさらに半分くらいで、充分に清掃が行き届いていないせいか、その部屋はほこりが充満していた。なので、エレリアは思わず咳き込んでしまった。
そしてついに耐えきれなくなって、エレリアは急いで扉を閉めた。
やることが無くなったエレリアは、一階のダイニングでミサの帰りを待つことにした。
朝座っていた食卓のイスに腰を下ろす。
「…」
しばらくエレリアは誰もいない部屋で、シンクの上に飾られていた一輪の花を眺めて暇を持て余していたが、なかなかミサは帰ってこない。
「遅いなぁ、ミサ。本当にどこに行ったんだろう…」
エレリアはもうしばらく彼女の帰りを待つことにしたが、それでも結果は同じだった。
このまま待ち続けていても意味がないと悟ったエレリアは、イスから立ち上がり、仕方なく自分の中の寝ていた小さな部屋に戻ることにした。
再び小さな部屋に戻ってきたエレリアは、自分が寝ていたベッドの上に大の字に仰向けになった。
「知らない天井…。あたりまえか」
静寂に包まれた小さな部屋で、エレリアはぼそりと呟く。
「私は本当に、誰なんだ…?」
そして、エレリアは無意識に心の隅に追いやっていた自問の感情を呼び戻した。
しかし依然として、思いだそうとしても何も思い出せない。
それどころか、記憶をたどろうとすればするほど、鈍い痛みがエレリアの頭をキリキリ締め付けた。
「うっ…」
だんだんもどかしくなったエレリアは寝転がって、現実から逃げるように布団をぎゅっと抱き寄せた。
そして、そのまま重いため息を吐いた。
「私の家族はどうしてるかな。きっと今頃、私のことを探してくれてるんだろうなぁ…」
泣きそうになりながらエレリアは記憶には現れない自分の家族の姿を想像して、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
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