186 / 226
【第二部】
咫尺天涯
しおりを挟むそれからしばらく経って、秋が終わり冬になった。
黒川さんの事を考えないように詰め込んだバイトとレッスン。
狙い通り、その二つに明け暮れる日々が続き、考える事も黒川さんに会うこともほぼ無くなっていた。
その代わりに、蘭さんとの時間が増えた。
今もそう。
今朝、急に大量のレンタルDVDを持って俺の部屋のインターホンを連打した蘭さん。
バイトもレッスンも休みの今日。
誰にそれを聞いたのかは分からない。白林さんと早野さんに確認するより、琉唯くんを捕まえて聞いた方が早いから多分そうだろう。
「次なに観る?」
4人がけソファの両端に座って観ていたファンタジー映画。エンドロールが始まった所で、蘭さんが声をかけてきた。
エンドロールは見ない派の俺。蘭さんも同じみたいだ。だってつまんないもんね。
「んー…アクションがいい、かも…です」
「かもって、俺もアクションがいいと思ってた」
俺の返事に笑いながら立ち上がる蘭さんは、俺の注文通りに話題の新作映画をデッキにセットした。
蘭さんの隣は、意外と落ち着く。
琉唯くんも勿論そうだけど、蘭さんの匂いは黒川さんとそっくりだから。
蘭さんを廉さんの代わりに見立てて利用してるって言ったら聞こえは悪いけど、こうでもしないと気が狂いそうだった。
「あ、そうだ。昼から佐伯誘って水族館行こう」
「急ですね」
水族館、黒川さんと行ったっきりだな…。
いま黒川さん何してるんだろう。元気にしてるかな?やっぱり時間があると考えちゃうな…。忘れられてても、邪魔だって思われてても会いたい。
「ふふ…」
「え?今おもしろかった?」
「いや、なんでもないです」
相変わらず俺は黒川さんのことが大好き。
例え赤い糸が蘭さんと繋がってても、廉さんに新しい番がいても、あの人だけが好きだ。
多分この先ずっと。
…てか水族館行くなら、午前中から行ってじっくり見て回りたいんだけど!!なんて事は隣にいる破天荒な人には通用しない。
*
「はーっ、楽しかったけど疲れたー」
水族館からまた別の場所へ拉致されることも無く、無事に帰宅した俺。
とりあえず風呂だけ済ませ、ベッドに転がる。
あー、明日は午前中にレッスンで…そのあとはバイトだっけ…?何時に家を出ればいいのかな…なんて、予定を立てているうちに下がってくる重い瞼。
忙しくて疲れる、けどたまに蘭さんと琉唯くんとする息抜きで何とか日々生きている。
そんな毎日がずっと続けばいい。
10
あなたにおすすめの小説
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~
なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。
一つは男であること。
そして、ある一定の未来を知っていること。
エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。
意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…?
魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。
なんと目覚めたのは断罪される2か月前!?
引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。
でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉
まぁどうせ出ていくからいっか!
北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)
上手に啼いて
紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。
■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
番解除した僕等の末路【完結済・短編】
藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。
番になって数日後、「番解除」された事を悟った。
「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。
けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。
2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました
2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。
様々な形での応援ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる