a pair of fate

みか

文字の大きさ
193 / 226
【第二部】

宝石

しおりを挟む




「いよいよ今日だな!俺はこのCMで、世界へ羽ばたく!」


今日は待ちに待ったCM撮影日。

隣でフンフン鼻息荒く意気込む爽とは逆に、俺はガチガチに緊張していた。

癖で首の後ろを触ると、いつもつけていた首輪は撮影のために外したのを思い出し、更に緊張する。


「そんな緊張すんなよ。俺がいるから」

「あ、…いつもありがとう」


バシンと背中を叩かれ、いくらか緊張が解れる。


スタッフの人が、今回PRするリップを俺と爽に1本ずつ渡してくれた。
それを受け取り、スタジオのセットに入る。

メイクされた顔を映すイメージだったので、これには驚き。

セットは真っ白。その中央にデーンと大きいベッドが一つ。もちろんシーツは真っ白だ。
まるで病院みたいで落ち着かないけど、リップの色はとても映えると素人の俺でもわかった。


「…」
「……」


二人でふわふわベッドの上に座り沈黙。
爽もさっきまでの勢いはどこへやら、受け取ったリップを握り締めて俯いている。

…なんだ…爽も意外と緊張してんじゃん…?

てか指示してくれないんだ。

塗らないといけないのは分かるけど、どんな風に塗ればいいんだろう。
大事な商品なんだ。絶対に失敗できない。


不意に爽がパッと顔を上げた。


「塗りあいっこしてみる?」

「塗りあいっこ?」


そう言いながら、リップを俺の手からもぎ取る爽。


「うん、貸して。先にやるからこっち向いて」


…もう取ってるし。

慣れた手つきでリップを少し出し、俺の方へ向ける。



「はーい、ちょっとあーってして」

「あー」


爽と向き合い、顎は固定される。いわゆる顎クイ状態。

堅く結んでいた口を少し開くと、下唇に押し付けられるリップ。リップは下唇の左端から右端へスライドした。

顔近いし唇ガン見される事ないからはずかしい。


「…いいね」


何が?!

てかコーラルピンクってやつらしいけど本当に俺が塗っていいのか?!


もう早く終わってくれ…!と思いながら視線を上げると、爽の肩越しにカメラのレンズと目が合った。


「!!」


うわっっっっ!!

気が付かないうちにガッツリ撮られてんじゃん!!!!

リラックスし過ぎて気付かなかった…。

どうしようこれ目線ズラした方が良いのかな?
わかんねぇ!こういう時に爽ならどうする?


爽ならきっと…笑う、かな?


「無理に笑わなくていいんじゃね」

「……」


え?


「華は綺麗に笑えるようになったけど、リラックスしてる時の無表情も綺麗だよ」


そう言う爽の顔は真剣そのもので、冗談を言っているようではなかった。

俺は俺、爽は爽。

無理に追い付こうとしなくて俺なりに頑張ればいいんだ。



膝の上で握り締めていた拳を解く。
俺はこんな感じで、いつも爽に助けられてばかりだ。



「そうそう、それでいーんだよ」

「…ふふ…」



俺が終わったら、次は同じ事を爽にする。

やられる方も緊張したけど、塗る方も中々に緊張した。

こうして俺たちの初めてのCM撮影は無事に(?)終了した。




しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

寂しいを分け与えた

こじらせた処女
BL
 いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。  昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

時間を戻した後に~妹に全てを奪われたので諦めて無表情伯爵に嫁ぎました~

なりた
BL
悪女リリア・エルレルトには秘密がある。 一つは男であること。 そして、ある一定の未来を知っていること。 エルレルト家の人形として生きてきたアルバートは義妹リリアの策略によって火炙りの刑に処された。 意識を失い目を開けると自称魔女(男)に膝枕されていて…? 魔女はアルバートに『時間を戻す』提案をし、彼はそれを受け入れるが…。 なんと目覚めたのは断罪される2か月前!? 引くに引けない時期に戻されたことを嘆くも、あの忌まわしきイベントを回避するために奔走する。 でも回避した先は変態おじ伯爵と婚姻⁉ まぁどうせ出ていくからいっか! 北方の堅物伯爵×行動力の塊系主人公(途中まで女性)

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

番解除した僕等の末路【完結済・短編】

藍生らぱん
BL
都市伝説だと思っていた「運命の番」に出逢った。 番になって数日後、「番解除」された事を悟った。 「番解除」されたΩは、二度と他のαと番になることができない。 けれど余命宣告を受けていた僕にとっては都合が良かった。 2026/02/14 累計30万P突破御礼バレンタインSS追加しました 2026/02/15 累計いいね♡7777突破御礼SS 19時に公開します。 様々な形での応援ありがとうございます!

処理中です...