異端の紅赤マギ

みどりのたぬき

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第5章:帝国と教会使者編

第202話:案内人

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「うわぁ・・・思ってたよりもなんて言うか、その―――」

「俗物的じゃろ?」

「うん・・・」

 俺はホルス帝国側の街の中心部に鎮座する、何とも派手な建物を下から見上げて上手く言葉に出来ずに固まった。
 今俺は、ガバリス大司教との約束時間となった為、指定された場所へ向かい、目印となるエル教の教会前に居るのだが、その教会の建物が思っていたよりも金ピカで、なんと言うか建物からはお布施の匂いしかして来ず困惑しているのだが、もう少し現世と言うか俺が居た現代の地球の宗教とは違った雰囲気と言うかそう言うものを感じ取れると思っていたので、予想と違ったと言うかなんと言うか・・・

「コレ、神殿とかではないぞ?唯の教会じゃからな?」

「・・・・・・」

 マジかよ・・・
 神や悪魔なんている世界なんだから、もう少し現実味があると言うか、民衆に寄り添った現実的な宗教だと思っていたのだが、目の前の教会は至る所に金が使われており、二階建ての建物の屋根のテッペンにはこれまた金―――これ純金??―――で作ったエル教のシンボルがここぞとばかりに周囲にアピールしている。
 何をアピールしてるかは敢えて言わないが、物凄くアピールしている。

「アレがエル教のシンボルなんだな」

 俺はその俗物アピールして―――ゲフンゲフンッ―――失礼。周囲にエル教会はここですよアピールしている巨大なシンボルを下から見上げて呟いた。

「うん?あぁ、そうじゃ」

「何て言うか、完全に十字架をイメージしてたわ」

「まぁ、地球の知識があったのならそれも仕方あるまいな」

 エル教のシンボルは、一直線の長い棒の両先端にボールを付けた様な形をしている。
 そう言えば、アルアレやイリアは、頭から臍の辺りに掛けて一直線に手を動かしていたなと思い返す。

「この分だと、中も相当アレなんだろうな・・・」

「・・・まぁ、想像通りじゃと思うぞ」

「因みに、こんな派手なのはこのホルスのだけって事は―――」

「ないッ!」

「・・・そうか」

 一般市民、貴族含め相当なお布施が集まってくるのだろうと想像出来る造りの建物を呆れ気味に見上げていると、教会の入口辺りから突然声を掛けられた。

「ハル様で御座いますか?」

「うん?」

 声の方を見ると、見るからにテンプレな修道服を着たシスターがこちらに歩いて来ていたのだが・・・

 こんな、まんま修道服ってありか!?

 本当に、日本でテレビや漫画やアニメで見た事のあるその修道服に目が釘付けになる。

「何てエロい目で見ておるんじゃッ!」

「はッ?はぁぁッ!?」

 何を勘違いしたのか、アリシエーゼが突然ぶっ込んで来て少しテンパってしまった。
 だが、そう言われて声の主を翌々見てみると、地球で見た様な黒っぽい修道服では無いものの、菖蒲色あやめいろのテンプレ修道服を着たそのシスターは、歳の頃なら十代後半から二十に届いているかどうか位の年齢で、背は百六十程だろうか小柄なのだが、が物凄い。

 モニカに対抗出来るんじゃ・・・

 そんな事を考えていると図らずも生唾ごっくんしてしまい、それを小聡明く悟ったアリシエーゼがまたしても俺を非難する。

「何処を見ておるんじゃ!食い入る様に見詰めるで無いッ」

「お前ッ、マジで態と俺を貶める為に言ってるだろ!?」

 しかも大声の為、近くを通る人々は奇異の眼差しを向けて来る。
 今、通ったオッサンなんかはニヤニヤと俺の顔を見て、「分かるぞ、小僧」みたいな顔をしていた。

 同志よ!
 何てなるか!ボケ!!

「あらあら、こんな所であまり騒いではなりませんよ?」

 そんな俺達のやり取りを見て、目の前まで歩いて来たシスターは口元に手を当ててクスクスと笑う。
 その仕草もなんと言うか意外だった。
 と言うのも、修道服の上からでも分かるバインバインはまだしも、外見は少しくすんだブロンドの髪が肩まで伸びており、その髪はウェーブが掛かっている。
 それよりも何よりも目を引くのは、肌が小麦色で健康的に日焼けしているのだ。

 何だこの黒ギャ―――ゲフンゲフンッ―――なんと言うか、もう本当にコスプレにしか見えない。本当の意味でのコスチュームなプレイだ。

「あ、いや、すまん。それよりもガバリス大司教と約束があって来たんだが、案内を頼めるか?」

「やはりハル様で御座いますね。では案内をさせて頂きますが、一応上の者の確認も行うので、教会内で少しお待ち頂いても―――」

「―――そんな茶番要らねぇよ。さっさと案内しろ」

「ぇ・・・」

 俺の突然の変わりっぷりに目を丸くして驚くシスターだが、俺はそのままの態度で続ける。

「だからそんな演技要らねぇって言ってんだろ、確認なんて必要ねぇだろ、今までずっと俺達を監視してただろうが。しかもお前はからずっと張り付いてただろ」

「・・・・・・」

 朝からずっと俺達を監視していた、帝国側だか、ガバリス大司教側だかは分からないが、その間者の匂いは全て把握している為、此奴がどんなに演技をしようが俺達は騙されたりはしない。

「態々時間作ってやってんだからこれ以上俺達を煩わせるんじゃねぇよ」

「・・・・・・うふふ、思ってた通り面白い子ね。粗●ンの癖して」

「ブフゥゥゥッ!!!」

「ぎゃあッ!?いきなりなんじゃ!?汚いでは無いか!!」

 間者シスターの痛恨の一撃級の反撃に思わずアリシエーゼに向かって吹き出してしまったが、俺は悪くない筈だ・・・

「うふふ、でも唆られるわ・・・アッチの方はだろうけど」

 この野郎・・・
 何故俺が粗●ンと分か―――いや、そもそも俺は・・・

 一々、痛恨の一撃を繰り出して来る間者シスターに俺はイラついているが、アリシエーゼは隣で、「あっちとはなんじゃ?」とか「アレってなんじゃ?」と騒ぎ始める。
 一旦それは無視して俺は話しを進めた。

「お前、そろそろ黙れよ。いいからさっさと案内しろって言ってんだ」

 俺が剣呑な雰囲気を醸し出すと、色々な意味で真っ黒なシスターは妖艶な笑みを浮かべながら俺を見詰め、そして一つ舌なめずりを行った。

「本ッ当に食べたくなっちゃう。ねぇ、用事が終わったらお姉さんと飲みに行かない?」

「行かねぇよ。何がお姉さんだ、俺と大して歳なんて違わねぇだろうがよ」

 高々、十代後半の女がお姉さんとか言ってんじゃ―――

「あら、私はこう見えて四十三よ?」

「ブフゥゥゥッ!!!」

「ギャァアアッ!何するんじゃぁあ!?」

 ガチの美魔女ぉぉッ!?!?
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