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第6章:迷宮勇者と巨人王編
第246話:作戦
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「お主、頭がおかしいのでは無いか?」
「そうよッ、一体何考えてんのよ!?」
「流石に見た事も無い階層主に対しての作戦など立てられないぞ?」
「旦那って本当に行き当たりばったりだよな」
「ちょっとぉ!?この女本当にどうにかしてくださいよぉぉお」
「・・・・・・・・・」
まぁ、予想通りの反応と言えばそうなのだが、俺が勝手に推し進めた、ラルファ達との共同作戦に関して仲間達は口々に不満をぶつける。
「いや、まぁ・・・勝手に話進めたのは謝るけど、どっちにしたって俺達だけでも一度階層主を見に行くつもりだっただろ?」
十三層で進行が止まっているのは知っていたし、その原因が階層主と言う事も事前に情報を得ていたので、その辺含め一度各地現地で確認しようと話はしていたので、ラルファ達と行動を共にする事は想定外だとしても、階層主を確認し俺達だけで倒せるなら倒してしまおうと言う当初の計画から外れているとは思えない。
「ただ見るだけだったでしょッ、何で本気で倒す事になってんのよ!」
「だ、だって、ラルファが倒せるって言うから―――」
「だってじゃないわよ!それに何で私達が彼奴らの壁にならなきゃならないのよ!?」
「うッ、それは・・・」
イリアは本気でキレている様子で、言い訳をする俺に顔を近付け捲し立てる。
そんな様子を見てムネチカとコテツが、「やっちゃいましょうよ!」「余裕ですよ!」と俺の肩を持つ様に煽る。
「ハル様ッ、私達だけで倒しちゃいましょうよ!」
「そうですよ、情報を精査すると階層主って言ってもただデカくて硬いだけじゃないですか!」
「そうとも限らんだろ、オルフェの傭兵達が大打撃を受けた侵攻からは、大規模な階層主との戦いは無いと聞くし、まだ手の内を全て明かした訳では無いだろう」
だが、ダグラスはこう言う時だからこそ慎重になるべきだと皆を諭す様に語る。
確かに、ホルスでは本当に何も分からないまま、途中で引き返せば良い、様子見だからと流れに身を任せていたらいつの間にか引き返す事の出来ない領域に足を踏み込んでいたのだ。
だが、俺の心情を知ってか知らずか、ダグラスの言葉にそれまで静観していたマサムネが異議を唱える。
「そんな事を言っていては魔界の攻略など出来ないでしょう。ここの階層主を倒したのなら、その先は人類未踏の領域で、常に何も分からない状況でしょうから」
マサムネの言葉を聞き、確かにと思った。
結局、魔界なんて何が起こるか分からない。今迄は先人達が苦労して作成した地図を見て、恰も自分達の実力が優れているかの様に錯覚とまではいかないまでも、順路を知る事が出来て、罠がある位置や種類までもが知れる環境でそれを何とも思わず進んで来たのは事実だ。
でも、本来はそうじゃないだろう。道も分からない、何処に罠が仕掛けられているかも分からない。どんな魔物が出現するのか、どれ程の強さなのか、そんな事一切分からない状況で進んで行くのが、本来の姿だ。
別にマップや情報を売る事に対して何か否定的な感情がある訳でも無いし、そう言った事で生計を立てるのも寧ろ推奨したいとも思っている。
売る方も買う方も両者にとって益のあることだし、それで助かる人が一体何人もいるのだろうし。
「そんな事言ってるんじゃないのよッ、コイツがまたその時の気分で勝手に話を進めてるのが問題なのよ!」
それに対してイリアが吠える。論点をズラすなとマサムネも若干ビビる程の剣幕で顬に青筋を立てながら俺からマサムネに向き直り詰め寄る。
ごもっとです・・・
「でも、依頼の一つはこの魔界の攻略よ?何時までもこの階層に留まっている訳にもいかないでしょ?」
「そうだけどッ、別に今じゃ無いでしょ!もっと準備とかしてちゃんと進めないと危ないでしょ!」
サリーも俺の行動に特段否定的では無く、寧ろこんな所で躓いてんじゃないわよと俺達のケツを叩く。
「まぁ、傭兵なんてその危ない事をこなして金を貰う稼業だし今更じゃねぇか?」
旦那の振る舞いも含めて今更だろとドエインは言う。だが、なんだろうかドエインは俺の事をまるで困ったちゃんの様に扱う為、それに対してはモヤモヤするのだが・・・
「もういいわよッ、アンタらに何言っても無駄!階層主にぶん殴って貰って目を覚まさせて貰いなさいな!」
仕舞いにはプリプリと怒り出すイリアに、無性にほっこりとしなからも、ご機嫌取りと言うか仲間内で蟠りを残さない為に俺は若干引き攣った笑いを浮かべながら近付く。
「俺が勝手に話進めたのは悪かったって。次からは成る可く気を付ける様にするから勘弁してくれ」
「ふんッ、そんな事言ってどうせ次も感情だけで行動するんでしょ!」
「んな事無いって、ただコレは分かって欲しいんだが、俺達はこんな所で躓いてられない。それに階層主って言ってもあのフェイクスみたいのが出て来る訳でも無いだろ?だったら俺達なら出来るよ」
もしもこんな階層の途中でフェイクス並の奴が出てきて、今後もそれ以上のがどんどん出て来る様ならお手上げだからその時は諦めようぜと笑いながら言うか俺にイリアは毒気を抜かれたのか、深いため息を吐きながら手をヒラヒラと振る。
「はぁぁぁッ、もういいわよ、分かったわ」
「そうかそうか、じゃあこの前みたいにあの魔法、事前に詠唱しといてくれ」
「はッ、はぁッ!?」
あの魔法と言うのは当然、イリアの使える全神聖魔法中最強の防御性能を誇る、絶対防御魔法の事だ。
あの魔法は物理攻撃、魔法攻撃に関わらず凡百攻撃を受け付けず防御してのける最強魔法であり、何が起こるか分からない所に今から突撃をかますのでそんな状況にはうってつけの魔法なのだ。
「戦闘開始後、イリアの判断で展開してくれ」
「・・・もうッ、勝手なんだから!」
プリプリしながらも此方に従うイリアを可愛いなと思いつつ、他の仲間達にも色々と話をして作戦と言う程練られていないものを伝えていく。
ただ、それは至極単純なものだった。
俺とアリシエーゼが前に出て階層主の相手をする。
他はユーリーをメインに極大の精霊魔法でもぶちかまして、成る可くラルファ達に敵の意識が向かない様に立ち回ると言ったものだ。
「さて、ちと久々に気合い入れるか」
皆と話し合った後、最後にアリシエーゼに顔を向けそう言うと、アリシエーゼは今まで此方に意識を向けていなかったのか、俺の声で意識を戻して慌てていた。
「あ、な、なんじゃ?もう行くのか?」
「聞いて無かったのか?」
「う、うむ・・・」
若干気まずそうにするアリシエーゼの視線の先を見ると、ラルファが腰に差す剣が見える。
「あれやっぱり気になるのか?」
「うむ・・・どんな性能なのかと思ってのう」
傭兵達の記憶を読んだ時の事を思い出し、何気無くその記憶にある単語を伝える。
「そう言えばあの剣、神造遺物って言うらしいぜ」
何気無く放ったその一言に、アリシエーゼはまるで時間が止まった様に身体の動きを止め、目を見開いて俺を見ていた。
え、何??
「お、お主、その情報の確度はどの程度のものじゃ・・・?」
「え?うーん、あの小部屋に居た傭兵達の頭の中から抜き出した情報のだけど、それが本当かどうかは分からないなぁ」
「そうか・・・」
俺の回答にアリシエーゼは顔を俯かせて何やら思案し始める。
その様子に唯ならぬ雰囲気を感じた俺はアリシエーゼに問う。
「何かヤバいのか・・・?」
「・・・・・・・・・」
まだ俯くアリシエーゼを俺は黙って見詰める。
何か必死に自分の中で考えているのだろうし邪魔しても悪いと思ったからだ。
短い間だったがアリシエーゼは考え、それが纏まったのか顔を上げる。
「すまんかった。とりあえず後で話をするんで、先ずはボスに集中するのじゃ」
「・・・分かった」
アリシエーゼの言葉に納得した分けでも理解した分けでも無いが、アリシエーゼがそう言うのだからと俺は意識を切り替える。
「そろそろいいかなー?」
そんなタイミングを見計らったのかほ分からないが、ラルファが俺に声を掛けて来る。
その声に振り返り、俺は不敵に笑った。
「いつでもいいぜ」
「そうよッ、一体何考えてんのよ!?」
「流石に見た事も無い階層主に対しての作戦など立てられないぞ?」
「旦那って本当に行き当たりばったりだよな」
「ちょっとぉ!?この女本当にどうにかしてくださいよぉぉお」
「・・・・・・・・・」
まぁ、予想通りの反応と言えばそうなのだが、俺が勝手に推し進めた、ラルファ達との共同作戦に関して仲間達は口々に不満をぶつける。
「いや、まぁ・・・勝手に話進めたのは謝るけど、どっちにしたって俺達だけでも一度階層主を見に行くつもりだっただろ?」
十三層で進行が止まっているのは知っていたし、その原因が階層主と言う事も事前に情報を得ていたので、その辺含め一度各地現地で確認しようと話はしていたので、ラルファ達と行動を共にする事は想定外だとしても、階層主を確認し俺達だけで倒せるなら倒してしまおうと言う当初の計画から外れているとは思えない。
「ただ見るだけだったでしょッ、何で本気で倒す事になってんのよ!」
「だ、だって、ラルファが倒せるって言うから―――」
「だってじゃないわよ!それに何で私達が彼奴らの壁にならなきゃならないのよ!?」
「うッ、それは・・・」
イリアは本気でキレている様子で、言い訳をする俺に顔を近付け捲し立てる。
そんな様子を見てムネチカとコテツが、「やっちゃいましょうよ!」「余裕ですよ!」と俺の肩を持つ様に煽る。
「ハル様ッ、私達だけで倒しちゃいましょうよ!」
「そうですよ、情報を精査すると階層主って言ってもただデカくて硬いだけじゃないですか!」
「そうとも限らんだろ、オルフェの傭兵達が大打撃を受けた侵攻からは、大規模な階層主との戦いは無いと聞くし、まだ手の内を全て明かした訳では無いだろう」
だが、ダグラスはこう言う時だからこそ慎重になるべきだと皆を諭す様に語る。
確かに、ホルスでは本当に何も分からないまま、途中で引き返せば良い、様子見だからと流れに身を任せていたらいつの間にか引き返す事の出来ない領域に足を踏み込んでいたのだ。
だが、俺の心情を知ってか知らずか、ダグラスの言葉にそれまで静観していたマサムネが異議を唱える。
「そんな事を言っていては魔界の攻略など出来ないでしょう。ここの階層主を倒したのなら、その先は人類未踏の領域で、常に何も分からない状況でしょうから」
マサムネの言葉を聞き、確かにと思った。
結局、魔界なんて何が起こるか分からない。今迄は先人達が苦労して作成した地図を見て、恰も自分達の実力が優れているかの様に錯覚とまではいかないまでも、順路を知る事が出来て、罠がある位置や種類までもが知れる環境でそれを何とも思わず進んで来たのは事実だ。
でも、本来はそうじゃないだろう。道も分からない、何処に罠が仕掛けられているかも分からない。どんな魔物が出現するのか、どれ程の強さなのか、そんな事一切分からない状況で進んで行くのが、本来の姿だ。
別にマップや情報を売る事に対して何か否定的な感情がある訳でも無いし、そう言った事で生計を立てるのも寧ろ推奨したいとも思っている。
売る方も買う方も両者にとって益のあることだし、それで助かる人が一体何人もいるのだろうし。
「そんな事言ってるんじゃないのよッ、コイツがまたその時の気分で勝手に話を進めてるのが問題なのよ!」
それに対してイリアが吠える。論点をズラすなとマサムネも若干ビビる程の剣幕で顬に青筋を立てながら俺からマサムネに向き直り詰め寄る。
ごもっとです・・・
「でも、依頼の一つはこの魔界の攻略よ?何時までもこの階層に留まっている訳にもいかないでしょ?」
「そうだけどッ、別に今じゃ無いでしょ!もっと準備とかしてちゃんと進めないと危ないでしょ!」
サリーも俺の行動に特段否定的では無く、寧ろこんな所で躓いてんじゃないわよと俺達のケツを叩く。
「まぁ、傭兵なんてその危ない事をこなして金を貰う稼業だし今更じゃねぇか?」
旦那の振る舞いも含めて今更だろとドエインは言う。だが、なんだろうかドエインは俺の事をまるで困ったちゃんの様に扱う為、それに対してはモヤモヤするのだが・・・
「もういいわよッ、アンタらに何言っても無駄!階層主にぶん殴って貰って目を覚まさせて貰いなさいな!」
仕舞いにはプリプリと怒り出すイリアに、無性にほっこりとしなからも、ご機嫌取りと言うか仲間内で蟠りを残さない為に俺は若干引き攣った笑いを浮かべながら近付く。
「俺が勝手に話進めたのは悪かったって。次からは成る可く気を付ける様にするから勘弁してくれ」
「ふんッ、そんな事言ってどうせ次も感情だけで行動するんでしょ!」
「んな事無いって、ただコレは分かって欲しいんだが、俺達はこんな所で躓いてられない。それに階層主って言ってもあのフェイクスみたいのが出て来る訳でも無いだろ?だったら俺達なら出来るよ」
もしもこんな階層の途中でフェイクス並の奴が出てきて、今後もそれ以上のがどんどん出て来る様ならお手上げだからその時は諦めようぜと笑いながら言うか俺にイリアは毒気を抜かれたのか、深いため息を吐きながら手をヒラヒラと振る。
「はぁぁぁッ、もういいわよ、分かったわ」
「そうかそうか、じゃあこの前みたいにあの魔法、事前に詠唱しといてくれ」
「はッ、はぁッ!?」
あの魔法と言うのは当然、イリアの使える全神聖魔法中最強の防御性能を誇る、絶対防御魔法の事だ。
あの魔法は物理攻撃、魔法攻撃に関わらず凡百攻撃を受け付けず防御してのける最強魔法であり、何が起こるか分からない所に今から突撃をかますのでそんな状況にはうってつけの魔法なのだ。
「戦闘開始後、イリアの判断で展開してくれ」
「・・・もうッ、勝手なんだから!」
プリプリしながらも此方に従うイリアを可愛いなと思いつつ、他の仲間達にも色々と話をして作戦と言う程練られていないものを伝えていく。
ただ、それは至極単純なものだった。
俺とアリシエーゼが前に出て階層主の相手をする。
他はユーリーをメインに極大の精霊魔法でもぶちかまして、成る可くラルファ達に敵の意識が向かない様に立ち回ると言ったものだ。
「さて、ちと久々に気合い入れるか」
皆と話し合った後、最後にアリシエーゼに顔を向けそう言うと、アリシエーゼは今まで此方に意識を向けていなかったのか、俺の声で意識を戻して慌てていた。
「あ、な、なんじゃ?もう行くのか?」
「聞いて無かったのか?」
「う、うむ・・・」
若干気まずそうにするアリシエーゼの視線の先を見ると、ラルファが腰に差す剣が見える。
「あれやっぱり気になるのか?」
「うむ・・・どんな性能なのかと思ってのう」
傭兵達の記憶を読んだ時の事を思い出し、何気無くその記憶にある単語を伝える。
「そう言えばあの剣、神造遺物って言うらしいぜ」
何気無く放ったその一言に、アリシエーゼはまるで時間が止まった様に身体の動きを止め、目を見開いて俺を見ていた。
え、何??
「お、お主、その情報の確度はどの程度のものじゃ・・・?」
「え?うーん、あの小部屋に居た傭兵達の頭の中から抜き出した情報のだけど、それが本当かどうかは分からないなぁ」
「そうか・・・」
俺の回答にアリシエーゼは顔を俯かせて何やら思案し始める。
その様子に唯ならぬ雰囲気を感じた俺はアリシエーゼに問う。
「何かヤバいのか・・・?」
「・・・・・・・・・」
まだ俯くアリシエーゼを俺は黙って見詰める。
何か必死に自分の中で考えているのだろうし邪魔しても悪いと思ったからだ。
短い間だったがアリシエーゼは考え、それが纏まったのか顔を上げる。
「すまんかった。とりあえず後で話をするんで、先ずはボスに集中するのじゃ」
「・・・分かった」
アリシエーゼの言葉に納得した分けでも理解した分けでも無いが、アリシエーゼがそう言うのだからと俺は意識を切り替える。
「そろそろいいかなー?」
そんなタイミングを見計らったのかほ分からないが、ラルファが俺に声を掛けて来る。
その声に振り返り、俺は不敵に笑った。
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